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双極性障害患者の加齢に伴う白質の変化

 双極性障害(BD)では、加齢に伴う白質の変化が報告されている。しかし、この加齢に伴う変化が、疾患特有のものであるかはよくわかっていない。広島大学の増田 慶一氏らは、うつ病およびBD患者と健康対照者(HC)の加齢に伴う白質の変化を年齢別に調査し、年齢を制御することにより疾患特有の影響を評価した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2020年10月22日号の報告。 対象は、HC群96例(20~77歳)、うつ病群101例(25~78歳)、BD群58例(22~76歳)。54の白質路における拡散テンソル画像から得た異方性(fractional anisotropy:FA)を比較するため、年齢の線形効果および2次効果で制御した後、一般線形モデルを用いた。年齢に伴う影響および各群の相互の影響は、モデルにより評価した。 主な結果は以下のとおり。・加齢に伴う白質の有意な変化は、年齢の線形効果および2次効果で制御した後では、左側脳弓柱および脳弓体で認められ、年齢の2次効果で制御した後では、左側脳梁体で認められた。・BD群は、ほかの群と比較し、FAが有意に低かった。・各群における年齢による影響に違いは認められなかった。 著者らは「年齢で制御した後、BD群では有意なFAの低下が認められた。BDの白質異常は、年齢とともに進行するわけではなく、若年層で発生する可能性があることが示唆された」としている。

982.

糖尿病患者は自殺死のリスクが○倍?

 糖尿病は、正常血糖と比較して自殺死のリスクが高かったことが、国立国際医療研究センターの福永 亜美氏らによって報告された。Journal of Psychosomatic Research誌2020年11月号に掲載。 本研究は、日本の労働人口における糖尿病および境界型糖尿病と自殺の関連を調査する目的で、労働衛生研究のデータを使用し実施された。 8年間の追跡調査中に、自殺前の過去3年間の健康診断で、空腹時血糖値またはHbA1cに関する情報があった56例の自殺死の症例を特定。年齢、性別、職場が一致する5つのコントロールをランダムに選択。分析には最新の健康診断データを使用した。米国糖尿病学会の基準に基づき糖尿病の状態を定義し、条件付きロジスティック回帰モデルを使用して関連を調査した。 正常血糖と比較した糖尿病と境界型糖尿病における自殺死の関連性については以下のとおりである。・正常血糖と比較した自殺死は、境界型糖尿病で0.67倍、糖尿病で3.53倍であった。・糖尿病の状態を空腹時血糖値またはHbA1cで定義した場合でも、自殺の関連性は同様の結果であった。

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禁煙とうつ病~メタ解析

 禁煙は健康、とくにメンタルヘルスに好影響を及ぼす可能性がある。イラン・Baqiyatallah University of Medical SciencesのSohrab Amiri氏は、禁煙者におけるうつ病有病率を明らかにするため、検討を行った。Journal of Addictive Diseases誌オンライン版2020年10月21日号の報告。 PRISMAガイドラインを用いて、メタ解析を実施した。2020年7月までに英語で報告された研究を、PubMed、Scopusより検索した。うつ病の有病率に関連する結果を算出し、プールした。 主な結果は以下のとおり。・研究デザインの異なる49研究が抽出された。・禁煙者のうつ病有病率は18%(信頼区間[CI]:14~22%)であった。・うつ病の有病率が最も高かったのは、アジアと欧州、次いで米国であった。・禁煙者の大うつ病有病率は15%、うつ症状の有症率は17%であった。・禁煙者は、現在の喫煙者と比較し、うつ病のオッズ比が低かった(オッズ比:0.63、CI:0.54~0.75、I2=83.9%)。・出版バイアスは、ほとんど認められなかった。 著者らは「禁煙者のうつ病有病率は、非喫煙者や現在の喫煙者とは異なっていた。健康政策および禁煙を推奨するという観点から、メンタルヘルスへの好影響を考慮する必要がある」としている。

984.

双極性障害の自殺リスクと関連因子

 双極性障害(BD)の重要な特徴の1つとして、非精神医学的合併症や自殺による過剰な死亡リスクとの関連が挙げられる。米国・ハーバード大学医学大学院のLeonardo Tondo氏らは、BDにおける自殺の状況をレビューし、自殺リスクを予防できる可能性を検討した。Bipolar Disorders誌オンライン版2020年10月9日号の報告。 BDにおける自殺に関連する最近の研究報告についてセミシステマティックレビューを実施した。 主な結果は以下のとおり。・BDの自殺リスクは、ほかの多くの精神疾患よりも高くなる。・成人、青年の一般集団およびBD患者の自殺率は、それぞれ以下のとおりであった。 ●成人一般集団:約11/10万人年 ●青年一般集団:約4/10万人年 ●成人BD患者:200/10万人年以上 ●青年BD患者:100/10万人年・BD患者の自殺企図の割合は、一般集団と比較し、成人で20倍以上、青年で50倍以上であった。・BD患者の自殺の主なリスク因子は以下のとおりであった。 ●自殺行為歴 ●うつ病 ●興奮と不安の混合状態 ●急速な気分変化 ●衝動性 ●薬物乱用の併発・BDの自殺予防に対する治療法は、不十分であった。・いくつかの有用な治療法が発見されているが、リチウム治療を支持するエビデンスは、ほかの治療法よりも有望であった。 著者らは「BD患者のケアを行ううえで、自殺は重要な臨床的課題である。BD患者の自殺リスクと保護因子を理解し、適切なフォローアップを行うことで、自殺リスクの抑制につながると考えられる。とくに、BD患者の自殺予防を目的とし、適切に設計された科学的エビデンスの必要性が示唆された」としている。

985.

統合失調症の日本人高齢者に対するブレクスピプラゾールの長期有効性、安全性

 東京女子医科大学の稲田 健氏らは、統合失調症の日本人高齢者に対するブレクスピプラゾールの長期的な有効性、安全性、忍容性を評価するため、検討を行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2020年10月6日号の報告。 4週間の切り替え期間と52週間の非盲検期間の2つのフェーズで構成された56週間にわたるブレクスピプラゾール長期試験の事後分析を行った。陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアの平均変化量、治療反応率、治療中に発現した有害事象(TEAE)の数と発生率、その他の安全性パラメータの分析には、年齢層ベース(65歳以上の高齢者と65歳未満の非高齢者)の記述統計学を用いた。 主な結果は以下のとおり。・208例中33例が高齢者であった。・高齢者の治療継続率は54.5%であり、56週目のブレクスピプラゾールの1日投与量および治療期間は、非高齢者と同様であった。・ベースラインから56週目までのPANSS合計スコアの平均変化量は、高齢者で-13.8であり、非盲検期間を通じて改善効果は維持された。・非高齢者のPANSS合計スコアの平均変化量は-9.0であり、高齢者と同等であった。・TEAEの発生率は、高齢者で97.0%、非高齢者で82.3%であった。・高齢者におけるTEAEの重症度は、ほとんどが軽度(75.8%)または中等度(18.2%)であり、治療中止に関連するTEAEの発生率は、非高齢者(13.1%)よりも高齢者(9.1%)のほうが低かった。・高齢者における主な有害事象は、鼻咽頭炎(30.3%)、統合失調症症状の悪化(27.3%)であった。・安全性プロファイルは、高齢者と非高齢者で類似していた。 著者らは「ブレクスピプラゾールは、日本人高齢者の統合失調症治療に対し安全かつ効果的であることが示唆された」としている。

986.

双極性うつ病に対する補助的ブライトライト光療法~メタ解析

 双極性障害の効果的な補助療法の1つとして、ブライトライト光療法(BLT)が報告されている。これまでのメタ解析では、光療法による補助療法が、双極性うつ病の重症度を有意に改善させることが示唆されている。しかし、メタ解析に含まれた多くの研究は、ケースコントロール研究であり、不眠症治療と組み合わせたBLTに焦点が当てられていた。大分大学の平川 博文氏らは、双極性うつ病に対する補助的BLTに関するランダム化比較試験(RCT)を抽出し、メタ解析を実施した。Brain and Behavior誌オンライン版2020年10月9日号の報告。 EMBASE、MEDLINE、Scopus、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature、Clinicaltrials.govの電子データベースより、2019年9月19日までに英語で発表された、薬物治療中の双極性うつ病患者に対する補助的BLTの有効性を検討したRCTを検索した。文献スクリーニング、データ抽出、方法論的質の評価は、独立した2人の研究者により実施された。主要アウトカムは、治療反応率と寛解率とした。メタ解析には、Review Manager 5.3ソフトウェアを用いた。 主な結果は以下のとおり。・4研究より、双極性うつ病患者190例(BLT群:94例、対照群:96例)を評価し、光療法の効果を検証した。・メタ解析では、双極性障害の治療反応率に対する光療法の有意な効果が確認された(リスク比:1.78、95%CI:1.24~2.56、p=0.002、I2=17%)。・しかし、寛解率に対する有意な効果は確認されなかった(リスク比:2.03、95%CI:0.48~8.59、p=0.34、I2=67%)。・重篤な悪影響は報告されていなかった。・躁転率は、BLT群で1.1%、対照群で1.2%であった。 著者らは「BLTは、双極性うつ病患者のうつ症状を軽減するうえで、効果的な治療法である」としている。

987.

双極性障害とうつ病患者の白質異常と認知機能との関係

 近年、うつ病患者と双極性障害患者の白質線維の整合性(white matter integrity)を比較した拡散テンソル画像(DTI)の研究数が増加している。しかし、両疾患の白質異常の違いを調査した研究はあまりない。広島大学の増田 慶一氏らは、白質異常と認知機能との関係を調査するため、全脳トラクトグラフィーを用いて、健常対照者と寛解期うつ病患者および双極性障害患者の白質線維の整合性を包括的に評価した。Brain and Behavior誌オンライン版2020年10月3日号の報告。 健常対照者30例、うつ病患者30例、双極性障害患者30例を対象に、神経認知機能検査とDTIを実施した。3群間の白質線維の整合性と認知機能との関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害患者は、うつ病患者や健常対照者と比較し、脳梁体部の異方性(fractional anisotropy:FA)が弱く、持続的注意力およびセットシフティングのスコアが低かった。・脳梁の左体部のFAは、双極性障害患者の持続的注意力と関連が認められた。 著者らは「双極性障害患者の脳梁における白質線維の整合性の有意な低下は、うつ病患者と比較し、持続的注意力低下との関連が認められた」としている。

988.

COVID-19流行下の仕事再開期におけるメンタルヘルス問題の調査

 中国・大連医科大学のYuan Zhang氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下の仕事再開期における不安症、うつ病、不眠症に影響を及ぼす因子について調査を行った。Journal of Psychosomatic Research誌2020年11月号の報告。 中国・山東省で2020年3月2日~8日に、割当抽出法(quota sampling)と機縁法(snowball sampling)を組み合わせた多施設横断調査を実施した。不安症、うつ病、不眠症の評価には、それぞれ全般性不安障害尺度(GAD-7)、こころとからだの質問票(PHQ-9)、不眠症重症度指数(ISI)を用いた。影響を及ぼす因子を調査するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・3施設より4,000通のアンケートを送付し、有効な回答3,237件を収集した。・各評価尺度に基づく不安症、うつ病、不眠症の有病率は19.5~21.7%であった。そのうち、2.9~5.6%は重症であった。・複数の症状を合併していた患者は、不安症とうつ病の合併2.4%、不安症と不眠症の合併4.8%、うつ病と不眠症の合併4.5%であった。・不安症と不眠症のスコアおよびうつ病と不眠症のスコアには、正の相関が認められた。・不安症、うつ病、不眠症のリスク因子は、50~64歳、30日以上に1回のみの屋外活動であった。・COVID-19流行期に、心理的介入を受けていた人は17.4%、個別の介入を受けていた人は5.2%であった。 著者らは「COVID-19流行下の仕事再開期には、メンタルヘルス問題の発生率が通常時よりも増加していた。現行の心理的介入は不十分であり、早期に有効な心理的介入を実施すべきである」としている。

989.

統合失調症患者の自動車運転関連の認知機能に対する抗精神病薬の影響

 韓国・漢陽大学校病院のSeokmin Noh氏らは、統合失調症患者において、自動車運転に関連する認知機能に、使用している抗精神病薬の種類によって違いがあるかについて検討を行った。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2020年8月29日号の報告。 対象は、抗精神病薬の単剤処方を受けていた統合失調症成人患者102例。神経認知機能の評価には、運転に関する認知機能評価(CPAD)、運転能力のための視覚、注意、ワーキングメモリ、反応時間、抑制制御などのコンピュータ化した評価バッテリーを用いた。 主な結果は以下のとおり。・使用されていた抗精神病薬の内訳は、ハロペリドール15例、リスペリドン28例、オランザピン14例、アリピプラゾール28例、パリペリドン17例であった。・102例中64例(63%)は、運転能力があると見なされた。・CPADの合格率は以下のとおりであり、ハロペリドール群とアリピプラゾール群(p=0.005)、ハロペリドール群とパリペリドン群(p=0.001)に有意な差が認められた。 ●ハロペリドール群:33% ●リスペリドン群:57% ●オランザピン群:57% ●アリピプラゾール群:75% ●パリペリドン群:82%・深視力(正解数)、分割的注意、数唱テスト、Trail Making TestパターンBのスコアは、ハロペリドール群とリスペリドン群と比較し、アリピプラゾール群とパリペリドン群において有意に良好であった。 著者らは「アリピプラゾールまたはパリペリドンによる抗精神病薬単剤療法で治療を行っている統合失調症患者の運転関連認知機能は、ハロペリドールまたはリスペリドンの単剤療法で治療している患者と比較し、良好であることが示唆された」としている。

990.

ペットを飼うことが認知症患者に及ぼす影響

 ペットを飼うことについては、多くの集団において病気に対するポジティブな影響が報告されているが、認知症患者における身体的および心理的ウェルビーイングとの関連はよくわかっていない。英国・マンチェスター・メトロポリタン大学のCarol Opdebeeck氏らは、ペットを飼うことが認知症患者に及ぼす影響について調査を行った。Journal of Applied Gerontology誌オンライン版2020年10月7日号の報告。認知症に対するポジティブな影響はペットを飼うことより世話をしているかと関連 本研究には、Improving the experience of Dementia and Enhancing Active Life(IDEAL)研究より、軽度~中等度の認知症在宅患者1,542例のベースラインデータを使用した。ペットの所有およびその世話と、自己報告による歩行、孤独感、うつ病、QOLとの関連を調査するため、回帰分析を用いた。 ペットを飼うことが認知症患者に及ぼす影響について調査した主な結果は以下のとおり。・共変量で調整後、ペットを飼うことは、前の週に3時間以上歩行した経験と関連が認められた。・犬を飼っていて、その世話をしている患者は、犬を飼っていない患者よりも、孤独を感じることが少なかった。・ペットを飼っているが、その世話をしていない患者は、ペットを飼っていない患者よりも、うつ病の増加およびQOL低下との関連が認められた。 著者らは「認知症患者に対するポジティブな影響は、ペットの世話をしているかどうかと関連していた」としている。

991.

女性のうつ病と肥満、食糧不安との関連

 栄養精神医学は、新たな研究分野として注目されており、脳機能や精神疾患に対する栄養摂取および肥満の影響について調査が行われている。これまでの研究では、女性の肥満や栄養摂取とうつ病との関連が示唆されている。しかし、この関連に食糧不安がどのように影響しているかは、よくわかっていない。米国・イーストテネシー州立大学のManik Ahuja氏らは、女性のうつ病と肥満や食糧不安との関連について調査を行った。Archives of Public Health誌2020年9月17日号の報告。 2001~03年の精神疾患疫学共同調査(Collaborative Psychiatric Epidemiology Surveys:CPES)のデータを用いて検討を行った。肥満、性別、食糧不安と過去1年間のうつ病との関連を調査するため、ロジスティック回帰モデルを用いた。次に、性別で層別化した後、肥満と過去1年間のうつ病との関連に対する食糧不安の影響について調査した。 主な結果は以下のとおり。・女性における肥満は、過去1年間のうつ病リスク増加と関連していた(AOR:1.35、95%CI:1.17~1.55)。一方、男性ではこの関連は認められなかった(AOR:1.07、95%CI:0.86~1.32)。・肥満と食糧不安の両方を報告した女性(AOR:3.16、95%CI:2.36~4.21)では、食糧不安を報告しなかった女性(AOR:1.08、95%CI:1.02~1.38)よりも、過去1年間のうつ病エピソードのオッズ比が高かった。 著者らは「メンタルヘルスの問題を抱える人が増加している現在、女性のメンタルヘルスに影響を及ぼす可能性のある貧しい食生活、食糧不安、肥満について、注意深くモニタリングする必要がある。臨床医および治療提供者が評価を行う際には、患者の食事と栄養価の高い食品摂取を考慮することが推奨される」としている。

992.

米国におけるCOVID-19パンデミック前後のうつ病有病率の変化

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)およびこれに関連するソーシャルディスタンスやロックダウンといった制限は、実質的かつ永続的なメンタルヘルスへの影響が懸念される。アイルランド・メイノース大学のMichael Daly氏らは、米国におけるCOVID-19パンデミック前後のうつ病有病率の変化について、調査を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年9月15日号の報告。 米国成人を対象とした2つの代表的な調査において、うつ病を検出するために、Patient Health Questionnaire-2(PHQ-2)を用いた簡易スクリーニングを実施した。パンデミック前のうつ病レベルは、2017~18年の全国健康栄養調査(NHANES)の成人サンプル5,075例より算出した。米国の代表的なサンプルであるUnderstanding America Studyより、2020年3月(6,819例)および4月(5,428例)のうつ病レベルを評価した。 主な結果は以下のとおり。・米国成人のうつ病有病率は、以下のとおりであった。 ●2017~18年:8.7%、95%CI:7.6~9.8 ●2020年3月:10.6%、95%CI:9.6~11.6 ●2020年4月:14.4%、95%CI:13.1~15.7・65歳以上および黒人を除く調査したすべてのサブグループにおいて、うつ病レベルの統計学的に有意な増加が観察された。・若年成人(18~34歳)は、ほかの年齢層と比較し、うつ病有病率の顕著な増加が認められた。その増加率は、13.4ポイントであった。・2007/08年~2017/18年のNHANESよりうつ病の傾向を追加分析した結果と比較し、2020年4月のうつ病有病率の大幅な増加は、典型的な変動とは異なる可能性が高いことが示唆された。 著者らは「COVID-19パンデミックによりうつ病レベルは大幅に上昇しており、とくに若年成人において、メンタルヘルスへの影響に対する脆弱性が示唆された」としている。

993.

新たに診断された成人のADHDおよびASDに併存する精神疾患

 成人の注意欠如多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)に併存する精神疾患は、医療費の増大を招き、場合によっては診断遅延の原因となる。ギリシャ・国立カポディストリアコス・アテネ大学のArtemios Pehlivanidis氏らは、新たに診断された成人のADHDおよび/またはASDの有病率と精神疾患の生涯併存率を比較し、それらがもたらす臨床上の課題について検討を行った。BMC Psychiatry誌2020年8月26日号の報告。成人ADHDおよびASD患者では精神疾患の併存率が高かった 対象は、新たなADHDおよび/またはASDの診断のために臨床評価を行った、認知機能が正常な成人336例。最も頻繁に併存する10の精神医学的診断の生涯併存率を調査した。対象患者を、ADHD群(151例)、ASD群(58例)、ADHD+ASD群(28例)、非ADHD+非ASD(NN)群(88例)の4つに分類した。 成人のADHDおよびASDに併存する精神疾患を調査した主な結果は以下のとおり。・各群における精神医学的診断の生涯併存率は以下のとおりであった(p=0.004)。 ●ADHD群:72.8% ●ASD群:50% ●ADHD+ASD群:72.4% ●NN群:76.1%・すべての群において、最も頻繁に併存する精神疾患は、うつ病であった。・ADHD群と非ADHD群(ASD群+NN群)の間における精神疾患の併存パターンは、物質使用障害でのみ統計学的に有意な差が認められた(p=0.001)。・双極性障害の割合は、ASD群と比較し、NN群で有意に高かった(p=0.025)。 著者らは「成人ADHDおよび/またはASD患者では精神疾患の併存率が高かったが、その中でASD患者での併存率は最も低かった。ADHD群と非ADHD群の最も有意な差は物質使用障害で認められた」とし、「ADHDおよび/またはASDの有無にかかわらず、これらの疾患が疑われるすべての患者に対して徹底的な臨床評価を行う必要性が示唆された」としている。

994.

がん患者の禁煙、継続カウンセリングと補助薬提供が有効/JAMA

 がんの診断を受けた喫煙者の禁煙治療において、継続的な禁煙カウンセリングと禁煙補助薬の無料提供による強化治療は、4週間の短期カウンセリングと禁煙補助薬に関する助言を行う標準治療と比較して、6ヵ月後の禁煙の達成割合が高いことが、米国・マサチューセッツ総合病院のElyse R. Park氏らが実施した「Smokefree Support研究」で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年10月13日号に掲載された。がん患者では、喫煙の継続が有害なアウトカムを引き起こす可能性があるが、米国の多くのがんセンターは、エビデンスに基づく禁煙治療をルーチンの治療に十分に導入できていないという。米国の2つの包括的がんセンターが参加した無作為化試験 本研究は、米国の国立がん研究所(NCI)によって指定された2つの包括的がんセンター(マサチューセッツ総合病院/ダナファーバー/ハーバードがんセンターと、スローン・ケタリング記念がんセンター)が参加した非盲検無作為化試験であり、2013年11月~2017年7月の期間に患者登録が行われ、2018年2月にフォローアップのデータ収集が終了した(米国NCIとPfizerの助成による)。 対象は、30日以内に1本以上の喫煙をした成人で、英語またはスペイン語を話し、過去4回の受診時または3ヵ月以内に、乳房、消化器、泌尿生殖器、婦人科系、頭頸部、肺のがん、またはリンパ腫、悪性黒色腫と診断された患者であった。 被験者は、強化治療または標準治療を受ける群に無作為に割り付けられた。標準治療群は、電話によるカウンセリングと禁煙補助薬に関する助言を、週1回の割合で4回受けた。強化治療群は、電話によるカウンセリングを、週1回で計4回、2週に1回で計4回(2ヵ月)、さらに月1回で計3回受け、米国食品医薬品局(FDA)の承認を得た禁煙補助薬(バレニクリン、bupropion徐放性製剤、ニコチン置換療法)の無料提供を選択できた。禁煙補助薬を選択した参加者は、初回に4週分が提供され、さらに4週分を2回、合計12週分を受け取る選択ができ、これらの薬剤は使用しなくてもよいとされた。 主要アウトカムは、6ヵ月のフォローアップの時点での生化学的に確認された禁煙(7日間点有病率)であった。副次アウトカムには、3ヵ月後の時点での生化学的に確認された禁煙などが含まれた。6ヵ月時の禁煙率:34.5% vs.21.5%、患者満足度も高い 303例(平均年齢58.3歳、170例[56.1%]が女性)が登録され、221例(78.1%)が試験を完遂した。強化治療群が153例、標準治療群は150例だった。 全体では、181例(59.7%)が喫煙関連腫瘍で、182例(60.1%)は早期病変であり、31例(10.2%)は重篤な精神疾患(うつ病、双極性障害、統合失調症)に罹患していた。1日喫煙本数中央値は10本(IQR 4~20)、喫煙年数中央値は42年(36~49)であり、214例(72.1%)は起床後30分以内に喫煙し、151例(51.0%)は自宅での喫煙が許されていた。 6ヵ月後の時点での生化学的に確認された禁煙率は、強化治療群が34.5%(51/148例)、標準治療群は21.5%(29/135例)であり、13.0%の差が認められ、強化治療群で有意に良好であった(オッズ比[OR]:1.92[95%信頼区間[CI]:1.13~3.27]、p<0.02)。また、3ヵ月後の時点での生化学的に確認された禁煙率は、強化治療群が31.1%(46/148例)、標準治療群は20.7%(28/135例)であり、強化治療群で良好だった(群間差:10.3%[95%CI:0.2~20.5]、OR:1.72[95%CI:1.00~2.96]、p=0.048)。 修了したカウンセリングの回数中央値は、強化治療群が8回(IQR:4~11)、標準治療群は4回(3~4)であった。全体のカウンセリングの平均時間は、初回が44.61(SD 15.47)分で、2回目以降は19.9(8.1)分だった。また、6ヵ月時までに禁煙補助薬を使用した患者の割合は、強化治療群が77.0%(97/126例)と、標準治療群の59.1%(68/115例)に比べ高かった(群間差:17.9%[95%CI:6.3~29.5]、OR:2.31[95%CI:1.32~4.04]、p=0.003)。 多変量解析では、6ヵ月後の時点での生化学的に確認された禁煙と有意な関連が認められた因子として、強化治療(p=0.04)、臨床的に意義のある禁煙意欲の増加(p=0.03)、自己評価による喫煙の誘惑への抵抗力の強さ(p=0.003)、自宅での喫煙ルール確立の進展度の高さ(p=0.03)、不安の減少度の高さ(p=0.04)が挙げられた。また、6ヵ月時に、「このプログラムは、私にとって必要なもののほとんど、またはすべてを満たした」と答えた患者の割合は、強化治療群が85.0%であり、標準治療群の59.3%に比べ満足度が高かった(群間差:25.5%[95%CI:16.0~35.3]、OR:1.66[95%CI:1.24~2.24]、p=0.001)。 最も頻度の高い有害事象は、悪心(強化治療群13例、標準治療群6例)、皮疹(4例、1例)、しゃっくり(4例、1例)、口腔刺激(4例、0例)、睡眠困難(3例、2例)、鮮明な夢(3例、2例)であった。 著者は、「これらの知見の一般化可能性は明確ではなく、さらなる研究を要する」としている。

995.

統合失調症と気分障害の入院患者における代謝障害の相違点

 生活習慣病と密接に関連している心血管疾患は、精神疾患患者の主な死因の1つである。統合失調症と気分障害では、症状や治療薬が異なり、代謝障害にも違いがあると考えられる。国立国際医療研究センター 国府台病院の鵜重 順康氏らは、日本における統合失調症患者と気分障害患者の生活習慣病の違いについて調査を行った。Annals of General Psychiatry誌2020年9月22日号の報告。統合失調症と気分障害の入院患者は症候性脳梗塞や脳梗塞の割合が増加 本研究は、2015~17年に実施した横断的研究である。対象は、国立国際医療研究センター 国府台病院 精神科の日本人入院患者189例(統合失調症群:144例、気分障害群:45例)。対象患者の身体疾患、グルコースと脂質の代謝状態、推算糸球体濾過量(eGFR)、脳MRIを調査した。統合失調症群と気分障害群のデータを比較するため、共分散分析またはロジスティック回帰分析を用いた。対象患者と標準対照者の数値を比較するため、厚生労働省「国民健康・栄養調査報告2015」のデータを基準値として使用した。 統合失調症と気分障害の入院患者の身体疾患などを調査した主な結果は以下のとおり。・年齢で調整した後、気分障害群のeGFRと喫煙率は、統合失調症群よりも有意に低かった。・統合失調症群と気分障害群は、標準対照者と比較し、無症候性脳梗塞と脳梗塞の割合が有意に高かった。・統合失調症の入院患者は、標準対照者の基準値と比較し、糖尿病、低HDLコレステロール血症、メタボリックシンドロームの有病率および喫煙率が有意に高かった。・気分障害群は、標準対照者と比較し、低HDLコレステロール血症の有病率が有意に高かった。・統合失調症群と女性の気分障害群は、標準対照者と比較し、空腹時血糖とHbA1cが有意に高かった。・女性の気分障害群は、標準対照者と比較し、eGFR(60mL/分未満)の有意な低下が認められた。 著者らは「統合失調症患者および気分障害患者では、グルコースや脂質の異常を伴い、無症候性脳梗塞や脳梗塞の割合が増加していた。気分障害患者では、統合失調症患者よりも、eGFRと喫煙率が有意に低かった」としている。

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気分障害や不安症に対するベンゾジアゼピン使用を減少させるための認知行動療法

 精神疾患の治療に、しばしばベンゾジアゼピン(BZD)が用いられる。しかし、BZDは副作用や長期的な有効性に関するエビデンスが不足しているため、多くのガイドラインにおいて、使用制限が推奨されている。また、BZDは依存性や離脱症状の問題があり、減量が困難なこともある。一方、認知行動療法(CBT)は気分障害や不安症に対する有効性が実証されている。しかし、BZDの使用率が高い日本において、BZDの効果的な減量に対するCBTの効果に関するエビデンスは、これまでほとんどなかった。国立精神・神経医療研究センターの中嶋 愛一郎氏らは、日本の精神科におけるBZDの減量に対するCBTの影響について調査を行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2020年9月18日号の報告。 対象は、BZD抗不安薬を使用している気分障害および不安症の外来患者。2015年4月~2017年9月の国立精神・神経医療研究センターのカルテより、CBT実施中のBZD抗不安薬の使用量の変化をレトロスペクティブにレビューした(66例、平均CBTセッション数:14.6回)。CBT実施を判断するための初回診断時(ベースライン)、初回CBTセッション時、最終CBTセッション時、最終CBTセッションから3ヵ月後の4つの時点でのBZD抗不安薬の使用量を確認した。 主な結果は以下のとおり。・66例中13例はCBT実施中にBZD抗不安薬を中止し、21例は50%以上の減量を達成した。・中止、減量および評価期間との関連は、階層ベイズモデルを用いてモデル化した。その結果、ベースライン時と比較して、CBT後(オッズ比:9.79、95%CI:4.65~20.45)およびCBT3ヵ月後(オッズ比:11.53、95%CI:6.06~22.33)のBZD抗不安薬中止率に有意な差が認められた。・CBT後のBZD抗不安薬の減量においても、有意な差が認められた(推定相対リスク中央値:0.845、95%CI:0.729~0.982)。減量の中央値は、1.7mg(ジアゼパム換算)であった。 著者らは「日本人の気分障害および不安症患者に対するCBT実施は、BZD抗不安薬の減量や中止に役立つ可能性が示唆された」としている。

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統合失調症とドパミン過感受性精神病に対する抗精神病薬補助療法~ROADS研究

 ドパミン過感受性精神病(DSP)は、抗精神病薬治療抵抗性統合失調症の発症に影響を及ぼす重要な因子である。千葉大学の新津 富央氏らは、統合失調症とDSPに対するブロナンセリン(BNS)とオランザピン(OLZ)による抗精神病薬補助療法の有効性および安全性について検討を行った。Asian Journal of Psychiatry誌オンライン版2020年8月31日号の報告。 本研究(ROADS研究)は、24週間の多施設ランダム化評価者盲検試験として実施した。統合失調症およびDSP患者を対象に、抗精神病薬治療の補助療法としてBNSとOLZを併用した際の有効性および安全性を検討した。主要アウトカムは、ベースラインから24週目までの陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアの変化量とした。副次アウトカムは、PANSSサブスケールスコア、臨床全般印象度(CGI)、錐体外路症状評価尺度(ESRS)の変化量および抗精神病薬の用量の変化とした。対象患者61例は、BNS群(26例)とOLZ群(29例)に割り付けられた。 主な結果は以下のとおり。・PANSS合計スコアは、両群ともに減少し(BNS群:-14.8±24.0、p=0.0042、OLZ群:-10.5±12.9、p=0.0003)、両群間で有意な差は認められなかった(-4.3、95%CI:15.1~6.4、p=0.42)。・BNS群は4週目から有意な減少が認められ、OLZ群は8週目から有意な減少が認められた。・ESRSスコアはBNS群で減少し、他のスコアは両群ともに減少が認められた。・エンドポイント時における抗精神病薬単剤療法の割合は、BNS群で26.3%(6例)、OLZ群で23.8%(5例)であった。・併用した抗精神病薬の用量は両群ともに減少し、忍容性は良好であった。 著者らは「DSP患者に対する抗精神病薬補助療法として、BNSとOLZによる増強療法は選択肢となりうる。とくに、BNSは比較的早く治療反応が得られており、DSP治療に有用である可能性が示唆された」としている。

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初発統合失調症患者における自殺関連問題

 初回エピソード統合失調症(FES)患者における自殺念慮や自殺企図が神経認知機能と関連しているかについて、中国・Peking University HuiLongGuan Clinical Medical SchoolのYi Yin氏らが、検討を行った。Suicide & Life-Threatening Behavior誌オンライン版2020年9月19日号の報告。 本研究は、最低限の治療を行った中国人FES入院患者159例(年齢:27.1歳、女性の割合:52.2%)を対象とした横断研究である。対象患者の自殺歴は、問診とカルテより収集した。神経認知機能、精神病理学的症状、抑うつ症状の評価には、それぞれMATRICS認知機能評価バッテリー、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、カルガリー統合失調症うつ病尺度を用いた。 主な結果は以下のとおり。・FES入院患者において、自殺企図の発生は約10%、自殺念慮の生涯発生は25%以上で認められた。・自殺企図または自殺念慮を有する患者は、過去に自殺関連問題のない入院患者と比較し、7つの神経認知領域全体でスコアが有意に悪かった。・線形回帰分析では、教育レベルで調整後、自殺企図は、主に作業記憶と処理速度のスコア低下と関連していることが示唆された。・精神病理学的症状および抑うつ症状でさらに制御した場合でも、関連性は強いままであった。 著者らは「自殺企図を有するFES患者では、特定の神経認知領域におけるより深刻な障害が認められた。自殺リスク評価後には、基本的な神経認知機能を評価、検出、治療する必要がある」としている。

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双極性うつ病に対するルラシドンの有用性~他の非定型抗精神病薬との比較

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、双極性うつ病に対するルラシドン(LUR)の有効性および安全性を評価するため、システマティックレビュー、変量効果モデル、日本での第III相試験のネットワークメタ解析を実施し、オランザピン(OLZ)やクエチアピン徐放製剤(QUE-XR)との比較検討を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年9月9日号の報告。 本研究には、双極性うつ病患者を対象とした日本での二重盲検ランダム化プラセボ対照第III相試験のデータを含めた。主要アウトカムは治療反応率、副次的アウトカムは寛解率、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコアの改善、治療中止率、個々の有害事象発生率とした。 主な結果は以下のとおり。・3件の研究(1,223例)を分析した。・LURとOLZの奏効率は、プラセボよりも優れていたが、QUE-XRは差が認められなかった。 ●LUR:リスク比(RR)=0.78、95%CI:0.66~0.92 ●OLZ:RR=0.84、95%CI:0.71~0.99 ●QUE-XR:RR=0.87、95%CI:0.73~1.03・寛解率は、LUR、OLZ、QUE-XRともに、プラセボよりも優れていた。 ●LUR:RR=0.90、95%CI:0.83~0.98 ●OLZ:RR=0.87、95%CI:0.77~0.99 ●QUE-XR:RR=0.84、95%CI:0.73~0.98・MADRS合計スコアも、各抗精神病薬ともに、プラセボよりも優れていた。・中止率は、各抗精神病薬とプラセボとの間に差は認められなかった。・それぞれの抗精神病薬において、プラセボと比較し、発生頻度の高かった有害事象は以下のとおりであった。 ●LUR:アカシジア、体重増加、プロラクチン上昇 ●OLZ:傾眠、7%以上の体重増加、体重増加、血中総コレステロール値上昇、血中LDLコレステロール値上昇、血中トリグリセライド値上昇 ●QUE-XR:錐体外路症状、アカシジア、傾眠、口渇、便秘、7%以上の体重増加、体重増加、血中総コレステロール値上昇、血中LDLコレステロール値上昇、血中トリグリセライド値上昇 著者らは「双極性うつ病に対する第2世代抗精神病薬による治療の有効性は、3剤ともに同程度であるものの、安全性プロファイルに違いがあることが示唆された」としている。

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アンチエイジングのためのHealthy Statement作成が始動/日本抗加齢医学会

 近年、EBM普及推進事業Mindsの掲げるガイドライン作成マニュアルが普及したこともあり、各学会でガイドラインの改訂が活発化している。さまざまな専門分野の医師が集結する抗加齢医学においても同様であるが、病気を防ぐための未病段階の研究が多いこの分野において、ガイドライン作成は非常にハードルが高い。Healthy Statement-ガイドライン作成の第一歩 そこで、日本抗加齢医学会は第20回総会を迎える節目の今年、ワーキング・グループを設立し、今後のガイドライン作成、臨床への活用を目的にコンセンサス・レポートとしてHealthy Statement(以下、ステートメント)の作成を始めた。ステートメントの現況は、9月25日(金)~27日(日)に開催された第20回日本抗加齢医学会の会長特別プログラム1「Healthy Agingのための学会ステートメント(ガイドライン)作成に向けて」にて報告された。 ステートメントは健康寿命の延伸に関して科学的なエビデンスが蓄積されつつある4つの分野(食事、運動、サプリメント、性ホルモン)が検討されており、今回、新村 健氏(兵庫医科大学内科学総合診療科)、宮本 健史氏(熊本大学整形外科学講座)、阿部 康ニ氏(岡山大学脳神経内科学)、堀江 重郎氏(順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学/日本抗加齢医学会理事長)らが、各部門の作成状況を発表した。各分野、抗加齢に特化したデータ抽出進む 『食事・カロリー制限とアンチエイジング』について講演した新村氏は、「抗加齢医学の領域において、食事療法・カロリー制限に関するエビデンスは十分と言えず、ガイドライン・診療の手引きを作成するだけの材料が揃っていないのが現状」とし、「食事療法の選択としては日本人での実行性と重要性を重視し、健常者または重篤な疾患を持たない者を対象者に想定している」と述べた。さらに今後の方針として「1つの食事療法に対して、複数のアウトカムから評価し、アンチエイジング医学の多様性を意識する」と話した。 『運動・エクササイズとアンチエイジング』については宮本氏がコメント。「運動介入と高齢者の骨密度、認知症や寿命延伸に関するデータをまとめ、CQを作成した。とくに運動介入は高齢者の骨密度の軽度の増加、認知症予防に強く推奨される。また要介護化の予防に中等度、寿命・健康寿命の延伸には弱く推奨される」など話した。 『サプリメント・機能性表示WGからの報告』について阿部氏が講演。「本ワーキング・グループは感覚器、歯科、循環器、消化器/免疫、皮膚科、脳神経の6領域において活動を行っている。サプリメントは分類上では機能性表示食品に該当するが、医薬品のように観察研究や介入研究が多くデータが豊富に揃っていた。評価文、根拠文献、評価上の要点、エビデンスグレードの各案が出揃い、完成近い品目もある」と解説した。このほか、アルツハイマー病治療において、アミロイドβの根本治療が全滅している現在、サプリメント活用のメリットにも言及した。 『テストステロン(男性ホルモン)』については堀江氏が既存のエビデンスとして、テストステロン低値の人の早逝、内蔵脂肪との関連、そのほか低テストステロンが惹起する身体機能の低下や合併症について説明。「テストステロンはメタボリックシンドローム、耐糖能異常、うつ病、フレイルなどの疾患との関連において十分なエビデンスが存在する。これらのデータを踏まえ、テストステロンは未病のための明日の健康指標になる。さらには、社会参画や運動量など人生のハツラツ度に影響するホルモンであることから、今日の健康指標にもつながる」とし、「今後、性ホルモン分野としてエストロゲン、テストステロンの両方について報告していく」と締めくくった。抗加齢医学の目標、ステートメント完成は2021年を目処 講演後、大会長の南野氏は「抗加齢医学は集団も然り、研究疾患もヘテロである。このヘテロジェナイティを認識したうえで、足りないエビデンスをわれわれで補うことが最終目標である」と述べた。これに堀江氏は「われわれは疾患ではなく、疾患に至る前段階を捉えて研究を行っている。診療ガイドラインの疾患アウトカムと異なるエビデンスが必要であり、それゆえ研究対象も従来の研究とは異なる。たとえば、高齢者の認知機能ではなく40歳くらいの若年者の機能探索がその1つである」と補足し、今後の抗加齢医学会の進むべき道について強調した。Healthy Statementは来年6月頃までにまとめられ、2021年の本学術集会にて発表される予定である。 なお、本講演は10月8日(木)~21日(水)の期間限定でケアネットYouTubeにて配信している。

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