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統合失調症うつ病の頓服を含む退院時処方~EGUIDEプロジェクト

 さまざまなガイドラインにおいて、統合失調症うつ病の薬物治療では、単剤療法が推奨されている。定期処方による治療はいくつかの研究で報告されているが、頓服使用を含む薬物療法に関する報告は十分ではない。北里大学の姜 善貴氏らは、頓服使用を含む薬物療法の内容を評価し、定期処方との関連を明らかにするため、本研究を実施した。その結果、向精神薬の頓服使用を考慮すると、統合失調症およびうつ病に対する退院時の薬物治療において単剤療法率および他の向精神薬未使用率は減少することが報告された。著者らは、高い単剤療法率および定期処方での他の向精神薬の未使用は、向精神薬の頓服使用の減少につながる可能性があるとしている。Annals of General Psychiatry誌2022年12月26日号の報告。 「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)」のデータを用いて、退院時における薬物カテゴリごとの向精神薬の頓服使用の有無を調査し、その割合を診断疾患別に評価した。統合失調症患者における退院時の抗精神病薬単剤療法率および他の向精神薬未使用率、うつ病患者における退院時の抗うつ薬単剤療法率および他の向精神薬未使用率を、向精神薬の頓服使用を含む定期処方ごとに医療の質指標(QI)として算出した。各診断疾患における定期処方のQI値、定期処方と頓服使用を含む処方のQI比を算出するため、スピアマン順位相関係数を用いた。 主な結果は以下のとおり。・退院時の向精神薬の頓服使用率は、統合失調症で28.7%、うつ病で30.4%であり、診断疾患による有意な差は認められなかった。・薬物カテゴリごとの頓服使用率は、統合失調症では抗精神病薬と抗パーキンソン薬が有意に高く、うつ病では抗不安薬と催眠鎮静薬が有意に高かった。・QIは、両疾患ともに、定期処方よりも頓服使用を含む退院時処方で低かった。・定期処方のQI値と、定期処方と頓服使用を含む処方のQI比との間に、正の相関が認められた。

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第132回 新型コロナウイルス5類へ移行は5月8日に/政府

<先週の動き>1.新型コロナウイルス5類へ移行は5月8日に/政府2.救急隊員の負担軽減のため、労務管理の適正化を通知/消防庁3.電子処方箋が全国で運用開始、医療機関の対応は?4.国内初の経口中絶薬、専門部会で承認を了承、妊娠9週までが対象/厚労省5.全国の医療機関で電子カルテ情報の共有システムの整備に向けて議論/厚労省6.無断外出の患者の自殺、遺族の逆転敗訴確定/最高裁1.新型コロナウイルス5類へ移行は5月8日に/政府政府は1月27日に、新型コロナウイルス感染症対策本部を開き、5月の連休明けの8日から新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類を現行の「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」とすることを決定した。なお、イベントの収容上限は1月27日から撤廃することにした。政府は、「5類」への移行時期について、医療現場や自治体の準備、国民への周知に一定の時間が必要のため、大型連休後が適切と判断した。また、ワクチン接種の無料接種については今年3月末までの期限だったが、政府は4月以降も無料接種を継続する方針だ。今後、3月までに病床確保補助金や発熱外来の診療報酬の上乗せなどの公費負担の見直しについて検討を行う。(参考)新型コロナウイルス感染症対策本部(内閣府)第70回厚生科学審議会感染症部会(厚労省)コロナ5類、5月8日移行を決定 イベント上限撤廃は先行(日経新聞)コロナ「5類」の医療費や医療体制 3月上旬めどに具体的方針(NHK)診療報酬の特例段階的見直しへ、5類移行で病床確保料も、3月上旬めどに方針(CB news)2.救急隊員の負担軽減のため、労務管理の適正化を通知/消防庁総務省消防庁は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による救急出動件数が過去最多を更新し、救急搬送困難事案の発生が高い水準であることなどによって、救急現場の労務負担が増大しているとして、救急隊員の適正な労務管理のさらなる徹底を求める通知を1月25日付で各都道府県に対して発出した。この通知は、昨年12月に東京都内で、救急隊員の居眠り運転で救急車の横転事故が発生したことを反映したものとみられる。また、消防庁はこれに先立つ1月23日に令和4年度の『消防白書』を公表しており、この中で、救急現場におけるマイナンバーカードの活用によって、救急隊員が傷病者の医療情報把握のスピードアップ化や搬送時の活用への検討も取り上げており、業務の負担改善などに取り組みたいとしている。(参考)「救急隊員の負担軽減を」総務省消防庁が全国の消防に要請 救急車の居眠り事故受け(産経新聞)救急隊員の適正な労務管理の徹底について(通知)(消防庁)『令和4年版消防白書』(同)マイナンバーカード活用で搬送先選定しやすくなる 2022年版消防白書、傷病者の負担軽減も(CB news)3.電子処方箋が全国で運用開始、医療機関の対応は?医療機関で発行される処方箋を電子化して、薬局へオンラインで届ける「電子処方箋」システムが1月26日から本格的に運用が開始された。政府は補助金を用いてマイナンバーのリーダーの設置を進めたが、対応する医療機関は6病院と10診療所と伸び悩んでいる。今後、政府はマイナンバーの普及を通して医療機関と薬局での対応を進め、患者の処方歴を一元管理することで薬の重複や併用禁忌薬の処方を未然に防ぎ、適切な服薬に繋げたいとしている。なお、電子処方箋の発行には医師資格証(HPKIカード)が必要であり、医師会を通して発行申請を受け付けている。厚生労働省は、1月26日の電子処方箋の運用開始について、処方・調剤データを電子処方箋管理サービスで送受していれば、紙の処方箋を発行しても電子処方箋の運用を開始したと認める通知を行い、普及を進めたいとしている。(参考)「電子処方箋」きょうから運用開始 “適切な服薬”に期待(NHK)電子処方箋、1月15日時点での対応は「全国で6病院・10クリニック・162薬局」にとどまる(Gem Med)【電子処方箋】「まずは紙の処方箋発行/受付」の運用周知(ドラビズ On-line)医師資格証(HPKIカード)新規お申込み(日本医師会)4.国内初の経口中絶薬、専門部会で承認を了承、妊娠9週までが対象/厚労省厚生労働省は薬事・食品衛生審議会(薬事・食品衛生審議会医薬品第1部会)を1月27日に開催し、経口投与の人工妊娠中絶薬・メフィーゴパック(一般名:ミフェプリストン/ミソプロストール)の承認について審議した。その結果、承認はされたものの「社会的関心が高く、慎重な審議が必要」として、パブリックコメントを実施した上で、薬事分科会で承認の可否を再審議することになった。承認されれば国内初の経口中絶薬となり、従来の中絶手術より、女性への負担が少なくなる。海外では70以上の国と地域で承認されており、世界保健機関(WHO)は安全な中絶方法として推奨している。なお、処方にあたっては母体保護法指定医のもと、妊娠9週以内に使用する。公的保険の対象外となる見通し。(参考)国内初「飲む中絶薬」の承認「差し支えない」…厚労省専門部会(読売新聞)国内初の経口中絶薬、専門部会が承認了承 妊娠9週までが対象(毎日新聞)5.全国の医療機関で電子カルテ情報の共有システムの整備に向けて議論/厚労省厚生労働省は、「健康・医療・介護情報利活用検討会」の医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループを1月27日に開催した。患者自身や全国の医療機関で、電子カルテ情報を閲覧可能にするシステム(電子カルテ情報交換サービス)の検討を行っているが、電子カルテ情報には個人情報が多く含まれるため、共有などにあたっては「患者の同意取得」が大前提となる。このほか本人同意の仕組み、電子的に文書情報を発行したときの患者への伝達方法、医療機関などにおける電子カルテ情報の閲覧についても検討を行っている。今後、患者自身で閲覧・利用される情報について管理できることを担保した上で、海外での同意取得の仕組みや電子処方箋の仕組みなどを踏まえ、国民の仕組みへの理解を得つつ、なるべく現場の負担を軽減する方向で整理を進めることになった。(参考)第6回健康・医療・介護情報利活用検討会 医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ(厚労省)全国の医療機関や患者自身で「電子カルテ情報を共有」する仕組み、患者同意をどの場面でどう取得すべきか―医療情報ネットワーク基盤WG(1)(Gem Med)厚生労働省、全国的な電子カルテ情報共有基盤について試案提示 年度末までに仕様まとめる方針(Med IT Tech )6.無断外出の精神科患者の自殺、患者遺族が逆転敗訴/最高裁香川県の県立病院に入院していた男性が病院を無断で外出し、自殺したことをめぐって、自殺の原因は病院の管理が不十分であったとして、遺族が香川県に対して損害賠償を求めていた裁判について、1月27日に最高裁は、県に賠償を命じた2審の判決を取り消し、遺族の訴えを退けた。判決によると2010年7月、丸亀市の香川県立丸亀病院に統合失調症で入院していた男性(当時38歳)が、病院を無断で外出して、近くのマンションから飛び降り自殺していた。2審の高松高裁では、病院側の事前説明がされていなかったほか、無断外出の防止にセンサーの装着がなかったことから香川県に対して5,700万円の損害賠償を求めていたが、27日の最高裁の判決では、センサー装着などは必要ではなく、医師の判断で外出許可を判断して自殺防止を図っていたと指摘した。(参考)入院中無断外出し自殺 遺族が県訴えた裁判 最高裁 訴え退ける(NHK)無断外出で自死…「病院の説明違反」否定 最高裁で遺族が逆転敗訴(朝日新聞)

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統合失調症の脳の老化~ENIGMAコンソーシアム

 統合失調症は、生涯にわたる認知機能低下、加齢に伴う慢性疾患や早期死亡のリスク増加と関連している。英国・バース大学のConstantinos Constantinides氏らは、成人統合失調症患者における重度の脳の老化に関するエビデンスを調査し、ENIGMA Schizophrenia Working Groupによるプロスペクティブメタ解析研究にてそれらと臨床的特徴との関連を評価した。その結果、統合失調症患者における重度の構造的な脳の老化が示唆された。著者らは、統合失調症における脳の老化や介入による影響の臨床的意義に関するさらなる評価には、統合失調症とさまざまな精神的および身体的アウトカムの縦断的研究が役立つであろうと述べている。Molecular Psychiatry誌オンライン版2022年12月9日号の報告。 脳の予測年齢は、皮質厚および皮質面積の68の測定値、7つの皮質下体積、側脳室体積、総頭蓋内容積に基づく独立データにより導出されたモデルを用いて推定した。すべてのデータはT1強調MRI脳画像を用いて収集した。健康な脳の老化との違いは、脳の予測年齢と実年齢の差(脳予測年齢差、brain-predicted age difference:brain-PAD)により評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、26件のコホート研究のデータより抽出された統合失調症患者2,803例(平均年齢:34.2歳、年齢範囲:18~72歳、男性の割合:67%)および健康対照者2,598例(平均年齢:33.8歳、年齢範囲:18~73歳、男性の割合:55%)。・年齢、性別、部位で調整した後、統合失調症患者は健康対照者と比較し、brain-PADが平均3.55年(95%信頼区間:2.91~4.19、I2=57.53%)高かった(Cohen's d=0.48)。・統合失調症患者において、brain-PADと特定の臨床的特徴(発症年齢、罹病期間、症状重症度、抗精神病薬の使用状況と用量)との関連は認められなかった。

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日本人高齢者の日常的な温泉入浴とうつ病との関係~別府レトロスペクティブ研究

 温熱療法は、うつ病など、さまざまな精神疾患のマネジメントに用いられる。九州大学病院別府病院の山崎 聡氏らは、日本人高齢者の温泉入浴とうつ病との関係を検討するため、アンケート調査を実施した。その結果、習慣的な毎日の温泉入浴とうつ病歴の低さとの間に関連があることが確認された。著者らは、温泉の使用が精神疾患や精神障害の症状緩和に有用であるかを明らかにするためにも、うつ病治療としての習慣的な毎日の温泉入浴に関するプロスペクティブ無作為化比較試験が求められるとしている。Complementary Therapies in Medicine誌オンライン版2022年12月13日号の報告。 大分県別府市在住の65歳以上の高齢者1万429人に対して、うつ病の有病率に関するアンケート調査を実施し、回答した219人を対象に長期的な温泉入浴のうつ病予防効果を総合的に評価した。うつ病歴のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、多変量ロジスティック回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。 セパレート多変量ロジスティック回帰モデルにおいて、うつ病歴と有意な関連が認められた独立因子は以下のとおりであった。 ●女性(OR:1.56、95%CI:1.17~2.08、p=0.002) ●不整脈(OR:1.73、95%CI:1.18~2.52、p=0.004) ●脂質異常症(OR:1.63、95%CI:1.14~2.32、p=0.006) ●腎疾患(OR:2.26、95%CI:1.36~3.75、p=0.001) ●膠原病(OR:2.72、95%CI:1.48~5.02、p=0.001) ●アレルギー(OR:1.97、95%CI:1.27~3.04、p=0.002) ●習慣的な毎日の温泉入浴(OR:0.63、95%CI:0.41~0.94、p=0.027)

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統合失調症における抗精神病薬の減量と継続

 統合失調症の主な治療では抗精神病薬が用いられるが、QOLを低下させうるさまざまな投与量関連の副作用が問題となる。そのため、抗精神病薬は可能な限り低用量での使用が推奨されているが、実際の臨床現場では高用量で使用されることも少なくない。再発リスクを抑え有害な副作用を最小限にとどめるために、抗精神病薬を安全に減量できるのかどうか、またはその方法について明らかにする必要がある。 イタリア・カターニア大学のAlessandro Rodolico氏らは、統合失調症患者に対する抗精神病薬について、現在の用量を継続した場合と比較した減量の有効性および安全性の評価を行った。その結果、抗精神病薬の用量を減量した場合と継続した場合において、QOL、機能、1つ以上の有害事象が発現した患者の割合に差は認められなかったが、減量により再発および治療中止のリスクが上昇し、再入院の可能性は高まった。注目すべき点として、研究の大部分がQOL、機能、有害事象などの潜在的なアウトカムではなく再発予防に焦点を当てており、そのうちのいくつかの研究では、抗精神病薬の急激な減量が行われていた。著者らは、より明確な答えを得るためには、適切に設計されたRCTが求められるとしている。Cochrane Database of Systematic Reviews誌2022年11月24日号の報告。 Cochrane Schizophrenia GroupのStudy-Based Register of Trialsとして2021年2月10日までに公表された文献を、各種データベース(CENTRAL、MEDLINE、Embase、CINAHL、PsycINFO、PubMed、ClinicalTrials.gov、ISRCTN、WHO ICTRP)よりシステマティックに検索した。現行の抗精神病薬治療で安定している統合失調症または関連疾患の患者を対象に、抗精神病薬の減量および継続を比較したランダム化比較試験(RCT)を含めた。さらに、含まれた研究と以前のレビューにおけるリファレンスリストについても調査した。2人以上のレビュアーが独立して、適格研究より関連する記録のスクリーニング、データ抽出を行い、RoB 2を用いてバイアスリスクを評価した。欠落データおよび追加情報については、各研究の著者に連絡し収集した。 主要アウトカムは、QOLの臨床的に重要な変化、再入院、副作用による治療中止とした。副次アウトカムは、機能の臨床的に重要な変化、再発、すべての理由による治療中止、1つ以上の有害事象とした。また、症状、QOL、機能の測定に用いた評価尺度、特定の有害事象の包括的なリストも併せて調査した。できる限り1年に最も近いエンドポイントでのアウトカムをプールした。エビデンスの確実性の評価には、GRADEアプローチを用いた。 主な結果は以下のとおり。・含まれた25件のRCTのうち22件(2,635例、平均年齢:38.4歳)からデータを抽出した。・研究のサンプルサイズの中央値は60例(範囲:18~466例)であり、期間の中央値は37週(範囲:12週~2年)であった。・用量減量のスピード(研究の約半数で2~16週以内の漸減、残りの半数は急激な減量)および程度(3研究で中央値66%までの計画的減量)には、ばらつきがあった。・全体のバイアスリスクは、いずれかの懸念または高リスクとして評価した。・QOLまたは機能の臨床的に重要な変化が認められた患者に関するデータを報告した研究はなく、QOLまたは機能の測定に用いた評価尺度について継続的なデータを報告した研究は8件のみであった。・QOL(標準化平均差[SMD]:-0.01、95%信頼区間[CI]:-0.17~0.15、RCT:6件、719例、I2=0%、エビデンスの確実性:中)および機能(SMD:0.03、95%CI:-0.10~0.17、RCT:6件、966例、I2=0%、エビデンスの確実性:高)の測定に用いた評価尺度では、抗精神病薬の減量と継続に差は認められなかった。・推定可能なエフェクトサイズに関する8つの研究のデータによると、抗精神病薬の用量を減量した場合は、継続した場合と比較し、再入院のリスクを上昇させる可能性が示唆された。しかし、95%CIに差がない可能性があった(リスク比[RR]:1.53、95%CI:0.84~2.81、RCT:8件、1,413例、I2=59%[異質性:moderate]、エビデンスの確実性:非常に低い)。・同様に、20件の研究のデータによると、抗精神病薬の用量を減量した場合、再発リスクの上昇が認められた(RR:2.16、95%CI:1.52~3.06、RCT:20件、2,481例、I2=70%[異質性:substantial]、エビデンスの確実性:低)。・抗精神病薬を減量した患者は、継続した患者と比較し、有害事象(RR:2.20、95%CI:1.39~3.49、推定可能なエフェクトサイズを含むRCT:6件、1,079例、I2=0%、エビデンスの確実性:中)およびすべての理由(RR:1.38、95%CI:1.05~1.81、RCT:12件、1,551例、I2=48%[異質性:moderate]、エビデンスの確実性:中)による早期の治療中止が多かった。・推定可能なエフェクトサイズを有する4つの研究のデータによると、抗精神病薬を減量した患者と継続した患者では、1つ以上の有害事象が発現した患者の割合に差は認められなかった(RR:1.03、95%CI:0.94~1.12、RCT:5件、998例[推定可能なエフェクトサイズを含むRCT:4件、980例]、I2=0%、エビデンスの確実性:中)。

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日本人片頭痛患者における併存疾患

 大阪・富永病院の菊井 祥二氏らは、日本における片頭痛とさまざまな精神的および身体的な併存疾患との関連を調査した。その結果、片頭痛患者では、そうでない人と比較し、精神的および身体的な併存疾患の有病率が高く、これまで日本では報告されていなかった新たな関連性も確認された。本研究結果は、片頭痛患者のケア、臨床診療、アウトカムを複雑にする可能性のある併存疾患に関する知見として役立つであろうとしている。BMJ Open誌2022年11月30日号の報告。 対象は18歳以上の日本在住者。国民健康調査2017年に回答した日本人サンプルのうち3万1人のデータを用いて、横断的研究を実施した。片頭痛患者378例および非片頭痛患者2万5,209例を特定した。1:4の傾向スコアマッチング後、非片頭痛患者を1,512例に絞り込んだ。片頭痛患者と非片頭痛患者における併存疾患の有病率および傾向スコアをマッチさせた有病率のOR(POR)は、精神的および身体的な併存疾患ごとに評価を行った。1ヵ月当たりの頭痛日数が15日未満の片頭痛患者と15日以上の片頭痛患者についても検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・片頭痛患者は、女性のほうが多かった。・片頭痛患者は、非片頭痛患者と比較し、精神的および身体的な併存疾患の有病率が有意に高かった。・有病率が5%超の精神的な併存疾患は、うつ病、心的外傷後ストレス障害、不安症であった。・最も一般的な身体的な併存疾患は、胃腸障害であった。・その他の身体的な併存疾患には、アレルギー、不眠症、月経前症候群(PMS)、貧血が含まれた。・1ヵ月当たりの頭痛日数が15日以上の片頭痛患者は、PORの推定値が高い傾向が認められた。

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日本人労働者における社会的サポートとメンタルヘルスとの関連

 うつ病、不安症、不眠症には、社会的サポートの不十分さが影響しているといわれている。大阪医科薬科大学の大道 智恵氏らは、日本人労働者のうつ病、不安症、不眠症に関連する社会的サポートの特定を試みた。その結果、同僚や家族からのサポートは、日本人労働者の抑うつ症状を軽減する可能性があり、家族からのサポートは、不眠症状の軽減にもつながる可能性が示唆された。Frontiers in Public Health誌2022年11月21日号の報告。 コホート研究の一環として、2021年9月~2022年3月に滋賀県甲賀市の市職員を対象にアンケート調査を実施した。抑うつ症状、不安症状、不眠症状の評価には、こころとからだの質問票(PHQ-9)、7項目一般化不安障害質問票(GAD-7)、不眠症重症度質問票(ISI)をそれぞれ用いた。仕事のストレスおよび上司、同僚、家族からのサポートは、職業性ストレス簡易調査票(BJSQ)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・日本人労働者1,852人のうち、抑うつ症状(PHQ-9:10以上)は15.5%、不安症状(GAD-7:10以上)は10.8%、不眠症状(ISI:15以上)は8.2%で認められた。・ロジスティック回帰分析では、仕事のストレスが抑うつ症状(p<0.001)、不安症状(p<0.001)、不眠症状(p=0.009)と関連していることが示唆された。・同僚(p=0.016)および家族(p=0.001)からのサポートは、抑うつ症状の軽減と関連していた。・家族からのサポートは、不眠症状の減少とも関連していた(p=0.005)。

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日本人統合失調症入院患者における残存歯数とBMIとの関係

 統合失調症入院患者において、BMIに対する歯の状態の影響に関するエビデンスはほとんどない。新潟大学の大竹 将貴氏らは、日本人統合失調症入院患者の残存歯数とBMIとの関連を調査するため、横断的研究を実施した。その結果、歯の喪失や抗精神病薬の多剤併用が統合失調症入院患者のBMIに影響を及ぼすこと、また、統合失調症入院患者は一般集団よりも歯の喪失が多いことが示唆された。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年11月7日号の報告。 統合失調症入院患者212例を対象に、BMIに対する潜在的な予想因子(年齢、性別、残存歯数、抗精神病薬処方数、クロルプロマジン換算量、抗精神病薬の種類)の影響を評価するため、重回帰分析を行った。次に、統合失調症入院患者と日本人一般集団3,283例(平成28年歯科疾患実態調査[2016年])の残存歯数を比較するため、年齢および性別を共変量として共分散分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・重回帰分析では、残存歯数(標準偏回帰係数:0.201)と抗精神病薬処方数(同:0.235)がBMIと有意に相関していることが示された。・共分散分析では、統合失調症入院患者の平均残存歯数(14.8±10.9)は、日本人一般集団(23.0±8.1)と比較し有意に少なかった。

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うつ病治療ガイドラインの実践状況を把握する客観的指標IFS

 日本うつ病学会の治療ガイドラインでは、うつ病の重症度別に推奨される治療法が定められている。治療ガイドラインは、実臨床で治療決定を促すためのツールとして用いられ、患者や医療従事者を支援するよう設計されている。精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)のメンバーである岩手医科大学の福本 健太郎氏らは、各患者がうつ病ガイドラインの推奨に従って治療を実践しているかを評価するための客観的指標として、個別フィットネススコア(IFS)を開発した。IFSは、個々の患者におけるガイドラインに基づく治療の実践状況を客観的に評価できることから、ガイドラインに準じた治療行動に影響を及ぼし、薬物療法を含めた日本におけるうつ病治療の標準化につながる可能性が期待できるとしている。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2022年11月16日号の報告。 EGUIDEプロジェクトメンバーは、修正Delphi法を用いて、IFSを決定した。本IFSは、EGUIDEプロジェクトメンバーが所属する施設において2016~20年に治療を受け、退院したうつ病患者の治療に基づき開発された。また、入院時と退院時のIFSスコアの比較も行った。 主な結果は以下のとおり。・対象は、うつ病患者428例(57施設)。・その内訳は、軽度うつ病患者22例、中等度/重度うつ病患者331例、精神病性うつ病患者75例であった。・重症度別の平均IFSスコアは、中等度/重度うつ病患者において入院時よりも退院時のほうが統計学的に有意に高かった。 【軽度うつ病】入院時:36.1±34.2 vs.退院時:41.6±36.9(p=0.49) 【中等度/重度うつ病】入院時:50.2±33.6 vs.退院時:55.7±32.6(p=0.0021) 【精神病性うつ病】入院時:47.4±32.9 vs.退院時:52.9±36.0(p=0.23)

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抗精神病薬治療の有効性を予測可能なタイミング

 抗精神病薬の初期の臨床効果が、その後の治療アウトカムにどの程度影響を及ぼすかは、明らかになっていない。中国・West China Hospital of Sichuan UniversityのYiguo Tang氏らは、2週時点での抗精神病薬の有効性が、6週時点の治療反応を予測できるかを評価した。また、治療反応の予測が、抗精神病薬や精神症状の違いにより異なるかも検討した。その結果、抗精神病薬治療2週時点でのPANSS合計スコアの減少率や精神症状の改善は、6週時点の臨床的な治療反応を予測することが示された。Current Neuropharmacology誌オンライン版2022年11月18日号の報告。 統合失調症患者3,010例を対象に、ランダム化比較試験(RCT)を実施した。対象患者を、5種類の非定型抗精神病薬(リスペリドン:2~6mg/日、オランザピン:5~20mg/日、クエチアピン:400~750mg/日、アリピプラゾール:10~30mg/日、ziprasidone:80~160mg/日)および2つの定型抗精神病薬(ペルフェナジン:20~60mg/日、ハロペリドール:6~20mg/日)のいずれかにランダムに割り付け、6週間の治療を行った。初期有効性の定義として、2週時点での陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアの減少率を用いた。分析には、50%減少のカットオフ値、ロジスティック回帰、ROC解析、ランダムフォレストを用いた。 主な結果は以下のとおり。・7種類の抗精神病薬治療による2週時点でのPANSS合計スコアの減少率および精神症状の改善は、その後の治療反応を予測可能であった。・とくに、妄想、判断力と洞察力の欠如、思考内容の異常、猜疑心/迫害感が重要な指標である可能性が示唆された。

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治療抵抗性統合失調症に対する新規抗精神病薬および薬理学的戦略の最新情報

 適切な用量および投与期間による2種類以上の抗精神病薬治療で反応が得られない治療抵抗性統合失調症は、精神医学の中で最も治療困難な病状の1つであるといえる。疫学的には、治療抵抗性統合失調症統合失調症患者の3分の1に影響するとされ、全体的な機能の観点からも患者に深刻な結果をもたらす。しかし、50年間で治療抵抗性統合失調症の適応で承認された治療薬はクロザピンのみであり、クロザピンでも反応の得られない耐性患者も少なくない。イタリア・ナポリ大学のAndrea de Bartolomeis氏らは、現在報告されている文献を批判的に評価し、治療抵抗性統合失調症の治療における新旧薬剤の役割についてレビューを行った。Expert Opinion on Pharmacotherapy誌2022年12月号の報告。 主なレビューは以下のとおり。・治療抵抗性統合失調症に対する治療は、クロザピンに匹敵または併用する治療法がいくつか報告されており、主に次の3つの戦略が挙げられる。 1)第2世代抗精神病薬(amisulprideなど)の併用 2)従来の抗精神病薬と異なる受容体プロファイルを有する第2世代抗精神病薬(アリピプラゾール、cariprazineなど)の併用 3)ドパミンD2/D3受容体占有を超える新規アプローチ(xanomeline+trospium、TAAR1アゴニスト、安息香酸ナトリウム、D-アミノ酸など)・代替治療や併用療法の有効性を評価するためには、治療抵抗性統合失調症やクロザピン耐性の現行の基準を適用した、より質の高い臨床試験が求められる。

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M4受容体選択的PAMのemraclidine、統合失調症に有望/Lancet

 新規開発中のemraclidineは、統合失調症に対し漸増レジメンなしで1日1回経口投与が可能な治療薬として有効であり、安全性および副作用プロファイルも良好であることが示された。米国・イェール大学のJohn H. Krystal氏らが、第Ib相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。emraclidineは、統合失調症治療薬として新規開発中の脳浸透性ムスカリンM4受容体選択的ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)である。今回の結果を踏まえて著者は、「統合失調症に対するemraclidineの有効性、安全性および忍容性を確認するため、さらなる研究が必要である」とまとめている。Lancet誌2022年12月17日号掲載の報告。2つのパートでemraclidineの安全性と忍容性を検証 試験は2つのパートで構成され、精神疾患簡易構造化面接法(M.I.N.I.)でDSM-5診断基準により統合失調症と診断され、スクリーニング時に錐体外路症状が正常から軽度と判定された18~50歳(パートA)または18~55歳(パートB)の患者を適格とした。 パートAは、米国の1施設にて症状が安定している統合失調症患者を5つのコホートに分け、emraclidineの5mg、10mg、20mgまたは30mgを1日1回投与、20mgを1日2回投与(40mg/日)、およびプラセボを段階的に投与して、emraclidineの安全性と忍容性を評価した。 パートBは、米国5施設にて無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施し、急性期の患者を、emraclidine 30mgを1日1回投与、または20mgを1日2回投与(パートAにおいて設定された用量)、またはプラセボ投与に1対1対1の割合で無作為に割り付け、6週間経口投与した。 主要評価項目は、安全性解析対象集団(emraclidineまたはプラセボを少なくとも1回投与された患者)における安全性および忍容性であった。30mgの1日1回投与、安全性および副作用プロファイルが良好 パートAでは、2019年9月23日〜2020年9月17日の期間に118例が適格性を評価され、49例が5つのコホートに無作為に割り付けられた。44例が試験を完遂し、36例がemraclidine、8例がプラセボの投与を受けた。emraclidineの投与により収縮期血圧および拡張期血圧がわずかながら上昇したが、いずれも臨床的な意義はなく、有害事象との関連もなかったことから、2つの高用量(30mg 1日1回投与および20mg 1日2回投与)がパートBの用量として選択された。 パートBでは、2020年10月12日〜2021年5月7日の期間に、148例が適格性を評価され、81例がemraclidine 30mg 1日1回群(27例)、20mg 1日2回群(27例)、またはプラセボ群(27例)に無作為化された。有害事象の発現率は、emraclidine 30mg 1日1回群52%(14/27例)、20mg 1日2回群56%(15/27例)、プラセボ群52%(14/27例)であり、臨床評価および体重変化も各群で類似していた。 主な有害事象は頭痛であった(emraclidine群28%[15/54例]、プラセボ群26%[7/27例])。emraclidine群で投与開始初期に、軽度で一過性の血圧および心拍数上昇が認められたが、経時的に低下し、6週時には臨床的に意義はないものと見なされた。

553.

各抗うつ薬中断後の離脱症候群~WHO自発報告データベース

 各抗うつ薬中断に関連する離脱症候群や重度の副反応の危険因子に関する情報は、不足している。イタリア・ベローナ大学のChiara Gastaldon氏らは、抗うつ薬が他の薬剤と比較し、離脱症候群の報告増加と関連しているかを評価し、重度の副反応の危険因子について調査を行った。その結果、抗うつ薬は、他の薬剤よりも離脱症候群の報告が多かった。著者らは、各抗うつ薬により離脱症候群の傾向が異なることや重篤な離脱症候群を引き起こす可能性のある患者の特徴を理解したうえで、抗うつ薬の使用および中止を検討する必要があるとしている。Drug Safety誌2022年12月号の報告。 個別症例安全性報告を集めたWHOグローバルデータベースであるVigiBaseを用いて、症例/非症例ファーマコビジランス研究を実施した。抗うつ薬に関連する離脱症候群の報告について、不均衡分析(報告オッズ比[ROR]、ベイジアン情報コンポーネント[IC]の算出)を行った。ブプレノルフィンを対照薬とし、抗うつ薬の各クラス内(選択的セロトニン再取り込み阻害薬[SSRI]、三環系抗うつ薬、その他の抗うつ薬)で相互に比較した。有意な不均衡が報告された抗うつ薬は、臨床的優先度の観点よりランク付けした。重度の副反応と重度でない副反応を比較した。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬関連の離脱症候群の報告は、3万1,688件であった。・23種類の抗うつ薬について、不均衡な報告が検出された。・すべての他の薬剤と比較した抗うつ薬の推定RORは、以下のとおりであった。 ●抗うつ薬全体:14.26(95%信頼区間[CI]:14.08~14.45) ●SSRI:13.65(95%CI:13.41~13.90) ●三環系抗うつ薬:2.8(95%CI:2.59~3.02) ●その他の抗うつ薬:17.01(95%CI:16.73~17.29)・臨床的優先度ランキングに基づくと、パロキセチン、デュロキセチン、ベンラファキシン、desvenlafaxineで最も強い不均衡な報告が認められ、これらはブプレノルフィンと同程度であった。・離脱症候群の頻度および重症度と関連していた因子は、男性、思春期、多剤併用、抗うつ薬治療期間の長さであった(p<0.05)。

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統合失調症患者の味覚障害

 精神疾患患者では、味覚障害が認められることが少なくない。これまでの研究では、統合失調症患者において症状とグルタミン酸ナトリウム(MSG)の味覚障害との間に関連がある可能性が示唆されている。ポーランド・Pomeranian Medical UniversityのMichal Wronski氏らは、MSGの味覚レベルが症状の重症度と関連しているかを検討した。Brain Sciences誌2022年11月9日号の報告。 対象は、妄想型統合失調症と診断(ISD-10)された患者200例。MSGまたは水を含む3つの液体サンプルを舌下投与することにより、MSG検出閾値を評価した。MSGのサンプルには、サンプルごとに異なる濃度を用いた。被験者に、どのサンプルがMSGを含有しているかを示してもらい、味の強さや不快感(快適、不快、どちらでもない)を評価させた。 主な結果は以下のとおり。・味覚の平均強度と症状の数との間に、有意な負の相関が認められた。・統合失調症患者でみられる味覚障害の症状が味覚機能の欠損なのか、精神症状としての味覚に対する幻覚症状なのかを判断するために、臨床医は味覚障害を報告する患者をモニタリングする必要がある。

555.

統合失調症に対する高用量ルラシドンの有効性

 福島県立医科大学の三浦 至氏らは、急性増悪期の統合失調症患者を対象に、ルラシドン80mg/日の有効性および安全性を検討した。その結果、ルラシドン40mg/日で治療した急性期統合失調症患者において、用量を80mg/日に増量した場合でも忍容性は良好であった。また、ルラシドン80mg/日への増量では、40mg/日を継続した場合と比較し、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)サブスケールスコアのより大きな改善が認められた。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年11月9日号の報告。 ルラシドンの6週間二重盲検試験を完了した統合失調症の成人患者289例を対象に、12週間の非盲検延長試験を実施した。フレキシブルドーズでルラシドン40mg/日または80mg/日で治療を行った。有効性の評価には、PANSSサブスケール、臨床全般印象度の重症度(CGI-S)、統合失調症に関するカルガリーうつ病尺度(CDSS)のスコアを用い、分析にはLOCF解析を用いた。安全性/忍容性の評価には、有害事象、体重、臨床検査値、有害事象による治療中止を含めた。 主な結果は以下のとおり。・ルラシドン80mg/日群は136例、40mg/日群は153例であった。・有効性評価尺度の平均変化は、以下のとおりであった。 【PANSS陽性尺度】80mg/日群:-3.0、40mg/日群:-2.3 【PANSS陰性尺度】80mg/日群:-1.9、40mg/日群:-1.7 【PANSS総合精神病理尺度】80mg/日群:-5.1、40mg/日群:-3.8 【CGI-S】80mg/日群:-0.5、40mg/日群:-0.4 【CDSS】80mg/日群:-0.7、40mg/日群:-0.1・有害事象による治療中止率は、80mg/日群で4.4%、40mg/日群で7.2%であった。・80mg/日群において高頻度で発現した有害事象は以下のとおりであった。 ●鼻咽頭炎:7.4%(40mg/日群:4.6%) ●便秘:5.9%(40mg/日群:2.0%) ●頭痛:5.9%(40mg/日群:2.0%)

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PDQ-D-5による認知機能評価、日本人うつ病患者での有用性を検証

 国立精神・神経医療研究センターの住吉 太幹氏らは、「日本での大うつ病性障害関連の機能的アウトカムに関する前向き観察研究(PERFORM-J)」のデータを用いて、日本人うつ病患者における主観的認知機能を評価するための簡便な指標であるPDQ-D-5(5項目の評価尺度)の有用性を検証した。その結果、日本人うつ病患者に対するPDQ-D-5による評価は、PDQ-D-20(20項目の評価尺度)による評価を適切に反映していることが確認され、簡易版のPDQ-D-5にも、機能的アウトカム、うつ病重症度、QOLのいくつかの尺度との関連が認められた。このことから著者らは、PDQ-D-5は、認知機能に関する主観的な経験を評価するための実行可能かつ臨床的に信頼性のある尺度であり、時間的制限のある診療・相談に適用可能であるとしている。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年11月2日号の報告。PDQ-D-5スコアとDSSTスコアとの間には負の相関が認められた PERFORM-Jでは、日本人うつ病外来患者518例を対象に、抗うつ薬治療開始後6ヵ月間の抑うつ症状、認知機能、社会的および就業的機能の重症度、QOLが評価された。本事後分析においては、20項目の評価尺度であるPDQ-D-20とPDQ-D-5との内的整合性および収束的妥当性を評価した。これらの測定値についての相関関係は、各時点および経時的に調査した。また、PDQ-D-5と、こころとからだの質問票(PHQ-9)、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)、数字符号置換検査(DSST)、EuroQol-5-Dimension-5-Level(EQ-5D-5L)、シーハン障害尺度(SDS)、Work Productivity and Activity Impairment(WPAI)質問票との相関関係の調査も行った。 PDQ-D-5の有用性を検証した主な結果は以下のとおり。・PDQ-D-5スコアは、良好な内的整合性を示した。・PDQ-D-5とPDQ-D-20の間には、各時点(相関係数:ベースライン時0.94、1ヵ月目0.94、2ヵ月目0.96、6ヵ月目0.96)および経時的(相関係数:0.92)に強い正の相関が観察された(すべてp<0.0001)。・PDQ-D-5スコアとPHQ-9、MADRS、SDSスコアとの間には、正の相関が確認された。・PDQ-D-5スコアとEQ-5D-5L、DSSTスコアとの間には負の相関が認められたが、その程度はさまざまであった。・PDQ-D-5スコアと、欠勤に関する項目を除くすべてのWPAIサブスケールスコアとの間には、経時的に中程度の正の相関が認められた。

557.

維持期うつ病治療の抗うつ薬比較~メタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、維持期の成人うつ病の治療に対する抗うつ薬の有効性、許容性、忍容性、安全性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。その結果、維持期の成人うつ病に対する抗うつ薬治療において、妥当な有効性、許容性、忍容性が認められた薬剤は、desvenlafaxine、パロキセチン、ベンラファキシン、ボルチオキセチンであることを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2022年10月17日号の報告。 PubMed、Cochrane Library、Embaseデータベースより、エンリッチメントデザインを用いた二重盲検ランダム化プラセボ対照試験(非盲検期間中に抗うつ薬治療で安定し、その後、同じ抗うつ薬群またはプラセボ群にランダム化)を検索した。アウトカムは、6ヵ月後の再発率(主要アウトカム、有効性)、すべての原因による治療中止(許容性)、有害事象による治療中止(忍容性)、個々の有害事象発生率とした。リスク比および95%信用区間を算出した。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には、20種類の抗うつ薬およびプラセボに関する34件の研究が含まれた。・対象患者数は9,384例(平均年齢:43.80歳、女性の割合:68.10%)であった。・抗うつ薬には、agomelatine、アミトリプチリン、bupropion、citalopram、desvenlafaxine、デュロキセチン、エスシタロプラム、fluoxetine、フルボキサミン、levomilnacipran、ミルナシプラン、ミルタザピン、nefazodone、パロキセチン、reboxetine、セルトラリン、tianeptine、ベンラファキシン、vilazodone、ボルチオキセチンが含まれた。・6ヵ月後の再発率に関して、プラセボよりも優れていた薬剤は、アミトリプチリン、citalopram、desvenlafaxine、デュロキセチン、fluoxetine、フルボキサミン、ミルタザピン、nefazodone、パロキセチン、reboxetine、セルトラリン、tianeptine、ベンラファキシン、ボルチオキセチンであった。・すべての原因による治療中止率に関して、プラセボよりも優れていた薬剤は、desvenlafaxine、パロキセチン、セルトラリン、ベンラファキシン、ボルチオキセチンであった。ただし、セルトラリンは有害事象による治療中止率が高かった。・プラセボと比較した個々の有害事象発生率については、ベンラファキシンではめまいの発生率が低く、desvenlafaxine、セルトラリン、ボルチオキセチンでは嘔気/嘔吐の発生率が高かった。

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乾癬とうつ病併存、脳構造と脳内コネクティビティの特徴は?

 先行研究で乾癬患者の最大25%にうつ病の併存が認められるとの報告がある中、英国・マンチェスター大学のGeorgia Lada氏らは、うつ病併存に関連する乾癬の脳構造と脳内コネクティビティ(connectivity)を調べる脳画像研究を行い、乾癬による局所脳容積や構造的なコネクティビティへの影響はみられないこと、乾癬とうつ病併存で右楔前部の肥厚が認められ、自殺傾向に関連している可能性があることなどを明らかにした。 患者に共通する神経生物学的およびうつ病脳画像のパターンなど、併存疾患のドライバについてはほとんど解明されていない。一方で、慢性の全身性炎症皮膚疾患である乾癬について、脳と皮膚間における免疫が介在したクロストークが仮説として示唆されていた。Brain, Behavior, & Immunity - Health誌2022年12月号掲載の報告。 調査は、測定した脳容積値等におけるうつ病と全身性炎症の意味を調べる初となる検討で、研究グループが知りうる限り最大の乾癬患者サンプルデータとしてUK Biobank登録者1,048例の脳MRIデータを用いて行われた。調査では、乾癬における関節の関与と、炎症状態がより高いことを示す乾癬性関節炎(PsA)併存の影響についても探索的評価が行われた。 調査対象の1,048例の内訳は、乾癬とうつ病併存患者が131例、年齢・性別で適合した非うつ病の乾癬患者131例、うつ病対照393例、非うつ病対照393例である。アプリオリに定義された関心領域(ROI)の容積・厚さ・表層、白質トラクトおよび安静時コネクティビティ評価に適切な55×55偏相関マトリックスにおける乾癬とうつ病の相互作用の影響を、一般線形モデルを用いて調べた。また、線形回帰法を用いて、C反応性蛋白質(CRP)値および好中球数と脳測定値の関連性を試験した。 主な結果は以下のとおり。・局所または全体の脳容積や白質統合度における差異は、乾癬患者と非乾癬/非PsA対照との比較において認められなかった。・対照と比較してうつ病が併存している乾癬患者のみにおいて、右楔前部の肥厚が認められた(β=0.26、95%信頼区間[CI]:0.08~0.44、p=0.02)。・さらなる解析で、PsAを有する乾癬患者では、安静時コネクティビティにおける前頭後頭部の非連動(decoupling)が、非PsA対照(β=0.39、95%CI:0.13~0.64、p=0.005)および対照(0.49、0.25~0.74、p<0.001)と比較してそれぞれ有意であることが示された。このことはうつ病併存とは無関係であった。・楔前部の肥厚と前頭後頭部のコネクティビティは、CRP値や好中球数では予測できなかった。・うつ病乾癬患者における楔前部の肥厚は、繰り返される自殺傾向と、わずかだが相関性が示された。 研究グループは、UK Biobankデータを使用した検討では重症疾患を有する集団の結果の一般化を限定する可能性があり、重症疾患およびより大規模なPsA集団で今回の所見が再現されるか、さらなる検討が必要だ、とまとめている。

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第143回 運動意欲を腸内細菌が支える

病気の数々を防ぐ最も効果的な習慣である運動の意欲向上にどうやら腸内細菌が一役買っていることがマウス実験で示されました1)。先立つ研究で腸の微生物が筋肉や心肺機能、さらには脳の生理に関わることが知られています2)。ペンシルバニア大学の微生物学者Christoph Thaiss氏等はそれらの成果を紡ぎ、筋肉・心肺機能・脳を含むより多くの関わりによって生み出されるであろう運動能力への腸内微生物の貢献を調べることを試みました。Thaiss氏等はマウス199匹を用意し、抗生物質いくつかを使ってそれらマウスの腸内細菌を減らすか排除したときの運動性能を2つの手段を使って調べました2)。1つはしばらくの間走ることを強いて持久力を調べるトレッドミルで、もう1つはいつでも好きなだけ走ることができる回し車(wheel)です。どのマウスも飼育カゴの中で同様に自由に動き回ることが可能でしたが、腸内細菌が減ったマウスは腸内細菌がまともなマウスに比べてトレッドミル運動で疲れやすく、運動意欲が乏しくて回し車をあまり使いませんでした。行動を定着させる神経伝達物質・ドーパミンの生成に携わる脳の線条体神経の遺伝子の発現を調べたところ、運動の最中に発現するそれら遺伝子が腸微生物を欠くマウスでは鈍っていました。それらの神経を阻害して運動中のドーパミン生成を妨げたときの運動能力は腸微生物を制限するか完全に除去したときと同じように劣りました。以上の結果は脳でのドーパミン生成が運動意欲に確かに貢献しており、腸の微生物の構成がその調節に何らかの役割を担っていることを意味します。次の疑問は腸内細菌と脳のドーパミンを関連づける仕組みです。その解明のために胃腸と脳をつなぐ神経を阻害してトレッドミルと回し車の実験を再び行いました。その結果、腸-脳連結神経が遮断されていると腸微生物はまっとうでも腸微生物が乏しいマウスと同様の運動低下が生じ、マウスがどれだけ運動するかはその神経の刺激にかかっていると示唆されました。何がその神経を刺激するのかが次に調べられ、2つの細菌・Eubacterium rectale(ユウバクテリウム レクターレ)とCoprococcus eutactus(コプロコッカス ユウタクタス)が生み出す代謝物・脂肪酸アミド(FAA)から作られる神経伝達物質・内在性カンナビノイドが運動中に胃腸神経の受容体を刺激し、脳のドーパミン生成に至ることが判明しました。その腸-脳経路を刺激するとマウスはより走れるようになり、かたや末梢の内在性カンナビノイド受容体の阻害、脊髄の神経除去、ドーパミン阻害は腸微生物排除と同様にマウスをより走れなくしました。運動中の腸の細菌の働きのおかげで運動する意欲がより高まって運動がより身につくことを今回の結果は裏付けました。これまでの研究で運動能力が高いマウスは痛みの感じ難さを示すランナーズハイがより強烈であることが示されており、腸内細菌はよく知られるその高揚感にも携わっているかもしれません。今回のマウス実験で示されたのと同じ腸-脳経路がヒトでも存在するかどうかを研究チームは次に調べる予定です。ヒトでの研究が進めば巷の人に走る習慣を身に付けさせたり一流アスリートの運動能力を最適化する安上がりで安全な食事ベースの手段が実現するかもしれません。また、依存やうつ病で支障を来した気分や意欲の回復手段を生み出せる可能性もあります3)。参考1)Dohnalova L, et al. Nature. 2022 Dec 14. [Epub ahead of print]2)Mice With a Healthy Gut Microbiome Are More Motivated to Exercise / TheScientist3)Gut microbes can boost the motivation to exercise, Penn Medicine study finds / Eurekalert

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小児および思春期の精神疾患に対する薬物治療反応の予測因子

 これまで、小児および思春期の精神疾患患者に対する薬物療法の治療反応の予測に関する研究は、十分に行われていなかった。慶應義塾大学の辻井 崇氏らは、米国国立精神衛生研究所(NIMH)によるサポートで実施された、小児および思春期の精神疾患患者を対象とした4つの二重盲検プラセボ対照試験のデータを分析し、薬物治療反応の予測因子の特定を試みた。その結果、小児および思春期の精神疾患患者に対する薬物療法の治療反応予測因子として、実薬による薬物療法の実施、女性、早期での改善が特定された。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2022年11月3日号の報告。 分析対象データは、不安症に対するセルトラリンおよびフルボキサミン治療、自閉スペクトラム症に対するリスペリドン治療、うつ病に対するfluoxetine治療を評価した4つの二重盲検プラセボ対照試験より抽出した。治療反応の定義は、エンドポイントでの臨床全般印象度の改善度(CGI-I)スコア1または2とした。治療反応と性別、診断、治療の割り付け、ベースライン時の臨床全般印象度の重症度(CGI-S)スコアとの関連を評価するため、ロジスティック回帰分析を用いた。さらに、1週目の早期改善(CGI-Iスコア3以下)は、2つの研究データを用いて、追加のバイナリロジスティック回帰分析により評価した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象の患者数は、599例であった。・バイナリロジスティック回帰分析では、治療反応と有意に関連していた因子は、実薬の使用(オッズ比[OR]:8.64、p<0.001)、女性(OR:1.89、p=0.002)であった。・追加のバイナリロジスティック回帰分析では、CGI-Iでの早期改善(OR:3.47、p=0.009)、実薬の使用(OR:15.05、p<0.001)、女性(OR:2.87、p=0.016)が、その後の治療反応と関連していた。

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