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日本人高齢者の不眠、男女間で異なる特徴:岡山大

 不眠症の患者数は、高齢化社会に伴い急速に増加している。認知機能、情動機能、ADL機能に対する不眠症の影響は十分に研究されていない。岡山大学の菱川 望氏らは、日本人高齢者の不眠の有病率や認知機能、情動機能、ADL機能に対する影響について、性別、年齢により比較した。Neurological research誌オンライン版2017年2月9日号の報告。 対象は、地方行政の健康診断を受けた高齢者コミュニティ住民142人。対象者は、MMSEを含む認知機能、情動機能、ADL機能テストを行った。アテネ不眠尺度(AIS)スコアに基づいて2つのサブグループに分類し(AIS 3以下とAIS 4以上)、性別、年齢による認知機能、情動機能、ADL機能を比較した。 主な結果は以下のとおり。・主観的な不眠症(AIS 4以上)は、36.2%で認められ、男性よりも女性で多かった。・AISサブグループ間での認知機能に差は認められなかった。・男女ともに、老年期うつ病評価尺度(GDS)スコアは、AIS 3以下群よりもAIS 4以上群で有意に高かった。・やる気(Apathy Scale)スコアは、AIS 4以上群の男性で有意に高かった。・AISサブスケールのうち「日中の眠気」は、男性よりも女性で有意に高く(p<0.01)、とくに75歳以上で顕著であった(p<0.01)。・この高齢女性群は、Trail Making Testスコアが有意に低かった(p<0.05)。 著者らは「不眠症は、日本人高齢者コミュニティにおいて36.2%に認められた。不眠症患者では、抑うつ症状が多く認められ、男性ではやる気の低下を示した。75歳以上の女性における最も特徴的な点は、日中の眠気の頻度が高いことで、注意や執行機能の低下に関連する可能性がある」としている。関連医療ニュース 不眠症になりやすい食事の傾向 一般開業医でも不眠症治療を効果的に行うためには 2つの新規不眠症治療薬、効果の違いは

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初発統合失調症、陰性症状の経過と予測因子

 初回エピソード統合失調症(first-episode schizophrenia:FES)の2年以上のフォローアップにおける陰性症状の経過とその安定性、フォローアップ後の陰性症状の重症度を予測する因子について、スペイン・Hospital Clinic de BarcelonaのGisela Mezquida氏らが検討を行った。Schizophrenia research誌オンライン版2017年2月6日号の報告。 本検討は、2年間のプロスペクティブフォローアップ研究。対象患者は、FES患者268例(DSM-IV診断)。3回以上の診察で陰性症状の変化についてフォローアップを完了した患者を分散分析により評価した。2年間のフォローアップにおける陰性症状との相関および潜在的な予測因子の検討には、回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・陰性症状は、FES1年間後のフォローアップでは重症ではなく、2年まで安定しており、時間に対する有意な効果が認められた(Time1>Time2>Time3、F(2,151)=20.45、p<0.001)。・発症前の調整の不十分さ(p=0.01)、ベースライン時の高い陰性症状(p<0.001)は、FES2年後の陰性症状の重症度の変化に有意に寄与した(R2=0.21、p<0.001)。 著者らは「本検討より、FES1年後に陰性症状の軽減が認められた。この変化は、2年間安定していた。統合失調症の経過において初期段階で陰性症状が存在し、発症前の調整が不十分だと、中間アウトカムでより重度な陰性症状を予測する」としている。関連医療ニュース 統合失調症に対する増強療法、評価が定まっている薬剤はこれだけ 抗精神病薬のスイッチング、一括置換 vs.漸減漸増:慶應義塾大 統合失調症の陰性症状に対し、抗うつ薬の有用性は示されるのか

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活動性潰瘍性大腸炎への糞便移植療法―無作為化試験(解説:上村 直実 氏)-650

 わが国で患者数16万人と推定されている潰瘍性大腸炎(UC)の治療に関しては、活動性UCの寛解導入および寛解維持を目的として、5-アミノサリチル酸(5-ASA)、ステロイド製剤、免疫調節薬、抗TNF製剤、血球成分除去療法などが使用されているが、最近、「腸内フローラ」の調整を目的とした抗生物質療法や糞便移植療法に関する報告が散見されるようになっている。 糞便移植療法は、再発性のClostridium difficile感染症に対する有用性が確立されているが、今回、活動性UCに対する有効性と安全性を検証した臨床研究結果がLancet誌に掲載された。オーストラリアでの多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験(RCT)の結果、非血縁者複数の糞便移植を、最初は回腸末端から施行し、その後、週に5回、8週間の自己注入した糞便移植群の有効率(41例中11例:27%)がプラセボ群(40例中3例:8%)と比較して有意に高率であった。なお、“有効”とは内視鏡的活動性の低下および症状緩和に対するステロイドの依存率の低下であった。 本邦における糞便移植療法は1回のみの糞便移植であり、数施設で臨床研究が開始されたばかりで薬事承認もされていない。この報告に対して正直にコメントすると、「有効率がもっと高率でなければ、これほど面倒な治療を日本の臨床現場ですぐには使えない」である。 一方、16S rRNA解析による腸内細菌叢の検討から、フゾバクテリウム属種の出現が活動性UCの寛解を阻害する結果が本研究でも得られたが、Ohkusa氏らによるフゾバクテリウムをターゲットとした抗菌薬治療の有用性を示す研究結果を考慮すると、今後、UCの中で腸内フローラに影響を受けるグループの亜分類が存在する可能性が示唆された。 この「腸内フローラ」に関しては、便秘や肥満、糖尿病など代謝に関係する疾患や、うつ病やアレルギーさらには悪性腫瘍との関連についても注目されており、日本における研究の推進が期待される。■「糞便移植」関連記事糞便移植は潰瘍性大腸炎の新たな治療となるか/Lancet

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自殺予防に求められる、プライマリ・ケア医の役割

 自殺リスクの高い患者を特定するための効果的なスクリーニングシステムは、韓国のプライマリ・ケアにおいて存在しない。韓国・中央大学のYoon-Joo Choi氏らは、プライマリ・ケア患者の自殺念慮とうつ病の有病率を調査し、プライマリ環境において自殺念慮とうつ病の患者を診察する医師の認識およびマネジメント戦略の割合を調査した。International journal of mental health systems誌2017年2月7日号の報告。 プライマリクリニックおよびその勤務医師を受診した患者に対する、2部構成の調査として実施された。(1)患者への調査は、2つの地域で17日以上にわたり実施し、社会人口統計学的調査、健康行動調査、自殺念慮とうつ病の有病率を評価した。対象者は、外来患者1,363例(都市部在住:848例、農村部在住:515例)であった。(2)自殺念慮とうつ病患者に対する医師の認識およびマネジメント状況を調査した。対象者は、ローカル診療所15ヵ所(都市部:8ヵ所、農村部7ヵ所)の勤務医師18人であった。 主な結果は以下のとおり。・プライマリ環境における自殺念慮の有病率は18.3%(95%CI:16.2~20.3)、うつ病の有病率は13.9%(95%CI:12.6~15.7)であった。・自殺念慮とうつ病の割合は、一般人口と比較し、それぞれ約2.4倍、約1.4倍であった。・15ヵ所の診療所勤務医師のうち、自殺念慮を認識していなかったのは10ヵ所(69.7%)、うつ病を認識していなかったのは4ヵ所(26.7%)であった。・自殺念慮を認識していた医師6人中5人(83.3%)と、うつ病を認識していた医師14人中4人(38.6%)は、紹介準備なしで精神科紹介のみを行った。 著者らは「本知見は、プライマリ環境において、自殺念慮やうつ病を有する患者の多くは、十分な診断や治療がされていないことを示唆している。プライマリ・ケア環境の医師は、自殺念慮とうつ病の診断やマネジメントに関する教育、トレーニングを利用できるようにすべきである」としている。関連医療ニュース うつ病や自殺と脂質レベルとの関連 自殺念慮と自殺の関連が高い精神疾患は何か うつ病の薬物治療、死亡リスクの高い薬剤は

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高齢者のケアでは人とのつながりを重視したケアが有効か(解説:岡村 毅 氏)-649

 うつ病とまではいえないものの、元気のない高齢者の健康維持やうつ病予防に、collaborative care(よく使用されている訳語はないと思われ、タイトルは意訳です)が効果的とする報告である。具体的には、精神保健の専門家であるケースマネジャーが本人と顔のみえる関係を結び、かかりつけ医や専門家と協働し、尺度やエビデンスに基づいたケアをするという介入である。ここでは行動の活性化を志向している。また、抗うつ薬の内服は問わない。 一般的に高齢期には、健康問題を有し、配偶者や友人との喪失体験を有し、社会的な役割は少なくなり、日常生活の自由度は低下し、収入も減るものだ。もちろん、豊穣なる老年期を送られる方もおられる。しかし、老年精神医学の専門医・指導医として多くの高齢者の方と歩んだ経験からは、老年期は素晴らしいものだなどと無責任なことはいえない。「老」「病」「死」は、誰にとっても平等に訪れる試練である。それが人間というものだ。このことは、本研究の普遍性を示すだろう。つまり、精神的に健康な人生を歩んだ高齢者にとって他人事ではない報告なのだ。 ところで、本報告は大変素晴らしいものであるが、当たり前の結果にも思える。その人自身に対して責任をもってケアしてくれる人がいて、かかりつけ医などとの調整もしてくれるとなれば、つらい老年期を過ごしている人もきっと元気になることだろう。人を救うのは、人である。 話は変わるが、わが国では1998年をピークとして高齢者の自殺率は顕著に減少している。その関連要因として、私のような専門家が思いつくのは、2000年の介護保険法、2005年の地域包括支援センター創設である。孤独で、生きる意欲を失った高齢者は精神科外来で「治療する」ものではなく、もちろん入院させれば自殺は防げるというのは乱暴な解決だろう。介護保険を使ってヘルパーさんが来るだけで「死なないでおこう」と思う人はいるし、地域包括支援センターから職員が家まで来てくれたことをきっかけに、再び元気になる人が多い。あまり言う人がいないので言うが、厚生労働省の施策は非常に効果を上げているに違いない。違いないと書いたのは、エビデンスを寡聞にして知らないからである。RCTを行えるわけもないが、(学者の空想かもしれぬが)この事業が科学的に検証されていれば人類の英知となったのではと思う。本論文の考察の最後に「死亡率も減少したが、今後報告する」とさらっと書いてあったので触れた。これは重大な知見であり、おそらく再び一流ジャーナルに出してくるのであろう。 なお、介護保険でいうところのいわゆるケアマネジャーは、collaborative careにおけるそれとは質的に異なると思われることは付記しておく。

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統合失調症に対する増強療法、評価が定まっている薬剤はこれだけ

 統合失調症における抗精神病薬の多剤併用は、その有効性や安全性が不明瞭であることが一般的でコストがかかるため、多くの議論がなされている。ドイツ・シャリテ大学のBritta Galling氏らは、統合失調症に対するセカンドチョイスの抗精神病薬増強療法と継続的な抗精神病薬単独療法とを比較した無作為化試験のシステマティック文献検索とランダム効果メタ解析を行った。World psychiatry誌2017年2月号の報告。 共主要アウトカムは、総症状の減少、試験で定義されたレスポンスとした。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬の増強療法は、単独療法と比較し、総症状の減少に関して優れていた(16試験、694例、SMD:-0.53、95%CI:-0.87~-0.19、p=0.002)。・しかし、優位性はオープンラベルと低クオリティの試験でのみ明らかで(各:p<0.001)、二重盲検(p=0.120)、高クオリティ試験(p=0.226)では検出されなかった。・試験で定義されたレスポンスは、抗精神病薬増強療法と単独療法で同様であり(14試験、938例、RR:1.19、95%CI:0.99~1.42、p=0.061)、二重盲検、高クオリティ試験とも有意ではなかった(各:p=0.990)。・クロザピンと非クロザピン増強療法の研究で結果が再現された。・全原因/特定原因による中止、臨床全般印象度(CGI:clinical global impression)、陽性症状、総合的症状、うつ症状に関して差は認められなかった。・増強療法により陰性症状の改善が認められたが(18試験、931例、SMD:-0.38、95%CI:-0.63~-0.13、p<0.003)、それはアリピプラゾール増強療法の研究のみであった(8試験、532例、SMD:-0.41、95%CI:-0.79~-0.03、p=0.036)。・いくつかの副作用に関する違いとして、D2アンタゴニスト増強療法は、不眠の少なさと関連していたが(p=0.028)、プロラクチン値の上昇が多かった(p=0.015)。アリピプラゾール増強療法は、プロラクチン値の低下(p<0.001)、体重減少(p=0.030)と関連していた。 著者らは「これらのデータより、統合失調症に対する抗精神病薬増強療法の一般的な実践は、アリピプラゾール増強療法による陰性症状の改善を除き、有効性に関する二重盲検、高クオリティ試験のエビデンスが不足している」としている。関連医療ニュース 抗精神病薬のスイッチング、一括置換 vs.漸減漸増:慶應義塾大 各抗精神病薬、賦活系と鎮静系を評価 高プロラクチン血症、アリピプラゾール切り替えと追加はどちらが有効か

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高齢の閾値下うつ病、協働ケアで改善/JAMA

 高齢の閾値下うつ病患者の治療において、協働ケア(collaborative care)は通常ケアに比べ、うつ症状を短期的に改善する可能性があることが、英国・ヨーク大学Simon Gilbody氏らが行ったCASPER試験で示された。英国では、閾値下うつ病の1次治療における抗うつ薬の有効性のエビデンスはほとんどないため推奨されておらず、心理療法は高強度の治療形態として、より重度の病態の治療として留保されるのが一般的だという。協働ケアは、メタ解析で閾値を満たすうつ病への効果が示されている。JAMA誌2017年2月21日号掲載の報告。プライマリ・ケアでの有効性を通常ケアと比較 CASPER試験は、閾値下うつ病の高齢患者を対象に、プライマリ・ケアにおける協働ケアによる介入の、症状緩和および重症化の予防効果を評価するプラグマティックな多施設共同群間並行無作為化試験(英国国立衛生研究所[NIHR]医療技術評価プログラムの助成による)。 対象は、年齢65歳以上、標準化された簡易2項目質問法(brief 2-item case-finding tool)でうつ症状がみられ、精神疾患簡易構造化面接法(MINI ver. 5.0)でDSM-IV基準の閾値下うつ病と診断された患者であった。 被験者は、協働ケアを受ける群または通常のプライマリ・ケアを受ける群に無作為に割り付けられた。協働ケアは、気分症状に関連する機能障害の評価を行うケースマネジャーが調整した。患者は行動活性化プログラムに参加し、週1回の研修を平均6回受けた。ケースマネジャーは、必要に応じてプライマリ・ケア医や精神科医の指導を受けた。 主要評価項目は、フォローアップ期間4ヵ月時の患者報告によるうつ病の重症度とし、患者健康質問票(PHQ)-9スコア(0~27点、点が高いほどうつ病が重度)で評価した。 2011年5月24日~2014年11月14日に、英国の32のプライマリ・ケア施設に705例が登録された。協働ケア群に344例が、通常ケア群には361例が割り付けられた。評価項目は全般に優れるが、試験参加維持率が低い ベースラインの全体の平均年齢は77(SD 7.1)歳、女性が58%を占めた。平均PHQ-9スコアは、協働ケア群が7.8(SD 4.71)、通常ケア群は7.8(SD 4.64)だった。4ヵ月時までに協働ケア群の24%(82/344例)、通常ケア群の10%(37/361例)がフォローアップできなくなり、試験参加維持率は83%だった。主要評価項目の解析は、それぞれ274例、327例で行われた。 4ヵ月時の平均PHQ-9スコアは、協働ケア群が5.36点と、通常ケア群の6.67点に比べ有意に低かった(平均差:-1.31、95%信頼区間[CI]:-1.95~-0.67、p<0.001)。この差は、12ヵ月時にも保持されていた(5.93 vs.7.25点、平均差:-1.33、95%CI:-2.10~-0.55、p=0.001)。 4ヵ月時までにうつ病基準(PHQ-9スコア≧10点)を満たした患者(新規にうつ病と診断された患者)の割合は、協働ケア群が17.2%(45/262例)、通常ケア群は23.5%(76/324例)であり、有意な差は認めなかった(差:-6.3%、95%CI:-12.8~0.2、相対リスク[RR]:0.83、95%CI:0.61~1.27、p=0.25)が、12ヵ月時には協働ケア群が有意に低かった(15.7 vs.27.8%、差:-12.1%、95%CI:-19.1~-5.1、RR:0.65、95%CI:0.46~0.91、p=0.01)。 抗うつ薬の使用率は、4ヵ月時(9.9 vs.14.3%、RR:0.73、p=0.08)、12ヵ月時(9.8 vs.15.7%、RR:0.84、p=0.33)とも両群に差はなかった。また、健康関連QOLの評価では、SF-12の身体機能(4ヵ月時:p<0.001、12ヵ月時:p=0.02)および心の健康(4ヵ月時:p=0.009、12ヵ月時:p=0.007)が、いずれも協働ケア群で有意に良好であった。 不安症状の評価では、全般性不安障害評価尺度(GAD-7)が、4ヵ月時(p<0.001)、12ヵ月時(p=0.001)とも、協働ケア群で良好だった。また、12ヵ月間に、協働ケア群の5例(1.5%)、通常ケア群の18例(5.0%)が死亡し、有意な差がみられた(p=0.008)。 著者は、「協働ケアの効果は12ヵ月時も持続していたが、症例の減少率が高いため結果の信頼性には限界があり、長期的な効果の評価にはさらなる研究を要する」としている。

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うつ病や自殺と脂質レベルとの関連

 血清脂質レベルはうつ病や自殺念慮と関連しているといわれているが、これらの正確な関連はよくわかっていない。韓国・カトリック大学校のJihoon Oh氏らは、大規模サンプルにおける脂質レベルと自殺念慮を伴ううつ病との関連を調査した。Journal of affective disorders誌オンライン版2017年2月6日号の報告。 韓国の全国サンプルより、血清脂質レベルとPHQ-9(Patient Health Questionnaire 9)を用いて測定した軽度うつ病との関連を調査した。第6回韓国国民健康栄養調査(KNHNES VI)に参加した男性2,055人、女性2,894人のデータを使用した。高比重リポタンパクコレステロール(HDL-C)、低比重リポタンパクコレステロール(LDL-C)、トリグリセリド、総コレステロールの血清濃度で二分し、分析にはコンプレックスサンプルのロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・うつ病は、成人男性では高HDL-C(40mg/dL以上)、成人女性では高トリグリセリド(150mg/dL以上)と有意な関連が認められた。・中年(45~64歳)では、うつ病の増加(OR:2.20、95%CI:1.26~3.85)および自殺率の増加(OR:3.66、95%CI:1.41~9.51)は、高トリグリセリドと関連していた。・異常な脂質レベルの増加は、女性(OR:1.34、95%CI:1.12~1.60)および中年(OR:1.43、95%CI:1.12~1.82)のうつ病有病率の増加と関連していた。 著者らは「本研究は、断面研究デザインであるため、脂質レベルとうつ病の因果関係を調べることは困難であり、自殺率の評価にはさらなる検証が必要である」としながら、「大規模サンプルデータにおいて、高HDL-C、高トリグリセリドとうつ病との関連が示唆された。トリグリセリドは、若年および中年で自殺率との関連が高かったが、高齢者では異なった。さらなる評価により、民族間での血清脂質レベルと自殺を伴ううつ病との関係を詳細に説明できるであろう」としている。関連医療ニュース 血圧低下は認知症リスクを増加させるか、減少させるか 魚を食べるほどうつ病予防に効果的、は本当か 揚げ物はうつ病の天敵か:日医大

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うつ病から双極性障害へ移行しやすい患者の特徴

 うつ病患者の一部は、双極性障害発症の前段階である可能性があり、早期発見や予防が可能な場合がある。オーストラリア・メルボルン大学のA Ratheesh氏らは、うつ病患者のプロスペクティブ研究より、双極性障害へ移行する割合や特徴の予測を試みた。Acta psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2017年1月18日号の報告。 システマティックな検索ストラテジを用いて、適切な基準の下、うつ病および双極性障害の診断確認を行った研究を特定した(最短フォローアップ期間6ヵ月)。ベースライン時予測因子に対する双極性障害の発症率およびある時点での有病率、プールされたオッズ比(OR)を調べた。 主な結果は以下のとおり。・5,554件の出版物より、56件が抽出された。・うつ病の成人の約4分の1(22.5%)と若者における、双極性障害発症に関する平均フォローアップ期間は、12~18年であり、最初の5年間が双極性障害移行の最大リスクであった。・メタアナリシスでは、うつ病から双極性障害への移行予測因子として以下が確認された。 ●双極性障害の家族歴(OR:2.89、95%CI:2.01~4.14、n=7) ●うつ病発症年齢の早さ(g:-0.33、SE:0.05、n=6) ●精神症状の出現(OR:4.76、95%CI:1.79~12.66、n=5) 著者らは「とくに双極性障害より広範なアウトカムが考慮される場合には、特定された予測因子を有する患者を観察し、予防成果が得られる可能性がある」としている。関連医療ニュース 双極性障害に対する抗うつ薬使用の現状は うつ病の治療抵抗性と寛解を予測する因子とは うつ病と双極性障害を見分けるポイントは

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抗精神病薬の高用量投与は悪か

 統合失調症に対する抗精神病薬の高用量投与について、良好な症状改善との関連および有害事象や神経認知機能に対する影響を、ギリシャ・テッサロニキ・アリストテレス大学のKonstantinos N Fountoulakis氏らが、小規模パイロット自然主義横断研究により評価を行った。Progress in neuro-psychopharmacology & biological psychiatry誌オンライン版2017年1月28日号の報告。 対象は、統合失調症入院男性患者41例。PANSS、カルガリー抑うつ評価尺度、UKU副作用評価尺度、SAS(Simpson-Angus Scale)、認知機能評価バッテリーにより評価した。薬剤、投与量は、治療者の臨床判断に従って行った。 主な結果は以下のとおり。・臨床的変数および有害事象は、高用量群と推奨量群で差は認められなかった。・高用量投与は、抑うつ症状と相関していたが、神経認知機能の低下と相関は認められなかった。 著者らは「抗精神病薬の推奨用量を超えた投与は、難治性患者の良好なレスポンスを達成可能であり、抑うつ症状や軽度な集中力の欠如に有効であるが、ほかの神経認知機能や錐体外路系副作用はない。現在臨床医は、高用量投与が必要な場合には、第1世代抗精神病薬を好むが、新規抗精神病薬の副作用プロファイルを考慮すると、新規抗精神病薬の高用量投与に関する研究を進めることが重要である」としている。関連医療ニュース 抗精神病薬のスイッチング、一括置換 vs.漸減漸増:慶應義塾大 統合失調症患者への抗精神病薬高用量投与、自律神経系への影響は:横浜市大 統合失調症患者の再入院、ベンゾジアゼピンの影響を検証:東医大

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SSRI治療抵抗性うつ病に対する増強療法の比較

 選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)に反応しないうつ病患者におけるアリピプラゾールとbupropion増強療法の有効性および安全性を、韓国・嶺南大学のEun-Jin Cheon氏らが比較検討を行った。Journal of clinical psychopharmacology誌2017年4月号の報告。 アリピプラゾールとbupropion増強療法の初めての無作為化プロスペクティブオープンラベル直接比較研究。対象者は、4週間以上のSSRI治療後に中等度以上のうつ症状を有する患者103例。アリピプラゾール群(56例)またはbupropion群(47例)に無作為に割り付け、6週間治療を行った。その間、他の向精神薬の併用は行わなかった。モントゴメリー・アスベルグのうつ病評価尺度(MADRS)、ハミルトンうつ病評価尺度17項目版(HAM-D17)、Iowa Fatigue Scale(IFS)、薬原性錐体外路症状評価尺度(DIEPSS)、Psychotropic-Related Sexual Dysfunction Questionnaire scoresを、ベースラインおよび治療1、2、4、6週間後に評価した。 主な結果は以下のとおり。・全体として、両群ともに重篤な有害事象を起こすことなく、抑うつ症状を改善した。・MADRS、HAM-D17、IFS、レスポンス率に有意な差は認められなかった。・しかし、アリピプラゾール群は、bupropion群と比較し、6週間後の寛解率が有意に高かった(55.4% vs.34.0%、p=0.031)。・性的有害事象、錐体外路症状、アカシジアの発生率は、両群間で有意な差が認められなかった。 著者らは「SSRIで治療不十分なうつ病患者に対するアリピプラゾール増強療法の有効性と忍容性は、bupropion増強療法と同等以上であった。両増強療法共に、うつ病患者の性機能障害や倦怠感を軽減する可能性があり、効果的かつ安全な増強療法である。本知見を確認するためにも、二重盲検による研究が必要である」としている。■関連記事うつ病の治療抵抗性と寛解を予測する因子とはうつ病の薬物治療、死亡リスクの高い薬剤は統合失調症に対する短期治療、アリピプラゾール vs. リスペリドン

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うつ病の薬物治療、死亡リスクの高い薬剤は

 うつ病治療に用いられる薬剤に関連する相対的な罹患率および死亡率を測定し、重大なアウトカムに関連する特定の臨床的影響について、米国・カリフォルニア大学のJ Craig Nelson氏らが検討を行った。The American journal of psychiatry誌オンライン版2017年1月31日号の報告。 米国、プエルトリコ、ワシントンD.C.に拠点を置く中毒センターから報告を受けた全米中毒情報データシステム(National Poison Data System)より、2000~14年の12歳以上に対する1回の薬剤曝露情報を照会した。薬剤は、抗うつ薬、非定型抗精神病薬、抗痙攣薬、リチウム、およびうつ病治療に用いられるその他の薬剤であった。主要アウトカムは、罹患率(1,000曝露当たりの重大なアウトカム数)、死亡率(1万曝露当たりの死亡アウトカム数)とした。 主な結果は以下のとおり。・15年間で、調査した48薬剤の単一薬剤曝露は、96万2,222件であった。・重大なアウトカムは15年間で2.26倍に線形に増加した。・三環系抗うつ薬やMAO阻害薬による薬物療法は、高い罹患率および死亡率と関連していたが、他の新規薬剤のいくつかは、危険な可能性があった。・リチウム、クエチアピン、オランザピン、bupropion、カルバマゼピンは、高い罹患率指標と関連していた。・リチウム、ベンラファキシン、bupropion、クエチアピン、オランザピン、ziprasidone、バルプロ酸、カルバマゼピン、citalopramは、より高い死亡率指数と関連していた。 著者らは「うつ病治療に用いられる薬剤に対する過量服薬や意図しない曝露による重大なアウトカムは、過去15年間で劇的に上昇した。現在のデータでは、罹患および死亡リスクが、薬剤間で異なることを示唆している。この違いは、うつ病患者、とくに自殺リスクの高い患者における治療法を選択する際に重要となる」としている。関連医療ニュース うつ病の治療抵抗性と寛解を予測する因子とは うつ病への薬物療法 vs.精神療法 vs.併用療法 ADHD治療薬は将来のうつ病発症に影響するか

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統合失調症、服薬アドヒアランス研究の課題とは

 生涯に1,000人中およそ7人が罹患すると推定される統合失調症患者のうち、約50%が自殺を試みるといわれている。しかし研究において、統合失調症患者の服薬アドヒアランスを測定することは困難であり、現時点では標準的な手法が存在していない。統合失調症患者におけるノンアドヒアランスを評価するための信頼性の高い手法がなければ、アドヒアランス改善戦略の研究は進まない。米国・サウスカロライナ医科大学のCordellia E Bright氏は、統合失調症患者の服薬アドヒアランスを測定するための既存の機器について、妥当性、信頼性、エビデンスレベルを評価した。Archives of psychiatric nursing誌2017年2月号の報告。 本統合レビューでは、評価、測定、服薬アドヒアランス、統合失調症、薬物ノンアドヒアランス、妥当性、信頼性、対策の検索用語を使用した。CINAHL、PubMed、PsycINFO、Scopusのデータベースを検索した。対象期間は2000~16年とした。6件の研究より14の機器が抽出された。 主な結果は以下のとおり。・検討したすべての機器は、妥当性と信頼性が弱く、エビデンスレベルの低さと関連していた。・3種類の機器(うち2種類は極めて新しい)は、より良い妥当性、信頼性、感度を有していたが、広範かつ多様なサンプルで評価されていないため、一般的かは不明である。 著者らは「統合失調症患者の服薬アドヒアランスに関する研究を行うためには、さまざまな患者の特性に対し、適切な妥当性、信頼性、感度を有する機器の開発が必要である」としている。関連医療ニュース 錠剤埋め込み型服薬管理システムは、安全なのか 抗精神病薬の種類や剤形はアドヒアランスに影響するのか 双極性障害青年、ちゃんと薬を飲んでいるか

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抗精神病薬、賦活と鎮静の副作用を比較

 抗精神病薬の副作用である賦活や鎮静は、薬物治療の妨げとなる可能性がある。米国・ニューヨーク医科大学のLeslie Citrome氏は、第2世代抗精神病薬の賦活および鎮静の副作用について評価を行った。Journal of clinical psychopharmacology誌オンライン版2017年1月30日号の報告。 本研究では、統合失調症および大うつ病の補助的治療に適応を有する薬剤の製品ラベルで報告されている副作用の割合を調査し、第1選択薬として用いられる経口の第2世代抗精神病薬の賦活および鎮静特性を定量化し評価した。追加データソースとして、規定文書、調査概要、パブリッシュされた調査レポートを含んだ。副作用リスク増加とNNH(Number Needed to Harm:有害必要数)は、各薬剤対プラセボにて算出した。抗精神病薬の一部では賦活と鎮静の両方の副作用の可能性 抗精神病薬の賦活および鎮静の副作用について比較した主な結果は以下のとおり。・賦活や鎮静の副作用は、各抗精神病薬で違いが観察され、一部では賦活と鎮静の両方の副作用の可能性が示唆されている。・統合失調症に用いられる薬剤では、主な賦活系の抗精神病薬としてlurasidone(NNH:アカシジア11 vs.傾眠20)、cariprazine(NNH:アカシジア15 vs.傾眠65)が挙げられる。・リスペリドン(NNH:アカシジア15 vs.鎮静13)、アリピプラゾール(NNH:アカシジア31 vs.眠気34)の賦活と鎮静のバランスは同程度であった。・主な鎮静系の抗精神病薬は、オランザピン、クエチアピン、ziprasidone、asenapine、iloperidoneが挙げられる。・賦活、鎮静に作用しない抗精神病薬は、パリペリドン、brexpiprazoleであった。・うつ病に用いられる抗精神病薬については、全体的に統合失調症と同様な所見であった。・抽出されたデータは、製品ラベルに含まれる有害事象表に寄与する登録研究からの入手可能なものに限られていた。その後の比較研究では、異なる結果が示される可能性がある。

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うつ病の治療抵抗性と寛解を予測する因子とは

 うつ病に対する抗うつ薬使用は、汎用されている治療にもかかわらず、大うつ病患者の約3分の1には十分な効果を発揮しない。オーストリア・ウィーン大学のAlexander Kautzky氏らは、治療アウトカムのための臨床的、社会的、心理社会学的な48の予測因子による新たな洞察を、治療抵抗性の研究グループのデータと機械学習を利用し、検討を行った。The Journal of clinical psychiatry誌オンライン版2017年1月3日号の報告。 患者は、2000年1月より登録され、DSM-IVに従って診断した。治療抵抗性うつ病は、2種類以上の抗うつ薬による十分な投与量と期間で治療を行った後、ハミルトンうつ病評価尺度(17項目:HDRS)スコアが17以上とした。寛解は、HDRSスコア8未満とした。ランダムフォレストを用いたステップワイズ法を行い、治療アウトカムの分類に最適な数を見出した。重要値が生成された後、400例の患者サンプルで寛解と治療抵抗性の予測を実施した。予測のために、サンプル外の80例を使用し、レシーバの動作特性を計算した。 主な結果は以下のとおり。・治療アウトカムのもっとも有益な予測因子として、以下が挙げられる。 ●最初と最後のうつ病エピソードの間隔 ●最初のうつ病エピソードの年齢 ●最初の抗うつ薬治療に対するレスポンス ●重症度 ●自殺念慮 ●メランコリー ●生涯うつ病エピソード数 ●患者のアドミタンスタイプ ●教育 ●職業 ●糖尿病の併存 ●パニック症 ●甲状腺疾患・単一予測因子は、ランダム予測と異なる予測精度に達しなかったが、すべての予測変数を組み合わせることにより、治療抵抗性を0.737の精度で検出し、寛解を0.850の精度で検出できた。・その結果、治療抵抗性うつ病の65.5%、寛解の77.7%を正確に予測できた。関連医療ニュース 晩年期治療抵抗性うつ病の治療戦略に必要なものとは 治療抵抗性うつ病は本当に治療抵抗性なのか 難治性うつ病、抗うつ薬変更とアリピプラゾール追加、どちらが有用か

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65歳未満での抗うつ薬使用、認知症増加と関連

 抗うつ薬の使用がアルツハイマー病などの認知障害や認知症と関連しているかを、カナダ・サスカチュワン大学のJohn Moraros氏らは、検討を行った。Depression and anxiety誌オンライン版2016年12月28日号の報告。 Medline、PubMed、PsycINFO、Web of Science、Embase、CINAHL、the Cochrane Libraryのシステマティックな検索を行った。アブストラクトとタイトルより初期のスクリーニングを行い、関連する全文献をレビューし、その方法論的質について評価した。検索した文献より粗悪な効果推定値を除き、ランダム効果モデルを用いてプールされた推定値を算出した。 主な結果は以下のとおり。・最初にプールされた4,123件から5件の研究が抽出された。・抗うつ薬の使用は、認知障害や認知症の2倍増と関連していた(OR:2.17)。・年齢は、抗うつ薬使用と認知障害や認知症、アルツハイマー病と関連の可能性がある修飾因子であった。・65歳以上の平均年齢の参加者を含む研究では、抗うつ薬使用が認知障害のオッズの増加と関連し(OR:1.65)、65歳未満の参加者での研究では、さらに強い関連が示された(OR:3.25)。 著者らは「抗うつ薬の使用は、アルツハイマー病や認知症と関連しており、65歳未満での使用では特に顕著であった。この関連は、うつ病やその重症度により生じる可能性もある。しかし、認知症への抗うつ薬曝露を潜在的に結び付ける生物学的メカニズムが説明されているため、抗うつ薬の病因学的影響の可能性がある。この関連性の確認とともに、根底にある病因経路の明確化に緊急に注目する必要がある」としている。関連医療ニュース ベンゾジアゼピンと認知症リスク~メタ解析 米国の認知症有病率が低下、その要因は 抑うつ症状は認知症の予測因子となりうるのか

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精神的苦痛は発がんリスクを増大/BMJ

 精神的苦痛(うつ、不安の症状)が重くなるほど、大腸がんや前立腺がんのリスクが高まり、精神的苦痛は発がんの予測因子となる可能性があることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのG David Batty氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2017年1月25日号に掲載された。精神的苦痛とがんとの関連については、(1)精神的苦痛に繰り返し曝されるとナチュラルキラー細胞の機能が喪失して腫瘍細胞の増殖を招く、(2)うつ症状は視床下部-下垂体-副腎系の異常をもたらし、とくにホルモン関連がんの防御過程に不良な影響を及ぼす、(3)苦痛の症状は、喫煙、運動不足、食事の乱れ、肥満などの生活様式関連のリスク因子への好ましくない影響を介して、間接的に発がんの可能性を高めるなどの機序が提唱されている。英国の16研究の参加者16万人以上を解析 研究グループは、部位別のがん死の予測因子としての、精神的苦痛(うつ、不安の症状)の可能性を検証するために、1994~2008年に開始された16件の前向きコホート研究に参加した患者の個々のデータの統合解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。 イングランドの13件およびスコットランドの3件の健康調査から、英国の典型的なサンプルを収集した。試験登録時に16歳以上で、がんの診断歴がなく、参加者自身の報告による精神的苦痛スコア(精神健康調査票[GHQ-12])の記録がある16万3,363例が解析の対象となった。 精神的苦痛はGHQ-12スコアにより、無症状(0点)、潜在性症状(1~3点)、有症状(4~6点)、重度症状(7~12点)に分類した。16種のがん、その他のがん、喫煙関連がん、喫煙非関連がんに分け、精神的苦痛との関連を解析した。苦痛が重度の群はがんのリスクが32%増加 ベースラインの平均年齢は46.3(SD 18.3)歳、女性が54.9%を占めた。精神的苦痛スコアの平均値は1.5(SD 2.6)点、平均BMIは26.6(SD 4.8)、義務教育修了年齢以降の学歴ありは67.9%、喫煙者は26.3%、週1回以上の飲酒は62.0%だった。 16件の研究の死亡調査の平均期間は9.5年で、この間に1万6,267例が死亡し、このうち4,353例ががんで死亡した。 年齢、性別、教育、社会経済的状況、BMI、喫煙、アルコール摂取で補正し、逆因果関係を左側打ち切り(left censoring)で、欠損データを代入法で調整した解析を行ったところ、精神的苦痛が軽度の群(GHQ-12スコア:0~6点)に比べ、苦痛が重度の群(同スコア:7~12点)は、すべての部位のがんを合わせた死亡率が有意に高かった(多変量補正ハザード比[HR]:1.32、95%信頼区間[CI]:1.18~1.48)。 また、精神的苦痛が重度の群は、喫煙非関連がん(HR:1.45、95%CI:1.23~1.71)、大腸がん(1.84、1.21~2.78)、前立腺がん(2.42、1.29~4.54)、膵がん(2.76、1.47~5.19)、食道がん(2.59、1.34~5.00)、白血病(3.86、1.42~10.5)のリスクが有意に高かった。大腸がんと前立腺がんのリスクは、精神的苦痛スコアが上がるにしたがって有意に増加した(いずれも、傾向検定のp<0.001)。 著者は、「精神的苦痛が、特定のがん発症の予測能を有する可能性を示唆するエビデンスが得られた」とまとめ、「個々の精神的苦痛とがんの因果関係がどの程度に及ぶかを解明するために、さらなる検討が求められる」と指摘している。

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抗精神病薬のスイッチング、一括置換 vs.漸減漸増:慶應義塾大

 抗精神病薬の切り替えは、臨床現場では日常的に行われているが、一括置換法と漸減漸増法のどちらが好ましいスイッチング法であるかは不明である。一括置換法は、リバウンドや離脱症状の出現や増悪と関連しているのに対し、漸減漸増法はクロスオーバーアプローチで用いられる場合、相加的または相乗的な副作用リスクをきたすと考えられる。慶應義塾大学(カナダ・オタワ大学)の竹内 啓善氏らは、抗精神病薬のスイッチング戦略について検討を行った。Schizophrenia bulletin誌オンライン版2017年1月1日号の報告。 MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trialsをシステマティックに検索した。統合失調症および、または統合失調感情障害患者の抗精神病薬スイッチングにおける一括置換法と漸減漸増法を調査した無作為化比較試験を抽出した。臨床結果に関するデータは、試験中止、錐体外路症状、治療中に出現した有害事象を含むデータが抽出された。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には、適格基準を満たした9研究1,416例が含まれた。・両スイッチング法で、臨床的に有意な差は認められなかった(all Ps>0.05)。・感受性分析では、アリピプラゾールへのスイッチングが行われた研究または抗精神病薬の一括置換法が行われた研究では、結果が変わらなかったが、オランザピンまたはziprasidoneへのスイッチングでは、有意な差が認められた。 著者らは「これらの知見より、抗精神病薬の一括置換法と漸減漸増法は実行可能な治療選択肢であることが示唆された。臨床医は、個々の患者ニーズに応じて、抗精神病薬のスイッチング戦略を選択することが推奨される。抗精神病薬の多剤併用を是正するためのスイッチングは、一括置換法が有効である可能性がある」としている。関連医療ニュース 抗精神病薬の変更は何週目が適切か 抗精神病薬の切り替えエビデンス、どう評価すべきか 統合失調症のLAI切替、症状はどの程度改善するのか

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うつ病、男女間で異なる特徴とは

 いくつかの研究によると、男女間でうつ病に関連した異なる症状が報告されているが、この関連を分析したシステマティックレビューやメタアナリシスはパブリッシュされていない。オーストラリア・Illawarra Health & Medical Research InstituteのAnna Cavanagh氏らは、うつ病に関連する症状の性差のエビデンスをレビューした。Harvard review of psychiatry誌2017年1・2月号の報告。 PubMed、Cochrane、PsycINFOのデータベースとリファレンスリストを調べた。32研究が基準を満たした。単極性うつ病の臨床サンプルおよびコミュニティサンプル10万8,260人を含んだ。32研究のすべてにおいて質を評価し、出版バイアスについて検討した。性差の影響を評価するため、32研究より抽出された26症状についてメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・本研究では、少数で重要な性別といくつかの症状との関連が示された。・うつ病男性は、女性と比較し、アルコールや薬物乱用(Hedges's g:0.26、95%CI:0.11~0.42)、リスクテイキング、脆弱な衝動性コントロール(g:0.58、95%CI:0.47~0.69)と関連していた。・うつ病女性は、抑うつ気分のようなうつ病の診断基準に含まれる症状(g:-0.20、95%CI:-0.33~-0.08)、摂食障害や体重変化(g:-0.20、95%CI:-0.28~-0.11)、睡眠障害(g:-0.11、95%CI:-0.19~-0.03)と関連していた。 著者らは「本結果は、物質使用と気分障害の有病率における性差に関する既存の研究結果と一致する。男性のうつ病を評価する際には、物質乱用、リスクテイキング、脆弱な衝動性コントロールをスクリーニングすることの有用性が強調される。うつ病と併存症状に関する性差を明らかにするためにも、今後の研究が必要とされる」としている。関連医療ニュース 統合失調症、男と女で妄想内容は異なる 女はビタミンB6、男はビタミンB12でうつリスク低下か 双極性障害、男女間で肥満割合に違いあり

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ハンチントン病〔HD:Huntington’s disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義舞踏病は中世ヨーロッパにおいて知られ、19世紀前半いくつかの遺伝性の舞踏病についての報告があるが、1872年のGeorge Huntingtonの報告を基に、疾病単位として確立され、ハンチントン舞踏病といわれるようになった。舞踏病は疾患の一面を示しているにすぎないので、現在は「ハンチントン病」という。ハンチンチン遺伝子(HTT)のCAGリピートの異常伸長による常染色体優性遺伝形式を取る、遺伝性の中枢神経変性疾患で、舞踏運動などの運動障害、認知機能障害、精神障害を呈し、進行性である。■ 疫学日本、東アジアでは比較的まれであるが、北ヨーロッパ(広義)やその地域からの移民では頻度が高い。わが国における有病率は人口10万人対0.6人程度、ヨーロッパ、北米およびオーストラリアからの報告のメタ解析では、人口10万人対5.7人と推計されている。■ 遺伝・病因常染色体優性遺伝を呈し、ほとんどの患者は変異アレルと正常アレルとのヘテロ接合体であるが、きわめてまれに変異アレルのホモ接合体(または複合へテロ接合体)例もある。両者は臨床的(表現型)には差はない。孤発例については、家族歴が不明のためか他疾患と考えられ、新生突然変異はほとんどないと考えられていたが、従来考えられていたよりは新生突然変異は少なくない。病因となるハンチンチン遺伝子(HTT)エクソン1のCAGリピートは、不安定で伸長しやすく、患者ではCAGリピートの繰り返し回数は36回以上である。ただし、36回から39回は不完全浸透で、発症するとは限らない。40回以上では、年齢依存的に発症率が異なるが、最終的には80歳代までにはほぼ100%発症する(完全浸透)。CAGリピートに関連して、2つの特徴が挙げられる。第1にCAGリピートの繰り返し回数が多いほど、発症年齢は若く、CAGリピートと発症年齢との間には負の相関が認められる。第2に親から子に遺伝する際に、繰り返し回数は多くなりやすく、とくに男親から遺伝する場合にその傾向は顕著である。小児発症例の男親が、後から発症することがある。すなわち、世代を経るごとに発症年齢が若年化し、重症化する遺伝学的表現促進現象が認められる。■ 病態・病理他のポリグルタミン病と共通する、異常伸長したポリグルタミン鎖を持つハンチンチンタンパク質による獲得毒性による機序と、ハンチンチンタンパク質の生理的な機能・局在などに関連した異常によるのが、大局的な分子病態と考えられる。ハンチンチンの生理的機能は十分には解明されていないが、ノックアウトマウスではホモ個体は致死的である。分子病態の全体像は完全には明らかにはされていないが、これまで、(1) 転写調節の異常、(2) アンチセンスRNAの関与、(3) タンパク質凝集、(4) ユビキチン-プロテアソーム系の異常、(5) オートファジーの異常、(6) アポトーシスの異常、(7) 軸索輸送の異常、(8) 成長因子の異常、(9) 繊毛形成障害、(10) ミトコンドリア機能障害、(11) 酸化ストレス、(12) 興奮性毒性など、さまざまな異常、病態への関与が報告されている。これらですべてかどうかは必ずしも明らかではないが、報告の多くはそれぞれ病態の一面を反映しているものと推察される。病理学的には、神経細胞の変性脱落を生じるが、その変化は線条体に顕著で、中型有棘神経細胞の脱落が特徴的である。進行に伴い、線条体は萎縮する。病理変化は、尾側から吻側へ、背側から腹側へ、内側から外側へ進行する。病理学的変化は、大脳皮質にも及び大脳全体が萎縮する。ポリグルタミン鎖を含む凝集体が核内封入体として認められる。■ 症状発症は小児期~80歳代まで幅広く、平均は40歳代で、30~60歳代に発症することが多い。20歳以下の発症は若年型といわれる。症状としては、運動症状、精神症状、認知症に大別される。運動症状は、舞踏運動が特徴的である。非典型的な不随意運動を認めることもある。また、小児などでは、筋強剛(固縮)などのパーキンソン症状を呈する(Westphal型)。精神症状としては、うつ、自殺企図を認め、また統合失調症との鑑別を要することもある。認知症としては、皮質下認知症を呈する。■ 予後緩徐進行性の経過で、臥床状態となり15~30年で合併症にて死亡する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 診断のポイント診断に当たっては、家族歴が重要であり、確定診断されている家族歴のある場合には、診断は比較的容易である。ただし、家族歴がないからといって診断は除外できない。臨床症状、一般的検査で、特異的なものはない。■ 画像診断画像診断においては、CTおよびMRIで、尾状核ないし線条体の萎縮、脳室の拡大が疾患の進行に伴って認められ、進行例では、大脳皮質の萎縮も認める。尾状核の萎縮は水平断より冠状断(前額断)画像がみやすい。発症前ないし発症極初期においては、形態画像の異常は捉えにくいが、SPECTやPETによる機能画像検査において、尾状核の機能低下が捉えられる。■ 遺伝子診断遺伝子診断は、ハンチンチン遺伝子(HTT)のCAGリピートの異常伸長の有無による。遺伝子診断にて、確定診断および除外診断が可能である。■ 鑑別診断遺伝性、非遺伝性の舞踏運動などの不随意運動を呈する疾患、精神科疾患などが鑑別疾患として挙げられる。■ 臨床評価スケールUHDRS (Unified Huntington’s Disease Rating Scale)BOSH (The Behavior Observation Scale Huntington)3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 対症療法発症予防、進行抑制などの根本的治療法は実現していない。症状に対する対症療法が主である。運動症状、舞踏運動に対して、テトラペナジン(商品名: コレアジン)が有効で、保険収載されている。精神症状に対しては、当該症状に対する抗精神病薬(向精神薬)、抗うつ薬などが用いられる。認知症に対する有効な治療薬は知られていない。■ 介護、支援制度など1)指定難病「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」の対象で、医療費助成対象疾病である。2)介護保険「介護保険法」の被保険者の対象は65歳以上で、第2号被保険者に該当する疾患には含まれない。認知症がある場合は、初老期における認知症として40~64歳でも対象となる。3)身体障害「身体障害者福祉法」に基づいて、運動障害の程度に応じて、肢体不自由による身体障害者手帳の交付の対象となる。4)精神障害者精神障害を来している場合には、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」による精神障害保健福祉手帳の交付の対象となりうる。■ 遺伝カウンセリング遺伝性疾患であり、婚姻、妊娠、発症前診断、出生前診断など、さまざまな臨床遺伝医学的課題、血縁者・家族に関連した問題がある。専門的には、臨床遺伝専門医などに紹介することが勧められる。4 今後の展望1993年に、原因遺伝子とその突然変異が報告され、以降、根本的に有効な治療法を目指したさまざまなレベルの研究が欧米を中心に行われている。臨床治験の行われた薬物もあるが、現在までのところ、発症の予防ないし遅延や進行の抑制を可能とする治療法は実現していない。研究の進展によって、これらが現実となることが望まれる。5 主たる診療科主たる診療科:神経内科(および小児神経科)精神症状の顕著な場合:精神科発症前診断や遺伝カウンセリングなど:遺伝診療科や遺伝子診療部門6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター ハンチントン病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Online Mendelian Inheritance in Man (OMIM) Huntington disease (英語)(医療従事者向けのまとまった情報)GeneReviews Huntington chorea/ハンチントン病原文(英語)日本語版 (医療従事者向けのまとまった情報)The Centre for Molecular Medicine and Therapeutics ハンチントン病の有病率(英語)(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報日本ハンチントン病ネットワーク(JHDN)(患者とその家族向けの情報)1)Huntington G. Medical and Surgical Report. 1872;26:317-321.2)The Huntington’s Disease Collaborative Research Group. Cell. 1993;72:971-983.3)William J. Weiner MD, Eduardo Tolosa MD, editor. Handbook of Clinical Neurology Volume 100. Hyperkinetic Movement Disorders.Elsevier(NE);2011.4)Bates G, Tabrizi S, & Jones L, editor. Huntington’s disease.4th ed. Oxford University Press(UK);2014.5)金澤一郎. ハンチントン病を追って 臨床から遺伝子治療まで. 科学技術振興機構;2006.6)後藤 順. 神経症候群(第2版)II.日本臨牀; 2014. p.163-168.7)Pringsheim T, et al. Mov Disord. 2012;27:1083-1091.8)Huntington Study Group. Mov Disord. 1996;11:136-142.9)Timman R, et al. Cogn Behav Neurol. 2005;18:215-222.公開履歴初回2017年02月07日

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