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第129回 大地震から丸山ワクチンまで、幅広いテーマを深く掘り下げた中井 久夫氏の作品

イベルメクチン臨床試験「主要な評価項目で統計学的有意差は認められず」こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。久しぶりに好天となった週末は、少々足を伸ばして、新潟県と長野県の県境に位置する苗場山に行って来ました。土曜に赤湯温泉まで入り、翌日、赤倉山経由で苗場山に登り、和田小屋に下山する長めのコース。苗場山頂上部の池塘が点在する草紅葉の絶景を堪能できたのはよかったのですが、行動時間は11時間近くになってしまい、和田小屋下の駐車場に着く頃には真っ暗になっていました。今の時期、山の日没はとても早いです。皆さんも気をつけてください。ところで、一部医師から熱狂的な支持を受けていた抗寄生虫薬イベルメクチンについて、第III相臨床試験を行っていた興和が9月26日記者会見を開き、「主要な評価項目で統計的な有意差が認められなかった」とする結果を発表しました。この試験は2021年11月~2022年8月、日本とタイの軽症の新型コロナウイルス感染症患者1,030人を対象に、国際共同、多施設共同、プラセボ対照、無作為化、二重盲検、並行群間比較試験で行われました。結果、より早く症状が治まることの有効性を見出すことができなかった、とのことです。なお、死亡例はないことなどから「安全性は確認された」としています。さらに9月30日には、イベルメクチンの開発者、大村 智博士が所属していた北里大学も2020年8月〜2021年10月まで実施した新型コロナウイルス感染症患者に対するイベルメクチンの多施設共同、プラセボ対象、無作為化二重盲検、医師主導治験の結果を公表、「プラセボ投与群との間に統計学的有意差を認めなかった」としています。イベルメクチンについては、新型コロナの感染拡大が始まったころから、一部の熱狂的な医師が「よく効く」「治った」とテレビ等、さまざまなメディアで喧伝、そうした流れに乗り、東京都医師会の尾崎 治夫会長も、「予防にも治療にも効果が出ているのだから、積極的に使うべき」と主張していました。そもそも、イベルメクチンについては、WHOも米国NIHも臨床試験に限定して使用するよう勧告してきました。2021年3月にはJAMA誌に、今年3月にはNEJM誌に、イベルメクチンが新型コロナウイルス感染症に効果がないことを結論付けた論文も発表されています。今回、興和と北里大学から改めて二重盲検で有効性が認められなかった、と発表されたことは、イベルメクチン信奉者に対する最後通牒になったと思われます。しかし、彼らから「科学的に嘘を言っていました」といった反省の声は聞こえてきません。何らかの弁明や反論をぜひ聞いてみたいところなのですが……。統合失調症の研究者としてだけでなく詩の翻訳やエッセイなどでも有名な中井氏さて、秋も深まって来ましたので、今回は“読書特集”として、ある著者の本を数冊紹介します。少々時間が経ってしまいましたが、今年8月に1人の高名な医師が亡くなりました。新聞でもその逝去は取り上げられ、全国紙の中には追悼記事を掲載するところもありました。その医師とは、『患者よ、がんと闘うな』の近藤 誠氏、ではなく、精神科医の中井 久夫氏です。神戸大学医学部精神神経科主任教授などを歴任した中井氏は、精神科の領域では統合失調症やPTSDの研究者として知られています。また、ラテン語や現代ギリシャ語、オランダ語も堪能で、詩の翻訳やエッセイなど文筆家としても有名でした。amazonで中井氏の著作を検索すると、膨大な数の著作があることに驚かされます。難解な著作も多い中、精神科に限らず、臨床医ならばぜひ読んでおきたい作品も少なくありません。災害医療に携わる医療人の必読書、『災害がほんとうに襲った時 阪神淡路大震災50日間の記録』精神科領域から少々外れたところでは、中井氏が1995年に起きた阪神・淡路大震災の時の記録を綴った『災害がほんとうに襲った時 阪神淡路大震災50日間の記録』(みすず書房、2011年)は災害医療に携わるすべての医療人の必読の書だと言えます。本書は、もともとは中井氏が神戸大学の精神神経科主任教授として経験した阪神淡路大震災の50日をまとめた『1995年1月・神戸より』(みすず書房、1995年)が原本です。東日本大震災直後の2011年4月、同書を読みたいという人が増えたことから、再編集して急遽刊行されました。『災害がほんとうに襲った時』には「東日本巨大災害のテレビをみつつ」と題した章が加えられており、16年前の大震災を経験した精神科医だからこそ書ける、さまざまな視点やアドバイスが盛り込まれています。東日本大震災ではその直後から、被災者の心のケアが重視されましたが、そうした動きには、阪神淡路大震災での中井氏らの活動やそこで得られた教訓が克明に記された本書の存在が大きく影響していたに違いありません。本書には、「孤独なうちに自分しかいないと判断してリーダーシップを発揮した人たちがいた。(中略)。いずれも早く世を去った」という一文があります。そして、PTSD含め、大災害での医療活動が現場の医療者に与えるダメージについても、中井氏自身の心身の状態の変化も含め、詳しく書かれています。その内容は、コロナ禍で疲弊した医療者に対するケアを考える上でも役立ちそうです。気軽に読める『臨床瑣談』、『臨床瑣談 続』中井氏の著作の中で気楽に読めるエッセイとしては、『臨床瑣談』(みすず書房、2008年)、『臨床瑣談 続』(みすず書房、2009年)がとくにお薦めです。月刊誌『みすず』に2007年から不定期連載してきたエッセイをまとめたもので、「『臨床瑣談』とは、臨床経験で味わったちょっとした物語」といった意味だそうです。目次の主な内容は、「院内感染に対する患者自衛策私案」「昏睡からのサルベージ作業」「がんを持つ友人知人への私的助言」(以上『臨床瑣談』)、「血液型性格学を問われて性格というものを考える」「煙草との別れ、酒との別れ」「インフルエンザ雑感」(以上『臨床瑣談 続』)と雑多で、中井氏の専門である精神科以外のテーマが多く、基本的に医師向けに書かれたものではありません。しかし、内容は十分に専門的で、臨床医が普通に読んでも参考になるトリビアが散りばめられています。丸山ワクチンを自ら試した中井氏この中でとくに面白く読めるのは、『臨床瑣談』に収められている「SSM 通称丸山ワクチンについての私見」です。当時、この回が『みすず』に掲載されると、全国紙の書評欄で取り上げられ、出版社への問い合わせが殺到、それが『臨床瑣談』の出版につながったのだそうです。「(丸山)先生を直接知る人が世を去りつつ今、少しくわしく、先生のことを記しておくのがよいだろう。私は丸山先生に直接お会いしてお話をうかがった最後の世代になりつつある。書き残しておく責任のようなものもある」として書かれたこのエッセイには、日本医科大の丸山 千里博士との面会の様子から、中井氏自身の使用経験、はては丸山ワクチンを使いたいという友人を日本医大に紹介する話まで、数々の興味深いエピソードが赤裸々に語られるとともに、丸山ワクチンに対する中井氏の私見が展開されています。「私は精神科医でありガン学会とはまあ無縁である」という中井氏は、総じて丸山ワクチンに好意的な立場を取りながら、その作用機序について、かつてウイルスの研究者だった頃の知見を生かして、論理的に考察していく経緯は読み応えがあります。イベルメクチンの信奉者たちも、「効くんだ」「承認しろ」とただただ騒ぐだけではなく、中井氏のように論理的な考察とともに、自分が「なぜ使うか」を冷静に訴えるべきだったと思いますが、どうでしょうか。ちなみに丸山ワクチンは今でも有償治験薬という特別な扱いが続いており、日本医科大学付属病院ワクチン療法研究施設を受診すれば、治療を受けることができます。余談ですが、日本経済新聞の今年7月の「私の履歴書」は、ソニー・ミュージックエンタテインメント元社長の丸山 茂雄氏でした。丸山博士の長男である茂雄氏も同連載の中で、がんに罹患した後、主治医に内緒で丸山ワクチンを投与したと書いていました。さまざまな治療法も組み合わせ、最終的にがんは消えたとのことですが、「もちろんいまも丸山ワクチンを打ち続けている」と締めくくっています。60年前に日本の医療を痛烈批判した『日本の医者』さて、中井氏の著作の中には、約半世紀の時を経て復刊されたものもあります。『日本の医者』(日本評論社、2010年)です。原本は、中井氏が東大伝染病研究所(現在の東大医科研)の研究員として働いている時に、ペンネームを使って共著で書いた『日本の医者』(三一書房、1963年)です。医学部講座制や全国の病院の系列化などを批判的に論じた内容で、3年後に今度は『病気と人間』(三一書房、1966年)という本を再び共著で出版、「医局制はそのうち崩壊する」との過激な予言が当時は話題になったそうです。2010年に復刊された『日本の医者』には、若き中井氏の原点ということで、三一書房から出版された『日本の医者』『病気と人間』に加え、「抵抗的医師とは何か」(岡山大学医学部自治会刊)という文章も収められています。60年前の日本の医学部、医師、医療機関の実態とその問題点を指摘した本書は、読んでみると半世紀以上たった今でもそんなに古びていないと感じます。技術はともかく、「日本の医者」の本質がほとんど進歩していないためかもしれません。事実、医局制度(教授の権限)はしぶとく生き残り続けています。今でも医局や大学教授に縛られ続ける、若い医者たちに読んでもらいたい1冊です。

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抗精神病薬の切り替え理由~システマティックレトロスペクティブレビュー

 多くの精神疾患患者で抗精神病薬の切り替えが行われているが、切り替え理由や臨床記録を研究した報告はほとんどない。米国・ザッカーヒルサイド病院のDaniel Guinart氏らは、抗精神病薬の切り替え理由についてレトロスペクティブに分析を行った。その結果、抗精神病薬の切り替え理由は性別により異なるようであったが、多くの場合、忍容性の不十分にあることが報告された。また、切り替え理由が適切に記載されていないケースが5分の1で認められた。The Journal of Clinical Psychiatry誌2022年9月5日号の報告。 1施設で抗精神病薬の切り替えを行った入院または外来患者において、切り替え理由および切り替えた薬剤の種類を明らかにするため、処方記録や処方箋の記載をレトロスペクティブにレビューした。2017年8月1日から270件に至るまで抗精神病薬の切り替えデータを収集し、検出力分析に必要な薬剤の種類および切り替え理由を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・クエチアピンから抗精神病薬以外に切り替えられた7件を除く263件の抗精神病薬切り替え事例を分析した(患者数:195例、年齢中央値:31歳[四分位範囲:24~47]、統合失調症:36.9%、双極性障害:27.7%、統合失調感情障害:18.5%)。・主な抗精神病薬の切り替え理由は、忍容性不十分(45.7%)、効果不十分/悪化(17.6%)であった。・抗精神病薬の切り替え理由は、人種(p=0.2644)、年齢(p=0.0621)、保険の種類(p=0.2970)による影響を受けなかったが、性別についてはいくつかの理由に関して不均一性が認められた(p=0.004)。・最も多かった切り替えは、第2世代抗精神病薬の経口剤(SGA-OAP)から他のSGA-OAPへの切り替えであり(155件、58.9%)、その理由は、忍容性不十分または効果不十分であった。・次に多かった切り替えは、第2世代抗精神病薬の長時間作用型注射剤(SGA-LAI)からSGA-OAPへの切り替えであり(11%)、その理由は、忍容性不十分、患者の好み、保険適用の問題であった。・SGA-OAPからSGA-LAIへの切り替えは、10.7%であった。・抗精神病薬の切り替え理由が適切に処方箋に記載されていたのは、208件(79.1%)であった。

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慢性期統合失調症患者に対する音楽療法の有効性および睡眠障害の予測因子

 統合失調症患者に睡眠障害がみられることは少なくない。このような場合、非侵襲的介入である音楽療法が有益である可能性がある。台湾・輔英科技大学のMei-Jou Lu氏らは、統合失調症患者の睡眠障害に対する音楽療法の有効性を調査した。その結果、統合失調症患者の睡眠障害に対する音楽療法のメリットが実証された。Archives of Psychiatric Nursing誌2022年10月号の報告。 慢性期病棟で睡眠障害を伴う統合失調症患者を対象に、プロスペクティブ研究を実施した。対象者は、標準療法のみを行う対照群と、標準療法に加えて4週間の就寝前音楽療法を行う介入群に割り付けられた。睡眠障害の重症度を測定するため、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いた。両群間のベースライン時と4週間後のPSQIスコアの変化を分析するため、一般化推定方程式を用いた。介入群における治療効果の予測因子の特定も試みた。 主な結果は以下のとおり。・対象は、介入群35例、対照群31例の計66例。・人口統計学的変数で調整した後、介入群のPSQIスコアの変化は対照群と比較し、有意に大きく(群×時間の推定値:-7.05、p<0.001)、音楽療法の有効性が示唆された。・無宗教の患者や慢性疾患を有する患者では、より優れた有効性が予測された。・高齢患者では、音楽療法の有効性が乏しい可能性が示唆された。・統合失調症患者に対する音楽療法の有効性が示唆される一方で、医療従事者は実臨床において統合失調症患者の重症度の変化を考慮する必要がある。

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男女別、心血管イベントのリスク因子は/Lancet

 脂質マーカーとうつ病は、女性より男性で心血管リスクとの関連が強く、食事は男性よりも女性で心血管リスクとの関連が強いことが、カナダ・マックマスター大学のMarjan Walli-Attaei氏らによる大規模前向きコホート研究「Prospective Urban Rural Epidemiological:PURE研究」の解析の結果、示された。ただし、他のリスク因子と心血管リスクとの関連は女性と男性で類似していたことから、著者は、「男性と女性で同様の心血管疾患予防戦略をとることが重要である」とまとめている。Lancet誌2022年9月10日号掲載の報告。35~70歳の約15万6,000例で、各種リスク因子と主要心血管イベントの関連を解析 研究グループは、現在進行中のPURE研究における、高所得国(11%)および低・中所得国(89%)を含む21ヵ国のデータを用いて解析した。 解析対象は、2005年1日5日~2021年9月13日に登録され、ベースラインで35~70歳の心血管疾患既往がなく、少なくとも1回の追跡調査(3年時)を受けた参加者15万5,724例であった。 主要評価項目は、主要心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心不全の複合)とした。代謝リスク因子(収縮期血圧、空腹時血糖値、ウエスト対ヒップ率、非HDLコレステロール)、血中脂質(総コレステロール、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロール、総コレステロール/HDLコレステロール比、ApoA1、ApoB、ApoB/ApoA1比)、行動的リスク因子(喫煙、飲酒、身体活動、食事[PURE食事スコア])および心理社会的リスク因子(うつ症状、教育)と主要心血管イベントとの関連を男女別に解析し、ハザード比(HR)ならびに人口寄与割合(PAF)を算出した。脂質マーカーとうつ症状は、女性より男性で心血管リスク上昇 解析対象15万5,724例の内訳は、女性9万934例(58.4%)、男性6万4,790例(41.6%)、ベースラインの平均(±SD)年齢はそれぞれ49.8±9.7歳、男性50.8±9.8歳で、追跡期間中央値は10.1年(四分位範囲[IQR]:8.5~12.0)であった。 データカットオフ(2021年9月13日)時点で、主要心血管イベントは女性で4,280件(年齢調整罹患率は1,000人年当たり5.0件[95%信頼区間[CI]:4.9~5.2])、男性で4,911件(8.2件[8.0~8.4])発生した。男性と比較して、女性はとくに若年で心血管リスクプロファイルがより良好であった。 代謝リスク因子と主要心血管イベントとの関連は、非HDLコレステロールを除き、女性と男性で同様であった。非HDLコレステロール高値のHRは、女性で1.11(95%CI:1.01~1.21)、男性で1.28(1.19~1.39)であった。また、他の脂質マーカーも女性よりも男性のほうが一貫してHR値が高かった。 うつ症状と主要心血管イベントとの関連を示すHRは、女性で1.09(95%CI:0.98~1.21)、男性で1.42(1.25~1.60)であった。一方、PUREスコア(スコア範囲:0~8)が4以下の食事の摂取は、男性(HR:1.07[95%CI:0.99~1.15])よりも女性(1.17[1.08~1.26])で主要心血管イベントと関連していた。 主要心血管イベントに対する行動的および心理社会的リスク因子(合計)のPAFは、女性(8.4%)よりも男性(15.7%)で大きく、これは主に現在喫煙のPAFが男性で大きいためであった(女性1.3%[95%CI:0.5~2.1]、男性10.7%[95%CI:8.8~12.6])。

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第2世代抗精神病薬のLAIによる日本人統合失調症入院患者の身体拘束リスクへの影響

 第2世代抗精神病薬(SGA)の長時間作用型注射剤(LAI)が、経口抗精神病薬と比較し、再発時の精神症状の軽減に有用であるかは、よくわかっていない。福島県立医科大学の堀越 翔氏らは、日本の単一医療施設における4年間のレトロスペクティブミラーイメージ観察研究を実施し、統合失調症入院患者への隔離・身体拘束といった制限的介入の頻度(時間)に対するSGA-LAIの有用性を検討した。その結果、SGA-LAI使用により制限的介入の頻度および措置入院回数の減少が認められ、著者らは、SGA-LAIは再発時の精神症状の軽減につながる可能性があることを報告した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2022年9月5日号の報告。 2013年11月~2018年1月にレトロスペクティブミラーイメージ観察研究を実施した。最初に101例からデータを収集し、包括基準を満たした統合失調症患者38例を分析に含めた。主要アウトカムは、SGA-LAI使用開始前後2年間の制限的介入の頻度(時間)とし、副次的アウトカムは、入院回数(合計、任意入院、措置入院)、在院日数とした。制限的介入の定義は、隔離および身体拘束とした。 主な結果は以下のとおり。・制限的介入の平均時間は、SGA-LAI使用前の43.7時間から使用後の3.03時間へ有意な減少が認められた(p=0.021)。・SGA-LAI使用前後で、入院回数および在院日数は、以下のように有意な減少が認められた。 ●入院回数:1.03回→0.61回(p=0.011) ●在院日数:130日→39.3日(p=0.003)・とくに、措置入院回数(0.50回→0.26回)の有意な減少が認められた(p=0.039)。

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SSRIによる消化器系副作用リスク~ネットワークメタ解析

 うつ病治療では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が広く用いられている。SSRIの最も一般的な副作用は、消化器系に関連する症状であり、うつ病患者のコンプライアンス低下につながる。そのため、消化器系に対するSSRIの安全性を評価することは重要である。これまで、SSRIと他の抗うつ薬における消化器系副作用リスクを比較したいくつかのメタ解析が報告されているが、中国・Inner Mongolia Medical UniversityのZhuoyue Wang氏らは、各SSRIの消化器系副作用リスクを比較するためネットワークメタ解析を実施した。その結果、消化器系副作用リスクについては、fluoxetineが最も明確な利点を示し、セルトラリンは消化器系副作用リスクが最も高い可能性があることを報告した。Therapeutics and Clinical Risk Management誌2022年8月13日号の報告。 システマティックに検索し、5種類のSSRI(fluoxetine、エスシタロプラム、citalopram、パロキセチン、セルトラリン)とプラセボを比較した30件のランダム化比較試験(5,004例)が抽出された。 主な結果は以下のとおり。・5種類のSSRIのうち、消化器系副作用リスクが最も低かったのはfluoxetine(0.548)であり、最も高かったのはセルトラリン(0.611)であった。・胃腸に対する忍容性について、エスシタロプラムは、パロキセチン(オッズ比[OR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.43~0.87)およびセルトラリン(OR:0.56、95%CI:0.32~0.99)よりも優れていた。

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双極性障害患者の精神症状有病率~メタ解析

 幻覚や妄想は、双極性障害(BD)で一般的に認められる精神症状である。ノルウェー・オスロ大学のS. R. Aminoff氏らは、双極I型障害(BDI)および双極II型障害(BDII)における、精神症状の生涯および点有病率を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、BDIにおける精神症状のプールされた有病率は、これまで報告されていた値よりも高い可能性が示唆された。Psychological Medicine誌オンライン版2022年8月26日号の報告。 Medline、PsycINFO、Embase、Cochrane Libraryより、2021年8月5日までに公表された研究をシステマティックに検索した。成人BD患者における精神症状の生涯有病率を評価した研究54件(2万3,461例)および点有病率を評価した研究24件(6,480例)が選択基準を満たした。質および出版バイアスの評価を行い、有病率(95%信頼区間[CI])をランダム効果メタ解析で算出した。 主な結果は以下のとおり。・中程度以上の質を有する研究の評価では、精神症状のプールされた生涯有病率は、BDIで63%(95%CI:57.5~68)、BDIIで22%(95%CI:14~33)であった。・BDI入院患者における精神症状のプールされた生涯有病率は、71%(95%CI:61~79)であった。・外来患者またはBDII入院患者に関する研究はなかった。・BDIにおける精神症状のプールされた点有病病は、54%(95%CI:41~67)であった。・点有病率は、躁病エピソードで57%(95%CI:47~66)、うつ病エピソードで13%(95%CI:7~23.5)であった。・BDII、BDIうつ病、混合エピソード、BDI外来患者に関する十分な研究はなかった。

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自閉スペクトラム症から総合失調症への進展

 これまでの研究では、自閉スペクトラム症(ASD)の小児は、その後の人生において統合失調症の発症リスクが高いことが示唆されている。台湾・高雄栄民総医院のTien-Wei Hsu氏らは、ASDにおける診断の安定性および統合失調症への進展に対する潜在的な予測因子について調査を行った。その結果、統合失調症と診断されたASD患者の3分の2以上が、ASD診断から最初の3年間で進展しており、人口統計学的特徴、身体的および精神的な併存疾患、精神疾患の家族歴が、進展の重要な予測因子であることが示唆された。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2022年9月3日号の報告。 対象は、2001~10年にASDと診断された青年(10~19歳)および若年成人(20~29歳)の患者1万1,170例。統合失調症の新規診断患者を特定するため、2011年末までフォローアップ調査を実施した。統合失調症への進展およびその予測因子を推定するため、時間のスケールとして年齢を用いたカプランマイヤー法およびCox回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・10年間のフォローアップ調査におけるASDから統合失調症への進展率は10.26%であった。・統合失調症と診断された860例中580例(67.44%)は、ASDと診断されてから3年以内に統合失調症と診断されていた。・特定された予測因子は以下のとおりであった。 ●年齢(ハザード比[HR]:1.13、95%信頼区間[CI]:1.11~1.15) ●抑うつ症状(HR:1.36、95%CI:1.09~1.69) ●アルコール使用障害(HR:3.05、95%CI:2.14~4.35) ●物質使用障害(HR:1.91、95%CI:1.18~3.09) ●パーソナリティ障害クラスターA群(HR:2.95、95%CI:1.79~4.84) ●パーソナリティ障害クラスターB群(HR:1.86、95%CI:1.05~3.28) ●統合失調症の家族歴(HR:2.12、95%CI:1.65~2.74)

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認知症と肥満・糖尿病

 米国では、肥満、糖尿病、認知症などの慢性疾患が増加している。これら慢性疾患の予防や適切なマネジメント戦術に関する知見は、疾患予防のうえで重大かつ緊要である。米国・テキサス工科大学のAshley Selman氏らは、認知症と肥満および糖尿病との関連についての理解を深めるため、それぞれの役割を解説し、新たな治療法についての情報を紹介した。International Journal of Molecular Sciences誌2022年8月17日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・肥満、糖尿病、認知症の相互関係は、さらに解明されつつある。・肥満、糖尿病、認知症の発症に関連する炎症状態の一因として、加齢、性別、遺伝的要因、後天的要因、うつ病、高脂質の西洋型食生活が挙げられる。・この炎症状態は、食物摂取の調節不全およびインスリン抵抗性につながる可能性がある。・肥満は糖尿病発症につながる基礎疾患であり、後に、2型糖尿病(type 2 diabetes mellitus:T2DM)の場合には“3型(type 3 diabetes mellitus:T3DM)”すなわちアルツハイマー病へ進行する可能性がある。・肥満とうつ病は、糖尿病と密接に関連している。・認知症の発症は、ライフスタイルの改善、植物性食品ベースの食事(地中海式食事など)への変更、身体活動の増加により予防可能である。・予防のために利用可能ないくつかの外科的および薬理学的介入がある。・新たな治療法には、メラノコルチン4受容体(MC4R)アゴニストsetmelanotideやPdia4阻害薬が含まれる。・これらの各分野における現在および今後の研究は保証されており、新たな治療選択肢やそれぞれの病因に関する理解を深めることが重要である。

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統合失調症や双極性障害の興奮症状に対するデクスメデトミジン舌下投与の有用性

 米国・ニューヨーク医科大学のLeslie Citrome氏らは、統合失調症または双極性障害に関連する興奮症状を伴う成人患者において、デクスメデトミジンの臨床的有効性および忍容性を評価するため、治療必要数(NNT)、有害必要数(NNH)、likelihood to be helped or harmed(LHH)を用いた評価を行った。その結果、統合失調症または双極性障害に関連する急性興奮症状に対し、デクスメデトミジン舌下投与は良好なベネフィット-リスクプロファイルを有する治療であることが確認された。Advances in Therapy誌オンライン版2022年8月24日号の報告。 統合失調症または双極性障害の成人患者を対象にデクスメデトミジン舌下投与を評価した、二重盲検ランダム化プラセボ対照試験のデータの事後分析を行った。治療反応は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)-Excited Component(PANSS-EC)のベースラインからの変化量40%以上と定義した。忍容性の評価は、有害事象の発生率とした。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症または双極性障害患者に対するデクスメデトミジン舌下投与後2時間において、プラセボと比較したPANSS-ECによる治療反応のためのNNTは、それぞれ以下のとおりであった。【統合失調症】 ●デクスメデトミジン120μg(NNT:3、95%CI:3~4、129例) ●デクスメデトミジン180μg(NNT:3、95%CI:2~3、125例)【双極性障害】 ●デクスメデトミジン120μg(NNT:4、95%CI:3~6、126例) ●デクスメデトミジン180μg(NNT:3、95%CI:2~3、126例)・プラセボと比較したNNHは、眠気を除くすべての有害事象において10を超えていた。・統合失調症および双極性障害におけるいずれの用量においても、NNHは7(95%CI:5~10)であった。・有効性と忍容性のアウトカムについて、すべてのケースにおいてLHHは1を超えていた。

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日本人高齢者における片頭痛有病率~糸魚川翡翠研究

 新潟・糸魚川総合病院の勝木 将人氏らは、日本人高齢者の頭痛、片頭痛、慢性連日性頭痛、痛み止めの使い過ぎによる頭痛(薬剤の使用過多による頭痛、薬物乱用頭痛)の有病率を調査するためアンケート調査を実施し、3ヵ月間の頭痛の有病率とその特徴を明らかにしようと試みた。結果を踏まえ著者らは、日本人高齢者の頭痛有病率は諸外国と比較し、決して高いものではないが、片頭痛による社会経済的損失は重大であり、疾患の理解、適切な治療や予防などが重要であると報告している。また、高齢者は、さまざまな併存疾患に関連する重度な頭痛といった特徴を持つ可能性が示唆された。Journal of Clinical Medicine誌2022年8月11日号掲載の報告。 2019年、3回目の新型コロナウイルスワクチン接種後の待機時間を利用し、新潟県・糸魚川市の糸魚川総合病院と能生国民健康保険診療所で、65歳以上の高齢者を対象にアンケート調査を実施した。片頭痛および薬物乱用頭痛の定義には、国際頭痛分類第3版を用いた。慢性連日性頭痛は、1ヵ月に15日以上の頭痛発生と定義した。K-means++法を用いて、クラスタリングを行った。 主な結果は以下のとおり。・有効回答者2,858例における有病率は、頭痛11.97%、片頭痛0.91%、慢性連日性頭痛1.57%、薬物乱用頭痛0.70%であった。・鎮痛薬の併用や非オピオイド鎮痛薬の使用頻度が高かった。・予防薬を使用していた片頭痛患者は1例のみであった。・K-means++法を用いて薬物乱用頭痛患者332例を4つのクラスターに分類したところ、各クラスターの頭痛に下記の特徴が認められた。 ●クラスター1:緊張型頭痛様 ●クラスター2:薬物乱用頭痛様 ●クラスター3:脳卒中・脂質異常症・うつ病などを既往に持つ重症な頭痛 ●クラスター4:光恐怖症や音恐怖症を持つ片頭痛様

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青年期の学力向上と抑うつ症状との関連

 シンガポール国立大学のRyan Y. Hong氏らは、青年期の学力向上と抑うつ症状との長期的な関連性を調査した。その結果、学力構築の維持を目的とした介入が、抑うつ症状の悪化を予防する可能性が示唆された。Development and Psychopathology誌オンライン版2022年8月12日号の報告。 対象は、シンガポールの青年741人。学業成績と抑うつ症状に関する過去の研究を拡張し、1学年度にわたる3-wave縦断的研究を行い、学力低下仮説(学力構築における過去の問題がその後の抑うつ症状に影響を及ぼす)および適応浸食仮説(過去の抑うつ症状がその後の能力構築に悪影響を及ぼす)の2つの競合する仮説を検証した。高次能力構築因子(複数の構成要素の動機付け変数を用いて操作可能)と抑うつ症状との関連性を評価するため、ランダムインターセプトとクロス遅延パネルモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・個人の能力構築の減少が、その後の個人の抑うつ症状を予測することが示唆されたが、逆の関係は認められなかった。・個人の能力構築の変動は、学年度末の成績と教師が報告した適応の問題を予測した。・全体として、学力低下仮説が支持された。

613.

不安症やうつ病の心理的再発予防介入~メタ解析

 不安症またはうつ病から寛解した患者に対する介入として、抗うつ薬の継続または中止と組み合わせた、心理的再発予防介入の有効性を評価するため、オランダ・アムステルダム自由大学のEsther Krijnen-de Bruin氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、寛解期うつ病患者では、心理的再発予防介入により、再発/再燃リスクの有意な減少が確認された。PLOS ONE誌2022年8月12日号の報告。 心理的再発予防介入と通常ケアを比較したランダム化比較試験(RCT)において再発/再燃の割合や期間を臨床アウトカムとして評価した研究を、PubMed、PsycINFO、Embaseより検索した。 主な結果は以下のとおり。・分析には、36件のRCTを含めた。・寛解期うつ病患者に対する心理的再発予防介入により、24ヵ月の再発/再燃リスクの有意な減少が認められた(RR:0.76、95%CI:0.68~0.86、p<0.001)。・この効果はフォローアップ期間が延長しても持続していたが、これらの結果はそれほど強くはなかった。・抗うつ薬の継続治療に心理的再発予防介入を併用することにより、24ヵ月間の再発リスクの有意な減少が認められたが(RR:0.76、95%CI:0.62~0.94、p=0.010)、フォローアップ期間が長くなると有意な差は消失した。・不安症の再発予防に焦点を当てた研究は2件のみであったため、メタ解析は実施できなかった。

614.

統合失調症患者のメタボリックシンドロームリスクに対する抗精神病薬の影響

 抗精神病薬が統合失調症患者のメタボリックシンドローム(MetS)発症に影響していることが、多くの研究で示唆されている。セルビア・クラグイェバツ大学のAleksandra Koricanac氏らは、抗精神病薬治療を受けている統合失調症患者におけるMetSの発症リスクおよび発症しやすい患者像を明らかにするため、検討を行った。その結果、リスペリドン治療患者およびクロザピン治療患者は、アリピプラゾール治療患者よりも、MetS発症リスクが高い可能性が示唆された。また、リスペリドン治療患者は、健康対照群と比較し、TNF-αとTGF-βの値に統計学的に有意な差が認められた。Frontiers in Psychiatry誌2022年7月25日号の報告。 安定期統合失調症患者60例を対象に、単剤使用の各抗精神病薬に応じて3群(リスペリドン群、クロザピン群、アリピプラゾール群)に分類した。また、健康な被験者20例を対照群とした。最初に、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて評価し、その後プロラクチン値、脂質状態、血糖値、インスリン値、サイトカイン値(IL-33、TGF-β、TNF-α)、C反応性タンパク質(CRP)を測定した。BMI、HOMA指数、ウエスト/ヒップ比(WHR)、血圧も併せて測定した。 主な結果は以下のとおり。・リスペリドン群は、対照群およびアリピプラゾール群と比較し、プロラクチン値に有意な差が認められた。・クロザピン群は、対照群と比較し、HDLコレステロールおよびグルコースのレベルに有意な差が認められた。・アリピプラゾール群は、対照群と比較し、BMIの有意な差が認められた。・統計学的に有意な関連は、リスペリドン群ではTNF-αとグルコースおよびHOMA指数(IL-33とグルコース、TGF-βとグルコース)、クロザピン群ではTNF-αとBMI(IL-33とBMI、TGF-βとインスリンおよびHOMA指数)において認められた。・アリピプラゾール群のTGF-βとLDLコレステロールにおいて、統計学的に有意な負の関連が認められた。

615.

COVID-19パンデミック中のスマホ依存症とその後の自殺リスク

 COVID-19パンデミックによるロックダウン中、青少年のスマートフォン依存症や自殺率の増加が認められた。しかし、スマートフォン依存症と自殺リスクとの関係、その根底にある心理的メカニズムについてはよくわかっていない。中国・四川大学のGangqin Li氏らは、ロックダウンの最初の1ヵ月間における青少年のスマートフォン依存症と、その後5ヵ月間の自殺リスクとの関連を評価した。その結果、スマートフォン依存症の青少年における自殺リスクを減少するためには、日中の眠気や抑うつ症状の改善を目的とした介入プログラムがとくに有用である可能性が示唆された。BMC Public Health誌2022年8月12日号の報告。 中国の高等学校の生徒1,609人を対象に、Webベースの短期縦断調査を実施した。第1段階(T1)の調査では、2020年2月24日~28日(パンデミックのピーク時)に中国・四川省で、スマートフォン依存症の重症度および基本的な人口統計学的データを収集した。第2段階(T2)の調査では、T1の5ヵ月後に当たる7月11日~23日に、過去5ヵ月間のスマートフォン依存症、日中の眠気、抑うつ症状、自殺傾向を測定した。 主な結果は以下のとおり。・回帰分析により、隔離期間中のスマートフォン依存症は、抑うつ症状や日中の眠気で調整した後においても、その後5ヵ月間の自殺傾向の直接的な予測因子であることが明らかとなった。・一方、T1でのスマートフォン依存症は、T2での自殺傾向も間接的に予測し、抑うつ症状や日中の眠気はこの関連性を仲介していた。

616.

超加工食品の摂取と認知症リスク

 超加工食品の摂取が、うつ病、心血管疾患、すべての原因による死亡といった健康への悪影響と関連することを示唆するエビデンスが増加している。しかし、超加工食品が認知症と関連しているかは、よくわかっていない。中国・天津医科大学のHuiping Li氏らは、UK Biobankのデータを用いて、超加工食品と認知症発症との関連を調査した。その結果、超加工食品の摂取量が多いほど認知症リスクが上昇し、超加工食品の一部を未加工食品または最小限の加工食品に置き換えることで、認知症リスクが低下することを報告した。Neurology誌オンライン版2022年7月27日号の報告。 ベースライン時に認知症でない55歳以上の参加者7万2,083人を対象に、2回以上の24時間食事評価を行い、2021年3月までフォローアップした。超加工食品の定義は、NOVA分類に従った。アルツハイマー病および血管性認知症を含むすべての原因による認知症は、病院と死亡の電子記録を連携させることにより確認した。食事の超加工食品の割合とその後の認知症リスクとの関連を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。超加工食品を同等の割合で未加工食品または最小限の加工食品に置き換えた場合の認知症リスクを推定するため、代替分析法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間(71万7,333人年、中央値:10.0年)に認知症を発症した参加者は518例であり、そのうちアルツハイマー病は287例、血管性認知症は119例で認められた。・完全調整モデルでは、超加工食品の摂取と認知症リスクとの関連が認められた。 ●すべての原因による認知症(超加工食品の摂取量が10%増加した場合のハザード比[HR]:1.25、95%信頼区間[CI]:1.14~1.37) ●アルツハイマー病(HR:1.14、95%CI:1.00~1.30) ●血管性認知症(HR:1.28、95%CI:1.06~1.55)・食事の超加工食品の10%に当たる量を未加工食品または最小限の加工食品に置き換えた場合、認知症リスクが19%低下すると推定された(HR:0.81、95%CI:0.74~0.89)。

617.

日本人高齢者におけるうつ病と道路接続性との関係~JAGES縦断研究

 高齢者において、メンタルヘルス対策は重要であり、近隣環境がうつ病の保護因子として注目されている。これまでの調査では、近隣環境の重要な指標である道路接続性が高齢者の健康と関連していることが示唆されている。しかし、道路接続性とうつ病との関連については、不明なままであった。千葉大学のYu-Ru Chen氏らは、高齢者のうつ病と道路接続性との関係について調査を行った。その結果、道路接続性と高齢者のメンタルヘルスとの関連が示唆された。著者らは、本調査結果が今後の健全な都市計画の検討に貢献する可能性があるとしている。Scientific Reports誌2022年8月8日号の報告。 日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study:JAGES)2013-2016のデータを用いて、2013年にうつ病でなかった高齢者(老年期うつ病評価尺度スコア5未満)2万4,141人を対象に評価を行った。アウトカム変数は、2016年のうつ病診断とした。説明変数は、対象者の近隣800m圏内の交差点密度および空間構文によって算出した道路接続性とした。2016年のうつ病の新規診断に対するオッズ比および95%信頼区間を算出するため、ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・交差点密度が高い地域に住んでいる高齢者は、交差点密度が低い地域に住んでいる高齢者と比較し、3年後の新規うつ病発症率が17%低かった。・道路接続性が高い地域に住んでいる高齢者は、道路接続性が低い地域に住んでいる高齢者と比較し、3年後の新規うつ病発症率が14%低かった。・身体活動や社会的相互作用で調整した後でも、これらの関連は認められた。

618.

境界性パーソナリティ障害と統合失調症の幻覚・妄想症状の比較

 境界性パーソナリティ障害(BPD)でみられる幻覚・妄想は、これまで十分に研究されていなかった。オーストラリア・スウィンバーン工科大学のZalie Merrett氏らは、BPD患者の多感覚幻覚・妄想を現象学的に調査し、統合失調症スペクトラム障害(SSD)患者でみられるこれらの症状との比較を行った。併せて、臨床精神病理学的調査も行った。その結果、BPD患者では多感覚幻覚・妄想が頻繁に認められることから、BPDを治療する場合にはこれらの症状の把握が重要であることが報告された。Journal of Personality Disorders誌2022年8月号の報告。 調査対象は、成人患者89例。幻聴ありBPD群、幻聴なしBPD群、高BPD特性SSD群、低BPD特性SSD群の4群に分類した。 主な結果は以下のとおり。・BPD患者のうち、幻覚および幻触が81%、幻嗅が75%で報告され、妄想は94%が経験していた。・幻聴の有無にかかわらずBPD患者を比較したところ、非精神病性精神病理学の特徴に有意な差は認められなかった。・BPDの幻覚とSSDの幻覚の比較では、わずかな違いが認められたが、全体的には同様であった。・BPD群は、SSD群と比較し、パラノイア/不信感、罪業妄想の割合が有意に高かった。

619.

日本人統合失調症患者に対するブレクスピプラゾールと他の非定型抗精神病薬による治療中止率の比較

 統合失調症の再発予防には、治療継続が不可欠である。横浜市立大学の菱本 明豊氏らは、日本の実臨床現場における統合失調症患者に対するブレクスピプラゾール治療(BRX群)と他の抗精神病薬治療(OAA群)による治療中止までの期間を比較するため、健康保険レセプトデータを用いて検討を行った。その結果、BRX群はOAA群よりも治療中止リスクが低いことが示唆されたことから、統合失調症患者の治療継続にブレクスピプラゾールが有用である可能性を報告した。Advances in Therapy誌オンライン版2022年7月29日号の報告。 2017年4月~2020年5月の日本のレセプトデータベースより抽出した75歳未満の就業中の統合失調症患者およびその扶養家族の匿名化されたデータを評価した。ベースライン時の患者変数で調整した後、Cox比例ハザードモデルを用いて、主要アウトカムであるBRX群とOAA群における180日間の治療中止までの期間を比較し、ハザード比(HR)を95%信頼区間(CI)で推定した。180日間の累積治療継続率も合わせて推定した。主要アウトカムについては、感度分析およびサブグループ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・分析には、BRX群978例、OAA群4,898例を含めた。・BRX群は、OAA群よりも治療中止リスクが有意に低かった(HR:0.86、95%CI:0.78~0.95、p=0.0024)。・累積治療継続率は、BRX群(45.9%、95%CI:42.5~49.2)のほうがOAA群(39.5%、95%CI:38.1~41.0)よりも高かった(log-rank検定:p<0.0001)。・傾向スコアが一致した患者による分析においても、BRX群はOAA群よりも治療中止リスクが有意に低かった(log-rank検定:p=0.0466)。・感度分析およびサブグループ解析においても、同様の結果が得られた。

620.

統合失調症入院患者の口腔衛生状態とそれに関連する要因

 愛知学院大学の黒川 誉志哉氏らは、統合失調症入院患者における口腔衛生の状態と不良となる因子を明らかにするため、調査を行った。その結果、統合失調症患者は、口腔衛生状態が不良である傾向があり、バーゼル指数[BI]、男性、ADLの低さが口腔衛生不良と関連している可能性が示唆された。また、高齢になるほど虫歯リスクが高くなることも報告された。International Journal of Dental Hygiene誌オンライン版2022年8月3日号の報告。 対象は、統合失調症入院患者249例。口腔衛生状態(歯石指数[CI]、歯垢指数[DI])、虫歯歴を有する歯の平均数(平均DMFT)、関連因子(入院、クロルプロマジン換算量、年齢、バーゼル指数、歯磨きの頻度、口腔セルフケア能力)を含む改訂版の口腔評価ガイド(ROAG)について調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・口腔衛生状態の結果は、以下のとおりであった(中央値[範囲])。 ●CI:0.5(0~6.0) ●DI:1.7(0~6.0) ●ROAG:10.0(7.0~15.0)・平均DMFTは21.7±7.3であった。・クロルプロマジン換算平均量は524.4±353.6mg、BIは76.4±30.7であった。・BIとDIとの間に負の相関があり(r=-0.34)、年齢と平均DMFTとの間に正の相関が確認された(r=0.57)。・男性患者は、女性患者よりも口腔状態(ROAG)が不良な傾向が認められた。・最小二乗重回帰分析では、口腔健康状態に関連する因子として以下が確認された。 ●DIに対するBI ●平均DMFTに対する年齢 ●ROAGに対する性別 ●CI、DI、平均DMFTに対する口腔セルフケア能力

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