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PTSDやうつ病に対するドパミンD2受容体遺伝子変異の影響~メタ解析

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)およびうつ病のリスク因子として、ドパミンD2受容体遺伝子の変異が多くの研究で評価されているが、その結果は一貫していない。中国・北京林業大学のXueying Zhang氏らは、ドパミンD2受容体遺伝子変異とPTSDおよびうつ病リスクとの関連を明らかにするため、メタ解析を実施した。その結果、ドパミンD2受容体遺伝子の変異は、PTSDおよびうつ病の遺伝的な感受性に潜在的な影響を及ぼしている可能性が示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年2月4日号の報告。 2021年までの文献を、Web of Science、PubMed、Google Scholar、Excerpta Medica Database(EMBASE)、Springer、ScienceDirect、Wiley Online Library、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Chinese Biomedical Literature Database (CBM)、WANFANG Data、CQVIP、Chinese National Knowledge Infrastructure(CNKI)よりシステマティックに検索した。 主な結果は以下のとおり。・ドパミンD2受容体遺伝子の27の遺伝子変異が収集され、それらのうち選択基準を満たした7つをメタ解析に含めた。・メタ解析では、rs1800497(TaqIA)多型がPTSDのリスク増加と有意に関連していることが示唆された(優性モデルA1A1+A1A2 vs.A2A2[オッズ比[OR]:1.49、95%信頼区間[CI]:1.08~2.04、Z=2.46、p=0.014])。・人種によるサブグループ解析では、アジア人(優性モデルA1A1+A1A2 vs.A2A2[OR:1.39、95%CI:1.08~1.79、Z=2.60、p=0.009])と白人(優性モデルA1A1+A1A2 vs.A2A2[OR:1.87、95%CI:1.02~3.41、Z=2.04、p=0.042])において、PTSDリスクの有意な増加が観察された。・うつ病とドパミンD2受容体遺伝子の関連については、rs1799978(ホモ接合型の比較GG vs.AA[OR:0.60、95%CI:0.37~0.97、Z=2.08、p=0.038])とrs2075652(ホモ接合型の比較AA vs.GG[OR:1.82、95%CI:1.32~2.50、Z=3.67、p<0.001])多型の間に有意な関連の強固性が検出された。・累積メタ解析では、PTSDおよびうつ病の関連の強固性に、継続的な傾向が認められた。・PTSDおよびうつ病のリスク因子としてドパミンD2受容体遺伝子の変異を用いるためには、適切に設計された大規模ケースコントロール研究でさらに検証する必要がある。

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治療抵抗性うつ病に対するガイドラインの推奨事項

 うつ病は、重篤かつ広範に及ぶメンタルヘルス関連疾患である。うつ病は、2つ以上の抗うつ薬による治療でも寛解が得られず、治療抵抗性うつ病に至ることも少なくない。ブラジル・サンパウロ大学のFranciele Cordeiro Gabriel氏らは、診断および治療の改善を目的に作成された臨床診療ガイドライン(CPG)における治療抵抗性うつ病に対する推奨事項について、それらの品質および比較をシステマティックに評価した。その結果、うつ病治療のための高品質なCPGにおいて、治療抵抗性うつ病の定義および使用が統一されておらず、治療抵抗性うつ病に対する共通したアプローチも見当たらなかった。PLOS ONE誌2023年2月6日号の報告。 CPGを作成している専門データベースおよび組織を検索した。CPGの品質および推奨事項は、独立した研究者によりAGREE IIおよびAGREE-REXを用いて評価した。治療抵抗性うつ病の定義および推奨事項を含む高品質なCPGのみを対象に、divergenciesとconvergenciesおよび長所と短所を調査した。 主な結果は以下のとおり。・高品質の推奨事項を含む高品質のCPG7件のうち、特定の治療抵抗性うつ病の定義を含む2つのCPG(ドイツの国民診療ガイドライン[NVL]、米国の退役軍人省および国防総省の臨床診療ガイドライン[VA/DoD])を選択した。・これら2つのCPG間で収束する治療戦略は、見当たらなかった。・電気けいれん療法は、NVLで推奨されているもののVA/DoDでは推奨されておらず、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法は、VA/DoDで推奨されているもののNVLでは推奨されていなかった。・NVLでは、リチウム、甲状腺または他のホルモン治療、精神刺激薬、ドパミン作動薬の使用を推奨していたが、VA/DoDでは、これらの薬剤による増強治療を記載していなかった。・VA/DoDでは、ケタミンまたはesketamineの使用を推奨していたが、NVLでは、これらの薬剤について言及されていなかった。・その他の違いでは、抗うつ薬の併用、心理療法による増強治療、入院の必要性の評価などは、NVLのみで推奨されていた。

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治療抵抗性うつ病の高齢者、抗うつ薬増強で改善/NEJM

 治療抵抗性うつ病の高齢者において、既存の抗うつ薬にアリピプラゾールを併用する10週間の増強療法は、bupropionへの切り替えと比較し、ウェルビーイングを有意に改善し寛解率も高かった。また、増強療法あるいはbupropionへの切り替えが失敗した患者において、リチウム増強療法またはノルトリプチリンへの切り替えは、ウェルビーイングの変化量や寛解率が類似していた。米国・ワシントン大学のEric J. Lenze氏らが、医師主導によるプラグマティックな2ステップの非盲検試験「Optimizing Outcomes of Treatment-Resistant Depression in Older Adults:OPTIMUM試験」の結果を報告した。高齢者の治療抵抗性うつ病に対する抗うつ薬の増強療法または切り替えのベネフィットとリスクは、広く研究されていなかった。NEJM誌オンライン版2023年3月3日号掲載の報告。抗うつ薬の増強療法と切り替えについて、2ステップで比較 研究グループは、ステップ1として、60歳以上の治療抵抗性うつ病患者を、現在の抗うつ薬+アリピプラゾール(2.5mg/日で開始、最大15mg/日まで増量)(アリピプラゾール増強群)、現在の抗うつ薬+徐放性bupropion(150mg/日で開始、目標300mg/日、最大450mg/日まで増量)(bupropion増強群)、現在の抗うつ薬から徐放性bupropionへの切り替え(bupropion切り替え群)の3群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。次にステップ2として、ステップ1で寛解が得られなかった患者または不適格であった患者を、現在の抗うつ薬+リチウム増強群、ノルトリプチリンへの切り替え群に1対1の割合で無作為に割り付けた。各ステップは、10週間とし、最大10週間追加可とした。 主要アウトカムは、心理的ウェルビーイングのベースラインからの変化とし、米国立衛生研究所Toolbox Emotion Battery(NIHTB-EB)のPositive AffectとGeneral Life Satisfactionの2つのサブスケールの平均値をTスコアとして算出して評価した(標準集団の平均値50、スコアが高いほどウェルビーイングが良好)。副次アウトカムは、うつ病の寛解率とした。アリピプラゾール増強療法、切り替えと比較して有意に改善 2017年2月22日~2019年12月31日の期間に合計742例が登録された。ステップ1が619例、ステップ2が248例(主に治療失敗のためステップ1からステップ2への移行125例、ステップ2に直接登録123例)であった。 ステップ1において、心理的ウェルビーイングTスコアのベースラインからの増加(改善)は、アリピプラゾール増強群(211例)で4.83点、bupropion増強群(206例)で4.33点、bupropion切り替え群(202例)で2.04点であった。アリピプラゾール増強群とbupropion切り替え群の群間差は2.79点(95%信頼区間[CI]:0.56~5.02、p=0.014)で有意差が認められた(事前に設定した有意水準はp=0.017)が、アリピプラゾール増強群vs.bupropion増強群、あるいはbupropion増強群vs.bupropion切り替え群とでは有意差はなかった。 うつ病の寛解率は、アリピプラゾール増強群28.9%、bupropion増強群28.2%、bupropion切り替え群19.3%であった。 ステップ2において、心理的ウェルビーイングTスコアのベースラインからの増加は、リチウム増強群(127例)で3.17点、ノルトリプチリン切り替え群(121例)で2.18点(群間差:0.99、95%CI:-1.92~3.91)、うつ病寛解率はそれぞれ18.9%、21.5%であった。

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抗精神病薬とプロラクチンレベル上昇が骨折リスクに及ぼす影響

 抗精神病薬による治療が必要な患者は、骨粗鬆症関連の脆弱性骨折を含む骨折リスクが高いといわれている。これには、人口統計学的、疾患関連、治療関連の因子が関連していると考えられる。インド・National Institute of Mental Health and NeurosciencesのChittaranjan Andrade氏は、抗精神病薬治療と骨折リスクとの関連を調査し、プロラクチンレベルが骨折リスクに及ぼす影響について、検討を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2023年1月30日号掲載の報告。 主な結果は以下のとおり。・たとえば、認知症患者では、認知機能低下や精神運動興奮により転倒リスクが高く、統合失調症患者では、身体的に落ち着きがない、身体攻撃に関連する外傷リスクが高く、抗精神病薬服用患者では鎮静、精神運動興奮、動作緩慢、起立性低血圧に関連する転倒リスクが高くなる。・抗精神病薬は、長期にわたる高プロラクチン血症により生じる骨粗鬆症に関連する骨折リスクを高める可能性がある。・高齢者中心で実施された36件の観察研究のメタ解析では、抗精神病薬の使用が大腿骨近位部骨折リスクおよび骨折リスクの増加と関連していることが示唆された。この結果は、ほぼすべてのサブグループ解析でも同様であった。・適応疾患と疾患重症度の交絡因子で調整した観察研究では、統合失調症患者の脆弱性骨折は、1日投与量および累積投与量が多く、治療期間が長い場合に見られ、プロラクチンレベルを維持する抗精神病薬よりも、上昇させる抗精神病薬を使用した場合との関連が認められた。また、プロラクチンレベル上昇リスクの高い抗精神病薬を使用している患者では、アリピプラゾール併用により保護的に作用することが示唆された。・骨折の絶対リスクは不明だが、患者の年齢、性別、抗精神病薬の使用目的、抗精神病薬の特徴(鎮静、精神運動興奮、動作緩慢、起立性低血圧に関連するリスク)、1日投与量、抗精神病薬治療期間、ベースライン時の骨折リスク、その他のリスク因子により異なると考えられる。・社会人口統計学的、臨床的、治療に関連するリスク因子に関連する転倒および骨折リスクは、患者個々に評価し、リスクが特定された場合には、リスク軽減策を検討する必要がある。・プロラクチンレベルの上昇リスクの高い抗精神病薬による長期的な治療が必要な場合、プロラクチンレベルをモニタリングし、必要に応じてプロラクチンレベルを低下させる治療を検討する必要がある。・骨粗鬆症が認められた場合には、脆弱性骨折を予防するための調査やマネジメントが求められる。

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慢性期統合失調症患者の認知機能に対する抗精神病薬、抗コリン薬の影響

 精神疾患の治療には、さまざまな向精神薬が用いられるが、その多くは抗コリン作用を有しており、認知機能を低下させる可能性がある。フランス・Lebanese American UniversityのChadia Haddad氏らは、抗コリン作動性負荷と抗精神病薬の用量に焦点を当て、神経心理学的障害や症状の治療に用いられる薬剤と統合失調症患者の認知機能との関連を評価した。その結果、慢性期統合失調症患者の認知機能は、薬物療法や抗コリン作動性負荷の影響を受ける可能性があることを報告した。BMC Psychiatry誌2023年1月24日号の報告。 2019年7月~2020年3月、Psychiatric Hospital of the Cross-Lebanonで統合失調症と診断された120例の入院患者を対象に、横断的研究を実施した。抗コリン作動性負荷の算出にはAnticholinergic Drug Scale(ADS)を用いた。クロルプロマジン等価換算量はアンドレアセン法を用いて算出し、抗精神病薬の相対用量を評価した。客観的な認知機能の評価には、統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・クロルプロマジン等価換算量の低下と有意に関連していた因子は次のとおりであった。 ●BACS総スコアが高い(r=-0.33、p<0.001) ●言語性記憶スコアが高い(r=-0.26、p=0.004) ●ワーキングメモリスコアが高い(r=-0.20、p=0.03) ●運動機能スコアが高い(r=-0.36、p<0.001) ●注意と情報処理速度スコアが高い(r=-0.27、p=0.003)・認知機能の低下と有意に関連していた因子は次のとおりであった。 ●ADSが高い(標準化β[Sβ]=-0.22、p=0.028) ●クロルプロマジン等価換算量が高い(Sβ=-0.30、p=0.001) ●気分安定薬の使用(Sβ=-0.24、p=0.004)・慢性期統合失調症患者の認知機能に対し、薬物療法および抗コリン作動性負荷が影響を及ぼしている可能性が示唆された。・統合失調症患者の認知機能におけるコリン作動性神経伝達および一般的な神経化学的メカニズムを解明するためには、さらなる研究が求められる。

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ドキュメンタリー「WHOLE」(前編)【なんで自分の足を切り落としたいの!?(身体完全性違和)】Part 2

関連する症状は?身体完全性違和の特徴は、体の一部分(ほとんど左足)に違和感がある、命の危険を冒してでもそれをなくしたいと思う、それがなくなったら満足することであるとわかりました。また、ドキュメンタリーに登場する人たちが全員男性であったため、男性に起こりやすい可能性も考えられます。ただし、これまでほとんど知られてこなかった「病気」であり、発症頻度はとても低いと思われます。それでは、この原因は何でしょうか? この謎を解き明かすために、身体完全性違和と関連する症状(状態)を5つ挙げてみましょう。(1)感覚麻痺1つ目は、感覚麻痺です。これは、手足の感覚がしびれたり鈍くなることです。感覚中枢(頭頂葉の体性感覚野)または末梢神経などが障害されることで起こります。また、心理的なストレスや暗示(催眠)による感覚中枢の一時的な機能低下(ローカルスリープ)によって起こることもあります。これは、変換症(転換性障害)と呼ばれています。感覚麻痺と身体完全性違和は、感覚異常がある点では同じですが、感覚麻痺はその体の一部分をなくしたいとまでは思わない点で違います。なお、ローカルスリープの詳細については、関連記事2をご覧ください。(2)幻肢2つ目は、幻肢です。これは、存在しない手足が存在しているように感じることです。さらに、存在しない手足の痛みを感じるなら、幻肢痛と呼ばれます。事故や糖尿病性壊疽などによる四肢切断や先天性四肢欠損などによって、もともと末梢神経が障害されている(存在しない)場合、多くはただ手足の感覚がないだけです。しかし、「ないはずのものがある」と感じるということは、実は体の存在を認識する脳の機能(ボディイメージ)が備わっていることが考えられます。そして、幻肢ではこの機能が誤作動を起こしていることが考えられます。実際に、この「体の地図」(ボディイメージ)と実際の体の感覚や動きを統合する脳内のネットワークがあることがわかっています。この記事では、これを「身体認識ネットワーク」と名付けます。幻肢と身体完全性違和は、感覚異常がある点では同じですが、幻肢が「ないはずのものがある」と感じるのに対して、身体完全性違和は「あるはずのものがない(いらない)」と感じる点で違います。(3)ラバーハンド錯覚3つ目は、ラバーハンド錯覚です。これは、次のような実験で判明しています。まず、ゴム製の手(ラバーハンド)を被験者の手のように目の前で見えるようにして、自分の手は横に置いて衝立で見えなくします。そして、ゴム製の手と自分の手の両方が絵筆でなでられることで、被験者にゴム製の手が自分の手であると認識させます。すると、その後にゴム製の手だけをなでても、被験者は自分の手がなでられていると実際に感じて(錯覚して)しまうのです。このメカニズムは、幻肢と同じように身体認識ネットワークの誤作動が考えられています。なお、ラバーハンド錯覚の実験の詳細については、動画をご覧ください。(4)気付き亢進4つ目は、気付き亢進です。これは、体の触れ方や歩き方などの手足の身体感覚が研ぎ澄まされている(注意が向きすぎている)ことです。「身体過剰認識」とも言い換えられ、身体認識ネットワークの機能亢進が考えられます。これは、統合失調症の初期症状で見られます。なお、このメカニズムは、心理療法のマインドフルネスにも通じます。この詳細については、関連記事3をご覧ください。(5)身体失認5つ目は、身体失認です。これは、体の一部分が自分のものと認識できなくなることです。感覚中枢の障害に加えて、身体認識ネットワークの機能低下が考えられます。たとえば、片側の大脳半球(主に右半球)が機能低下することで反対側(左側)の手足の運動麻痺や感覚麻痺が起きる場合、さらにその部位を自分の体の一部分と認識できなくなることです。麻痺している部分自体を認識できないので、麻痺していないと言い張ることもあります。これは、病態失認と呼ばれています。身体失認が軽度の場合、その部位の手足の身体感覚に注意が向かなくなり(無視するようになり)、その半側でぶつかったり転びやすくなります。これは、半側空間無視と呼ばれています。身体失認と身体完全性違和は、「自分のものではない」と訴える点では同じですが、身体失認がその体の部分を認識できないのに対して、身体完全性違和は認識できている点で違います。ちなみに、視覚中枢(後頭葉)と一緒に身体認識ネットワークの機能低下が起きれば、目が見えないのに目が見えると言い張ります(皮質盲)。また、聴覚中枢(側頭葉)と一緒に起きれば、聞こえないのに聞こえると言い張ります(皮質聾)。これらも身体失認であり、病態失認です。原因は何なの?関連する症状との違いを踏まえて、身体完全性違和の原因は何でしょうか? その答えは、先ほどの身体認識ネットワークのみの機能低下であることが考えられます。感覚中枢も末梢神経も正常であるため、身体感覚はあるのに身体認識ができず、結果的にその体の一部分を「自分のものではない」(異物)として認識してしまうのです。もしも先ほどの身体失認の場合であれば、身体感覚もなく身体認識もできず、「自分のものではない」(何もない)と認識してしまいます。実際の画像検査の研究では、身体完全性違和の人の脳内の右上頭頂小葉は、健常の人よりも厚みがなく働き方が違っていることが確認されています2)。そこは、身体認識ネットワークの1つと考えられています。身体認識ネットワークがもともと右脳にあるからこそ、ドキュメンタリーで登場する人たちが違和感を訴える体の部分のほとんどが、右脳が支配する反対側の左側なのでしょう。また、だからこそ、身体失認も体の部分の左側が多いのでしょう。また、身体完全性違和の人の違和感のある体の部分への皮膚コンダクタンス反応(SCR)は、違和感のない体の部分の2~3倍の反応があったことが確認されています2)。だからこそ、その部分をわざわざ切り落としたいと思うのでしょう。ちなみに、もしも身体認識ネットワークの機能低下が体の一部分ではなく、全身で起きたらどうなるでしょうか? 軽度の場合は、「自分の体が自分のものではないように感じる」という離人感(離人症の一症状)が出てくるでしょう。重度の場合は、「自分の体が死んでいる(存在しない)」と思い込むコタール症候群(うつ病の虚無妄想)が出てくるでしょう。なお、身体完全性違和は体の部分についての身体認識に異常がありますが、「自分のものではない」体の部分を自分が持っているという自己認識には異常はありません。もしも自己認識も機能低下している場合は、自分のこととして認識できなくなるので、切断を希望しなくなるでしょう。この自己認識の中枢は右前頭葉であることがわかっており、身体認識ネットワークと同じ右脳であることはとても興味深いです。おそらく、左脳が言語の優位半球であるため、脳の側性化としてそのバランスをとって、右脳は認識の優位半球となったことが考えられます。ただし、あくまで右脳が優位に働いているだけで、左脳も「劣位」ながら働いているでしょう。また、これはあくまで世の中に右利きの人が多いからです。左利きの人の場合は逆になるでしょう。実際に、身体完全性違和によって切断を希望する体の部分が右足や両足である人も少ないながらいます。なお、残念ながら、彼らの利き手がどちらかまでは報告されていません。自己認識の詳細については、関連記事4をご覧ください。また、先ほど紹介した気付き亢進については、この症状により切断を希望する人がいる可能性は考えられます。ただし、その大本の原因が統合失調症であるため、やがて自己認識も障害され(亢進して)、さらに幻覚や妄想などの症状も出てきて、切断するという単純な解決を求められなくなります。なお、統合失調症の自殺者の中には、この気付き亢進がきっかけになっている人がいる可能性は考えられます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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軽症から中等症のCOVID-19外来患者において、フルボキサミンはプラセボと比較して症状改善までの期間を短縮せず(解説:寺田教彦氏)

 本研究では、軽症から中等症のCOVID-19外来患者で、フルボキサミンが症状改善までの期間を短縮するか評価が行われたが、プラセボと比較して症状改善までの期間を短縮しなかったことが示された1)。 フルボキサミンは、うつ病や強迫性障害などの精神疾患に使用される選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であり、比較的安価な薬剤である。COVID-19流行初期において、このフルボキサミンは、サイトカインの産生を制御するσ-1受容体のアゴニストとして機能することから、臨床転帰の改善効果を期待して臨床試験が行われた。初期の臨床試験では有効性を示した報告2)もあり、ブラジルで行われたプラセボ対照無作為化適応プラットフォーム試験(TOGETHER試験)でも有効性が示されていた3)。そして、これらの研究に基づいたsystematic review4)やCochrane COVID-19 Study Register5)では、フルボキサミンは28日の全死因死亡率をわずかに低下させる可能性や、軽症COVID-19の外来および入院患者の死亡リスクを低下させる可能性があると評されていた。 しかし、フルボキサミンの有効性を否定する報告6)や、新型コロナウイルスワクチンの開発に伴いワクチン接種の有無で治療薬の有効性が変化する可能性も考えられ、現時点でフルボキサミンの有効性がない可能性も考えられた。そのため、新型コロナウイルスワクチンの接種率が7割程度あり、流行株がデルタ株からオミクロン株の時期の米国において、フルボキサミンの有効性が再度検証され、結果は前述の通りであった1)。 これまでの経緯や今回の研究結果を踏まえ、私は、日本ではフルボキサミンを臨床的に使用する必要性はないと考える。 過去の研究と今回の研究を比較すると、初期に有効性を示した臨床研究2)では、試験の参加者が少なかったことや、経過観察期間が短かったために正確な結論が得られなかった可能性が懸念される。また、ブラジルで実施されたTOGETHER試験は重症の定義に「6時間以上の救急医療を要する患者」を含めており、フルボキサミンが真に重症化予防効果があったかの疑問が残る。 今回、検証された理由の1つである、新型コロナの流行株や国民の新型コロナウイルスワクチン接種率の観点からも、本邦では今回の研究参加者の背景が近いと考えられる。フルボキサミンの有用性を示せなかった理由に、薬剤の投与量が指摘されることもあるが7)、現在はCOVID-19の病態の解明も進み、ワクチンの効果や新型コロナウイルスの変異により、かつてよりも死亡率や重症化率はかなり低下している状況である。そのうえ、重症化リスクのある患者に対する有効な抗ウイルス薬も開発され、使用方法も確立している。これだけCOVID-19治療法が確立した現在の日本においては、いくら安価であるとはいえ、COVID-19に対する効果が不確定なフルボキサミンを使用するメリットはないだろう。 さて、欧米や本邦では、COVID-19の治療ガイドライン8)や薬剤使用方法の手引き9)が整備されており、われわれ医療従事者はこれらのエビデンスに容易にアクセスできるようになった。しかし、インターネットのホームページをみると、本原稿執筆時でも、フルボキサミンが有効だったことを報告した当初の論文のみを載せてフルボキサミンの販売をしている通販サイトが散見される。COVID-19診療を振り返ってみると、イベルメクチンなどのようにCOVID-19への治療が期待されたがために、本来投与が必要な患者さんの手に薬剤が回らないことが懸念された薬剤もあった。新興感染症の病態や有効な治療薬が不明確なときには、有効と考えられる薬剤の投与を通して、エビデンスを生み出す必要があるが、病態や治療方法が確立すれば、適切な治療を行うように努めるべきであろう。 また、治療の有効性が否定された薬剤はその結果を受け止め、本来医学的に必要とされる患者さんに同薬剤が行き渡るようにするべきであろう。医薬品が一般人でも入手しやすくなった現代では、非医療従事者にも適切な情報が届くように、インターネットを含めてFact-Checkを行ってゆく必要があると考える。【引用文献】1)フルボキサミン、軽~中等症コロナの症状回復期間を短縮せず/JAMA2)Lenze EJ, et al. JAMA. 2020;324:2292-2300.3)Reis G, et al. Lancet Glob Health. 2022;10:e42-e51.4)Lee TC, et al. JAMA Netw Open. 2022;5:e226269.5)Nyirenda JL, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2022;9:CD015391.6)Bramante CT, et al. N Engl J Med. 2022;387:599-610.7)Boulware DR, et al. Lancet Glob Health. 2022;10:e329.8)Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)Treatment Guidelines9)COVID-19 に対する薬物治療の考え方 第 15.1 版(2023年2月14日)

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うつ病に対するSSRIの治療反応

 うつ病に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の臨床反応の発現には、数週間を要することも少なくない。また、そのメカニズムは十分に把握されているとはいえない。オランダ・ユトレヒト大学のLynn Boschloo氏らは、うつ病の臨床症状に対するSSRIの直接的および間接的な効果について、プラセボ対照の状態と比較し評価を行った。その結果、SSRIは主に感情症状の改善を介して、間接的に認知症状やいくつかの覚醒/身体症状を改善することが明らかとなった。著者らは、本結果はSSRIの作用機序の解明や、臨床でのSSRIに対するレスポンダーおよび非レスポンダーの早期特定に役立つ可能性があると述べている。Translational Psychiatry誌2023年1月21日号の報告。 米国食品医薬品局(FDA)に登録されたSSRIの有効性に関する28件の試験に参加したうつ病成人患者8,262例のデータを分析した。うつ病の臨床症状は、治療後1、2、3、4、6週目に、ハミルトンうつ病評価尺度17項目(HDRS-17)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・Network estimation techniqueでは、SSRIは抑うつ気分および精神的不安といった2つの感情症状に対し、迅速かつ強力な直接的効果を示していた。なお、他の症状への直接的効果は弱い、または認められなかった。・4つの認知症状(罪責感、自殺念慮、仕事/活動での興味の喪失、集中困難を含む遅滞)のすべてに対しては実質的な間接的効果が認められており、SSRIによる大幅な改善が示されたが、主に抑うつ気分の大幅な改善が報告された患者においてであった。・精神的不安への直接的な影響を介して、身体的不安および焦燥といった2つの覚醒/身体症状に小さな間接的効果が認められた。・睡眠障害やその他の覚醒/身体症状に対する直接的および間接的な効果は弱い、または認められなかった。

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医学生に労働法の知識を!医師や弁護士がモデル講義/厚生労働省

 医師の過重労働の問題が指摘されて久しいが、2024年4月から医師に対する時間外労働の上限規制をはじめとした「医師の働き方改革」がスタートする。これを踏まえ、厚生労働省では、今後医師となる医学生に対し、労使関係の基本となる労働法や医師の働き方改革の基本を知ってもらうべく、医師や弁護士を講師としたモデル授業をスタートした。 2022年度からスタートしたこのモデル講義について、大学関係者に対して紹介する「医学部等における労働法教育を考えるシンポジウム」が開催され、モデル授業を担当した医師や弁護士が講義内容やその意義を報告した。 関西医科大学などで講義を行った大阪医科薬科大学 消化器外科の河野 恵美子氏は次のように振り返る。 「講義は、医師の働き方改革のあゆみや今後のスケジュールの共有からスタートしました。私は外科医なので日本外科学会が2012年に行ったアンケート結果から、20~30代の外科医の75%近くが週80時間以上の労働時間となっている、という厳しい実態を紹介しました。そして海外と比較した日本の病床数や医師の業務実態などのデータを提供し、働き方の改善策を考えてもらいました。次に私自身のキャリアや育児期の働き方を紹介し、女性外科医のリアルな働き方を知ってもらいました。講義後のアンケートでは約9割の学生から『有意義だった』という感想が寄せられ、自由回答でも『外科は厳しい印象があったが、やり方次第では出産・育児と両立できそうだと感じた』といった声が寄せられました。講義のポイントは、働き方改革の趣旨・目的を伝え、多様な働き方を提示することで学生の内発的モチベーションを向上させることだと感じました」 続いて日本医師会で常任理事を務める神村 裕子氏が自分の講義を振り返った。 「講義の冒頭で1998年の研修医過労死、1999年の小児科医過労自死と、今の働き方改革につながった重大な事件を紹介し、合わせて働き過ぎで肉体、精神がいかに蝕まれるかについての具体的なデータを示しました。私は精神科医なので、精神疾患による労災認定が増えているデータや、ワークライフバランスが崩れている意識がある人は超過労働がうつ病の発症に結びつきやすいというデータも示しました。過重労働が心身に与える影響を理解してもらい、研修医・医師も労働法に守られかつ守る立場であること、自分だけではなく他職種の労働上の権利も尊重すべきであること、という要点を伝えました」 日本赤十字社医療センター産婦人科の木戸 道子氏は「医学生は先輩などから医師になった後の働き方の情報を入手しているが、部分的なものであることが多く、法的根拠を含めた全体的な知識を持つことが重要だ。学生も参加するワークショップ形式にすることで、まだ臨床実習の始まっていない年次の学生でも自分ごととして捉えてもらえる。モデル講義を重ねてブラッシュアップし、今後の医学教育のカリキュラムとして組み込んでいくことが求められる」と話した。 厚生労働省ではモデル講義の導入を検討する医学部関係者に対し、取り組みやモデル授業の概要、実施のステップをまとめた冊子1)を作成して配布、PDFでも公開している。

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統合失調症における抗精神病薬使用と心臓突然死リスク

 抗精神病薬で治療される統合失調症患者は、心臓突然死のリスクが高いといわれている。獨協医科大学の岡安 寛明氏らは、統合失調症患者における抗精神病薬の使用と心臓突然死リスクとの関連を明らかにするため、deceleration capacity(DC)(心臓突然死の予測因子として用いられる心拍変動の指標)の低下を調査し、抗精神病薬の使用による心臓突然死リスクを、DCの評価と補正QT間隔(QTc)との関連で評価した。DCが抗精神病薬を使用する統合失調症患者の心臓突然死リスク増加の特定に役立つ可能性 その結果、抗精神病薬を使用している統合失調症患者においてDCを評価することは、心臓突然死リスク増加のモニタリングおよび特定に役立つ可能性が示唆された。また、DCとQTcの両方の評価で、心臓突然死の予測精度が向上する可能性があることも報告された。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2023年1月14日号の報告。 統合失調症患者138例のDCとQTcを測定し、年齢、性別をマッチさせた健康対照者86例と統合失調症患者86例のDCを比較した。統合失調症患者138例のDCと使用する抗精神病薬の用量の相関関係を調査するため、線形回帰分析を用いた。QT延長の有無による統合失調症患者のDCを比較した。 統合失調症患者における抗精神病薬の使用と心臓突然死リスクとの関連を評価した主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬を使用している統合失調症患者と健康対照者で、DCが有意に異なることが確認された。・DCは抗精神病薬の使用(とくにクロルプロマジン、ゾテピン、オランザピン、クロザピン)と用量依存的な負の相関が認められた。・DCとQTcとの間に有意な関連は認められなかった。

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3月3日 耳の日【今日は何の日?】

【3月3日 耳の日】〔由来〕 「3(み)月3(み)日」との語呂合わせ、数字の「3」が耳の形にみえること、電話の発明家で音声学と聾唖教育で活躍したグラハム・ベルの誕生日であることから、日本耳鼻咽喉科学会の提案により1956(昭和31)年に制定。同会では、都道府県ごとに難聴で悩んでいる方々の相談のほか、一般の方にも耳の病気や健康な耳の大切さの啓発活動を行っている。関連コンテンツ難聴と認知症【外来で役立つ!認知症Topics】耳鳴りがするときの症状チェック【患者説明用スライド】コロナにやられて耳が聞こえない!【Dr. 中島の 新・徒然草】医療マンガ大賞2021 言葉にしないと伝わらないこと(言語聴覚士視点)フクラアカリガエル氏高齢者における難聴とうつ病との関係~メタ解析

552.

双極性障害、うつ病、自殺企図へのT. gondiiの影響

 双極性障害、うつ病、自殺企図における寄生性原生生物トキソプラズマ(T. gondii)の潜伏感染の影響については長期間にわたり議論されているが、T. gondiiが脳や行動を操作する方法に関してエビデンスは不足しており、この推測は不明のままである。トルコ・イスタンブール大学のOmer Faruk Demirel氏らは、自殺企図を有する/有さない双極性障害およびうつ病患者へのT. gondii感染の影響を検討するため本研究を実施した。その結果、T. gondii潜伏感染は、双極性障害および自殺企図の原因と関連している可能性が示唆された。Postgraduate Medicine誌オンライン版2023年2月6日号の報告。 自殺企図の有無にかかわらず双極性障害およびうつ病患者に対するT. gondii感染の影響を検討するため、血清学的および分子ベースの評価を行い、年齢、性別、居住地域(県)がマッチした健康対照者と比較した。双極性障害患者147例、うつ病患者161例、健康対照者310例をプロスペクティブに評価した。 主な結果は以下のとおり。・T. gondiiの血清陽性率は、双極性障害患者で57.1%、うつ病患者で29.2%、自殺企図を有する患者で64.8%、健康対照者で21.3%であった。・二項ロジスティック回帰分析では、T. gondii陽性の免疫グロブリンG(IgG)の状態は、双極性障害および自殺企図の顕著な傾向因子である可能性が示唆されたが、うつ病では示唆されなかった。 ●双極性障害(OR:3.52、95%信頼区間[CI]:2.19~5.80、p<0.001) ●自殺企図(OR:17.17、95%CI:8.12~36.28、p<0.001) ●うつ病OR:1.21、95%CI:0.74~1.99、p=0.45)・PCRによるT. gondiiのDNA比率では、双極性障害およびうつ病との関連が認められた。

553.

日本人統合失調症患者に対する長時間作用型抗精神病薬注射剤の有効性比較

 明治薬科大学のYusuke Okada氏らは、日本人統合失調症患者に対する各種長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬(アリピプラゾール、パリペリドン、リスペリドン、フルフェナジン/ハロペリドール)の有効性の比較を行った。その結果、アリピプラゾールとパリペリドンのLAIは、フルフェナジン/ハロペリドールと比較し、精神科入院およびLAI中止のリスクが低かった。また、アリピプラゾールLAIは、リスペリドンよりもLAI中止リスクが低いことも報告した。Schizophrenia Research誌2023年2月号の報告。 2つのレセプトデータベースを用い、レトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、2015年5月~2019年11月の間にLAI抗精神病薬による治療を開始した統合失調症外来患者。精神科入院リスクとLAI中止リスクをLAI間で比較するため、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・薬剤ごとの適格基準を満たした使用開始患者数は、アリピプラゾール303例、パリペリドン124例、リスペリドン73例、フルフェナジン/ハロペリドール123例であった。・精神科入院リスクについて、アリピプラゾール(HR:0.47、95%信頼区間[CI]:0.28~0.78)とパリペリドン(HR:0.50、95%CI:0.28~0.89)は、フルフェナジン/ハロペリドールと比較し、リスクが有意に低かった。また、リスペリドンは、アリピプラゾールおよびパリペリドンと同様の傾向が認められた。・LAI中止リスクについて、アリピプラゾール(HR:0.53、95%CI:0.35~0.80)とパリペリドン(HR:0.57、95%CI:0.35~0.92)は、フルフェナジン/ハロペリドールと比較し、リスクが有意に低かった。・アリピプラゾールは、リスペリドンと比較し、LAI中止リスクが有意に低かった(HR:0.56、95%CI:0.32~0.98)。

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うつ病や高レベルの不安症状を有する患者に対するボルチオキセチンの最新分析

 うつ病患者の多くは、不安症状を合併している。デンマーク・H. Lundbeck A/SのMichael Adair氏らは、うつ病患者の不安症状の治療に有効であるといわれているボルチオキセチンが、承認されている用量の範囲で有効性および忍容性が認められるかを検討した。その結果、ボルチオキセチンは、前治療で効果不十分であった患者を含むうつ病および高レベルの不安症状を有する患者に対し、有効かつ良好な忍容性を示し、最大の効果が20mg/日で認められたことを報告した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年1月25日号の報告。 うつ病および高レベルの不安症状(ハミルトン不安評価尺度[HAM-A]総スコア20以上)を有する患者を対象に、ボルチオキセチン5~20mg/日の有効性および忍容性を検討するため、4つのランダム化固定用量プラセボ対照試験(842例)からプールされたデータを用いた。前治療で効果不十分であった患者299例において、ボルチオキセチン10~20mg/日とagomelatine 25~50mg/日を比較したランダム化二重盲検試験のデータを個別に分析した。Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)、HAM-A、シーハン障害尺度(SDS)の総スコアのベースラインからの平均変化量を、ボルチオキセチンの投与量別に分析した。 主な結果は以下のとおり。・固定用量試験からプールされた分析では、MADRS、HAM-A、SDSの総スコアの改善に関して、ボルチオキセチン5~20mg/日における用量反応関係が認められた。・ボルチオキセチン20mg/日は、プラセボと比較し、4週目以降の有意な効果が確認された。・前治療で反応が不十分であった患者を対象とした事後分析では、ボルチオキセチン10~20mg/日はagomelatineと比較し、4週目以降のすべてのアウトカムにおいて優れた効果が確認された。・ボルチオキセチンを20mg/日まで増量した場合でも、有害事象の増加は認められなかった。・いずれの研究も短期試験であり、長期的な影響は確認できなかった。

555.

初発統合失調症患者が抗精神病薬を服薬中断した理由

 統合失調症患者の多くは、初回治療で使用した抗精神病薬の服薬を中止する。初発統合失調症患者における服薬中断の理由については、明らかになっていないことも多い。デンマーク・コペンハーゲン大学病院のAnne Emilie Sturup氏らは、初発統合失調症患者における抗精神病薬治療の服薬中断または継続の理由、それらの個人差、予測因子を特定するため、事後デザインによるプロスペクティブコホート研究を行った。その結果、抗精神病薬の服薬中断の主な理由は副作用であり、継続の主な理由は効果であった。著者らは、抗精神病薬治療の服薬中断および継続の理由を認識することは、統合失調症治療における意思決定の共有、服薬中断する可能性が高い患者の特定、アドヒアランスの向上、安全な治療中止に有用であるとしている。Early Intervention in Psychiatry誌オンライン版2023年1月24日号の報告。初発統合失調症患者215例で服薬中断の理由を報告した患者は76例 対象は、2009~12年にデンマークの精神疾患早期介入チーム(early intervention teams:EIT)が治療を行った初発統合失調症患者。社会人口統計学的および臨床的変数はベースライン時に収集し、抗精神病薬の服薬中断および継続の理由は3.5年間フォローアップし評価した。 初発統合失調症患者における抗精神病薬治療の服薬中断または継続の理由を研究した主な結果は以下のとおり。・初発統合失調症患者215例中、抗精神病薬の服薬中断の理由を報告した患者は76例、継続の理由を報告した患者は139例であった。・主な服薬中断の理由は、「副作用」「以前よりも改善したので、服薬の必要がないと思った」であった。・主な継続の理由は、「陽性症状に対してメリットがあると感じている」「他者から継続するよう言われた」であった。・抗精神病薬を服薬中断した患者は、継続した患者と比較し、次の特徴が認められた。●ベースライン時の年齢が若い●未治療期間が長い●陰性症状が少ない●社会機能が良好●コンプライアンスが低い●対処法に自信がある●使用する抗精神病薬が少ない

556.

アリピプラゾール長時間作用型注射剤切り替えの有効性

 急性期および慢性期の統合失調症患者を対象に、パリペリドンパルミチン酸エステルの長時間作用型注射剤(LAI)を含む第2世代抗精神病薬から月1回のアリピプラゾールLAIへ切り替えた場合の有効性について、韓国・全南大学校のSung-Wan Kim氏らが検討を行った。その結果、他の抗精神病薬からアリピプラゾールLAIへの切り替え成功率は高く、アリピプラゾールLAIの優れた忍容性と有効性が示唆された。また、精神病理や社会的機能の改善は、罹病期間が短い統合失調症患者においてより顕著に認められ、代謝異常の改善は、慢性期患者でより顕著に認められた。Clinical Psychopharmacology and Neuroscience誌2023年2月28日号の報告。 統合失調症患者82例を対象に、24週のプロスペクティブ・オープンラベル・フレキシブルドーズ切り替え試験を実施した。陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、個人的・社会的機能遂行度尺度(PSP)、臨床全般印象度(CGI)、主観的ウェルビーイング評価尺度短縮版(SWN-K)、コンピュータ化されたemotional recognition test(ERT)を用いて評価した。対象患者は、5年間の罹病期間に基づいて急性期群と慢性期群に分類した。 主な結果は以下のとおり。・82例中67例(81.7%)が24週間の試験を完了した。・アリピプラゾールLAIに切り替えた後の中止率において、切り替え前の抗精神病薬の種類を含む臨床的特徴による差は認められなかった。・アリピプラゾールLAIに切り替え後、PANSS、PSP、CGI、SWN-K、ERTスコアの有意な改善が認められた。また、代謝パラメータや体重の増加は認められなかった。・急性期群は慢性期群よりも、PANSS、PSP、CGIスコアの改善が有意に高く、慢性期群は急性期群よりも、代謝パラメータの有意な改善が認められた。

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食物繊維の摂取とうつ病・不安との関係~メタ解析

 食物繊維の摂取とうつ病との関連について、これまでの研究結果には一貫性が認められていない。イラン・テヘラン医科大学のFaezeh Saghafian氏らは、食物繊維の摂取とうつ病および不安症との関連を明らかにするため、メタ解析を実施した。その結果、食物繊維の摂取が増加するほど、成人のうつ病リスクに対し保護的に作用することが示唆された。Nutritional Neuroscience誌2023年2月号の報告。 2021年5月までに公表された研究を、電子データベースよりシステマティックに検索した。食物繊維の摂取とうつ病および不安症との関連を調査した18件の研究(横断研究:12件、コホート研究:5件、ケースコントロール研究:1件)をメタ解析に含めた。うつ病に関する研究は、15件が成人を対象に、3件が青少年を対象に実施されていた。不安症に関する研究は、適格研究が不十分なため、分析には含めなかった。 主な結果は以下のとおり。・食物繊維の総摂取量は、成人のうつ病オッズ比(OR)の10%低下(OR:0.90、95%信頼区間[CI]:0.86~0.95)および青少年のうつ病ORの57%低下(OR:0.43、95%CI:0.32~0.59)と関連していた。・用量反応メタ解析では、成人において食物繊維の総摂取量とうつ病ORとの間に逆線形関係が認められ、食物繊維の総摂取量が5g増加するごとに、うつ病リスクが5%減少することが示唆された(OR:0.95、95%CI:0.94~0.97)。・野菜からの食物線維の摂取(OR:0.73、95%CI:0.66~0.82)、水溶性食物繊維の摂取(OR:0.80、95%CI:0.71~0.91)とうつ病ORとの間に、有意な逆相関の関連が認められた。・穀物および果物からの食物繊維、不溶性食物繊維とうつ病リスク低下との関連は、わずかであった。

558.

統合失調症に対する抗精神病薬の治療反応の性差~メタ解析

 オランダ・アムステルダム大学のBram W. C. Storosum氏らは、統合失調症に対する抗精神病薬の治療反応が、性別や閉経状態により影響を受けるかについて、調査を行った。その結果、統合失調症治療において女性のほうが男性よりも抗精神病薬に対する治療反応が得られやすく、この影響は閉経状態やベースライン時の症状重症度(陰性症状)による影響を受けていなかった。Psychiatry Research誌2023年2月号の報告。 統合失調症患者5,231例を対象とした抗精神病薬の短期プラセボ対照登録研究22件のデータを分析した。個々の患者データについて2段階のメタ回帰分析を行い、症状重症度の平均差と治療反応の差(30%超の症状改善)に対する性別および閉経状態の影響を調査した。ベースライン時の症状重症度(陰性症状)で補正した場合としない場合の両方で、分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬による統合失調症治療は、女性において男性よりも、平均的な症状改善効果が高かった。・性別ごとのNNTは、女性で6.9、男性で9.4であった。・治療効果による性差は、閉経前の状態およびベースライン時の症状重症度(陰性症状)の影響を受けなかった。・急性期抗精神病薬治療のエフェクトサイズに対する性別および年齢の影響があるものの、すべてのサブグループにおいて臨床的有効性が認められた。

559.

子育て世代の日本人女性のうつ症状スクリーニング尺度MDPS-M

 産後うつ病は、出産後の女性にとって重要な問題の1つである。産後うつ病の早期発見と適切な治療には、うつ病リスクの高い女性を迅速かつ簡便に特定することが必要である。大阪大学の竹内 麻里子氏らは、子育て世代の女性の身体症状からうつ症状をスクリーニングする尺度を開発し、検証の結果を報告した。今回、著者らが開発した子育て世代の女性のうつ症状スクリーニング尺度「MDPS-M」は、プライマリケアにおいてうつ病リスクが高い母親の早期の特定に有用かつ簡便な臨床尺度である可能性が示唆されたという。Frontiers in Psychiatry誌2022年12月1日号の報告。 漢方医学の概念に基づいた身体症状に関する17項目の質問(0、1、2点の3段階スコア)からなる、軽症以上のうつ症状をスクリーニングする簡便な自己記入式の尺度Multidimensional Physical Scale(MDPS)を開発した。子育て世代(産後0~6年)の女性1,135人のうち、学習用データとして偏りなくランダムに抽出した785人、検証用データとして350人を対象に解析を行った。うつ病の判定には、ベック抑うつ質問票(BDI-II)を用いた。学習用データの多変量ロジスティック回帰分析を行い、最終モデルを作成した。 主な結果は以下のとおり。・MDPS合計スコア(0~34点)に月経再開の有無(-3、0点)を加えたMDPS for mothers(MDPS-M)を作成した。・うつ病リスク特定のためのROC分析では、MDPS-M(-3~34点)の良好な鑑別が示唆された(AUC:0.74、95%信頼区間[CI]:0.70~0.78)。・MDPS-Mのカットオフ値(9/10)における軽症以上のうつ病検出精度は、感度84.9%、特異度45.7%、陽性的中率36.7%、陰性的中率89.2%であった。・MDPS-Mの外部検証では、開発コホートと同様の分析において良好な鑑別が確認された(AUC:0.74、95%CI:0.68~0.79)。

560.

統合失調症はどの季節に生まれた子に多いかメタ解析

 冬季出生の子供は、統合失調症リスクが増加するといわれ、100年近く経過している。統合失調症リスクと冬季出生との関連性を示す観察研究に基づき、ビタミンD欠乏症や子宮内でのウイルス曝露などの統合失調症の潜在的な病因リスク因子に関する仮説が考えられている。米国・イェール大学のSamantha M. Coury氏らは、出生の季節と統合失調症リスクとの関連を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、誕生月のデータを使用した分析では、北半球で冬季出生の子供は統合失調症リスクが高く、夏~秋に出生した子供は統合失調症リスクが低いという季節的傾向が認められた。Schizophrenia Research誌オンライン版2023年1月20日号の報告。統合失調症リスクと季節性~冬季出生で有意に上昇 誕生月と統合失調症リスクとの関連を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。南北半球で層別化し、これらの関連をさらに調査した。 出生の季節と統合失調症リスクとの関連を調査した主な結果は以下のとおり。・メタ解析には、43件の研究(30の国と地域、統合失調症患者44万39例)を含めた。・冬季出生は、統合失調症リスクが、小さいながらも統計学的に有意な上昇と関連していた(オッズ比[OR]:1.05、95%信頼区間[CI]:1.03~1.07、p<0.0001)。また、夏季出生は、統合失調症リスクが、小さいながらも有意な低下と関連していた(OR:0.96、95%CI:0.94~0.98、p=0.0001)。・層別サブグループ解析では、出生の季節と統合失調症リスクとの有意な関係は、北半球と南半球で差は認められなかった。・誕生月のデータを使用した分析では、南半球ではなく北半球において統合失調症リスクの増加が冬季出生に関連し、夏~秋の出生では統合失調症リスクが減少するという明確な季節的傾向が示された。・誕生月と統合失調症リスクとの関連に対する潜在的な病因を明らかにするためには、さらなる研究が求められる。

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