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治療抵抗性うつ病に対するケタミン静注の有効性~メタ解析

 治療抵抗性うつ病(TRD)患者の治療において、ケタミンによる治療が期待されているが、いくつかの問題点は、いまだ不明である。カナダ・コンコルディア大学のWalter S. Marcantoni氏らは、TRD患者に対するケタミン静脈内投与が、うつ病スコア、臨床的寛解および奏効率に及ぼす影響を評価し、時間および頻度の両方における有効性について検討を行った。Journal of Affective Disorders誌2020年12月1日号の報告。 2019年1月4日までに、TRD患者に対する麻酔域下用量で用いたケタミン治療を評価した研究を5つの電子データベースより検索した。研究の選定、品質評価、データ抽出は、2人のレビュアーが独立して実施した。結果は、narrative synthesisで統合した。投与4時間後、24時間後、7日後のアウトカム測定値の標準化平均差およびオッズ比の調査が可能な場合には、変量効果モデルを用いてメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・35件の論文より28件の研究が抽出された。・ケタミンの強い効果は、単回投与4時間以内に認められ、24時間でピークに達した。・ケタミンの有効性は、投与7日後でも持続していたが、いくらかの低下は認められた。・複数回投与により、ケタミンの効果は増強、延長された。・TRD患者に対するケタミンの長期的な安全性および有効性は、データが不十分なため、調査されなかった。 著者らは「抑うつ症状の迅速なマネジメントに対し、ケタミン投与は支持された。TRD患者の短期治療においてケタミンは、有用であると考えられる。今後、ケタミン長期投与の有効性、耐性、安全性に関するより多くの臨床的および実験的データが求められる」としている。

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患者の『コロナうつ』、早期発見するには?

 新型コロナウイルス感染症によるメンタルヘルス不調には「感染に対する恐怖・不安」「環境の変化によるストレス」「自粛制限によるストレス」「経済的な不安」などが挙げられるそうだが、ご自身や家族、診察を受ける患者に該当するものはあるだろうかー。 11月18日、うつ病疾患啓発セミナー「雇用形態別に見る、うつ病患者さんの現状と課題―求められる対策とは~働くうつ病患者さん464人への調査結果から見えた実態と新型コロナウイルス感染症の影響~」が開催され、三村 將氏(慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室 教授)が「就労するうつ病患者さんの雇用形態別の現状と課題、コロナ禍での影響」について講演。アンケート結果を踏まえ、コロナ禍に悩むうつ病患者の解決策を解説した(主催:武田薬品工業株式会社、ルンドベック・ジャパン株式会社)。メンタルヘルスによる長期休業、15年前の2.5倍 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する以前から職場におけるメンタルヘルスは問題視されてきたが、コロナ禍ではこの問題に拍車がかかっている。そこでまず、三村氏は職域におけるうつ病について、平成30年度の地方公務員健康状況等の現況概要を示し、「悪性新生物や循環器系疾患などによる休業は15年前から横ばいだが、精神及び行動の障害が影響する休業は15年前の2.5倍にまで増加している」と説明。この原因として、「ストレス社会を反映しているのはもちろん、精神障害による労災申請および労災認定も増加し、過労死・過労自殺なども社会問題となっている」と話した。一方で、自殺件数は国の対策や医療者によるサポートが功を奏し、10年前と比較して減少傾向であった。ところが、今年はCOVID-19の流行により自殺件数がとくに女性で増加し、例年以上に深刻さを増す可能性が指摘されている。在宅勤務の患者へ意識しておきたい3つのこと では、医師としてコロナと関連するストレスに関し、どのような対策を意識しておく必要があるのだろうか。4月16日に発令した緊急事態宣言を受け、多くの企業が在宅勤務へのシフトを余儀なくされた。在宅勤務に関し、さまざまなアンケート調査で、就労者のメリットも多く挙げられていたが、一方で同氏は、「対人関係(孤独感・コミュニケーション困難)、仕事量の増加、仕事時間の長期間化や時間管理の困難など、仕事の質・量・時間に大きな影響を与えている」点も危惧されると指摘した。 また、これらの状況の因果関係をみるために同氏らは就労におけるうつ病患者の実態調査を実施。その結果、コロナ関連での不調が如実に増えていることが明らかになった。調査の主な結果は以下のとおり。・2020年9月24日~10月1日にインターネット調査を行った。・対象者は19~64歳で、過去5年以内に精神科/心療内科/メンタルクリニックで初めてうつ病と診断され、うつ病の治療として1ヵ月以上の通院を行った者、または初めてうつ病と診断された際に正社員、契約社員または嘱託社員、派遣社員、アルバイト・パートタイムいずれかの勤務体系で就労していたものとした。・参加者は464名で、雇用形態の内訳は、正社員が200名、契約社員/嘱託社員が116名、派遣社員は46名、アルバイト・パートタイムは102名だった。・男女比は正社員では男性が多く、女性はパートタイムが多かった。・雇用形態に関わらず、仕事の継続・キャリアへの影響について不安を感じているものの、働くうつ病患者の53%は受診への抵抗を感じていた。・診断時に仕事をするうえで支障になった症状として最も多かったのは、集中力が保てないで44%だった。・うつ病を上司に伝えた理由は、正社員、契約・嘱託社員では「診断書が出たため」「会社の制度を利用するため」「仕事面で配慮を求めるため」で、派遣社員、パートタイム・アルバイトでは、「診断書が出たため」「会社の制度を利用するため」「仕事面で配慮を求めるため」だった。また、派遣社員では「周囲に病気であることを知らせるため」、パートタイム・アルバイトでは「退職するため」が最多だった。・コロナ禍では、参加者の58%が心身のストレス増加を感じており、主な理由は、経済的な不安が59%、感染への不安が50%、外出の自粛が48%だった。 そのほか、COVID-19の影響による生活の変化として、SNSの利用、動画視聴時間、ネットショッピングの増加を指摘し、「不眠があるからこれらの行動が増えるのはもちろん、これらの行動が増えたことによって不眠になったり、不眠が悪化したりする場合もある」と説明し、医療者は患者の生活の質・リズムの変化にも注意を喚起するよう説明した。 最後に同氏は職場内での解決策として、「患者は職場で上司や同僚と病状について話すことで安心感につながる傾向があることから、アンケート結果のような不安感を払拭するために治療中・治療後にうつ病患者が就業継続できるよう、企業内のサポートや包括的な社会の構築が重要である」と締めくくった。

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青年期のSNS利用と抑うつや不安症状との関連

 青年期や幼年期後期におけるソーシャルネットワーク(SNS)利用は、急激に増加している。このような変化によるメンタルヘルスへの影響は議論されているが、さらなる経験的評価が求められる。オーストラリア・メルボルン大学のLisa K. Mundy氏らは、青年期のSNS利用と抑うつ症状、不安症状との関連について調査を行った。Depression and Anxiety誌オンライン版2020年11月22日号の報告。 Childhood to Adolescence Transition Studyのデータ(1,156例)を利用し、11.9~14.8歳の4つの時点でのSNS利用時間を毎年測定した。1日1時間以上のSNS利用を、利用率が高いと定義した。SNS利用と抑うつ症状、不安症状との横断的および将来的な関連を調査した。 主な結果は以下のとおり。・年齢、社会経済的地位、メンタルヘルス罹病歴で調整した横断的分析により、SNS利用率が高い人においてメンタルヘルスリスクとの関連が認められたのは、以下のとおりであった。 ●SNS利用率が高い女性は抑うつ症状リスクが高い(オッズ比[OR]:2.15、95%信頼区間[CI]:1.58~2.91) ●SNS利用率が高い女性は不安症状リスクが高い(OR:1.99、95%CI:1.32~3.00) ●SNS利用率が高い男性は抑うつ症状リスクが高い(OR:1.60、95%CI:1.09~2.35)・女性では、利用頻度に波のない人と比較し、1つ前の波(OR:1.76、95%CI:1.11~2.78)と2つまたは3つ前の波(OR:2.06、95%CI:1.27~3.37)のSNS利用率の高さが、14.8歳時の抑うつ症状のORの増加と関連が認められた。 著者らは「SNS利用率の高い若者では、抑うつ症状や不安症状リスクの中程度の増加が認められた。初期のメンタルヘルス問題に対する予防プログラムにおいて、青年期初期のSNS利用に焦点を当てることが有用である可能性が示唆された」としている。

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治療抵抗性うつ病発症リスクに関連する臨床的特徴と併存疾患

 うつ病患者の治療抵抗性うつ病(TRD)リスクを評価するため、臨床的特徴、初期の処方パターン、初期および生涯の併存疾患との関連について、台湾・国立台湾大学のShiau-Shian Huang氏らが調査を行った。BMC Psychiatry誌2020年11月17日号の報告。 うつ病入院患者3万1,422例を対象に、診断開始から10年以上のフォローアップを行った。TRDの定義は、2回以上の抗うつ薬治療レジメン変更または異なる2種類以上の抗うつ薬治療後の入院とした。人口統計学的共変量で調整した後、身体的および精神医学的併存疾患、精神疾患、処方パターンとTRDリスクとの関連を評価するため、多重ロジスティック回帰モデルを用いた。重要なTRD関連の臨床変数について、生存分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・女性うつ病患者(21.24%)は男性(14.02%)よりも、TRDの割合が高かった。・TRD患者は、非TRD患者と比較し、初期の不安症が認められる割合が高かった(81.48% vs.58.96%、p<0.0001)。・人口寄与割合(population attributable fraction)が最も高かったのは、生涯不安症であった(42.87%)。・複数の精神医学的併存疾患を有する患者の70%は、フォローアップ期間中にTRDへ進展した。・Cox回帰分析により、機能性胃腸症がTRDリスクを有意に増加させることを特定した(aHR:1.19)。・うつ病初期における抗うつ薬、ベンゾジアゼピン薬、Z薬の高用量使用は、TRDリスク増加と関連が認められた(p<0.0001)。 著者らは「TRDリスクと関連するうつ病患者の併存疾患や多剤併用パターンは、注意深くモニタリングする必要がある」としている。

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統合失調症治療におけるパリペリドン戦略の展望

 2020年10月22日(木)にヤンセンファーマ主催による、持続性抗精神病剤パリペリドンパルミチン酸エステル(商品名:ゼプリオンTRI)の製造販売承認メディアセミナーが開催され、統合失調症治療薬の安全性情報や統合失調症治療におけるパリペリドン戦略の展望、持効性注射剤の適正使用推進について語られた。 同社の研究開発本部クリニカルサイエンス統括部統括部長を務める藤野 忠弘氏は、「ゼプリオンTRIは国内で承認された最長の投与間隔となる注射剤であり、服薬負担を軽減し、社会復帰のために確実に治療を行うメリットがある。一方で副作用発現時に急な中止ができないため、適切な患者さんを選択し適正使用を図ることが重要となる」と述べた。 ゼプリオンTRIの登場で急性期から安定期まで一貫したパリペリドン治療が可能となり、統合失調症の治療を継続するうえで重要となる服薬アドヒアランスも向上することで、再発予防、社会活動への復帰につながることが期待される。統合失調症の治療目標と再発予防の重要性 統合失調症の治療目的は、症状改善、再発予防にある。薬物療法は急性期から開始され、安定期に入っても再発予防のため治療継続が必要となる。5年以内の再発は約80%1)といわれ、再発を繰り返すと精神機能の低下に伴い社会復帰が困難となり、効果も減弱することから、いかに予防するかが重要となる。服薬アドヒアランスの影響 再発を防ぐには抗精神病薬の持続服用が重要であるが、統合失調症患者の服薬アドヒアランスは他の疾患と比較して低い。服薬に関する調査でも看護師と患者で「飲んでいる」認識に大きな差があることが報告されている。統合失調症患者においては、病識がない、または服薬・継続服薬の重要性を理解できていない割合も高いため、持効性薬剤はアドヒアランス向上に有用な剤形の1つであるといえる。持効性注射剤ゼプリオンTRIの有効性 2013年に承認された4週間に1回のゼプリオンは、急性期を脱して安定化期に入った患者に対して、症状の維持を目的とした持効性注射剤である。その状態をより長期的に維持させて再発予防、リカバリーを期待して、12週間に1回のゼプリオンTRIが開発された。ゼプリオンTRIを使用した2つの第III相試験の結果ではゼプリオンとの非劣性が証明され、再発までの期間もプラセボと比較し有意に延長した。安全性についてはゼプリオンでも報告されている安全性情報と同等であり、新規または予期せぬ事象は認められなかった。統合失調症治療における今後のビジョン パリペリドン製剤が目指す治療ポジションとして、急性期は幻覚・妄想に対し早期改善が期待できるインヴェガを、安定化期にはさらなる状態維持のため4週間に1回のゼプリオンを、そしてゼプリオンTRIの承認によって安定期での使用と、一貫したパリペリドン治療の実現が可能となった。治療のゴールとして、再発予防を通じて患者さん一人ひとりの自己実現につながることが期待される。まとめ 統合失調症は長期的な付き合いが必要となる難しい疾患であり、薬物治療も長期間のコントロールが要求される。再発を予防しながら社会での活躍を目指すうえで、ゼプリオンTRIの登場によって、患者さんの負担の軽減や、病気に対するより前向きな付き合いができるようになると考える。

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境界性パーソナリティ障害と自殺企図~10年間のフォローアップ調査

 境界性パーソナリティ障害(BPD)は、自殺企図などの自殺行動の強力なリスクである。自殺行動リスクに影響を及ぼす因子を明らかにすることは、適切な自殺予防介入を考えるうえで重要であろう。米国・ハーバード大学医学大学院のShirley Yen氏らは、BPD患者の自殺企図に関連する因子をプロスペクティブに調査するため、10年にわたるフォローアップによるCollaborative Longitudinal Study of Personality Disorders(CLPS)研究を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2020年11月18日号の報告。 CLPS研究は、4つのパーソナリティ障害(PD)の成人患者と比較対照群としてうつ病および最低限のPDの特徴を有する成人を対象としたマルチサイト自然主義的プロスペクティブ研究である。対象患者は、ニューヨーク州ニューヨーク、マサチューセッツ州ボストン、コネティカット州ニューヘブン、ロードアイランド州プロビデンスで治療のため受診し、入院、部分入院、外来で治療された患者733例(募集期間:1996年9月~1998年4月および2001年9月~2002年8月)。そのうち1回以上のフォローアップ評価を完了した患者は701例であった。フォローアップサンプル701例のデータを用いて、2019年3月~2020年8月に分析を行った。対象者には、半構造化診断面接および各種自己報告を実施し、年1回最大10年間の評価を行った。10年間のプロスペクティブフォローアップ期間の自殺企図に対するベースライン時の人口統計学的因子およびBPD、個々のBPD基準を含む臨床的リスク因子を調査するため、多重ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・701例の背景は以下のとおりであった。 ●女性:447例(64%) ●白人:488例(70%) ●独身:527例(75%) ●仕事がない:433例(62%) ●いくつかの大学教育経験:512例(73%)・人口統計学的因子(性別、雇用、教育)および臨床的因子(児童性的虐待、アルコール使用障害、物質使用障害、心的外傷後ストレス障害)で調整した後、自殺企図と関連する最も強力な因子は、すべての障害の中でBPDであった(オッズ比[OR]:4.18、95%CI:2.68~6.52)。・その他の有意な因子およびBPD基準を共変数とした場合、以下のBPD基準は、自殺企図との独立した有意な関連が認められた。 ●不安定な自己像(OR:2.21、95%CI:1.37~3.56) ●慢性的な空虚感(OR:1.63、95%CI:1.03~2.57) ●見捨てられることを避けるための必死の努力(OR:1.93、95%CI:1.17~3.16) 著者らは「BPD患者の自殺企図と有意な関連が認められた、不安定な自己像、慢性的な空虚感、見捨てられることを避けるための必死の努力は、BPD患者の自殺リスクを評価するうえで、臨床的に見逃されている可能性がある。BPDは比較的寛解率が高いことを踏まえると、これらの基準は独立して評価すべきであり、自殺のリスク因子としてさらに研究が進むことが望まれる」としている。

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治療抵抗性うつ病に対する非定型抗精神病薬増強療法

 治療抵抗性うつ病の臨床症状として、自殺念慮や重度の機能障害が認められることがしばしばある。治療抵抗性うつ病の治療に対し、使用可能な薬剤の中で、第2世代抗精神病薬が有用であることが報告されている。イタリア・ミラノ大学のFilippo Cantu氏らは、治療抵抗性うつ病に対する第2世代抗精神病薬増強療法の有効性を評価するため、臨床研究のレビューを行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年11月5日号の報告。 2000年1月~2020年3月に公表された、治療抵抗性うつ病に対する抗精神病薬増強療法を評価したすべてのランダム化比較試験を、PubMed、Medline、PsychINFOより包括的に検索した。選択基準を満たした研究は16件であった。 主な結果は以下のとおり。・レビューした研究では、治療抵抗性うつ病に対してアリピプラゾール増強療法が有用である可能性が示唆された。・また、不安神経症や不眠症を合併した治療抵抗性うつ病に対するクエチアピン増強療法の使用も支持された。・治療抵抗性うつ病に対するリスペリドンとオランザピンの効果を検討した研究はあまりなかったが、予備データでは、プラセボよりも有用であることが示唆されており、治療選択肢となりうると考えられる。・本研究の限界として、治療抵抗性うつ病の定義が一貫していない、サンプルサイズが小さい、抗精神病薬の投与量が不均一である点が挙げられる。 著者らは「全体として、治療抵抗性うつ病に対する第2世代抗精神病薬増強療法、とくにアリピプラゾールとクエチアピンによる治療は、有用な治療選択肢であるという仮説を支持するものであった。しかし、治療抵抗性うつ病の治療アウトカムを改善するためには、サンプルサイズの大きな、質の高いランダム化比較試験が必要であると考えられる」としている。

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うつ病に対する音楽療法~メタ解析

 音楽療法や音楽医学がうつ病に及ぼす影響およびその影響に関連する潜在的な因子を調査するため、中国・Bengbu Medical UniversityのQishou Tang氏らが、検討を行った。PLOS ONE誌2020年11月18日号の報告。 2020年5月までにうつ病に対する音楽による介入の有効性を評価した研究を、PubMed(MEDLINE)、Ovid-Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、EMBASE、Web of Science、Clinical Evidenceより検索した。標準化された平均差(SMD)の推定には、変量効果モデルおよび固定効果モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・55件のランダム化比較試験をメタ解析に含めた。・音楽療法は、対照群と比較し、抑うつ症状の有意な改善を示した(SMD:-0.66、95%CI:-0.86~-0.46、p<0.001)。音楽医学は、抑うつ症状軽減に対する強い効果が認められた(SMD:-1.33、95%CI:-1.96~-0.70、p<0.001)。・音楽療法の種類により、異なる効果が認められた。 ●レクリエーション音楽療法(SMD:-1.41、95%CI:-2.63~-0.20、p<0.001) ●音楽とイメージ誘導法(SMD:-1.08、95%CI:-1.72~-0.43、p<0.001) ●音楽支援リラクセーション(SMD:-0.81、95%CI:-1.24~-0.38、p<0.001) ●音楽イメージ療法(SMD:-0.38、95%CI:-0.81~0.06、p=0.312) ●即興音楽療法(SMD:-0.27、95%CI:-0.49~-0.05、p=0.001) ●音楽ディスカッション療法(SMD:-0.26、95%CI:-1.12~0.60、p=0.225)・音楽療法および音楽医学は、長期介入と比較し、短中期介入において強い効果が認められた。 著者らは「うつ病に対する音楽療法および音楽医学は、その種類により異なる効果が認められており、その効果は治療プロセスにより影響を受ける可能性がある」としている。

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日本における自閉症の特徴を有する女性の産後うつ病と虐待リスク

 自閉症の特徴を有する女性が、出産後に母親となり、どのような問題に直面するかはあまりわかっていない。順天堂大学の細澤 麻里子氏らは、出産前の非臨床的な自閉症の特徴と産後うつ病および産後1ヵ月間の子供への虐待リスクとの関連、これらに関連するソーシャルサポートの影響について、調査を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年11月5日号の報告。自閉症の特徴は産後うつ病や子供への虐待のリスク増加と関連 日本全国の出生コホートである子どもの健康と環境に関する全国調査(Japan Environment and Children's Study)より、精神疾患の既往歴のない単胎児の母親7万3,532人を対象とした。自閉症の特徴は、簡易自閉症スペクトラム指数日本語版を用いて、妊娠第2三半期/第3三半期に測定した。対象者を、自閉症スコアに基づき3群(正常、中等度、高度)に分類した。産後うつ病はエジンバラ産後うつ病尺度日本語版を、子供の虐待は自己報告を用いて、出産1ヵ月後に測定した。妊娠中のソーシャルサポートは、個々に収集した。データ分析には、ポアソン回帰を用いた。 出産前の自閉症の特徴と産後うつ病および子虐待リスクとの関連を調査した主な結果は以下のとおり。・産後1ヵ月間で、産後うつ病は7,147人(9.7%)、子供への虐待は1万2,994人(17.7%)より報告された。・自閉症の特徴は、交絡因子とは無関係に、産後うつ病および子供への虐待のリスク増加との関連が認められた。 【自閉症スコア中等度】 ●産後うつ病(調整後相対リスク[aRR]:1.74、95%CI:1.64~1.84) ●子供への虐待(aRR:1.19、95%CI:1.13~1.24) 【自閉症スコア高度】 ●産後うつ病(aRR:2.33、95%CI:2.13~2.55) ●子供への虐待(aRR:1.39、95%CI:1.28~1.50)・自閉症スコアが中等度または高度の女性に対するソーシャルサポートは、産後うつ病および子供への虐待のリスクを、26~31%緩和させた。 著者らは「自己報告による評価であるため、制限がある」としながらも「中等度または高度の自閉症の特徴を有する母親は、産後1ヵ月間で、産後うつ病や新生児虐待に対する脆弱性が認められており、妊娠中のソーシャルサポートが不足している可能性が示唆された」としている。

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不安症を合併した治療抵抗性うつ病に対するミルタザピンの有用性

 うつ病と不安症を合併した患者に推奨される治療法に関するエビデンスは不足している。うつ病と不安症を合併した患者に対するミルタザピンの有用性が、予備的なエビデンスで示唆されている。英国・ブリストル大学のRaphael Rifkin-Zybutz氏らは、このような患者に対するミルタザピンの有用性を明らかにするため、治療抵抗性うつ病に対するミルタザピン補助療法のプラセボ対照試験の2次解析を行った。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2020年11月4日号の報告。 プライマリケアでの治療抵抗性うつ病患者に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)またはセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)へのミルタザピン補助療法を検討したプラセボ対照試験の2次解析を実施した。ベースライン時の全般不安症スコア(GAD-7)により、対象患者を重度(GAD-7:16以上)、中等度(GAD-7:11~15)、軽度/なし(GAD-7:10以下)の3群に分類した。ミルタザピン補助療法によるベースラインから12週目までの不安症状の変化について、交互作用の尤度比検定を含む線形回帰を用いて評価した。不安症状の評価には、GAD-7およびうつ病自己評価尺度(Beck Depression Inventory II:BDI-II)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・ミルタザピン補助療法によるベースラインから12週目までの不安症状の改善は、GAD-7(p=0.041)およびBDI-II(p=0.088)の両方で認められた。・ミルタザピン補助療法を行った不安症が重度の患者では、12週目のGAD-7スコアが低く(調整後平均差[ADM]:-2.82、95%信頼区間[CI]:-0.69~-4.95)、BDI-IIスコアの著しい改善(ADM:-6.36、95%CI:-1.60~-10.84)が認められた。・不安症が軽度/なしの患者では、プラセボと比較し、ミルタザピン補助療法の抗不安効果(ADM:0.28、95%CI:-1.05~1.60)または抗うつ効果(ADM:-0.17、95%CI:-3.02~2.68)は認められなかった。 著者らは「プライマリケアにおいて治療抵抗性うつ病患者の不安症に対するミルタザピン補助療法の有効性が支持された。本結果は、事後分析ではあるものの、不安症を合併したうつ病患者に対する標準治療薬としてのミルタザピンの可能性が示唆された」としている。

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がんの緩和ケア、「穏やかに看取る」から「健やかに過ごす」へ/日本肺癌学会

 がん治療の進展に伴い、がん治療における緩和ケアにも変化が起きている。11月に行われた第61回日本肺癌学会学術集会では、「肺癌緩和ケアの新時代~長期治療の中での緩和~」と題したシンポジウムが行われ、演者がそれぞれの立場から現状を報告した。 演者の1人、飯塚病院連携医療・緩和ケア科の柏木 秀行氏は、がん緩和ケアの原則となる「WHO方式がん疼痛治療法」が一部改訂されたことを紹介。前版にあった「鎮痛剤使用の5原則」中の「除痛ラダーに沿って効力の順に」という記載が削除され、症状や個人に応じた個別化が緩和ケアでも進んでいる状況を紹介した。 また、現状の課題として、がん緩和ケアにおいて非薬物療法を提供する重要性にも言及。一例として、肺がんや前立腺がんに多い骨転移では、身体を動かすリハビリ療法が痛みの緩和に有効であり、看護師やPT・OTをはじめとする多職種によるチーム医療が緩和ケアにおいても重要になっている、とした。 柏木氏は「オピオイドによる鎮痛一辺倒だった、かつてのがん緩和療法から状況は大きく変わり、非身体的アプローチや非薬物療法など、症状や患者ごとのニーズが多様化している。医師は自分の主観だけでなく、チーム医療の視点を活かして緩和療法に取り組むべき」と述べた。さらに「がん患者の高齢化が進み、がんだけでなく併存疾患をもつ患者さんが多くを占めるようになっている。一病院の枠を超え、緩和ケアとプライマリ・ケアの統合など、地域の状況に合わせた緩和ケア体制の再編も必要となるだろう」とまとめた。がん患者のメンタルリスクにどう対処するか 続いて、岡山大学病院精神科神経科の井上 真一郎氏が「精神症状の緩和 抑うつを中心に」と題し、精神科医の立場から、がん患者の精神的ケアについて発表を行った。 がん患者はがんの宣告、薬剤による副反応、再発など、各段階においてうつ状態になりやすい状況にある。井上氏は「気分が落ち込むのは当然だが、日常生活に支障が出るくらいの落ち込みが2週間以上に続けば、うつ病を疑うことになる」と述べ、さらにうつ病患者には、精神症状だけでなくさまざまな身体症状が出ることを指摘。こちらも、がんそのものや薬剤の副反応から来る身体症状との見分けが難しいため、「普段の診療時に気持ちのつらさを聞くなど、定期的にうつ病のアセスメントを取り入れることが重要だ」とした。 うつ病のアセスメント方法として、2質問法1)、つらさと支障の寒暖計2)、PHQ-93)という3つのツールを紹介したうえで、「どれも有用なツールだが、がん患者は多くの気がかりを抱え、診断基準に当てはまる方が大勢いる。こうしたとき診断の一助となるのが、『今のしんどさが取れれば、気持ちがラクになりますか?』という問いかけ。がん症状から気持ちがつらい患者は『それはそうだろう』と答えるが、うつ病患者はそうした状況すら想像できない、いわゆる心理的な視野狭窄に陥っているケースが多い」とアドバイスした。 さらに、「うつ病が強く疑われるケースでは、必ず希死念慮の確認をして欲しい」と強調。「死に関する質問はしにくいだろうが、オブラートに包み過ぎず、シンプルに『死にたいと思うことはありますか』と問いかけ、深刻と判断すればすぐ専門医につないで欲しい」とした。 最後に、うつ病とせん妄の誤診リスクも指摘。「せん妄というと、攻撃的になる『過活動型せん妄』が想起されるが、新たなサブタイプとして活動意欲が薄れる『低活動型せん妄』がある。こちらはさらにうつ病との見分けがつきにくく、認知症等に隠れて見逃されるケースも多い。こうした疾病の存在も念頭に置いて対応して欲しい」とした。

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フィナステリドの副作用、45歳以下では自殺傾向・うつとの関連が顕著

 インターネットやテレビで男性型脱毛症(AGA)治療の広告を目にしない日はないだろう。脱毛症の治療は身近なものになってきているが、脱毛症および良性前立腺肥大症(BPH)治療に使用されるフィナステリドについて、自殺傾向やうつ増大との関連が認められることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のDavid-Dan Nguyen氏らにより報告された。同治療におけるフィナステリドの有害事象は議論の的となっており、使用男性の自殺企図または自殺例が報告されるようになったのは2012年ごろであったが、今回の検討では、45歳以下の脱毛症患者において、自殺傾向や心理的有害事象との顕著な関連性が認められたという。著者は、「今回の研究結果は、若年の患者にフィナステリドを処方する際は、自殺傾向、うつ、不安症のリスクを考慮する必要があることを示唆するものであった」と述べる一方で、「本研究によってバイアスがかかる可能性があり、さらなる調査が必要である」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年11月11日号掲載の報告。フィナステリドの副作用に対して若年患者のほうが脆弱であることを示唆 研究グループは、自殺傾向(念慮、企図、既遂)および心理的有害事象(うつ、不安症)とフィナステリド使用との関連を調べる薬物誘発ケース・非ケース研究を実施した。不均衡分析(ケース・非ケースデザイン法)にて、世界保健機関(WHO)のVigiBase(個別ケースの安全性レポートの世界的なデータベース)で、フィナステリドについて報告された注目される副作用の警告を検出し、検討した。 関連性の強度は報告オッズ比(ROR)を用いて調べ、拡大感度分析では、適応症(BPHおよび脱毛症)、年齢(45歳以下および45歳超)で層別化したうえで、フィナステリドと同様の適応症に使用される、機序が異なる薬剤(脱毛症:ミノキシジル、BPH:タムスロシン塩酸塩)の比較、フィナステリドと同一作用機序および有害事象プロファイルを有する薬剤(デュタステリド)の比較、および2012年前後の自殺傾向の報告を比較した。 フィナステリドについて報告された注目される副作用の警告を検出・検討した主な結果は以下のとおり。・データは2019年6月に入手し、2020年1月25日~2月28日に解析を行った。・VigiBaseにおいて、フィナステリド使用者の自殺傾向の報告356件、心理的有害事象報告2,926件、計3,282件の注目される有害事象の報告を入手した(男性3,206例[98.9%]、18~44歳のデータ入手可能例615/868例[70.9%])。・フィナステリド使用者における自殺傾向(ROR:1.63、95%信頼区間[CI]:1.47~1.81)および心理的有害事象(ROR:4.33、95%CI:4.17~4.49)の有意な不均衡シグナルが特定された。・感度解析で、若年患者(ROR:3.47、95%CI:2.90~4.15)および脱毛症患者(ROR:2.06、95%CI:1.81~2.34)は、自殺傾向の増加に対して有意な不均衡シグナルを示した。こうしたシグナルは、BPHの高齢患者では検出されなかった。・感度解析で、これらの有害事象の報告が2012年以降に大幅に増加したことも示された(ROR:2.13、95%CI:1.91~2.39)。・感度解析の結果は、示された有意な不均衡シグナルは、喚起された報告によるものおよび/またはフィナステリドの副作用に対して若年患者のほうが脆弱であることを示唆するものであった。

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認知症診断後1年以内の自殺リスク

 重度の認知症であれば、自殺を実行するための機能が損なわれることで自殺を防ぐことができるが、初期および軽度の認知症の場合、認知機能が比較的保たれているため、疾患の進行による将来への不安を醸成し、自殺の実行を助長する可能性がある。韓国・延世大学校のJae Woo Choi氏らは、認知症診断を受けてから1年以内の高齢者の自殺リスクについて調査を行った。Journal of Psychiatry & Neuroscience誌オンライン版2020年10月29日号の報告。アルツハイマー型認知症は自殺リスクが高かった 国民健康保険サービスのシニアコホートデータを用いて、2004~12年に認知症と診断された高齢者3万6,541例を抽出した。認知症の定義は、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコア26以下および臨床的認知症評価尺度(CDR)スコア1以上またはGlobal Deterioration Scale(GDS)スコア3以上とし、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、その他/特定不能の認知症を含めた。性別、年齢、併存疾患、インデックス年で1:1の傾向マッチングを行い認知症でない高齢者を対照群として抽出し、2013年までフォローアップを行った。認知症診断後1年以内の自殺による死亡の調整済みハザード比(aHR)を推定するため、時間依存的Cox比例ハザードモデルを用いた。 認知症診断を受けてから1年以内の高齢者の自殺リスクの調査の主な結果は以下のとおり。・認知症診断後、最初の1年間で46例の自殺が確認された。・認知症高齢者は、対照群と比較し、自殺リスクが高かった(aHR:2.57、95%信頼区間[CI]:1.49~4.44)。・アルツハイマー型認知症(aHR:2.50、95%CI:1.41~4.44)またはその他/特定不能の認知症(aHR:4.32、95%CI:2.04~9.15)の高齢者は、対照群と比較し、自殺リスクが高かった。・他の精神疾患を合併していない認知症患者(aHR:1.96、95%CI:1.02~3.77)および合併している認知症患者(aHR:3.22、95%CI:1.78~5.83)は、対照群と比較し、自殺リスクが高かった。・統合失調症(aHR:8.73、95%CI:2.57~29.71)、気分障害(aHR:2.84、95%CI:1.23~6.53)、不安症または身体表現性障害(aHR:3.53、95%CI:1.73~7.21)と認知症を合併している患者は、認知症を合併していない各疾患の患者と比較し、自殺リスクが高かった。 著者らは「本研究は、自殺率の高い韓国の高齢者を対象とした試験であり、異なる背景を有する集団に本結果をそのまま当てはめるには、注意が必要である」としながらも「認知症診断後1年以内での自殺リスクの上昇が認められた」としている。

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最前線の医療従事者におけるCOVID-19発生による不安・抑うつへの影響

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、人々の健康やウェルビーイングに深刻な影響を及ぼしている。最前線でCOVID-19への対応が求められる医療従事者では、その影響はさらに大きくなると考えられる。中国・山東大学のLi-Qun Xing氏らは、最前線で勤務する医療従事者の不安、抑うつ、ストレスに対するCOVID-19の心理的影響を明らかにするため、検討を行った。The International Journal of Social Psychiatry誌オンライン版2020年10月24日号の報告。 中国・済南市にある病院において最前線で勤務する医療従事者を対象に、横断的調査を実施した。基本的な人口統計データ、10項目のCOVID-19によるストレスに関する質問票、自己評価式不安尺度(SAS)、うつ性自己評価尺度(SDS)を含む自己評価質問票を用いて、対象者よりデータを収集した。COVID-19による不安、抑うつ、ストレスのリスクと頻度を推定した。 主な結果は以下のとおり。・対象者309人中、不安症は88人(28.5%)、うつ病は172人(56.0%)であった。・多変量ロジスティック回帰分析において、不安または抑うつと独立して関連が認められた因子は以下のとおりであった。【不安との関連】 ●30歳以下(OR:4.4、95%信頼区間[CI]:1.6~12.2) ●31~45歳(OR:3.1、95%CI:1.1~8.8) ●COVID-19隔離病棟での勤務(OR:2.3、95%CI:1.4~4.0) ●消毒対策が不十分だと感じる(OR:2.5、95%CI:1.5~4.3)【抑うつとの関連】 ●30歳以下(OR:3.8、95%CI:1.8~7.8) ●31~45歳(OR:2.7、95%CI:1.3~5.7) ●看護師(OR:2.5、95%CI:1.1~5.6) ●消毒対策が不十分だと感じる(OR:2.1、95%CI:1.3~3.5) 著者らは「最前線の医療従事者では、COVID-19発生により、不安や抑うつ症状の有症率が増加していた。とくに若年スタッフや看護師では、心理的ケアの必要性が高かった。専門家による感染予防対策は、医療従事者の心身の健康を守るために重要である」としている。

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統合失調症における抗精神病薬治療と抗うつ作用~メタ回帰分析

 統合失調症の陽性症状改善には、抗精神病薬が有用である。しかし、抗精神病薬の抗うつ効果および統合失調症の他の症状への影響については、よくわかっていない。福島県立医科大学の三浦 至氏らは、抗精神病薬の抗うつ効果が統合失調症の特定の症状に対する有効性と関連するかについて検討を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2020年11月5日号の報告。 成人統合失調症患者を対象として抗精神病薬の抗うつ効果を検討したランダム化二重盲検試験(RCT)を、電子データベースより検索した。ベースラインからの抑うつ症状の平均変化量についてメタ解析を実施し、他の症状への影響を調査するためメタ回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・35件のRCT(1万3,890例)をメタ解析に含めた。・全体として、抗精神病薬は、プラセボと比較し、抑うつ症状の軽減に対する効果が認められた。そのエフェクトサイズは、小~中程度であった(標準化平均差[SMD]:-0.27、95%CI:-0.32~-0.22、p<0.001)。・クロルプロマジン、ハロペリドール、ziprasidoneを除く抗精神病薬は、プラセボと比較し、有意な抗うつ効果が認められた(SMD:-0.19~-0.40)。・抗うつ効果の高さは、PANSS/BPRS合計スコア(β=0.618、p<0.001)、陽性症状(β=0.476、p<0.001)、陰性症状(β=0.689、p<0.001)、PANSS総合精神病理尺度(β=0.603、p<0.001)の改善効果の高さと有意な関連が認められた。 著者らは「ziprasidoneを除く第2世代抗精神病薬は、成人統合失調症患者の抑うつ症状改善に、小~中程度のエフェクトサイズを有することが示唆された。抗精神病薬の抗うつ効果は、他の症状の改善と有意な関連が認められ、陰性症状の改善と最も強い関連が認められた」としている。

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統合失調症スペクトラム障害患者における自閉症症状と自己スティグマの関連

 自己スティグマは、精神疾患患者の自尊心、QOL、自己効力感、治療アドヒアランス、寛解に悪影響を及ぼすことが知られている。自己スティグマに影響する性格特性を明らかにすることができれば、自己スティグマのマネジメントに役立つ情報が得られる可能性がある。これまでのメタ解析では、統合失調症患者は、健康対照者と比較し、自閉症スペクトラム指数(AQ)スコアが高いことが示唆されている。しかし、統合失調症スペクトラム障害患者における自閉症症状と自己スティグマとの関連はよくわかっていない。東北大学の小松 浩氏らは、この関連を明らかにするため、検討を行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2020年10月29日号の報告。 対象は、統合失調症スペクトラム障害患者(統合失調症、統合失調感情障害、妄想性障害)127例。自己スティグマの評価にはInternalized Stigma for Mental Illness(ISMI)、自閉症症状の評価にはAQを用いた。患者特性によるISMIとAQスコアとの違いを調査した。AQ合計スコアとISMI合計スコアとの関連を評価するため、年齢、性別で調整した後、重回帰分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・女性患者は、男性患者よりも、自己スティグマレベルが高かった。・未婚患者は、既婚患者と比較し、AQスコアが有意に高かった。・重回帰分析では、AQ合計スコアが、統合失調症スペクトラム障害患者のISMIの全体評価に対する予測因子である可能性が示唆された。 著者らは「本研究は、統合失調症スペクトラム障害患者における自閉症症状と自己スティグマとの関連を明らかにした最初の研究である。統合失調症スペクトラム障害患者の自己スティグマを評価、マネジメントするためには、自閉症症状を考慮することが重要である」としている。

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統合失調症スペクトラム障害の急性期入院患者に対する心理学的介入~メタ解析

 統合失調症スペクトラム障害患者へ心理的介入を実施するうえで、精神科急性期病棟に入院している期間は重要である。しかし、この期間での心理的介入効果は明らかになっていない。英国・ロンドン大学シティ校のK. Barnicot氏らは、精神科急性期病棟に入院している統合失調症スペクトラム障害患者に対する心理的介入について評価を行うため、メタ解析を実施した。Clinical Psychology Review誌オンライン版2020年10月17日号の報告。 統合失調症スペクトラム障害患者を対象に精神科急性期病棟で実施された心理的介入のランダム化比較試験(RCT)を、Embase、Medline、PsycInfoのデータベースよりシステマティックに検索した。群間における介入後のアウトカムの比較およびフォローアップ時の再発・再入院率を明らかにするため、変量効果メタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・29件のRCTをメタ解析に含めた。・心理的介入は、対照群と比較し、介入後の陽性症状、社会的機能、治療コンプライアンスの改善をもたらし、再発・再入院リスクを低下させた。・特定の心理的介入の効果は以下のとおりであった。【重要アウトカムに対する効果】強度80%超 ●心理教育【いくつかのアウトカムに対する効果】強度80%未満 ●アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT) ●認知行動療法(CBT) ●メタ認知療法(MCT) 著者らは「精神科急性期病棟に入院している統合失調症スペクトラム障害患者に対し、心理的介入は有効である可能性がある。しかし、バイアスリスクが高いまたは不明なエビデンスが多く、一部の分析は不十分であった。さらなる研究では、より厳密に設計されたRCTのデータを用いたメタ解析が求められる」としている。

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COVID-19と精神疾患、相互に発症リスク高める

 COVID-19患者において精神疾患の後遺症リスクが高く、また精神疾患がCOVID-19の独立したリスク因子である可能性が、英国・オックスフォード大学のMaxime Taquet氏らによる電子健康記録ネットワークコホート研究で示唆された。Lancet Psychiatry誌オンライン版2020年11月9日号に掲載。 本研究は、米国の54施設の患者6,980万人の電子健康記録から匿名化データを収集しているTriNetX Analytics Networkを使用した。TriNetXには2020年1月20日~8月1日にCOVID-19と診断された6万2,354人のデータが含まれ、COVID-19および他のさまざまなイベントを発症した患者コホートを作成し評価した。傾向スコアマッチングを用いて、COVID-19のリスク因子による交絡と重症度を調整した。COVID-19診断後14〜90日における精神疾患、認知症、不眠症の発症率とハザード比(HR)を調べた。 主な結果は以下のとおり。・精神疾患歴のない場合、COVID-19の発症は他の6イベントと比較して、診断後14~90日における精神疾患の発症率の増加と関連した(すべてp<0.0001)。 - インフルエンザに対するHR:2.1、95%CI:1.8~2.5 - 他の呼吸器感染症に対するHR:1.7、95%CI:1.5~1.9 - 皮膚感染症に対するHR:1.6、95%CI:1.4~1.9 - 胆石症に対するHR:1.6、95%CI:1.3~1.9 - 尿路結石症に対するHR:2.2、95%CI:1.9~2.6 - 大きな骨の骨折に対するHR:2.1、95%CI:1.9~2.5・不安障害、不眠症、認知症のHRが最も高かった。・COVID-19診断後14〜90日における何らかの精神疾患の発症率は18.1%(95%CI:17.6~18.6)、うち新規発症では5.8%(95%CI:5.2~6.4)であった。同期間における認知症の新規発症率は、65歳以上で1.6%(95%CI:1.2~2.1)であった。・前年に精神疾患と診断された人は、COVID-19発症率が高かった(相対リスク:1.65、95%CI:1.59~1.71、p<0.0001)。このリスクはCOVID-19の既知の身体的リスク因子とは独立していたが、社会経済的因子による残留交絡の可能性を排除できない。

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家族構成とうつ病との関係

 配偶者またはパートナーや子供の人数などの家族構成と生涯うつ病有病率との関連を、英国・キングス・カレッジ・ロンドンのAlexandros Giannelis氏らが調査を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年10月10日号の報告。 中高年を対象としたプロスペクティブ研究であるUKバイオバンクのデータを使用した。生涯うつ病は、フォローアップ時のメンタルヘルス関連の質問票の一部を用いて評価した。家族構成とうつ病との関連は、ロジスティック回帰を用いて推定した。うつ病の多遺伝子性リスクスコア(polygenic risk score)を含む社会的、人口統計学的およびその他の潜在的な交絡因子で調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・成人5万2,078人(平均年齢:63.6±7.6歳、女性の割合:52%)を対象に分析を行った。・生涯うつ病オッズ比は、配偶者またはパートナーと生活している人において大幅に低かった(OR:0.67、95%CI:0.62~0.74)。・生涯うつ病オッズ比は、子供がいない人と比較し、子供が1人(OR:1.17、95%CI:1.07~1.27)、子供が3人(OR:1.11、95%CI:1.03~1.20)、子供が4人以上(OR:1.27、95%CI:1.14~1.42)いる人で高いことが示唆された。・配偶者やパートナーと同居していないが子供がいる人では、生涯うつ病オッズ比が高かった。・年齢、性別、経済的に裕福でない地域での居住(neighbourhood deprivation)、うつ病の遺伝的リスクで調整した場合でも、この結果は一貫していた。・メンデルランダム化解析では、生涯うつ病に対する子供の人数との関連が示唆された。・本検討の限界として、婚姻の有無が確認できなかったことが挙げられる。 著者らは「配偶者やパートナーとの生活は、うつ病の可能性を低下させることに寄与する。また、1人または3人以上子供がいる場合、とくに同居している配偶者やパートナーがいない人では、うつ病有病率が上昇する」としている。

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新人看護師の燃え尽き症候群が長期アウトカムに及ぼす影響

 看護師や助産師が、燃え尽き症候群を経験することは少なくない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のAnn Rudman氏らは、看護師のキャリア初期における燃え尽き症候群エピソードが、卒後10年間の認知機能、抑うつ症状、不眠症に及ぼす長期的な影響について調査を行った。EClinicalMedicine誌2020年10月5日号の報告。看護師キャリア初期の燃え尽き症候群は認知機能低下と睡眠障害と関連 本研究では、看護師を対象とした3つのコホート研究の縦断的観察研究として実施した。26件の看護プログラムより看護学生を募集した。燃え尽き症候群の症状は、卒後3年間は毎年調査し、卒後11~15年の長期調査を1回実施した。フォローアップへの参加に同意した看護師は、2,474人(62%)であった。燃え尽き症候群、認知機能、抑うつ症状、睡眠障害の測定には、それぞれ、Oldenburg Burnout Inventory、本研究特有の方法、うつ病調査票、カロリンスカ眠気尺度を用いた。キャリア初期の燃え尽き症候群と関連する因子は、フォローアップ時の燃え尽き症候群のレベルで調整した後、ロジスティック回帰分析を用いて特定した。 看護師のキャリア初期における燃え尽き症候群が及ぼす長期的な影響を調査した主な結果は以下のとおり。・卒後3年間で高レベルの燃え尽き症候群を報告した看護師は299人(12.3%)であった。・看護師キャリア初期の高レベルの燃え尽き症候群は、現在の燃え尽き症候群のレベルを考慮すると、10年後の認知機能低下、抑うつ症状、睡眠障害と有意な関連が認められた。・現在の燃え尽き症候群の症状やほかのアウトカム変数で調整した後、キャリア初期に燃え尽き症候群が認められた看護師は、認知機能低下と睡眠障害の頻度が高かったが、抑うつ症状との関連は認められなかった。 著者らは「看護師は、キャリアの早い段階から、慢性的であらがうことのできないストレスによって引き起こされる有害な問題を抱えており、早期より看護教育や新人研修の一部として予防的介入を進めるべきである」としている。

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