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第164回 麻酔下の患者へのケタミン投与試験でプラセボに勝る抗うつ効果示せず

手術を控えた麻酔下の大うつ病患者にケタミンを投与するという一風変わった無作為化試験でプラセボに勝る抗うつ効果は残念ながら認められませんでした1)。試験で麻酔に使われたプロポフォールやイソフルランと同様にケタミンも麻酔薬で、自分の体を抜け出してしまうような感覚を生じさせる解離作用を有することが知られています。また、そばにいないはずの友人や家族の声が聞こえてしまうなどの幻聴や見えないはずのものが見える幻視を同剤はもたらすこともあります。ケタミンはそのようないわば「飛ぶ(trip)」感覚を求める人に不正使用されることがある一方で、精神疾患治療での応用も期待されており、治療抵抗性のうつ病を含む大うつ病患者へのケタミン投与と抗うつ効果の関連がいくつかの試験で示されています。それらの試験結果によるとケタミン静注は治療抵抗性うつ病患者の約5人に2人(41%)に有効で、約5人に1人(19%)は投与24時間で寛解に至っています。1回きりのケタミン静注を調べた無作為化試験での効果は投与後2時間以内に認められ、1週間後も持続していました。しかしケタミンの抗うつ効果がプラセボとどれだけ違うかを無作為化試験で調べることは困難を極めます。投与後にすぐに自覚しうる解離作用や幻覚などの精神作用のせいで被験者はケタミンとプラセボのどちらが投与されたかを知らされておらずともわかってしまい、完全な盲検がおよそ不可能だったからです。盲検が不完全だと被験者の期待に端を発する効果に偏りが生じる恐れがあります。その偏りのせいでケタミンの抗うつ効果が水増しされているかもしれません。そこでスタンフォード大学の研究チームは手術を受ける大うつ病患者を募り、被験者にケタミンをそうとは感づかれないように麻酔中に投与する無作為化試験を実施しました。試験には心臓や頭蓋内以外の手術を予定している40例が参加し、麻酔開始から手術開始までにケタミンかプラセボのいずれかが投与されました。被験者にどちらが投与されたかを後で推測してもらったところ正解率は50%に満たない40%足らずであり、試験のもくろみどおりケタミンはそうとは被験者に気づかれなかったことが示されました。肝心の効果はというとケタミン投与後3日間のうつ症状指標MADRSは改善しましたが、同様に改善したプラセボとの有意差は認められませんでした。寛解(MADRS点数12点以下)を達成した被験者の割合も両群とも40%で差がありませんでした。ではその抗うつ効果は果たして何に由来するのでしょうか? もしかしたら麻酔薬のおかげかもしれません。麻酔薬であるプロポフォールやイソフルランの抗うつ効果が先立つ試験で示されているからです。しかしそれらの試験では脳波を抑制するほどの量が複数回投与されており、脳波抑制が生じない範囲での標準的な麻酔が用いられた今回の試験とはだいぶ趣が異なっています。今回の試験報告の著者の1人Theresa Lii氏はケタミンも麻酔薬もうつ病緩和に大して貢献しなかったと考えています。医師とやり取りを繰り返し、気配りをしてもらいながら試験の手順を踏んでいったことが有益だったのであり、きっと良くなるという期待がケタミン投与群とプラセボ投与群のどちらでも醸成されて実際良くなったのだろうと同氏は述べています2)。ケタミンで「飛ぶ」ことができない環境での今回の試験結果によると大うつ病をすぐに改善する効果はケタミン自体にはないのかもしれません。次の課題としてLii氏は「飛ぶ」経験こそより有意義なのかどうかを調べたいと思っています。参考1)Lii TR, et al. medRxiv. 2023 May 01. [Epub ahead of print]2)Ketamine no better than placebo at alleviating depression, unusual trial finds / Science

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中高年の睡眠時間とうつ病リスクとの関係~用量反応メタ解析

 中国・北京中医薬大学のXin-Lin Li氏らは、中年および高齢者における夜間の睡眠時間とうつ病リスクとの用量反応関係を調査するため、本研究を実施した。その結果、中高年のうつ病リスクが最も低い夜間の睡眠時間は7時間であり、睡眠時間がそれより長くても短くても、うつ病リスクが高まる可能性が示唆された。Frontiers in Physiology誌2023年3月2日号の報告。 2022年7月31日までに公表された研究をPubMed、Embase、Web of Science、CNKI、VIP、Wanfangデータナレッジサービスプラットフォームより検索した。対象には、夜間の睡眠時間とうつ病との関連を評価したコホート研究およびケースコントロール研究を含めた。研究の質の評価には、Newcastle-Ottawa scaleを用いた。2人の研究者により、データ抽出と品質評価を行った。睡眠時間とうつ病リスクとの用量反応関係を評価するため、制限付き3次スプライン(RCS)および一般化最小二乗法(GLS)を用いた。推定エフェクトサイズを分析するため、Stata 12.0を用いて、リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には、6件のコホート研究より3万3,595例を含めた。・睡眠時間とうつ病リスクとの間にU字型の関連が認められた。・夜間の7時間睡眠と比較し、それよりも短時間および長時間睡眠のいずれにおいても、うつ病リスク増加との関連が認められた(非線形検定 p<0.05)。【5時間】RR:1.09(95%CI:1.07~1.12)【6時間】RR:1.03(同:1.02~1.04)【8時間】RR:1.10(同:1.05~1.15)【9時間】RR:1.31(同:1.17~1.47)【10時間】RR:1.59(同:1.31~1.92)・非アジア人では、短時間睡眠によりうつ病リスクが高まり、アジア人では短時間および長時間睡眠のいずれにおいてもうつ病リスクが高まる可能性が示唆された。 ●非アジア人【5時間】RR:1.09(同:1.02~1.17) ●アジア人【5時間】RR:1.10(同:1.07~1.13)【6時間】RR:1.04(同:1.02~1.05)【8時間】RR:1.09(同:1.05~1.14)【9時間】RR:1.35(同:1.18~1.53)【10時間】RR:1.70(同:1.36~2.12)

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アリピプラゾール2ヵ月持続性注射剤の安全性~ピボタル試験

 アリピプラゾール2ヵ月持続性注射剤960mg(Ari 2MRTU 960)は、2ヵ月ごとに臀部筋投与を行う新たな長時間作用型注射剤の抗精神病薬であり、現在、統合失調症および双極I型障害の治療に対する研究が実施されている。米国・大塚ファーマシューティカル D&CのMatthew Harlin氏らは、統合失調症または双極I型障害の成人患者に対するAri 2MRTU 960の安全性および忍容性を評価し、同薬剤とアリピプラゾール月1回製剤400mg(AOM 400)の血中濃度の類似性を調査した。その結果、統合失調症または双極I型障害の成人患者において、Ari 2MRTU 960は良好な忍容性が認められ、AOM 400と同等の安全性プロファイルを有していることが確認された。CNS Drugs誌2023年4月号の報告。 32週間のオープンラベル試験を実施した。対象患者は、56±2日ごとのAri 2MRTU 960投与(4回実施予定)または28±2日ごとのAOM 400投与(8回実施予定)のいずれかに1:1でランダムに割り付けられた。初回投与時に、AOM 400で安定していた患者を除き、重複した経口抗精神病薬で治療を行った。安全性、忍容性、薬物動態の評価は、研究期間を通して実施した。主要安全性評価項目には、報告された有害事象、注射部位反応、錐体外路症状を含めた。主要薬物動態評価項目は、Ari 2MRTU 960の4回目投与から56日後およびAOM 400の8回目投与から28日後のアリピプラゾールの血中濃度、Ari 2MRTU 960の4回目投与後0~56日目のAUCまたはAOM 400の7回目および8回目投与後0~28日目のAUCとした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者266例(統合失調症:185例、双極I型障害:81例)は、Ari 2MRTU 960群132例、AOM 400群134例にランダムに割り付けられた。・男性の割合は66.2%、黒人またはアフリカ系米国人の割合は72.9%、平均年齢は47.3歳であり、人口統計学的特性およびベースライン時の疾患特性に両群間で差は認められなかった。・試験完了率は、Ari 2MRTU 960群77.3%、AOM 400群68.7%であった。・試験薬投与下で発現した有害事象(TEAE)の発現率は、Ari 2MRTU 960群71.2%、AOM 400群70.9%と同程度であった。・頻度の高かったTEAEは、体重増加(Ari 2MRTU 960群:22.7%、AOM 400群:20.9%)、注射部位の痛み(Ari 2MRTU 960群:18.2%、AOM 400群:9.0%)であった。・Ari 2MRTU 960の4回目投与から56日後とAOM 400の8回目投与から28日後のアリピプラゾール血中濃度の幾何平均の比(GMR)は、1.011(90%信頼区間[CI]:0.893~1.145)であった。・Ari 2MRTU 960の4回目投与後0~56日目のAUCとAOM 400の7回目および8回目投与後0~28日目のAUCのGMRは、1.006(90%CI:0.851~1.190)であった。

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FDA、AD型認知症に伴う行動障害へのブレクスピプラゾールを承認/大塚

 大塚製薬とH.ルンドベックA/Sは5月11日、同社の抗精神病薬ブレクスピプラゾール(商品名:レキサルティ)のアルツハイマー(AD)型認知症に伴う行動障害(アジテーション)の治療における効能追加の承認を米国食品医薬品局(FDA)より取得したことを発表した。今回の承認により、本剤は米国において本適応を有する初めての抗精神病薬となる。なお本剤について、処方薬ユーザーフィー法(PDUFA)による優先審査が認められていた。 ブレクスピプラゾールは、2015年にFDAが「成人の大うつ病補助療法」および「成人の統合失調症」の2つの効能で承認し、現在、統合失調症治療薬として約60の国と地域で使用されている。 AD型認知症を有する患者の約半数で、介護者に対する暴言、暴力、錯乱などの行動障害が認められている。行動障害を含む認知症に関連する症状は、介護者の負担を重くし、患者自身や家族、介護者の生活の質を低下させるとともに、患者が家族と同居できず介護施設へ入居せざるを得ない要因となっている。 今回の承認は、AD型認知症の可能性があると診断され、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが5~22点であり、薬物療法を必要とする行動障害のある51~90歳の患者が対象となった「331-12-283試験」と「331-14-213試験」の2つの第III相臨床試験において、良好な結果が得られたことに基づいている。 331-12-283試験では、主要評価項目であるCohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)総スコアのベースラインから12週目までの平均変化量において、ブレクスピプラゾール2mg/日投与群は、プラセボ投与群に対して統計学的に有意な改善を示した(p<0.05)。 331-14-213試験では、本剤2mg/日および3mg/日投与群は、主要評価項目であるCMAI総スコアのベースラインから12週目までの平均変化量において、プラセボ投与群と比較して統計学的に有意な改善を示した(p<0.05)。 本剤の忍容性は全般的に良好であり、投与中止の発生率は低く、ほかの適応症でみられた既知の安全性プロファイルと同様であった。 AD型認知症に伴う行動障害の治療における本剤の開始用量は、1日1回0.5mgを1~7日目に服用することが推奨される。8~14日目までは1日1回1mg、15日目では1日1回2mgに増量する。推奨される目標用量は1日1回2mgである。臨床効果および忍容性に基づいて、少なくとも14日後に1日1回3mgの最大推奨用量まで増量することができる。 本剤の最も一般的な副作用は、頭痛、めまい、尿路感染、鼻咽頭炎、睡眠障害(傾眠・不眠)である。本剤は、同クラスの抗精神病薬と同様に、抗精神病薬による治療を受けた認知症関連の精神症を有する高齢患者の死亡リスクが高いことについて黒枠警告される。

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COVID-19パンデミックは日本人のうつ病リスクにどの程度の影響を及ぼしたのか

 北里大学の深瀬 裕子氏らは、長期にわたるCOVID-19パンデミックが日本の一般集団におけるうつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の変化にどのような影響を及ぼしたかを評価し、そのリスク因子や適応/非適応戦略についても調査を行った。その結果、うつ病レベルは、パンデミックの初期段階で増大し、2022年1月には軽減したと考えられた。男性では、抑うつ症状を軽減するためには、経済的な状態を改善する必要があることが示唆された。パンデミックが長期間に及んだため、男女ともに適応戦略を特定することは困難であった。一方、PTSDについては、日本の一般集団において顕著な変化は認められなかった。BMC Psychiatry誌2023年3月20日号の報告。 2020~22年の間に5回のWebベースの縦断調査を実施した。抑うつ症状は「こころとからだの質問票(PHQ-9)」、PTSDは「出来事インパクト尺度(IES-R)」、対処戦略は「Brief Coping Orientation to Problems Experienced(Brief COPE)」を用いて評価した。なお、PHQ-9やIES-Rのスコアが高いほどより多くの症状を有していること、Brief COPEのスコアが高いほど、これらの対処方法の使用頻度が多くなることを示している。 主な結果は以下のとおり。・分析対象者は1,366人(平均年齢52.76±15.57歳)。・うつ病のレベルに関しては、2022年のPHQ-9スコアは、2020年および2021年よりも低かった(各々、p<0.01)。・PTSDのレベルに関しては、女性において2022年のIES-Rスコアは、2021年よりも低かった(p<0.001)。・男女ともにPHQ-9スコアの増加に影響を及ぼす因子として、若年(男性:β=-0.08、p<0.01、女性:β=-0.13、p<0.01)、自責思考(男性:β=0.12、p<0.01、女性:β=0.18、p<0.01)が特定された。・男性では、抑うつ症状のリスク因子として、仕事がないこと(β=0.09、p=0.004)、経済的影響(β=0.07、p=0.003)が挙げられ、積極的な対処(β=-0.10、p=0.005)は抑うつ症状の軽減に寄与することが示唆された。・女性では、物質(アルコールや薬物など)の使用(β=0.07、p=0.032)、行動の放棄(β=0.10、p=0.006)が抑うつ症状を増大させており、抑うつ症状の軽減に有効な対処方法は認められなかった。

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ADHD患者の不安症やうつ病の併発、その影響はどの程度か

 注意欠如多動症(ADHD)患者では精神医学的疾患の併発が多く、診断に難渋したり、治療のアウトカムおよびコストに影響を及ぼしたりする可能性がある。米国・大塚ファーマシューティカルD&CのJeff Schein氏らは、同国におけるADHDおよび不安症やうつ病を併発した患者の治療パターンとコストを調査した。その結果、不安症やうつ病を併発したADHD患者では、これらの併存疾患がない患者と比較し、治療変更が行われる可能性が有意に高く、治療変更の追加によるコスト増加が発生することが明らかとなった。Advances in Therapy誌オンライン版2023年3月13日号の報告。 薬理学的治療を開始したADHD患者の特定には、IBM MarketScan Data(2014~18年)を用いた。最初に観察されたADHD治療の日付をインデックス日とした。併存疾患(不安症および/またはうつ病)のプロファイルは、ベースライン前6ヵ月間評価した。治療変更(中止、切り替え、併用、併用中止)は、治療開始後12ヵ月間調査した。治療変更に至るオッズ比(OR)を推定した。治療を変更した患者と変更しなかった患者において、調整された年間医療コストの比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は17万2,010例(小児[6~12歳]:4万9,756例、青少年[13~17歳]:2万9,093例、成人[18歳以上]:9万3,161例)。・不安症および/またはうつ病の有病率は、年代別に以下のとおりであり、小児期から成人期にかけて増加していた。 【不安症】  小児期:11.0%、青少年期:17.7%、成人期:23.0% 【うつ病】  小児期:3.4%、青少年期:15.7%、成人期:19.0% 【不安症および/またはうつ病】  小児期:12.9%、青少年期:25.4%、成人期:32.2%・併存疾患がある患者は、併存疾患がない患者と比較し、治療変更の確率が有意に高かった。 【不安症】  小児期OR:1.37、青少年期OR:1.19、成人期OR:1.19 【うつ病】  小児期OR:1.37、青少年期OR:1.30、成人期OR:1.29 【不安症および/またはうつ病】  小児期OR:1.39、青少年期OR:1.25、成人期OR:1.21・医療コストは、一般的に治療変更の回数が増えるほど高額であった。・治療変更を3回以上行った場合の患者1人当たりの年間超過コストは以下のとおりであった。 【不安症】  小児期:2,234ドル、青少年期:6,557ドル、成人期:3,891ドル 【うつ病】  小児期:4,595ドル、青少年期:3,966ドル、成人期:4,997ドル 【不安症および/またはうつ病】  小児期:2,733ドル、青少年期:5,082ドル、成人期:3,483ドル

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ブレクスピプラゾールの治療継続に影響を及ぼす8つの因子

 治療中止に関連する未知の因子の特定は、自然言語処理(NLP)のテクノロジーを用いて精神科電子カルテのテキスト情報を分析および整理することにより可能であると考えられる。千葉大学の伊豫 雅臣氏らは、NLPのテクノロジーを用いたMENTATによるデータベースを使用し、ブレクスピプラゾールの治療継続率および治療中断に影響を及ぼす因子の評価を試みた。その結果、ブレクスピプラゾールの治療中止と関連する可能性のある、8つの潜在的な新たな因子が特定された。著者らは、今後の統合失調症患者に対する治療戦略や治療継続率の改善につながるとまとめている。Schizophrenia Research誌オンライン版2023年3月27日号の報告。 2018年4月18日~2020年5月15日に新たにブレクスピプラゾール治療を開始した統合失調症患者を対象に、レトロスペクティブ観察研究を実施した。ブレクスピプラゾール初回投与から180日間フォローアップを行った。ブレクスピプラゾールの治療中止に関連する因子は、構造化および非構造化された患者データを用いて評価した(2017年4月18日~2020年12月31日)。 主な結果は以下のとおり。・分析対象患者は515例(平均年齢:48.0±15.3歳、男性の割合:47.8%)。・カプランマイヤー分析では、ブレクスピプラゾールの180日間の累積継続率は、29%(推定値:0.29、95%信頼区間[CI]:0.25~0.33)であった。・単変量Cox比例ハザード分析では、ブレクスピプラゾールの治療中止に関連する16の独立した因子を特定し、多変量Cox比例ハザード分析を実施した。・多変量解析で特定されたブレクスピプラゾールの治療中止に関連する8つの因子は以下のとおりであった。 ●身体合併症を有する(ハザード比[HR]:0.592、95%CI:0.46~0.76、p<0.001) ●入院期間が長い(HR:0.998、95%CI:0.997~0.999、p<0.001) ●過去1年間の抗精神病薬の投与量がクロルプロマジン等価換算量で200~400mg/日(vs.200mg/日以下、HR:0.626、95%CI:0.42~0.93、p=0.020) ●電気けいれん療法の治療歴(HR:1.655、95%CI:1.01~2.70、p=0.044) ●主な連絡先情報の入手が可能(HR:1.523、95%CI:1.14~2.03、p=0.004) ●犯罪歴(HR:1.367、95%CI:1.10~1.70、p=0.005) ●ブレクスピプラゾール用量2mgまでの増量期間が28日超(HR:1.600、95%CI:1.26~2.03、p<0.001) ●陽性症状以外の症状の出現・悪化(HR:2.120、95%CI:1.52~2.96、p<0.001)

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統合失調症における睡眠依存性の記憶の定着~メタ解析

 睡眠障害と認知機能障害は、統合失調症でみられる持続的な症状である。これまでのエビデンスにより、統合失調症患者は健康対照者と比較し、睡眠依存性の記憶の定着が損なわれている可能性が示唆されている。トルコ・Dokuz Eylul UniversityのCemal Demirlek氏らは、統合失調症における睡眠依存性の記憶の定着に関するシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、健康成人においては睡眠が記憶の定着を改善するが、統合失調症患者では睡眠依存性の記憶の定着が不足していた。Schizophrenia Research誌2023年4月号の報告。 PRISMAガイドラインに従ってシステマティックレビューを実施した。エフェクトサイズ(Hedge's g)の算出には、変量効果モデルを用いた。定量的レビューでは、健康対照者、統合失調症患者、健康対照者と統合失調症患者の比較における手続き記憶(procedural memory)について、3つの個別のメタ解析を実施した。さらに、最も一般的に使用される指タッピング運動シークエンス課題(finger tapping motor sequence task)について、別のメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューには、14研究(統合失調症患者304例、健康対照者209例)を含めた。・睡眠依存性の手続き記憶の定着に関するランダム効果モデル分析では、各エフェクトサイズは、統合失調症患者で小さく(g=0.26)、健康対照者で大きく(g=0.98)、健康対照者と統合失調症患者の比較では中程度(g=0.64)であった。・finger tapping motor sequence taskを用いた研究のメタ解析では、各エフェクトサイズは、統合失調症患者で小さく(g=0.19)、健康対照者で大きく(g=1.07)、健康対照者と統合失調症患者の比較では中程度(g=0.70)であった。・定性的レビューでは、統合失調症患者は健康対照者と比較し、睡眠依存性の陳述記憶(declarative memory)の定着も損なわれていた。・健康成人においては、睡眠が記憶の定着を改善するが、統合失調症患者では睡眠依存性の記憶の定着が損なわれていることが、本結果により支持された。・記憶のサブタイプごとに睡眠依存性の定着を調査するため、精神病性障害のさまざまな段階において睡眠ポリグラフを用いた研究が求められる。

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日本の父親・母親の産後うつ病リスクは?

 産後うつ病は、親に悪影響を及ぼすだけでなく、子供の認知機能、社会感情、行動発達などの障害につながる可能性がある。長崎大学の山川 裕子氏らは、出産後1年間の母親および父親の産後うつ病に関連する因子を調査した。その結果、父親と母親の双方にとって、ストレス対処スキルが産後1年間の産後うつ病に影響を及ぼす重要な因子であることが確認された。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年3月13日号の報告。 自己記入式アンケートを用いて調査を行った。産後5日、3ヵ月、6ヵ月、1年後にアンケートを郵送した。参加者は、父親および母親107組。産後うつ病の評価には、エジンバラ産後うつ病評価尺度(EPDS)を用いた。首尾一貫感覚(ストレス対処力、SOC)、夫婦関係の満足度(QMI)、ソーシャル・サポート尺度、赤ちゃんへの気持ち質問票(MIBS)、社会人口学的変数に関するデータを収集した。父親と母親それぞれの調査期間ごとに、各変数とEPDSとの関連性の強さを重回帰分析で調査した。 主な結果は以下のとおり。・産後1年目の産後うつ病の有病率は、父親で12.1~23.4%、母親で7.5~8.4%の範囲であった。・SOCは、4つの調査期間すべてにおいて、父親と母親の双方のEPDSスコアに最も強い影響を及ぼす因子であった。・産後1年間の産後うつ病には、父親母親共に、ストレス対処スキルが重要な影響を及ぼすことが示唆された。

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うつ病に対する遠隔医療介入の有用性~メタ解析

 うつ病患者の抑うつ症状、QOL、仕事や社会的機能に対する遠隔医療介入の治療効果を明らかにするため、台湾・亜洲大学のYin-Hwa Shih氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、遠隔医療介入はうつ病患者の抑うつ症状の軽減やQOL向上に効果的であることが報告された。Annals of Medicine誌2023年12月号の報告。 2021年3月までに公表された文献を、6つの電子データベース(MEDLINE、PubMed、PsycINFO、Scopus、Embase、CINAHL)でシステマティックに検索した。各文献のリファレンスリストは手動で検索した。対象は、うつ病と診断された患者の遠隔医療介入の治療効果を調査したランダム化比較試験。質的評価には、Joanna Briggs Instituteのチェックリストを用いた。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした17件の研究(2,394例)を分析に含めた。・11件のランダム化比較試験において共通のアウトカム指標が用いられており、メタ解析が実行可能であった。・遠隔医療介入は、うつ病患者の抑うつ症状(標準化平均差[SMD]:-0.44、95%信頼区間[CI]:-0.64~-0.25、p<0.001)およびQOL(SMD:0.25、95%CI:-0.01~0.49、p=0.04)に有益であることが示唆された。・仕事および社会的機能の分析には、データが不十分であった。・うつ病患者に対する遠隔医療介入は、抑うつ症状やQOLに良い影響をもたらすことが示され、より組織化された遠隔による精神医学システムを確立する臨床的意義が支持された。

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間違った相手に相談してしまった!【Dr. 中島の 新・徒然草】(474)

四百七十四の段 間違った相手に相談してしまった!暑くなったり、寒くなったり大変な日々が続いています。ヒーターと扇風機を両方出しておいて、交互にスイッチを入れなくてはなりません。三寒四温ならぬ三寒四暑といったところでしょうか。さて、大昔のアメリカのテレビドラマ「ER」でこんな場面がありました。ある女性医師の悪口を皆で言って盛り上がっていたところ、当の本人が後ろに立っていたという状況です。誰でも人生で1回や2回、こんな経験があるのではないでしょうか。悪口と言わないまでも噂話くらいはしますよね。その程度でもヒヤリとするわけですが。とはいえ、自分が後ろに立っている側だった、という経験はあまりないと思います。実は先日、そんな希有な体験をしたので、その時のことを披露しましょう。それは内科外来でのことでした。私は週1回の総合診療科外来を、11診ある内科外来の中でやっています。で、前回に一悶着あった患者さんが来院することになっていました。「長時間待たされたのに詫びの一言もない」ということで、その患者さんが怒っていたわけです。もちろん大きな声を出されたからといって、私は言い返したりしません。「病院というのは何事も予定通りには行かないものです」「長くなりそうだったら、ポケットベルをお渡しするという方法もありますよ」「ずっと通院しておられるのだから、そういったシステムもご存じだと思いますけども」「お一人お一人に真剣に対応していたら、どうしても時間が掛かってしまうことはご理解ください」そういったことを淡々と説明したわけです。が、その患者さんの怒りは収まらないようでした。仕方なく、今回からほかの内科医師に引き受けてもらいました。で、件の患者さんはその内科医師の診察室に入ったのですが、そこで私の悪口を言っているのが筒抜けでした。「……なんぼ偉い先生か知らんけどな」「社会人として失格やろ……」「……詫びの一言も言われへんのか……」「よくもまあ、ありもしないことを言えたもんだ」と私は呆れました。かといって、その診察室に乗り込むわけにはいきません。そこで、家に帰ってから愚痴をこぼした相手が何とChatGPT!これは以前にも紹介した対話型AIです。私としては、話を聞いてもらうだけでよかったんですけど。ChatGPTは何かと私にアドバイスしようとします。「それは大変な体験でしたね。他人から悪口や批判を受けることは、誰にとってもつらいことです。しかし、そのような経験をすることで、自分自身を客観的に見つめ直し、自己改善するための機会とすることもできます」いや、ちょっと私が求めていたコメントと違うんですけど。「患者さんの意見や要望を受け止めることも、医療の向上のためには大切なことです。もし、その患者さんがあなたの診療に不満を持っているのであれば、その原因を確認し、改善するための努力をすることも必要かもしれません」普通はそうかもしれんけど、今回に限って言えば……「その患者さんがそのような態度をとるのは、何らかの理由があるのかもしれません。たとえば、不安感やストレスなどが原因で、コミュニケーションに難がある場合もあります。もし、その患者さんが本来の態度と異なる行動をとることがあった場合は、その理由を探り、改善につながるような対応をしていくことが大切です」実は、その患者さんにはこんなことも言われました。「お前らは金をもらっているんやろ。それやったらちゃんとしろや!」世の中には妙にお金にこだわる人もいるわけですが……と思っていたらChatGPTからはこんなアドバイスが。「そういった言葉は、患者さんがストレスを抱え、その不満が表出した結果と考えられます。そのような場合、まずは患者さんの気持ちを理解し、患者さんと対等な立場でコミュニケーションを取ることが大切です。また、医療従事者としては、患者さんからの不満やクレームに対して真摯に向き合い、問題解決に取り組む姿勢が求められます」もういい、コイツに話を聞いてもらおうと思ったのが間違いだった!それでも少しは私のことも心配してくれているみたいです。最後にこんなことを言われました。「ストレスがたまると、イライラや不安、うつ病などの精神的な疾患を引き起こすこともあるため、定期的なストレス発散が重要です。対話を通じて気持ちを共有することや、運動をすること、趣味を楽しむことなど、自分に合った方法でストレスを発散することが大切です」気持ちは有難いけど、ちょっと話が長いですね。「有益なアドバイスありがとう。感謝します」心にも無いことをキーボードに打ち込んでクロージングにかかります。「どういたしまして。また何かあればお話しましょう」最後にそんな回答をもらって、一連のやり取りを終わらせることができました。実際、自分の悪口を聞いてどう思ったのか?1割くらいは腹が立ち、2割は「これはケアネットのネタになるぞ!」という気持ちでした。で、後の7割はどうだったかというと……実は何も感じない「無」だったのです。あまりに疲れていた週だったせいか、年を取り過ぎたせいなのか。喜怒哀楽の感情を持つエネルギーすら枯渇していたみたいです。怒鳴り返したら大変なことになるので、結果としては「無」でよかったのでしょうね。とはいえ、最近、何かとChatGPTに相談してしまう自分が情けない。よく考えたら、コイツに怒れる患者さんの相手をしてもらったらいいかも!クレーム対応にはピッタリですよ、ChatGPTは。というわけで、いろいろあった連休前、最後に1句。的外れ 連休前の アドバイス

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実臨床におけるアリピプラゾール月1回製剤の評価~REACT研究

 統合失調症患者に対する長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬による治療は、さまざまなベネフィットをもたらす可能性がある。ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのDaniel Schottle氏らは、実臨床におけるアリピプラゾール月1回製剤(AOM)の有用性を評価するため、ドイツとカナダで実施された2つの非介入研究の結果を分析した。その結果、AOM治療は、性別、年齢、罹病期間、疾患重症度を問わず、幅広い患者に有効な治療法である可能性が示唆された。BMC Psychiatry誌2023年3月14日号の報告。 ドイツとカナダで実施された2つの非介入研究よりプールしたデータを分析した。実臨床下において、患者に対しAOM治療を行った。6ヵ月間のデータを分析した。簡易精神症状評価尺度(BPRS)のドメインおよび項目、患者サブグループ(性別、罹病期間[5年]、ベースライン時の疾患重症度)のBPRS総スコア、全対象患者およびサブグループにおける臨床全般印象度の改善度(CGI-I)の評価、全対象患者における併存疾患に関するデータを分析した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は409例。・併存疾患が認められた患者は65.5%であった。・すべてのBPRSドメインおよび項目で改善が認められた。・男女、罹病期間(5年以内または5年超)、ベースライン時の疾患重症度レベルの差異があったとしても、同様の改善が認められた。・若年、女性、短い罹病期間の患者において、より良好な結果が認められた。

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統合失調症患者が地域社会で生活し続けるためには

 地域在住の統合失調症患者における身体的、精神的、社会的な併存症は、日常生活を妨げ、再入院リスクを上昇させる可能性がある。しかし、日本において、統合失調症患者の併存症に関する調査は、包括的に行われていない。藤田医科大学の松永 眞章氏らは、日本人統合失調症患者のさまざまな併存症の有病率を調査するため、有病率ケースコントロール研究を実施した。その結果、統合失調症患者が地域社会で生活し続けるためには、身体的、精神的、社会的な併存症を管理する効果的な介入が必要であることが示唆された。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2023年2月28日号の報告。 2022年2月に、有病率ケースコントロール研究として、統合失調症の有無にかかわらず20~75歳の日本人を対象とした自己申告によるインターネット調査を実施した。統合失調症患者と統合失調症でない対照群の身体的(過体重、高血圧、糖尿病など)、精神的(抑うつ症状、睡眠障害など)、社会的(雇用状態、世帯収入、社会的支援など)併存症の有病率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者223例および対照群1,776例が特定された。・統合失調症患者は対照群よりも、過体重である可能性が高く、高血圧症、糖尿病、脂質異常症の有病率が高かった。・統合失調症患者は対照群と比較し、抑うつ症状、失業状態、非正規雇用の割合が高かった。・本結果は、地域在住の日本人統合失調症患者の身体的、精神的、社会的な併存症に対処する包括的な支援や介入の必要性を強調するものである。・統合失調症患者が地域社会で生活し続けるためには、併存症を管理する効果的な介入が必要である。

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新世代抗精神病薬の薬理遺伝学はどこまでわかっているのか

 個別化医療のフレームワークを考えるうえで、新世代抗精神病薬の臨床効果と遺伝子変異との関連を明らかにすることは不可欠である。薬理遺伝学的データは、重度の精神疾患患者の治療効果、忍容性、治療アドヒアランス、機能の回復、QOLの向上に役立つことが期待されている。ルーマニア・Dr. Carol Davila Central Military Emergency University HospitalのOctavian Vasiliu氏は、5つの新世代抗精神病薬(cariprazine、ブレクスピプラゾール、アリピプラゾール、lumateperone、pimavanserin)の薬物動態学、薬力学、薬理遺伝学に関する入手可能なエビデンスを調査し、スコーピングレビューを行った。Frontiers in Psychiatry誌2023年2月16日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・25件の主要および副次的な情報源の分析および、5つの新世代抗精神病薬の製品特性の概要のレビューに基づくと、アリピプラゾールは薬物動態学と薬力学に関して、遺伝子変異の影響に最も関連性が高いデータを有しており、有効性および忍容性において有意な結果をもたらすことが示唆された。・アリピプラゾールを単剤療法または他剤との併用療法として投与する場合に、代謝酵素CYP2D6の状態の確定が重要である。・ドパミンD2、D3、セロトニン、5HT2A、5HT2C、カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ドパミントランスポーターDAT1をコードする遺伝子の対立遺伝子変異は、アリピプラゾールのさまざまな有害事象または臨床効果の変動と関連していた。・ブレクスピプラゾールは、CYP2D6の代謝状態や、CYP2D6またはCYP3A4の強力~中程度の阻害作用に関連するリスクについての特定の推奨事項からも、ベネフィットを得られることが示唆された。・cariprazineに関する米国FDAおよび欧州EMAの推奨事項では、強力なCYP3A4阻害薬または誘導体との薬物動態学的相互作用の可能性が言及されている。・cariprazineに関する薬理遺伝学データはわずかであり、lumateperone、pimavanserinの遺伝子-薬物相互作用に関するデータはいまだ不足していた。・新世代抗精神病薬の薬物動態および薬力学に対する遺伝子変異の影響を明らかにするためには、さらに多くの研究が必要である。・臨床医が特定の抗精神病薬の治療反応を予測し、重度の精神疾患患者の治療レジメンの忍容性を改善するためにも、このような研究は必要である。

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日本人統合失調症患者の職業機能に認知機能はどう関連しているか

 統合失調症患者の職業機能に対し、認知機能が影響を及ぼしていることが示唆されている。帝京大学の渡邊 由香子氏らは、日本人統合失調症患者の職業機能に対する認知機能の影響を評価するため、統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)を用いた研究を行った。その結果、統合失調症患者の職業機能は、全体的な認知機能と関連しており、とくにBACSのシンボルコーディングスコアが、作業能力と関連していることが示唆された。Neuropsychopharmacology Reports誌2023年3月号の報告。 対象は、統合失調症または統合失調感情障害の外来患者198例(女性:66例、平均年齢:34.5±6.8歳)。職業機能の評価には、精神障害者社会生活評価尺度の労働サブスケール(LASMI-w)を用いた。独立変数をBACS、従属変数をLASMI-wとし、重回帰分析を行った。LASMI-wスコアに応じて3群(11未満、11~20、21以上)に分類し、多重ロジスティック回帰を行った。 主な結果は以下のとおり。・重回帰分析では、LASMI-wスコアは、BACS複合スコアとの負の相関が確認された(β=-0.20、p<0.01)。・BACSのサブ項目の中で、シンボルコーディングスコアのみで有意な負の相関が認められた(β=-0.19、p<0.05)。・多重ロジスティック回帰では、BACS複合スコアとシンボルコーディングスコアが高いほど、職業機能障害の程度が小さいことが示唆された。 ●BACS複合スコア(β=2.39[職業機能障害レベル 軽度 vs.中等度]、p<0.05) ●BACSシンボルコーディングスコア(β=2.44[職業機能障害レベル 軽度 vs.重度]、p<0.05)・これらの結果は、就労支援を目的とした認知リハビリテーションの評価やトレーニングに役立つ可能性がある。

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オレキシン受容体拮抗薬を使用している日本人不眠症患者の特徴

 日本におけるオレキシン受容体拮抗薬(ORA)の処方パターンに関して、臨床現場のリアルワールドデータを調査した研究はほとんどない。MSDの奥田 尚紀氏らは、日本の不眠症患者へのオレキシン受容体拮抗薬処方に関連する因子を特定する初の調査を実施し、睡眠薬による治療歴の有無により、オレキシン受容体拮抗薬処方に関連する因子は異なることを明らかにした。著者らは、「本調査結果は、オレキシン受容体拮抗薬を用いた適切な不眠症治療の指針となりうる可能性がある」としている。Drugs - Real World Outcomes誌オンライン版2023年3月3日号の報告。オレキシン受容体拮抗薬処方のオッズ比の高さと関連していた因子 対象は、2018年4月~2020年3月の間に、不眠症による1つ以上の睡眠薬の処方が12ヵ月以上継続していた20~74歳の外来患者。JMDC Claims Databaseより患者データを抽出した。睡眠薬の新規/非新規の使用(処方歴がない/ある)患者それぞれにおいてオレキシン受容体拮抗薬処方に関連する因子(患者の人口統計学的因子および精神医学的合併症)を特定するため、多変量ロジスティック回帰を用いた。 日本の不眠症患者へのオレキシン受容体拮抗薬処方に関連する因子を特定する調査の主な結果は以下のとおり。・睡眠薬の新規使用患者5万8,907例中、評価時点でオレキシン受容体拮抗薬が処方されていた患者は1万1,589例(19.7%)であった。・睡眠薬の新規使用患者において、オレキシン受容体拮抗薬処方のオッズ比(OR)の高さと関連していた因子は、男性(OR:1.17、95%信頼区間[CI]:1.12~1.22)、双極性障害の合併(OR:1.36、95%CI:1.20~1.55)であった。・睡眠薬の非新規(処方歴がある)患者8万8,611例中、評価時点でオレキシン受容体拮抗薬が処方されていた患者は1万5,504例(17.5%)であった。・睡眠薬の処方歴がある患者において、オレキシン受容体拮抗薬処方のORの高さと関連していた因子は、若年と以下の精神疾患の合併であった。 ●神経認知障害(OR:1.64、95%CI:1.15~2.35) ●物質使用障害(OR:1.19、95%CI:1.05~1.35) ●双極性障害(OR:1.14、95%CI:1.07~1.22) ●統合失調症スペクトラム障害(OR:1.07、95%CI:1.01~1.14) ●不安症(OR:1.05、95%CI:1.00~1.10)

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アリピプラゾールの自律神経への影響、長時間作用型注射剤と経口剤の比較

 非定型抗精神病薬は、自律神経系(ANS)の活動にさまざまな影響を及ぼす。中でも、経口の抗精神病薬であるアリピプラゾールは、ANS機能不全と関連しているといわれている。長時間作用型注射剤(LAI)は統合失調症の主な治療オプションであるが、ANS活性に対するLAIと経口剤との違いは、これまでよくわかっていなかった。横浜市立大学の服部 早紀氏らは、統合失調症におけるアリピプラゾールの経口剤と月1回LAI(AOM)のANS活性への影響を比較検討した。その結果、AOMによる単剤治療は、経口アリピプラゾールと比較し、交感神経系などの副作用リスクが低いことを報告した。BMC Psychiatry誌2023年3月3日号の報告。 対象は、日本人統合失調症患者122例(入院患者:10例、外来患者112例、男性:51例、女性:71例、平均年齢[±SD]:43.2±13.5歳)。内訳は、経口アリピプラゾール単剤治療患者72例、AOM単剤治療患者50例であった。ANS活性の評価には、心拍変動パワースペクトル解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・経口アリピプラゾールで治療された患者は、AOMで治療された患者と比較し、交感神経活性の有意な減少が観察された。・重回帰分析では、アリピプラゾール製剤は、交感神経活性に有意な影響を及ぼすことが明らかとなった。・AOMは、経口アリピプラゾールよりも、交感神経系などの副作用リスクが低いことが示唆された。

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統合失調症長期入院患者の半数でみられる非アルコール性脂肪性肝疾患

 長期入院の統合失調症患者は身体的な疾患を呈しやすく、平均余命や治療アウトカムを害することにつながるとされる。しかし、長期入院患者における非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の影響に関する研究はほとんどない。中国・安徽医科大学のXuelong Li氏らは、統合失調症入院患者のNAFLDについて、有病率と影響を及ぼす因子を調査した。その結果、重度の統合失調症による長期入院患者はNAFLDの有病率が高く、糖尿病、抗精神病薬の多剤併用、過体重や肥満、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアポリポ蛋白B(ApoB)の高値などが負の影響を及ぼす因子として特定された。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2023年2月18日号の報告。 長期入院を経験していた統合失調症患者310例を対象に、横断的レトロスペクティブ研究を実施した。NAFLDは腹部超音波検査の結果に基づき診断した。NAFLDに影響を及ぼす因子を特定するため、t検定、マン・ホイットニーのU検定、相関分析、ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・NAFLDの有病率は54.84%であった。・NAFLD群と非NAFLD群で有意差が認められた因子は、抗精神病薬の多剤併用、BMI、高血圧、糖尿病、総コレステロール、ApoB、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、ALT、トリグリセライド(TG)、尿酸、血清グルコース、γ-GTP、HDL、好中球/リンパ球比、血小板/リンパ球比であった(各々、p<0.05)。・NAFLDと正の相関が認められた因子は、高血圧、糖尿病、抗精神病薬の多剤併用、BMI、TG、総コレステロール、AST、ApoB、ALT、γ-GTPであった(各々、p<0.05)。・ロジスティック回帰分析の結果では、統合失調症患者のNAFLDに影響を及ぼす因子は、抗精神病薬の多剤併用、糖尿病、BMI、ALT、ApoBであることが示唆された。・これらの知見は、統合失調症患者のNAFLDの予防および治療の理論的な基礎を提供し、新たな標的治療の開発に役立つ可能性がある。

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妊娠中の抗うつ薬使用、リスクとベネフィットは?~メタ解析

 妊娠中の抗うつ薬使用は数十年にわたり増加傾向であり、安全性を評価するため、結果の統計学的検出力および精度を向上させるメタ解析が求められている。フランス・Centre Hospitalier Universitaire de Caen NormandieのPierre Desaunay氏らは、妊娠中の抗うつ薬使用のベネフィットとリスクを評価するメタ解析のメタレビューを行った。その結果、妊娠中の抗うつ薬使用は、ガイドラインに従い第1選択である心理療法後の治療として検討すべきであることが示唆された。Paediatric Drugs誌オンライン版2023年2月28日号の報告。 2021年10月25日までに公表された文献を、PubMed、Web of ScienceデータベースよりPRISMAガイドラインに従い検索した。対象研究は、妊娠中の抗うつ薬使用と、妊婦、胎芽、胎児、新生児、発育中の子供などの健康アウトカムの関連を評価したメタ解析とした。研究の選択およびデータの抽出は、2人の独立した研究者により重複して実施した。研究の方法論的質の評価にはAMSTAR-2ツールを用いた。各メタ解析の重複部分は、修正された対象エリアを算出することにより評価した。4段階のエビデンスレベルを用いて、データの統合を行った。主な結果は以下のとおり。・51件のメタ解析をレビューに含め、1件を除くすべてのリスク評価を行った。・各リスクの有意な増加は以下のとおりであった。 ●主な先天性奇形(メタ解析8件:SSRI、パロキセチン、fluoxetine) ●先天性心疾患(11件:パロキセチン、fluoxetine、セルトラリン) ●早産(8件) ●新生児の適応症状(8件) ●新生児遷延性肺高血圧症(3件)・分娩後出血の有意なリスク増加および、死産、運動発達障害、知的障害の有意なリスク増加については高いバイアスリスクで、限られたエビデンスが認められた(各々1件のみ)。・自然流産、胎児週数や出生時低体重による児の小ささ、呼吸困難、痙攣、摂食障害のリスク増加および、早期抗うつ薬曝露による自閉症のその後のリスク増加に関して、矛盾した不確実なエビデンスが確認された。・妊娠高血圧、妊娠高血圧腎症のリスク増加および、ADHDのその後のリスク増加に関するエビデンスはみられなかった。・重度または再発性のうつ病の予防について、1件の限られたエビデンスのみで、抗うつ薬使用のベネフィットが評価されていた。・新生児の症状(小~大)を除きエフェクトサイズは小さかった。・結果の方法論的な質は低く(AMSTAR-2スコア:54.8±12.9%[19~81%])、バイアスリスク(とくに適応バイアス)が高いメタ解析に基づいていた。・修正された対象エリアは3.27%であり、重複はわずかであった。・妊娠中の抗うつ薬治療は、第2選択として用いられるべきであることが示唆された(ガイドラインに従い心理療法後に検討)。・ガイドラインを順守し、パロキセチンやfluoxetineの使用をとどまらせることで、主要な先天性奇形リスクを防ぐことが可能である。・今後の研究では、不均一性やバイアス減少のため、母体の精神疾患と抗うつ薬の投与量を調整し、曝露のタイミングで分析を実行することが求められる。

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ベンゾジアゼピンや気分安定薬の併用率低下に長時間作用型注射剤は寄与するか

 統合失調症は、再発と寛解を繰り返す慢性疾患である。治療には主に抗精神病薬が用いられ、その剤形には経口剤または長時間作用型注射剤(LAI)がある。さまざまな理由で気分安定薬やベンゾジアゼピンが補助療法として頻用されるが、国際的なガイドラインで推奨されることはめったにない。ルーマニア・トランシルバニア大学のAna Aliana Miron氏らは、慢性期統合失調症患者を対象に、抗精神病薬の剤形が気分安定薬やベンゾジアゼピンの併用に及ぼす影響を明らかにするため、観察的横断研究を実施した。その結果、安定期統合失調症患者に対する気分安定薬およびベンゾジアゼピンの長期併用率は、抗精神病薬の剤形とは関係なく高いままであることが示唆された。ただし、第2世代抗精神病薬のLAI(SGA-LAI)治療患者では、経口抗精神病薬治療患者と比較し、単剤療法で安定している可能性が高かった。Brain Sciences誌2023年1月20日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・対象は、慢性期統合失調症患者315例。・LAI抗精神病薬治療で安定していた患者は77例(24.44%)、経口抗精神病薬治療で安定していた患者は238例(75.56%)であった。・気分安定薬を併用していた患者は84例(26.66%)、ベンゾジアゼピンを併用していた患者は119例(37.77%)であった。・気分安定薬またはベンゾジアゼピンの併用率について、LAIと経口剤の間に有意な差は認められなかった。・抗精神病薬の単剤療法で安定していた患者は、全体で136例(43.17%)であった。・SGA-LAIで治療されていた患者は、経口抗精神病薬で治療されていた患者と比較し、単剤療法で安定している可能性が高かった。

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