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うつ病患者の睡眠に対する運動の影響~メタ解析

 不眠症は、うつ病の発症、経過、再発を予測する因子である。しかし、うつ病における不眠症治療オプションに関するシステマティックレビューは十分に行われていなかった。スイス・バーゼル大学のGavin Brupbacher氏らは、うつ病患者の睡眠に対する運動療法の影響を調査するため、メタ解析を実施した。Sleep Medicine Reviews誌オンライン版2021年1月23日号の報告。 7,725件をスクリーニングし、13種類の治療にランダム化された17研究(1,645例)を定量的合成に含めた。 主な結果は以下のとおり。・ネットワークメタ解析では、受動的なコントロール条件と比較し、中程度の有酸素運動を除くすべての運動介入は、有意に良好な睡眠アウトカムをもたらした。・通常治療と比較し、有意に良好な効果が認められた運動介入は以下のとおりであった。 ●通常治療と心身運動介入の併用(SMD:-0.46、95%CI:-0.80~-0.12) ●激しい筋力運動介入(SMD:-0.61、95%CI:-1.12~-0.10)・ペアワイズメタ解析では、受動的なコントロール条件と比較し、心身運動介入が有益な効果を持っていることが示唆された(SMD:-0.54、95%CI:-0.85~-0.23)。・ネットワークメタ解析は、統計学的に強い頑健性が認められ、不均一性、一貫性の欠如、間接性は低かった。・主に研究内バイアスの影響により、調査結果の信頼度は、中程度~非常に低いであった。 著者らは「本研究は、うつ病患者の睡眠の質を改善するための運動介入の有効性を評価した最初のネットワークメタ解析である。うつ病治療において、運動療法の併用は有用であることが確認された。この結果は、臨床医がエビデンスに基づいた治療を決定するうえで役立つであろう」としている。

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乳児への栄養方法とその期間が母親の産後うつ病に及ぼす影響~JECS研究

 母乳による育児は、世界中で推奨されている。母乳育児と産後うつ病との関係を調査した研究はいくつか行われているが、矛盾した結果が得られている。富山大学の島尾 萌子氏らは、生後1~6ヵ月の乳児への栄養方法が母親の産後うつ病に及ぼす影響、産後うつ病に対する授乳中の母親が行ったことの影響について調査を行った。Journal of Affective Disorders誌2021年4月15日号の報告。 JECS(子どもの健康と環境に関する全国調査)に参加した親子のデータを分析した。対象は、産後1ヵ月で抑うつ症状を呈さなかった母親7万1,448人。調査には、自己記入式質問票を用いた。 主な結果は以下のとおり。・産後6ヵ月間母乳だけで育児を続けた母親は、そうでなかった母親と比較し、産後うつ病リスクが低かった。・摂食中に乳児とのアイコンタクトを維持したり、話し掛けたりした母親は、そうでなかった母親と比較し、栄養方法やその期間と関係なく産後うつ病リスクが低かった。・産後6ヵ月間母乳だけで育児を続け、摂食中に乳児とのアイコンタクトを維持したり、話し掛けたりした母親の産後うつ病のオッズ比は0.69(95%CI:0.61~0.79)であり、最も低かった。 著者らは「母乳育児の推奨や乳児との関わりに関する適切な情報提供を行うことで、産後うつ病の発症を抑制できる可能性がある」としている。

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不妊症女性のうつ病有病率~メタ解析

 不妊症に悩む女性におけるうつ病などのメンタルヘルスの問題は、男性よりも深刻な健康上の問題である。うつ病は、個人の健康に悪影響を及ぼし、生活の質を低下させる可能性がある疾患である。イラン・Shahid Beheshti University of Medical SciencesのZahra Kiani氏らは、不妊症の治療反応に対するうつ病の影響を考慮したうえでシステマティックレビューおよびメタ解析を実施し、不妊症女性におけるうつ病有病率を調査した。Fertility Research and Practice誌2021年3月4日号の報告。 各種データベースより、2000年から2020年4月5日までに公表された文献を、独立した2人のレビュアーが検索した。検索キーワードには、うつ病、障害、不妊症、有病率、疫学などを用い、ペルシャ語および英語で検索した。文献のタイトル、アブストラクト、フルテキストを評価した。レビュアーは、Newcastle-Ottawa Scaleを用いてエビデンスの質を評価した後、STATA version 14を用いて調査結果を分析した。不均一性および出版バイアスの評価には、I2およびEgger's検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・32件をメタ解析に含め、文献の不均一性を考慮し、変量効果モデルを用いて検討した。・抽出された研究には、不妊症女性9,679例が含まれた。・プールされた有病率の最低値は21.01%(95%CI:15.61~34.42、Hospital Anxiety and Depression Scaleで評価)、最高値は52.21%(95%CI:43.51~60.91、ベックうつ病評価尺度で評価)であった。・不妊症女性におけるプールされたうつ病の有病率は、低中所得国で44.32%(95%CI:35.65~52.99)、高所得国で28.03%(95%CI:19.61~36.44)であった。 著者らは「不妊症女性のうつ病有病率は、一般人口よりも高かった。とくに低中所得国では、不妊症女性のうつ病に対する適切な対策、計画、政策を確立し、この問題を減少させるための取り組みを行う必要がある」としている。

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ミドリムシ摂取でコロナ禍の不安疲労が解消する?

 コロナ自粛により自律神経が乱れ、多くの日本国民が不安や疲労に苛まれている。これを打破するために、一躍ブームとなったミドリムシが改めて見直されるかもしれないー。3月17日、『コロナ禍における新たな社会課題「不安疲労」の実態と「腸ツボ」刺激によるアプローチ~多糖成分パラミロン最新研究報告~』(主催:パラミロン研究会)が開催。久保 明氏(東海大学医学部客員教授/内分泌・糖尿病専門医)と内藤 裕二氏(京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学 准教授)らが登壇し、ミドリムシの生成物がいかに現代社会に必要か解説した。ミドリムシが生成するパラミロンとは パラミロンとはユーグレナ(和名:ミドリムシ)だけが生成する細胞内に貯蔵される多糖体で、摂取すると腸に直接作用し、便中から未分解、無傷の状態で検出される成分である。これまでの臨床試験では、身体的・精神的疲労感軽減をはじめ、血糖値の上昇抑制やLDLコレステロールの低下のような代謝機能改善に対する有効性が報告されている。パラミロンの中でもEOD-1株が有用だが、機能性についてはまだ解明途中であり、現在、免疫系や消化器系をはじめとするさまざまな領域の研究者が探求している。コロナ禍、4人に1人が不調を感じている その研究者の1人で、コロナ禍で顕在化した新しいタイプの疲労を『不安疲労』として提唱する久保氏は「不安疲労とは、“なんとなくだるい”という身体的疲労感と“やる気が出ない”、“不安だ”という精神的疲労感が結びついたもの」と解説し、「Twitter上でも長引くコロナ禍で多くの人がこの不安疲労を抱えていることが如実に表れている。実際に本研究会が行った実態調査(n=1,200)でも52.7%が不安疲労を感じることが増えたと回答した」と説明し、「なかでも若い世代の女性は社会的サポートの不足や女性特有の体調変化に悩み、さらには女性ホルモンのエストロゲンの分泌不足により自律神経の機能低下が生じて不安疲労に陥りやすい」とも話した。また、この状態が続くと、うつ病だけではなく、活性酸素とともに動脈硬化の進展など老化を加速させる可能性があるが、「パラミロンを含んだ食品を摂取した群では早期に副交感神経活動が優位になり、身体的・精神的いずれの疲労感も軽減したことから、自律神経の乱れを整えるために姿勢を正したウォーキングなどを行うとともにパラミロン摂取が対策の一助になる」と説明した。パラミロンが腸の感覚受容体を刺激 続いて、内藤氏がパラミロンによる腸管の乱れ解消法について説明した。消化管は脳腸相関で相互に密接に影響し合っているため、ストレスがかかると腹痛が生じ下痢や便秘などの消化・吸収機能に影響が出る。一方、消化管にはさまざまな化学的・物理的刺激を感受するセンサーが備わっており、温度感受性Transient Receptor Potential(TRP)チャネルや甘味を感知する味覚受容体T1R2、嗅覚受容体はその代表例だ。つまり、味は舌の味蕾だけではなく胃や小腸で、匂いは鼻以外に大腸でも感じている。この腸管粘膜にある受容体などのセンサー(腸ツボ)を同氏は整体のつぼ押しに例え“腸ツボ”と称し、「腸管粘膜の細胞に点在する腸ツボを刺激することで神経系・免疫系・内分泌系の細胞が活性化することが解明されてきた。その物理的な刺激を担うのがパラミロンである」と解説した。 今回のコロナ禍の事例として、同氏は大島 忠之氏らの論文1)を紹介。それによると消化器症状の悪化を訴えたのは健康成人で6%程度に対し、機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群を罹患している方では40%に上った。この状況を踏まえ、「これらの症状もパラミロンによって腸内細菌叢を改善させることで良い方向に向けることができるのかもしれない」と締めくくった。

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第22回 うつ傾向、うつ病【高齢者糖尿病診療のコツ】

第22回 うつ傾向、うつ病Q1 高齢者糖尿病とうつはどのような関係がありますか?糖尿病患者はうつ病や質問紙法で評価されるうつ傾向をきたしやすくなります。42の研究のメタ解析では、糖尿病患者は、約3割がうつ傾向を有し、約1割が面接法でうつ病と診断されます1)。1型、2型を問わず、糖尿病がない人と比べてうつ病の頻度が約2倍多くなっています1)。J-EDIT研究でも、高齢糖尿病患者の約39%は、GDS-15で評価したうつ傾向を有していました2)。うつ病があると糖尿病の発症は1.60倍で、一方、糖尿病があるとうつ病の発症リスクが1.15倍となり両者は双方向の関係があります3)。高齢糖尿病患者にうつ症状やうつ病が多い原因は高血糖、低血糖、糖尿病合併症、糖尿病治療、ADL低下、視力障害、尿失禁などが考えられます。糖尿病患者におけるうつ傾向は血糖コントロール状態と関連します。HbA1cが7.0%以上の糖尿病患者は、CES-Dで評価したうつ状態になりやすく、またうつ状態が再発しやすくなります4)。英国の追跡研究では、HbA1cが1%上昇するごとにうつ傾向のリスクが1.17倍になると報告されています5)。うつは血糖コントロールを悪化させ、さまざまな合併症を引き起こし、さらにうつを悪化させるという悪循環に陥る可能性もあります。一方、低血糖もうつ症状を増加させます。低血糖発作を起こした糖尿病患者はうつ病のリスクが1.73倍となりますが、この傾向は加齢とともに大きくなるとされています6)。J-EDIT研究でも、インスリン治療中でかつ低血糖の頻度が月1回以上あるとGDS-15で評価したうつ症状が多く見られました2)。一方、うつ病は重症低血糖のリスクになることが知られており7)、この両者も悪循環を形成しうることに注意する必要があります。糖尿病の合併症の中では神経障害による疼痛や身体の不安定さがうつ症状を引き起こします8)。また、糖尿病網膜症などによる視力障害、脳卒中、心血管障害などの大血管障害もうつのリスクとなります。糖尿病の治療状況自体もうつのリスクとなり得ます。逆に、社会的支援やボランティアなどの社会活動への参加、運動療法はうつに対し保護的に働きます。また、高齢者では肉親や友人との離別や死亡を意味するライフイベントが増加するとうつ病をきたしやすくなります。その他、女性、過去のうつ病の既往、社会的な孤立、家族関係の不良、介護環境の悪化もうつ傾向やうつ病発症の誘因となります。Q2 高齢者糖尿病にうつ(うつ傾向やうつ病)はどのような影響を及ぼしますか?うつは治療へのアドヒアランスを低下させ、血糖コントロール不良の原因となります。うつは高血糖のみならず、重症低血糖のリスクとなるため、治療に際しては十分な注意が必要です7)。うつがあると細小血管障害・大血管障害、要介護、死亡のリスクが高くなります。うつ傾向を合併した高齢糖尿病患者は、糖尿病もうつ傾向もない人と比べて、大血管症、細小血管症、要介護、死亡をそれぞれ2.4倍、8.6倍、6.9倍、4.9倍起こしやすく、うつ病を合併した場合も同様に糖尿病合併症、要介護、死亡をきたしやすいと報告されています9)。J-EDIT研究ではGDS-15が8点以上の糖尿病患者は年齢、性、HbA1c、収縮期血圧、non-HDL-C、HDL-Cを補正しても、脳卒中を2.56倍起こしやすいという結果が得られています2)。うつ病が脳卒中発症を増加させる機序は、1)視床・下垂体・副腎系の活性化によるコルチゾル増加や交感神経活性亢進、2)内皮細胞機能異常、3)血小板機能亢進、4)炎症マーカー増加などが考えられています。糖尿病患者におけるうつ病は認知症発症のリスクともなります10)。また、うつ病があるとフレイルのリスクは3.7倍、フレイルがあるとうつ病の発症は1.9倍起こりやすい11)ことが知られており、うつ傾向は心理的フレイルと呼ばれることもあります。糖尿病患者でうつ傾向やうつ病がある場合には認知機能障害やフレイルがないかをチェックすることが大切です。Q3 高齢者糖尿病ではどのようにうつを評価しますか?高齢者のうつ病ではうつの気分障害が目立たず、体重減少などの身体症状が前面に出るために、見逃されやすいことに注意する必要があります。うつ傾向は大うつ病とは異なり、一定期間持続する一定数以上のうつ症状を示し、GDS-15(高齢者うつスケール)などの質問票で評価します。一方、うつ病(大うつ病性障害)の診断はDSM-5に基づいて行います。うつ病は抑うつ気分、興味または喜びの喪失のいずれかがあてはまり、著しい体重減少(増加)または食欲低下、不眠または睡眠過多、易疲労感、精神運動制止または焦燥、無価値観・罪悪感、思考力・集中力の減退または決断困難、自殺企図の9項目中で5個以上満たすものを大うつ病と定義されます。スクリーニングツールとしてGDS-5、GDS-15、PHQ-9などが用いられていますが、GDS-5が簡便で使用しやすいと思います。GDS-5はうつ症状の評価に用いられますが、うつ症状と大うつ病の診断は必ずしも一致しないことに注意が必要です。うつ病の診断はDSM-5で行います。診断する際には、まず最初に物事に対してほとんど関心がない、楽しめないなど「興味・喜びの消失」や気分が落ち込む、憂うつになるなどの「抑うつ気分」の質問を行い、さらに食欲、睡眠などの質問をしていくとよいでしょう。不安・焦燥が強い、自殺念慮・企図がある、妄想、躁状態がみられる(既往がある)場合には早急に精神科専門医へのコンサルトが必要です。また、下記の治療で効果が得られない場合も精神科専門医へのコンサルトを行います。Q4 うつを合併した高齢者糖尿病はどのような治療を行いますか?うつ傾向、うつ病の対策では要因となる医学的要因を除去することが大切です。まず、低血糖を避けつつ、血糖をコントロールします。上記のように、低血糖は軽症でもうつ傾向を引き起こし、インスリン注射自体もうつの誘因となり得ます。したがって、2型糖尿病患者では可能な限りインスリンを離脱し、低血糖のリスクの少ない薬剤で治療することが大切です。一方で高血糖を下げることもうつの対策で重要です。軽度のうつ傾向であれば,心理的アプローチで医療スタッフによる傾聴やカウンセリングなどを行います。薬物療法単独と比較し、生活指導や心理療法を併用した方が治療効果は高まることが示されています12)。心理療法では認知行動療法が有効であるとされています。一般的に運動療法はうつ症状に対して有効であるとされ、運動を通して自信を取りもどし、他の人との関わりが増えることが利点です。運動教室やデイケアで運動療法を行うことで軽快するケースもあります。心理的アプローチで改善しない場合や中等度のうつ病の場合は抗うつ薬を使用します。実際に抗うつ薬による治療でうつだけでなく、血糖コントロールも有意に改善するという報告もあります13)。抗うつ薬ではまず、SSRI、SNRI、またはNaSSAが使用されます。SSRI やSNRI では服薬初期に嘔気・嘔吐の副作用が出やすいので,あらかじめそのことをお伝えし,必要であれば制吐薬を併用します。服薬初期に現れる副作用を乗り切れば,その後は問題なく服薬を継続できることが多いと思います。三環系抗うつ薬は不整脈、起立性低血圧、体重増加の関連が指摘されており、高齢者での使用は以前より少なくなっています。抗うつ薬は少量から開始し、忍容性を見ながら増量し、治療効果をみることが原則となります。通常量まで増量し、効果が得られない場合や自殺企図がある場合は精神科専門医への紹介が必要となります。糖尿病性合併症の有痛性神経障害はうつの原因になり得ます。両者は互いに影響を及ぼし、睡眠障害、移動度の低下、転倒、社会生活の制限をきたし、脳卒中、要介護のリスクを高めます(図1)。神経障害とうつを合併した患者では心理的アプローチ、フットケア、転倒予防を行います。また、セロトニン•ノルアドレナリン選択的再取り込み阻害薬(SNRI)のデュロキセチンはこうした患者に対してよい適応となります。神経障害に対してはカルシウムチャネルα2δ(アルファ2デルタ)リガンドのプレガバリンやミロガバリンも使用できますが、高齢者ではふらつき、転倒などに注意する必要があります。画像を拡大する1)Anderson RJ, et al. Diabetes Care 24:1069–1078, 2001.2)荒木 厚, 他.日本老年医学会雑誌52:4-10, 2015.3)Mezuk B, et al. Diabetes Care 31, 2383–2390, 2008.4)Maraldi C, et al. Arch Int Med 167: 1137-1141, 2007.5)Hamer M, et al. Psychol Med 41:1889-1896, 2011.6)Shao W, et al. Curr Med Res Opin 29:1609-1615, 2013.7)Katon WJ, et al. Ann Fam Med 11:245-250, 2013.8)Vileikyte L, et al. Diabetologia 52:1265-1273, 2009.9)Black SA, et al. Diabetes Care 26:2822-2828, 2003.10)Katon W et al. Arch Gen Psychiatry 69: 410–417, 2012.11)Soysal P, et al. Ageing Res Rev 36:78-87, 2017.12)Atlantis E, et al.BMJ Open 4, e004706,2014.13)Baumeister H, et al.Cochrane database Syst. Rev. 12, CD008381,2012.

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統合失調症患者の心血管リスクと認知障害との関連~メタ解析

 統合失調症では、認知機能障害とメタボリックシンドローム(MetS)などの心血管リスクとの関連が報告されている。認知機能障害や心血管リスク因子は、一般集団においても認知機能を低下させ、統合失調症の認知障害の一因となりうる。大日本住友製薬の萩 勝彦氏らは、統合失調症患者の認知機能障害と心血管リスク因子、認知障害との関連について調査を行った。JAMA Psychiatry誌オンライン版2021年3月3日号の報告。 Embase、Scopus、MEDLINE、PubMed、コクランデータベースより、2020年2月25日までに公表された研究を、キーワード(統合失調症、代謝系問題、認知機能)を使用して抽出した。会議録、臨床トライアルレジストリ、関連文献のリファレンスリストも併せて検索した。メタ解析には次の研究を含めた。(1)統合失調症または統合失調症感情障害を対象とした認知機能を調査した研究(2)MetS、糖尿病、肥満、過体重、脂質異常症、インスリン抵抗性などの心血管リスク因子とアウトカムとの関連を調査した研究(3)統合失調症または統合失調症感情障害の認知能力について、心血管リスク因子の有無により比較した研究。文献ごとに2~3人の独立したレビュアーによりデータを抽出し、ランダム効果モデルを用いてメタ解析を実施した。主要アウトカムは、臨床的に検証済みの尺度を用いて測定した全体的な認知機能とした。 主な結果は以下のとおり。・抽出された27件の研究をメタ解析に含めた(統合失調症患者:1万174例)。・MetSを有する統合失調症患者では、全体的な認知機能の欠損が認められた。 【統計学的に有意な欠損】 ●MetS(13研究、2,800例、エフェクトサイズ[ES]:0.31、95%CI:0.13~0.50、p=0.001) ●糖尿病(8研究、2,976例、ES:0.32、95%CI:0.23~0.42、p<0.001) ●高血圧(5研究、1,899例、ES:0.21、95%CI:0.11~0.31、p<0.001) 【有意差はないがより重度な欠損】 ●肥満(8研究、2,779例、p=0.20) ●過体重(8研究、2,825例、p=0.41) ●インスリン抵抗性(1研究、193例、p=0.18)・特定の認知領域に対する機能低下は、認知機能障害および心血管リスク因子と関連が認められた。 【5つの領域】 ●糖尿病 ES範囲:0.23(95%CI:0.12~0.33)~0.40(95%CI:0.20~0.61) 【4つの領域】 ●MetS ES範囲:0.15(95%CI:0.03~0.28)~0.40(95%CI:0.20~0.61) ●高血圧 ES範囲:0.15(95%CI:0.04~0.26)~0.27(95%CI:0.15~0.39) 著者らは「統合失調症患者の全体的な認知機能に対するMetS、糖尿病、高血圧の有意な関連が認められた」としている。

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妊娠中の抗うつ薬使用と子供の自閉スペクトラム症およびADHDリスク~メタ解析

 妊娠中のSSRIやSNRIなどの抗うつ薬使用と子供の自閉スペクトラム症(ASD)および注意欠如多動症(ADHD)リスクとの関連について、観察研究では一貫性が認められていない。関連を指摘する報告に対し、考慮されていない交絡因子の影響を示唆する見解も認められる。イスラエル・ヘブライ大学のRegina Leshem氏らは、この関連性を検討し、バイアス原因を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Current Neuropharmacology誌オンライン版2021年3月3日号の報告。 Medline、Embase、Cochrane Libraryより、2019年6月までに報告された妊娠中の抗うつ薬使用とASD、ADHDとの関連を調査した研究を検索した。データの選択および抽出は、PRISMA 2009ガイドラインに基づき実施した。ランダム効果モデルを用いて結果をプールし、各研究の調整済み推定値を用いてオッズ比(OR)、95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・18件の研究をメタ解析に含めた。・出生前のSSRI、SNRI使用と子供のASD、ADHDリスクとの間に関連性が認められた。 ●ASD(OR:1.42、95%CI:1.23~1.65、I2=58%) ●ADHD(OR:1.26、95%CI:1.07~1.49、I2=48%)・妊娠前のSSRI、SNRI使用においても、同様の関連が認められた。 ●ASD(OR:1.39、95%CI:1.24~1.56、I2=33%) ●ADHD(OR:1.63、95%CI:1.50~1.78、I2=0%) 著者らは「妊娠中のSSRI、SNRI使用と子供のASD、ADHDリスクとの関連が認められたが、この関連は妊娠前の使用でもみられており、考慮されていない交絡因子が影響している可能性がある。今後、考慮されていない交絡因子をさらに評価し、ネットワークメタ解析が行われることが望まれる」としている。

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うつ病性障害のない認知症患者の抑うつ、非薬物療法が有効/BMJ

 大うつ病性障害のない認知症患者の抑うつ症状の治療において、認知活性化療法やマッサージ/接触療法などを用いた非薬物的介入は、臨床的に意義のある症状の改善効果をもたらすことが、カナダ・セント・マイケルズ病院のJennifer A. Watt氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年3月24日号で報告された。抑うつや孤立感、孤独感などの症状を軽減するアプローチとして、地域で患者に非薬物的介入を行う「社会的処方(social prescribing)」への関心が高まっている。また、非薬物療法(たとえば、運動)が認知症患者の抑うつ症状を低減することが、無作為化試験で示されている。一方、大うつ病性障害の診断の有無を問わず、認知症患者の抑うつ症状に関して、薬物療法と非薬物療法の改善効果を比較した研究は知られていないという。抑うつ症状の軽減効果をネットワークメタ解析で評価 研究グループは、認知症の神経精神病学的症状としての抑うつを経験するか、大うつ病性障害の診断を受けた認知症患者における抑うつ症状の軽減効果を、薬物療法と非薬物療法とで比較する目的で、系統的レビューとネットワークメタ解析を行った(カナダ・Alberta Critical Care Strategic Clinical Networkの助成による)。 2020年10月15日の時点で、5つのデータベース(Medline、Embase、Cochrane Library、CINAHL、PsycINFO)に登録された文献を検索した。また、灰色文献(grey literature)や、選出された研究の引用文献も調査した。対象は、認知症患者の抑うつ症状に関して、薬物療法または非薬物療法を、通常ケアまたはその他の介入と比較した無作為化試験とした。通常ケアは、「患者の要求や好みに基づく、医療(医師または看護師への受診)および社会的ケア(入浴などの日常生活動作の介助)の適切な利用」と定義された。 8人の研究者が2人1組で、個々の文献から集計レベルのデータを抽出し、Cochrane risk of bias toolを用いて個々の無作為化対照比較試験のバイアスのリスクを評価した。次いで、ベイズ流の変量効果ネットワークメタ解析と従来のペアワイズメタ解析を行い、コーネル認知症抑うつ尺度(CSDD)の標準化平均差と逆変換平均差を導出した。大うつ病性障害を有する患者の解析はできなかった 256件の試験(認知症患者2万8,483例)が系統的レビューに含まれた。試験の91%は平均年齢が70歳以上であり、73%は女性が50%以上を占めていた。個々の試験の知見をレビューする際の最大のリスクは、データの欠損であった。 抑うつ症状を経験し、大うつ病性障害の診断を受けていない認知症患者のネットワークメタ解析(213件の試験、2万5,177例、試験間分散[τ2]0.23[中等度])では、以下の7つの非薬物的な介入法が、通常ケアと比較して抑うつ症状の低減効果が優れていた。 認知活性化療法(平均群間差:-2.93、95%信用区間:-4.35~-1.52)、認知活性化療法とコリンエステラーゼ阻害薬の併用(-11.39、-18.38~-3.93)、マッサージ/接触療法(-9.03、-12.28~-5.88)、集学的ケア(-1.98、-3.80~-0.16)、作業療法(-2.59、-4.70~-0.40)、運動と社会的交流と認知活性化療法の併用(-12.37、-19.01~-5.36)、回想法(-2.30、-3.68~-0.93)。 大うつ病性障害の診断を受けていない認知症患者における抑うつ症状の低減に関して、マッサージ/接触療法、認知活性化療法とコリンエステラーゼ阻害薬の併用、認知活性化療法と運動と社会的交流との併用は、いくつかの薬物療法と比較して改善効果が優れていた。これら以外では、薬物療法と非薬物療法の効果には、統計学的に有意な差は認められなかった。 大うつ病性障害を有する認知症患者の抑うつ症状の低減に関しては、介入の効果を比較した研究(22件、1,829例)では、臨床的および方法論的な異質性のため、ネットワークメタ解析を行うことはできなかった。 著者は、「薬物療法単独では、通常ケアを超える効果はないことも明らかとなった」としている。

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うつ病に対するプロバイオティクスの有効性、安全性

 プロバイオティクス(腸内細菌叢)は、脳腸軸の活性を通じて、気分障害や不安症に関連する症状を改善することが、多くの研究で報告されている。しかし、治療歴のないうつ病患者を対象としてプロバイオティクスの効果を検討した試験は行われていなかった。カナダ・クイーンズ大学のCaroline J. K. Wallace氏らは、治療歴のないうつ病患者10例を対象にプロバイオティクス投与前後の抑うつ症状の変化を調査するため、8週間オープンラベル試験を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2021年2月15日号の報告。 対象患者は、カナダ・オンタリオ州キングストンの住民より募集した。プロバイオティクス製剤(Cerebiome)を3×109CFUで1日1回、8週間投与した。うつ症状は、検証済みの臨床尺度と自己報告アンケート(CAN-BINDプロトコール)を用いて評価した。データは、ベースライン時、4、8週目に収集した。 主な結果は以下のとおり。・感情障害の改善は、投与4週目で観察され、8週目まで持続した。・主観的な睡眠の質の改善は、8週目までに認められた。・プロバイオティクスに関連した有害事象は認められなかった。 著者らは「本研究では、治療歴のない中等度のうつ病患者に対するプロバイオティクスの有効性および忍容性が示唆されが、さらに包括的な研究を通じて、結論を導き出す必要がある」としている。

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急性期興奮症状に対する抗精神病薬筋注製剤の比較

 香港大学のEsther W. Chan氏らは、救急での急性期興奮症状に対する最初の薬物療法として、オランザピンまたはハロペリドール筋注製剤の安全性および有効性に関して、ミダゾラムとの比較検討を行った。EClinicalMedicine誌2021年2月11日号の報告。 香港の6ヵ所の救急部を対象として、2014年12月~2019年9月にプラグマティックランダム化二重盲検アクティブコントロール試験を実施した。非経口の鎮静薬を必要とする急性期興奮症状を有する18~75歳の患者を、ミダゾラム筋注5mg群(56例)、オランザピン筋注5mg群(54例)、ハロペリドール筋注5mg群(57例)にランダムに割り付けた。主要アウトカムは、適切な鎮静を達成するまでの時間、各フォローアップ時点で適切な鎮静を達成した患者の割合とした。鎮静レベルの測定には、6レベルの検証済み尺度(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT02380118)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・ランダム化された206例中167例(平均年齢:42歳、男性:98例[58.7%])を分析した。・各薬剤の鎮静を達成するまでの時間の中央値は、以下のとおりであった。 ●ミダゾラム筋注5mg群:8.5分(IQR:8.0) ●オランザピン筋注5mg群:11.5分(IQR:30.0) ●ハロペリドール筋注5mg群:23.0分(IQR:21.0)・60分後で適切な鎮静を達成した患者の割合に差は認められなかった(各々:98%、87%、97%)。・ミダゾラムの鎮静を達成するまでの時間は、オランザピン(p=0.03)およびハロペリドール(p=0.002)と比較し、統計学的に有意な差が認められた。・有害事象の発生率は、3群間で同様であった。・ハロペリドール群において、ジストニア1例、心停止1例が報告された。 著者らは「ミダゾラム筋注は、オランザピンやハロペリドールと比較し、急性期興奮症状を有する患者において、早期の鎮静作用が認められた。ミダゾラムとオランザピン筋注は、ハロペリドールよりも、早期の鎮静作用が期待でき、心血管系および錐体外路系の副作用リスクが低いと考えられる」としている。

891.

産後うつ病予防に対するω3多価不飽和脂肪酸の可能性

 ω3多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、産後うつ病に対し保護効果を発揮するのであろうか。この疑問に対し、大阪医科大学の永易 洋子氏らは、ω3PUFA摂取によるうつ病予防効果およびこの効果に対するインターロイキン6(IL-6)の関与について、調査を行った。The Journal of Obstetrics and Gynaecology Research誌オンライン版2021年2月15日号の報告。 単胎妊娠女性80人を対象に、妊娠第1期、2期、産後のイコサペント酸エチル(EPA)、アラキドン酸(AA)/EPA比、IL-6を測定した。対象者より、食事に関する質問票およびエジンバラ産後うつ病尺度(EPDS)を用いてデータを収集した。妊娠第1期、2期、産後における魚を食べる頻度とEPA、AA/EPA比、IL-6との関連を調査した。また、EPDSスコアとEPA、AA/EPA比、IL-6の関連も調査した。 主な結果は以下のとおり。・魚を食べる頻度は、妊娠第2期のEPAおよび産後、妊娠第2期のAA/EPA比と有意な関連が認められた。・魚を食べる頻度とIL-6との関連は認められなかった。・産後のEPAおよびAA/EPA比は、EPDSスコア7超において、7以下よりも高かった。・妊娠第2期では、AA/EPA比の高さとEPDSスコア7超との関連が認められた。・EPDSスコアとIL-6との関連も認められなかった。 著者らは「妊娠中にω3PUFAの食物摂取が少ないと、EPAの低下につながり、産後うつ病リスクが高まる傾向にあった。また、産後うつ病とIL-6との関連は、本研究では認められなかった」としている。

894.

SSRI治療の有効性と忍容性の性差

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)による治療後における抑うつ症状や忍容性の性差は、セロトニン作動性神経伝達の違いが影響している可能性がある。英国・Enfield and Haringey Mental Health NHS TrustのMarilia Gougoulaki氏らは、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(NRI)治療と比較し、SSRI治療後に女性は男性よりも抑うつ症状の改善が大きいかについて、調査を行った。また、忍容性および閉経状態の影響についても併せて調査を行った。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2021年2月26日号の報告。 うつ病における治療反応の遺伝的および臨床的予測因子を検討したGENPOD試験の2次分析を実施した。英国プライマリケアうつ病患者601例を対象に、SSRI(citalopram)群またはNRI(reboxetine)群にランダム化した。主要アウトカムは、6週間後のベックうつ病質問票(BDI-II)スコアとした。副次的アウトカムは、12週間後のBDI-IIスコアおよび身体症状、治療中止とした。主要効果および交互作用項の算出には、線形およびロジスティック回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・SSRI群では、NRI群と比較し、女性が男性よりも抑うつ症状の改善が大きいことを示す証拠は認められなかった。・抗うつ薬クラスとは無関係に、6および12週間後の性差を示す証拠も認められなかった。 ●6週間後、女性よりも男性のBDI-IIスコアは低かった(-0.31、95%CI:-2.23~1.62) ●12週間後、女性よりも男性のBDI-IIスコアは低かった(-0.44、95%CI:-2.62~1.74)・身体症状、治療中止においても性差を示す証拠はなく、閉経状態の影響も認められなかった。 著者らは「女性に対するSSRI治療は、男性と比較し、有効性および忍容性に関する差は認められなかった。SSRI治療後の予後については、抗うつ薬クラスに関係なく、男女間で差は認められず、閉経状態の影響も認められなかった」としている。

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患者さんの希死念慮を感じ取ったとき【堀美智子のハートに効くラヂオ】第7回

動画解説ある日、睡眠薬が処方された新患さん。とても悲しそうな表情をしていて、堀先生は思わず声をかけたそうです。「これでいいのか?」と自問自答しながらでも、薬剤師が目の前の“命”と向き合うには?

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抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症の治療に関するガイダンス

 抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症のマネジメントオプションおよび治療における有効性、忍容性、薬物相互作用、禁忌、投与計画などの考慮すべきポイントについて、米国・ミズーリ大学のMatthew M. Rusgis氏らが評価を行った。American Journal of Health-System Pharmacy誌オンライン版2021年2月26日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・高プロラクチン血症は、抗精神病薬の使用により発現する副作用の1つである。・高プロラクチン血症のマネジメントにおいて、まずは以下の手段を検討する。 ●高プロラクチン血症と関連してる可能性の高い抗精神病薬の減量 ●高プロラクチン血症と関連してる可能性の高い抗精神病薬の中止 ●高プロラクチン血症リスクの低い抗精神病薬への切り替え・これらのオプションは、必ずしも実用的であるとはいえず、精神症状の再発リスクを考慮する必要がある。・その他のマネジメントオプションとして、以下の薬剤による補助療法が検討可能である。 ●アリピプラゾール ●ドパミン作動薬(カベルゴリン、ブロモクリプチン) ●メトホルミン ●ハーブサプリメント・Embase、PubMed、Google Scholarより、高プロラクチン血症や上記治療薬などのキーワードを用いて検索したところ、入手可能なエビデンスより、次の4点が抽出された。(1)アリピプラゾールは、プロラクチンレベルを正常範囲まで低下させるうえで、安全かつ有用な薬剤である。(2)カベルゴリン、ブロモクリプチンは、プロラクチンレベルを低下させる。しかし、カベルゴリンは、心臓弁膜症などの重篤な副作用と関連している可能性がある。(3)メトホルミンは、プロラクチンレベルの軽度な低下が期待できる。(4)抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症に対する漢方薬(カモミール、芍薬甘草湯)の使用に関するデータは限られていた。 著者らは「抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症のマネジメントにおいて、抗精神病薬の治療レジメンを変更できない患者でも利用可能な治療方法はいくつかある。抗精神病薬を使用している患者の多くは、慢性疾患であり、長期にわたる薬剤使用が必要であることを考慮すると、高プロラクチン血症に対する治療戦略の有効性、安全性を判断するためには、短期だけでなくより多くの長期的な研究が必要であろう」としている。

897.

自閉スペクトラム症における統合失調症や気分障害の合併率

 自閉スペクトラム症(ASD)患者は、他の疾患を合併しているケースが少なくない。多くの研究において、ASD患者を対象に精神医学的合併症の有病率が報告されているものの、合併症の発生率は明らかになっていない。台湾・国立台湾大学医学院附設病院のYi-Ling Chien氏らは、台湾レセプトデータベースを用いて、ASD患者における主な精神医学的合併症の発生率および性別、ASDサブタイプ、自閉症関連の神経発達状態と発生率との関連について調査を行った。Autism Research誌2021年3月号の報告。ASD患者の統合失調症スペクトラム障害併発は9.7人/1,000人年 対象は、ASD患者3,837例(自閉症:2,929例、アスペルガー症候群:447例、特定不能な広汎性発達障害:461例)および年齢、性別をマッチさせた対照群3万8,370例。統合失調症スペクトラム障害、双極性障害、うつ病の発生率を調査した。 主な結果は以下のとおり。・3つのASDサブタイプすべてにわたる対照群と比較し、ASD患者の精神医学的合併症の発生率は、有意に高かった。 ●統合失調症スペクトラム障害:9.7人/1,000人年 ●双極性障害:7.0人/1,000人年 ●うつ病:3.2人/1,000人年・特定不能な広汎性発達障害は、自閉症よりも、うつ病リスクが高かった。・アスペルガー症候群の女性は、男性よりも、統合失調症スペクトラム障害リスクが有意に高かった。・自閉症関連の神経発達状態を考慮すると、合併症の発生率は大幅に低下した。 著者らは「ASD患者では、精神医学的合併症の発生率は高く、ASDサブタイプ、性別、自閉症関連の神経発達状態の影響を受けることが示唆された」としている。

898.

うつ病に対する作業療法の有用性~システマティックレビュー

 うつ病は一般的なメンタルヘルス障害であり、その症状により機能的な問題が生じ、日常活動を減少させる可能性のある疾患である。このような問題を抱える患者に対し作業療法は、日常的に提供されている治療法である。英国・サルフォード大学のLynn Christie氏らは、うつ病に対する作業療法介入の有用性を裏付けるエビデンスをシステマティックに評価するため、検討を行った。Journal of Affective Disorders誌2021年3月1日号の報告。 うつ病と診断された患者に対する作業療法の有効性を評価するため、システマティックレビューとメタアナリシスのための優先報告項目(PRISMA)を用いて、システマティックレビューを行った。作業療法に関連する用語とうつ病をキーワードとし、7つのデータベースより検索を行った。研究デザインとアウトカム測定方法の不均一性のため、メタ解析の代替としてベストエビデンスの統合を行った。 主な結果は以下のとおり。・抽出された1,962件中63件の研究を全文評価し、6件が選択基準を満たした。・研究実施国は、カナダ、ドイツ、オランダ、台湾、英国であった。・うつ病患者に対する作業療法のエビデンスとして、以下の有用性が認められた。 ●うつ症状を改善するための作業療法による職場復帰介入(強力なエビデンス) ●不安や自殺念慮を軽減するための作業療法によるライフスタイル介入(限られたエビデンス) ●仕事への復帰を改善(限られたエビデンス)・個々の患者を対象として作業療法を評価した研究はなく、研究のギャップが浮き彫りとなった。・本研究の限界として、研究内の不完全な報告および不均一性によりメタ解析が行えなかった点と英語による制限が挙げられる。 著者らは「うつ病に対する作業療法のエビデンスは限られているものの、作業療法が職場復帰の介入として有効であることを示す強力なエビデンスが見つかった。このことは、メンタルヘルスと休職コストとの関連を考慮すると非常に重要なポイントである。今後は、さらなる研究により、エビデンスを増やしていくことが望まれる」としている。

899.

統合失調症患者のコミュニケーション感度

 統合失調症の特徴の1つとして、他人の言語コミュニケーション意図を正しく推察することが非常に困難であることが挙げられる。いくつかの研究において、統合失調症患者の言語パフォーマンスを調査しているが、さまざまなコミュニケーションを理解する際の誤認に関して調査した研究は、これまでほとんどなかった。イタリア・トリノ大学のParola Alberto氏らは、統合失調症患者と健康対照者におけるエラーパターンを調査し、さまざまなコミュニケーション(誠実さ、欺瞞、皮肉など)の理解と統合失調症の臨床的特徴との関係を評価した。NPJ Schizophrenia誌2021年2月26日号の報告。 他人のコミュニケーション意図を正しく認識する能力(感度)と誤認する傾向(反応バイアス)を定量化するため、シグナル検出分析を用いた。感度と反応バイアスの関係、症状重症度、薬物療法などの臨床的特徴、個人的および社会的機能について調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者は、健康対照者と比較し、誠実さ、欺瞞、皮肉のコミュニケーションに対する感度が低く、他人のコミュニケーション意図を推察する能力が損なわれていることが示唆された。・皮肉に対する感度は、解体症状(まとまりがなく、感情が平板化した状態)と関連していことが示唆された。・統合失調症患者は、健康対照者と比較し、欺瞞的なコミュニケーションに対して強い反応バイアスが示された。 著者らは「統合失調症患者では、誠実さや皮肉よりも欺瞞を誤認する傾向が認められた。この傾向は、疾患を特徴付ける帰属バイアスに関連している可能性がある」としている。

900.

妊婦における境界性パーソナリティ障害の有病率や特徴

 周産期リエゾン精神科サービスに紹介された妊婦における境界性パーソナリティ障害(BPD)の有病率や特徴について、オーストラリア・Child and Adolescent Mental Health ServicesのKatharina Nagel氏らは、調査を行った。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2021年2月26日号の報告。 周産期リエゾン精神科サービスに紹介された女性318人を対象に、人口統計学的および臨床的データ、DSM-V基準による診断データを18ヵ月間記録した。データ分析には、記述統計およびロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・最も多かった診断は、うつ病(25.5%)であり、次いで不安症(15.1%)であった。・BPDと診断された女性は10.1%で、そのうち5人に1人は2つ以上のBPD特性を有していた(19.5%)。・BPD女性は、他の診断を受けた患者と比較し、以下の割合が高かった。 ●予定外妊娠 ●パートナーの不在 ●妊娠中の物質使用障害 ●現在または過去の子供に対する児童保護サービスの関与・BPD女性の40%超は、現在の妊娠中に児童保護サービスとの関与が認められた。・BPD診断により、子供の児童保護サービスへの関与リスクは約6倍に増加した(オッズ比:5.5、95%CI:1.50~20.17)。 著者らは「BPD女性は、サポートが必要なハイリスク群であり、BPDに関連するサービスへの投資は、優先度が高いと考えられる」としている。

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