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第183回 認知症を阻止するらしい神経細胞2種類を同定

認知症を阻止するらしい神経細胞2種類を同定アルツハイマー病(AD)の病変であるアミロイド蓄積がたとえあっても認知機能が維持されて認知症になりにくいことと関連する脳の神経細胞2種類が同定されました1,2)。それらの神経細胞が死なないようにする手段を新たな成果を頼りに開発できるかもしれません。ねばねばしたアミロイドタンパク質の脳での蓄積がADの病因と広く言われています。その蓄積がやがて垢のような塊になって神経を死なせ、ついには記憶や意識を損なわせるという考えです。しかし認知機能障害を被る高齢者の誰もが脳にアミロイド塊を有するというわけではありませんし、脳にアミロイドが蓄積していると必ずADが生じるというわけでもありません。それはなぜなのかを調べるべく米国・ピッツバーグ大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らは数千人の高齢者の認知や振る舞いの推移を1994年から追っている試験・Religious Orders Study/Memory and Aging Project(ROSMAP)に目を向けました。AD病変や認知機能障害の程度がまちまちな死亡被験者427例の脳組織の前頭前皮質の細胞が活動遺伝子の配列を頼りに分類され、どこにどの細胞があるかを示す地図が作られました。その結果、認知機能全般がすこぶる良好な人に多く、逆に低下している人では乏しい細胞の集団2つが同定されました。その1つは統合失調症などの脳疾患と関連するタンパク質・リーリン(reelin)の遺伝子が発現している神経細胞、もう1つは体のあちこちの営みを調節するホルモン・ソマトスタチン(somatostatin)の遺伝子を発現する神経細胞です。認知機能が損なわれていない人ではADの特徴である脳のアミロイド大量蓄積があったとしてもそれらの神経細胞が脳に豊富に残っており、それらの細胞はAD発症を防ぐ役割をどうやら担うようです。ADの研究では電気信号を伝えて別の神経を活性化する興奮性神経細胞がもっぱら注目されてきました。しかし今回の研究で見つかった2種は興奮性神経とは正反対の抑制性神経です。抑制性神経は神経間の通信を止める働きを担います。少なくともいくらかの人のそれらリーリン/ソマトスタチン発現抑制性神経はAD病変によってとりわけ壊れやすいのではないかと研究者は考えています。今年の早くにNature Medicine誌に掲載されたリーリン遺伝子変異の報告3)はその考えを支持しています。リーリンの機能を底上げするその変異を有する男性は脳のアミロイド蓄積が半端なく大量にもかかわらず67歳になっても認知機能が正常でAD症状を示しませんでした。そういう先立つ成果があるのでリーリン発現神経に辿りついた今回の成果はそれほど驚くものではなく、一貫した成果が得られていることに安心していると研究者は言っています4)。これまでAD治療手段の開発といえば脳のアミロイド蓄積をどうにかする手段にもっぱら目が向けられていました。今回の結果はそうではなくADで壊れやすい脳細胞を守る手段を見つける取り組みを後押しするでしょう。個々の細胞の配列を読み取ってそれらの地図(atlas)を作った今回の成果は最新技術の賜物であるとカリフォルニアの研究所Sanford Burnham Prebys Medical Discovery Instituteの神経科学者Jerold Chun氏は言っています4)。AD患者は神経が発火しすぎて生じる発作を生じやすいことが知られますが、それは抑制性神経損失のせいかもしれないと同氏は想定しています。今回の研究で作られた脳細胞の地図はどの研究者も使えるように公開5)されており、それを出発点にして研究の裾野が一層広まるでしょう。参考1)Mathys H, et al. Cell. 2023;186:4365-4385.2)Decoding the complexity of Alzheimer’s disease / Massachusetts Institute of Technology3)Lopera R, et al. Nat Med. 2023;29:1243-1252.4)The brain cells linked to protection against dementia / Nature5)Single-cell transcriptomic atlas of the aged human prefrontal cortex

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統合失調症うつ病の治療ガイドライン普及に対するEGUIDEプロジェクトの効果

 国立精神・神経医療研究センターの長谷川 尚美氏らは、「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)」を活用することによる、精神疾患の診療ガイドラインに関する教育のリアルワールドにおける効果を検証するため、本研究を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年9月8日号の報告。 EGUIDEプロジェクトは、「統合失調症薬物治療ガイドライン」と「うつ病治療ガイドライン」を日本国内で実践するための全国的なプロスペクティブ研究である。2016~19年、精神科病棟を有する176施設に所属する精神科医782人がプロジェクトに参加し、診療ガイドラインに関する講義を受講した。プロジェクト参加病院の統合失調症患者7,405例およびうつ病患者3,794例を対象に、ガイドラインが推奨する治療の実施割合を、プロジェクト参加者と非参加者から治療を受けている患者間で比較した。プロジェクト参加病院より毎年4~9月に退院する患者の臨床データおよび処方データも分析した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症に対する3つの質的指標(他の向精神薬の使用とは無関係の抗精神病薬単剤療法、他の向精神薬を使用しない抗精神病薬単剤療法、抗不安薬や睡眠薬の使用なし)の割合は、プロジェクト参加者のほうが非参加者よりも高かった。・うつ病治療ガイドラインでも同様な結果が得られた。・ガイドラインの推奨治療の普及におけるEGUIDEプロジェクトの有用性が確認された。 著者らは結果を踏まえて「精神疾患の診療ガイドラインに関する教育を実施することで、精神科医の治療に関連した行動を改善可能であることが示唆された。メンタルヘルス治療のギャップを解消するためには、EGUIDEプロジェクトのような教育ベースの戦略が重要であろう」としている。

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第64回 これから「糖尿病」をどう表記するのか?

英語病名は定着しにくいジンクスUnsplashより使用もう皆さんご存じの話だと思いますが、「糖尿病」の新しい呼称として「ダイアベティス」が提案されたというニュースが話題です。日本糖尿病協会と日本糖尿病学会で進められてきたプロジェクトで、いくつかヒアリング等を経て呼称としてはこれに着地するということのようです。何人かの医師インフルエンサーから「糖代謝異常症」「高血糖症」のほうがよかったのでは…と声が上がっています。確かに、「ダイアベティス」が定着しやすいかと問われると、難しいかもしれません。痴呆→認知症、精神分裂病→統合失調症のように成功した事例も多いため、漢字混じりの日本語表記のほうが定着しやすいかもしれません。実際、フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームなど、とにかくカタカナの名称啓発は難航しております。とはいえ、メタボリックシンドロームのように成功した事例もあるので、ダイアベティスが馴染む可能性もゼロではありません。スティグマは病名のせい?この名称変更、糖尿病に対する偏見と差別をなくすことが目的なのですが、本当に病名が悪いのでしょうか。この疾患そのものの啓発がうまくいっていないことが背景にあって、決して病名のみが悪いわけではありません。病名を変更することも確かに1つの策ですが、疾患に関する正確な情報を社会に発信する施策のほうが重要なのではないかと考えます。病名に含まれる狭義をできるだけ排して、一般的な病名にすることで、逆に啓発が阻害されるという現象はよくみられます。たとえば、肺気腫というのは、「肺」「気」「腫」という言葉がそれぞれ何となく意味を発していて、身体に害のあるものを吸ってはいけないんだなという啓発がしやすいのですが、「慢性閉塞性肺疾患」だと、ふわっとしすぎて何の病気かわかりません。アンケートについてアンケートで5件法を適用する場合、たとえそれが定量化できない項目であっても、項目間の定量値をできるだけ「等間隔にする」というのが原則だと理解しています。リッカート尺度では、両極に位置する「1点」「5点」の選択肢の間に「2~4点」の選択肢を配置します。このとき、2~4点が極端に5点に偏った選択肢にならないよう注意しなければ、恣意的なアンケートとなってしまいます。今回の「ダイアベティス問題」で使われたアンケートは、以下のようなものです1)。Q1 「糖尿病」という病名をどう思いますか?(1)何とも思わない(2)少し気になる(3)抵抗がある(4)とても抵抗がある(5)不愉快であるたとえばこのアンケート調査のすべてが(1)~(5)に均等に分散した場合、(2)~(5)が「深い・抵抗感がある」と定義された場合、8割の人がこれに該当することになります。中立の立場でアンケート調査を行うなら、(3)に「何とも思わない」を配置したほうがよかったかもしれません。まとめ―――いずれにしても、もし病名が変更になってもしばらくは「ダイアベティス(糖尿病)」のように併記しなければ伝わらないでしょう。TwitterがXに変わって久しいですが、いまだに「X(旧Twitter)」という並列表記が当たり前になっています。コピーライターの糸井 重里氏は「俺はもう、ひとまず決めたね。『旧』とか付けずに『ツイッター』って呼ぶわ。『X』になったのはわかってるけど、『ツイッター』で通じるうちは『ツイッター』でいく」とおっしゃっており、私も共感しました。両者、非常に似ている問題だと思います。参考文献・参考サイト1)日本糖尿病学会・日本糖尿病協会合同 アドボカシー活動:「糖尿病」病名に関するアンケート

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統合失調症患者における10年間の心血管疾患リスク

 心血管疾患(CVD)は、統合失調症患者の最も頻度の高い死亡原因の1つである。トルコ・Kahta State HospitalのYasar Kapici氏らは、統合失調症患者における10年間のCVDリスクと臨床症状との関連を調査した。その結果、統合失調症患者の罹病期間、BMI、陰性症状の重症度はCVDのリスク因子である可能性が示唆された。Noro Psikiyatri Arsivi誌2023年1月13日号の報告。 対象は、統合失調症と診断された患者208例。統合失調症の症状および重症度の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いた。10年後のCVDリスクの算出には、QRISK3モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者の10年間のCVDリスクは、7.4%であった。・患者の平均健康心臓年齢(QAGE)は、53.1歳であった。・統合失調症患者の10年間のCVDリスクと正の相関が認められた因子は、罹病期間(r=0.57)、BMI(r=0.37)、陰性症状の重症度(r=0.49)であった。・罹病期間、BMI、陰性症状の重症度は、統合失調症患者の10年間のCVDリスクの予測因子であった。 ●罹病期間:t=4.349、p<0.001 ●BMI:t=2.108、p=0.037 ●陰性症状の重症度:t=2.836、p=0.006

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精神的苦痛の大きい白斑患者の特徴

 米国・Incyte CorporationのKristen Bibeau氏らが17ヵ国の白斑患者を対象に、白斑とQOL、メンタルヘルスとの関連性を調べる定性的研究を行った。その結果、世界的に白斑患者は、感情的幸福感(emotional well-being)、日常生活、心理社会的健康に大きな影響を受けていることが示された。その負荷は体表面積(BSA)5%超の病変を有する患者、肌の色が濃い患者、顔や手に病変がある患者で最も大きかった。また、本研究から、患者が振る舞いを変えたこと、明らかな不満を表出していたこと、うつ病と一致する症状を有していたことが示唆され、著者らは、これらが過小診断されている可能性があるとしている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年8月30日号掲載の報告。 2021年5月6日~6月21日の期間において、17ヵ国のオンラインパネルから白斑患者を募集した住民ベースの定性的研究「Vitiligo and Life Impact Among International Communities(VALIANT)試験」が実施された。 白斑の診断を受けた18歳以上の成人5,859例のうち、3,919例(66.9%)が調査を完了し、3,541例(60.4%)が解析に組み入れられた。対象患者は、Vitiligo Impact Patient scale(VIPs)を用いて、QOLやメンタルヘルスなどの感情的幸福感について質問を受けた。また、Patient Health Questionnaire-9(PHQ-9)を用いてうつ症状が評価された。なお、本試験で用いられたVIPsスコアの範囲は0~60で、スコアが高いほど心理社会的負担が大きいことを示した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象患者3,541例の年齢中央値は38歳(範囲:18~95)、男性は1,933例(54.6%)、BSA 5%超の病変を有する患者は1,602例(45.2%)、FitzpatrickスキンタイプIV~VI(肌の色が濃い)は1,445例(40.8%)であった。・VIPsスコアの合計点(平均値±標準偏差[SD])は、全体では27.3±15.6点であり、インドの患者が40.2±14.1点と最も高スコアであった(すなわち最も負荷が大きかった)。・VIPsスコアに基づくQOL負荷は、BSA 5%超の病変を有する患者(平均32.6点[SD 14.2])、肌の色が濃い患者(31.2点[15.6])、病変が顔にある患者(30.0点[14.9])または手にある患者(29.2点[15.2])で大きかった。・白斑が日々の生活に大きな影響を及ぼしていると報告したのは、少なくとも全体の40%を占めた(衣服の選択に影響がある:55.2%[1,956/3,541例]など)。・白斑をメイクや衣服でよく隠すと報告した割合は59.4%であった。・精神科疾患の診断を受けていた割合は58.7%であった(不安症[28.8%]、うつ病[24.5%]など)。・PHQ-9に基づく中等度~重度のうつ症状は、55.0%に認められた。インドの患者(89.4%[271/303例])、BSA 5%超の病変を有する患者(72.0%[1,154/1,602例])、肌の色が濃い患者(68.3%[987/1,445例])、顔や手に病変がある患者(59.3%[1,607/2,712例])で高率に認められた。

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強迫症併発双極性障害に対する補助療法、アリピプラゾールvs.リスペリドン

 強迫症は、慢性的な強迫症状の増減を伴う精神疾患であり、双極性障害に併発した強迫症の治療については、依然として困難である。イラン・Babol University of Medical SciencesのFaezeh Khorshidian氏らは、強迫症を併発する双極性障害患者の躁、うつ、強迫症の治療において、バルプロ酸ナトリウムの補助療法としてのリスペリドンおよびアリピプラゾールの安全性および有効性を比較するため、本研究を実施した。その結果、強迫症併発双極性障害に対するアリピプラゾールまたはリスペリドン補助療法は、どちらも効果的であり、生命を脅かす重篤な副作用は認められず、とくにアリピプラゾールは、リスペリドンよりも効果的な薬剤である可能性が示唆された。Health Science Reports誌2023年8月27日号の報告。 強迫症併発双極性障害患者64例を対象に、第III相二重盲検ランダム化比較試験を実施した。精神科医による診断面接は、精神疾患の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)の基準に基づき行われた。強迫症、躁病、うつ病の重症度の評価には、Yale-Brown強迫尺度(Y-BOCS)、ヤング躁病評価尺度(YMRS)、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)をそれぞれ用いた。患者は、2つの並行群にランダムに割り付けられた。両群ともにバルプロ酸ナトリウムを投与し、補助療法としてアリピプラゾールまたはリスペリドンのいずれかを投与した。データ分析には、SPSSソフトウェア(ver.22)、χ2検定、t検定、反復測定による分散分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・両群(投与量、投与期間)ともに、各評価尺度の平均スコアの有意な低下が確認された。・両群間の比較では、HAM-D、YMRSスコアに有意な差は認められなかったが、Y-BOCS平均スコアは、アリピプラゾール群で有意に低かった(p<0.001)。・副作用に関しては、リスペリドン群で有意な体重増加(p<0.001)、アリピプラゾール群で有意な睡眠障害(p<0.05)が認められた。

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うつ病における早期睡眠改善と薬物療法への治療反応との関連

 不眠症とうつ病は相互に関連しており、抗うつ薬治療の初期段階で睡眠の改善が認められれば、うつ病治療においても良好な治療アウトカムが得られる可能性が高まる。オランダ・フローニンゲン大学のCornelis F. Vos氏らは、精神病性うつ病患者の早期不眠症改善が、その後の治療アウトカムが予測可能であるかを調査し、これが治療特異的であるかを評価するため、早期不眠症改善と治療タイプとの関連を検討した。その結果、精神病性うつ病患者に対する早期不眠症改善は、治療薬の種類とは関係なく、良好な治療アウトカムと関連していたと報告。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2023年8月31日号の報告。 精神病性うつ病患者114例を対象に抗うつ薬(ベンラファキシン、イミプラミン)と抗精神病薬併用(ベンラファキシン+クエチアピン)による7週間の治療を比較したランダム化比較試験の2次解析として実施された。早期不眠症改善の定義は、2週間後の不眠症状20%以上減少とした。うつ症状の評価には、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D-17)を用いた。早期不眠症改善と治療アウトカムとの関連性を評価するため、ロジスティック回帰を用いた。また、相互の影響を評価するため、早期不眠症改善と治療タイプとの関連を評価した。早期不眠症改善の予測値と全体的なうつ病に対する早期治療反応(2週間後のHAM-D-17スコア20%以上低下)との比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・早期不眠症改善は、治療反応、うつ病寛解、精神症状寛解と関連が認められた。【治療反応】オッズ比(OR):7.9、95%信頼区間(CI):2.7~23.4、p≦0.001【うつ病寛解】OR:6.1、95%CI:1.6~22.3、p=0.009【精神症状寛解】OR:4.1、95%CI:1.6~10.9、p=0.004 早期不眠症改善と治療タイプとの間に、うつ病の治療転帰に対する相互の影響は認められなかった。 著者らは、これらの結果を踏まえて「早期不眠症改善と全体的なうつ病に対する早期治療反応は、治療アウトカムに対する同等の予測能を有していた。早期不眠症改善の一般性を検討するには、今後の研究が必要である」としている。

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心房細動患者のうつ・不安の改善、アブレーションvs.薬物療法/JAMA

 症候性心房細動(AF)を有する患者において、不安や抑うつなど精神症状の改善はカテーテルアブレーション施行患者では観察されたが、薬物療法のみの患者では認められなかったことを、オーストラリア・Royal Melbourne HospitalのAhmed M. AI-Kaisey氏らが、医師主導の無作為化評価者盲検比較試験「Randomized Evaluation of the Impact of Catheter Ablation on Psychological Distress in Atrial Fibrillation:REMEDIAL試験」の結果、報告した。AFカテーテルアブレーションがメンタルヘルスに及ぼす影響についてはよくわかっていなかった。JAMA誌2023年9月12日号掲載の報告。AF患者100例を、カテーテルアブレーション群と薬物療法のみ群に無作為化 研究グループは、2018年6月~2021年3月にオーストラリアのAFセンター2施設において、発作性または持続性AFを有し少なくとも2種類の抗不整脈薬治療の対象となる18~80歳の患者を登録。アブレーション群または薬物療法群に1対1の割合で無作為に割り付け、AFカテーテルアブレーションが薬物療法のみと比較して、精神的苦痛を改善するかどうかを、評価尺度を用いて調べた。 薬物療法群では洞調律を維持するため最適な抗不整脈薬治療が行われ、アブレーション群では無作為化後1ヵ月以内にカテーテルアブレーションが行われた。 主要アウトカムは、12ヵ月時の病院不安抑うつ尺度(Hospital Anxiety and Depression Scale:HADS)スコア、副次アウトカムは重度の精神的苦痛(HADS合計スコア>15)を有する患者の割合、HADS不安スコア、HADSうつ病スコア、うつ病自己評価尺度(Beck Depression Inventory-II:BDI-II)スコアであった。不整脈再発およびAF負荷のデータも解析した。 計100例(平均[±SD]年齢59±12歳、女性31例[32%]、発作性AF54%)が登録され、アブレーション群(52例)および薬物療法群(48例)に割り付けられた。このうち、4例(それぞれ3例および1例)が追跡不能または脱落となり、96例が試験を完遂した。アブレーション群の全例(49例)で肺静脈隔離に成功した。アブレーション群で、12ヵ月時の病院不安抑うつ尺度の合計スコアが有意に低下 12ヵ月時(主要アウトカム)のHADS合計スコア(平均±SD)は、アブレーション群7.6±5.3、薬物療法群11.8±8.6、群間差は-4.17(95%信頼区間[CI]:-7.04~-1.31、p=0.005)であり、アブレーション群が薬物療法群より有意に低かった。なお6ヵ月時もそれぞれ8.2±5.4、11.9±7.2で、有意差が認められた(p=0.006)。 アブレーション群と薬物療法群において、重度の精神的苦痛を有する患者の割合はそれぞれ6ヵ月時14.2%、34%(p=0.02)、12ヵ月時10.2%、31.9%(p=0.01)であり、HADS不安スコアは6ヵ月時4.7±3.2、6.4±3.9(p=0.02)、12ヵ月時4.5±3.3、6.6±4.8(p=0.02)であった。HADS抑うつスコアは3ヵ月時3.7±2.6、5.2±4.0(p=0.047)、6ヵ月時3.4±2.7、5.5±3.9(p=0.004)、12ヵ月時3.1±2.6、5.2±3.9(p=0.004)。また、BDI-IIスコアは6ヵ月時7.2±6.1、11.5±9.0(p=0.01)、12ヵ月時6.6±7.2、10.9±8.2(p=0.01)であった。 AF負荷の中央値も、アブレーション群0%(四分位範囲[IQR]:0~3.22)、薬物療法群15.5%(1.0~45.9)であり、アブレーション群が有意に低かった(p<0.001)。

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スマホゲームで慢性期統合失調症患者の認知機能が改善

 中国・安徽医科大学のShengya Shi氏らは、慢性期統合失調症患者の認知機能改善に対するビデオゲームの有効性を調査し、認知機能に対するビデオゲームのバイオマーカーを評価するため、予備的研究を行った。その結果、ビデオゲーム介入は、慢性期統合失調症患者の認知機能を改善することが示唆され、血清BDNFレベルがこの効果を予測するバイオマーカーである可能性を報告した。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2023年8月18日号の報告。 ゲーム群には、1人用のスマートフォンビデオゲームを1時間/日、週5回プレーを6週間行った。対照群は、1時間/日、週5回のテレビ視聴を6週間行った。認知機能の評価には、神経心理検査アーバンズ(RBANS)およびストループ色彩単語検査(SCWT)を用いた。臨床症状の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、機能の全体的評価尺度(GAF)、一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSE)、モバイルゲーム依存アンケート(PMGQ)、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・ゲーム群では、試験期間中にRBANS合計スコアの改善が認められた。・すべてのSCWTスコアにおいて、両群間の差は認められなかった。・ゲーム群では、PANSSの陰性症状およびGAFの全体的機能のより大きな改善が認められた。・PMGQスコアは、両群ともにすべての時点において、カットオフスコアよりも低値であった。・PHQ-9およびGSEスコアは、両群間で差は認められなかった。・6週間のビデオゲーム介入後、ゲーム群では、血清BDNFレベルが有意に高かった。・すべての参加者において、血清BDNF レベルとRBANS合計スコアとの正の相関が認められた。

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うつ病や不安症における人生の目的が果たす役割

 人生の目的は、自身の活動に関しての意味と目的の感覚、そして人生には意味があるという全体的な感覚により構成されている。オーストラリア・ニューイングランド大学のIan D. Boreham氏らは、人生の目的とうつ病や不安症との関連を、包括的に評価した。その結果、人生の目的レベルが高いほど、うつ病や不安症レベルが低いことが報告された。Journal of Clinical Psychology誌オンライン版2023年8月12日号の報告。 人生の目的とうつ病や不安症との関連を調査するため、メタ解析を実施した。メタ解析には、99の研究、6万6,468例を含めた。 主な結果は以下のとおり。・いずれのサンプルにおいても、人生の目的レベルが高いほど、うつ病や不安症レベルが有意に低かった。・人生の目的とうつ病および不安症との加重エフェクトサイズの平均値は以下のとおりであった。 【うつ病】r=-0.49、95%信頼区間(CI):-0.52~-0.45、p<0.001 【不安症】r=-0.36、95%CI:-0.40~-0.32、p<0.001・人生の目的とメンタルヘルスとの関連性は、とくに不安症との関連において、臨床集団のほうが強かった。・目的と精神病理との関係において、アプローチの欠如や回避動機が役割を果たしていると考えられ、目的が大きくなるほど回避傾向が制限され、うつ病や不安症への影響が軽減される可能性がある。・うつ病や不安症における人生の目的の役割を理解することは、これら疾患の概念に新たな気づきを与え、治療アウトカムの改善に役立つ可能性がある。

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脳トレゲームで認知症を防げるか?【外来で役立つ!認知症Topics】第9回

デジタル化で急成長を遂げた「脳トレ」市場「脳トレ」は、今では日本におけるいわば現代用語として定着した観がある。大型書店に行けば、幅が数メートルになるような「脳トレ」コーナーの展示棚もある。そうした本をめくってみると、四字熟語、算数、間違い探し、点つなぎなどが主流である。これらは、どうも懐かしさや、勉強したという満足感をその読者に与えるようだ。実際、学習塾系や受験参考書を扱う出版社から発行されたものが少なくない。蛇足ながら、山川出版の日本史の教科書、研究社の『新々英文解釈研究』なども同じような意味からか、高齢者がよく購入すると聞く。いずれにしても、こうした脳トレ関連現象は日本独自なものかとも思われる。ところで認知症予防や軽度認知障害(MCI)・認知症の治療としての脳トレはさておき、記憶の鍛錬法には歴史がある。たとえば、記憶術として指や場所を用いるもの、記憶を高める儀式や香などは紀元前からあったようだ。筆者が1980年代以降の欧米や日本で経験したものでは、見当識障害を改善し現実認識を深めることを目的とするリアリティ・オリエンテーションや、場所法と呼ばれる記憶術などがあった。もっともどれもその実行は容易ではなかった。多くは紙を媒体としたドリル、またメモ書きとその習慣的見返しなどの指導が行われてきた。個人的には、どれもそう簡単に身に付くものではなかったという印象がある。現在、欧米における脳トレの主体はBrain TrainingとかCognitive Trainingと呼ばれ、その多くはインターネットを媒体とする。これらはComputer Based Cognitive Training (CBCTとか CCTと略)と総称される。そして高齢者のみならず働く現役世代も広く対象としている。加えて、うつ病統合失調症のような精神疾患にみられる認知機能障害への効果も数多く報告されている。ゲームを製造する欧米の主立った会社は2000年以降に創立されたが、産業としての脳トレは短期間に急成長している。2005年当時にはわずかに200万ドルであった市場規模が、2013年には13億ドル、2022年には78億ドルの巨大産業にのし上がっている。脳トレによる認知症予防の検証が活発にとくに高齢者の認知症予防はこの市場の中でも大きな部分を占めるだろう。その大きな契機となったのが、2016年7月の国際アルツハイマー病学会(AAIC)で米国国立衛生研究所(NIH)と民間会社であるPosit Science社が行ったアメリカ国内での臨床試験の報告だろう。そこでは脳エクササイズである「スピードトレーニング」により、認知症のリスクが半減したと報告された。その後にも、退役軍人協会の会員を対象に運転技術についての効果が検証されている。ここでもこうしたトレーニングをやることで自損事故が半減したと報告されたのである。さて過去20年ほどの間に、高齢者を対象に多くのCCTによる介入研究がなされてきた。一言で高齢者と言っても、対象は認知症やMCIの人、あるいは知的健康人である。最近ではこうした研究のレビューやメタアナリシスも報告されている1,2,3)。その結果、概して「小さいながらも統計学的に有意な効果」が報告されている。そしていくつかに分類される認知機能のうち、非言語性の記憶、言語性記憶、作動記憶、視空間技術、処理速度に効果があるとされる。しかし遂行機能や注意については、有意な効果はほぼ得られていない。一方で、CCTの運営・実施方法についても検討されている。やっぱり、と思うのは、グループでやるトレーニングに比べ、個別トレーニングでは効果がないということである。一体感とか競争心などが大切だということだろう。また一見逆説的ながら、週に3回以上のトレーニングは3回以下に比べて効果が劣るとのことである。筋トレなどでも類似の注意をする指導者がいる。これは毎日のようにやると、飽きて新鮮味がなくなり、注意力や集中力が欠けてくるということなのだろうか?長期的な介入、認知機能分野の複合的な効果に期待一方で多くの問題点や課題も指摘されている。まず介入期間の問題である。多くはせいぜい3ヵ月程度であり、例外的に長いものでも1年程度である。これでは短期的な効果はともかく、年単位の長期効果、まして認知症予防効果などにはとても言及できない。次にタスク、つまり介入の内容や問題は、伝統的に、注意、記憶、地誌的機能など神経心理学的な観点に基づいて作成されてきた。そこでわかっているのは、たとえば注意のタスクをやれば注意の機能で改善があるというように、やった分野は確かに伸びることである。しかし注意をやれば記憶というほかの認知機能分野も伸びるのかといったトランスファー(転移)効果の問題が注目されてきた。これまでのところ、この効果は難しそうだと考えられている。そうしたことから、タスクは伝統的な個々の神経心理学的分野から発展させた複合的なものが、より効果的だと考えられつつある。終わりに、2018年にアメリカの神経学会によりなされたMCIについてのガイドライン4)では、具体的な対応法として2つだけが述べられている。まず、週2回、6ヵ月以上の運動である。そして「数は少ないが、認知トレーニングの有効性も報告されている」と記されている。このようなことから「脳トレ」には、臨床医学としてさらなる成長が期待される。参考1)Lampi A, et al. Computerized cognitive training in cognitively healthy older adults: A systematic review and meta-analysis of effect modifiers. Pros Med 2014;11: e1001756.2)Bonnechere B, et al. The use of commercial computerised cognitive games in older adults: a meta-analysis. Sci Rep. 2020;10:15276.3)Lampit A, et al. Computerized Cognitive Training in Cognitively Healthy Older Adults: A Systematic Review and Network Meta-Analysis. medRxiv. 2020 Oct 11.4)Petersen RC, et al. Practice guideline update summary: Mild cognitive impairment: Report of the guideline development, dissemination, and implementation subcommittee of the American Academy of Neurology. Neurology. 2018;90:126-135.

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ブレクスピプラゾール治療、統合失調症患者からどう評価されているか

 藤田医科大学の横井 里奈氏らは、ブレクスピプラゾールによる抗精神病薬治療に対する統合失調症患者の主観的評価を調査した。Fujita Medical Journal誌2023年8月号の報告。 本研究は、14週間のプロスペクティブ観察研究として実施した。対象は、2019年2月~2020年1月に本研究に参加した統合失調症患者19例。 主な結果は以下のとおり。・ブレクスピプラゾール治療開始時の患者の平均年齢は40.6±14.2歳、臨床全般印象度の重症度(CGI-S)スコアの平均値は4.6±1.2であった。・14週間のブレクスピプラゾール治療により、抗精神病薬治療下主観的ウェルビーイング評価尺度短縮版の日本語版(SWNS-J)合計スコアの有意な改善が認められた(p=0.0084)。 【SWNS-J合計スコア】68.1±22.3(2週目) → 79.5±21.0(14週目)・SWNS-Jの下位尺度であるセルフコントロール(p=0.0053)および社会的統合(p=0.012)においても、有意な改善が認められた。 【SWNS-Jセルフコントロールスコア】14.0±4.7(2週目) → 17.0±4.7(14週目) 【SWNS-J社会的統合スコア】13.9±6.0(2週目) → 16.0±5.1(14週目)・観察期間中、他のSWNS-J下位尺度または薬に対する構えの評価尺度(DAI-10)スコアの有意な改善は認められなかった。・SWNS-J合計スコアとDAI-10(r=0.31、p=0.19)またはCGI-Sスコア(r=-0.18、p=0.47)との相関が認められなかった。 結果を踏まえて著者らは、「ブレクスピプラゾール治療は、統合失調症患者の主観的なウェルビーイングを改善する可能性が示唆された。服薬アドヒアランスを高めるためには、患者の主観的な評価を長期にわたり実施することが重要である」としている。

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自閉スペクトラム症と統合失調症の精神症状の比較

 自閉スペクトラム症(ASD)患者は、明らかな精神症状を発現する傾向があり、これらの症状は、統合失調症患者でみられる症状と類似している。獨協医科大学のMomoka Yamada氏らは、ASD、統合失調症、非精神疾患の初診患者における精神症状の違いについて、調査を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年8月21日号の報告。 初診患者のデータは、2019年6月~2021年5月の獨協医科大学病院精神科の診療記録よりレトロスペクティブに収集した。分析には、精神症状の簡易評価ツールであるPRIME Screen-Revised(PS-R)の評価データを有する254例を含めた。すべての精神科診断には、DSM-V診断基準が用いられていた。 主な結果は以下のとおり。・混乱や妄想的気分は、ASDで15.6%(7/45例)、統合失調症で41.5%(44/106例)、非精神疾患で1.1%(1/88例)に認められ、知覚異常は、ASDで11.1%(5/45例)、統合失調症で40.6%(43/106例)、非精神疾患で2.3%(2/88例)に認められた。・傾向分析では、これらの精神症状は、非精神疾患<ASD<統合失調症と増加していた。・多変量調整多項ロジスティック回帰分析では、ASDおよび非精神疾患と統合失調症との比較を行った。・より高い年齢、知覚異常の発現は、ASD診断を受けていないことと関連し、男性、混乱や妄想的気分がないこと、知覚症状がないことは、非精神疾患と関連していた。 著者らは、本結果は暫定的なものであるとしながらも、陽性症状を詳細に評価することで、ASDと統合失調症の鑑別が容易になる可能性があるとまとめている。

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第178回 「令和の米騒動」と神戸・甲南医療センター専攻医過労自殺・労災認定で感じた共通の”病根”(後編)多くの業務が自己研鑽扱いの同病院指針の中身

中日ドラゴンズ、39イニング無得点、依然低迷続くこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。今週も前回に引き続き、「令和の米騒動」と神戸・甲南医療センター専攻医自殺・労災認定について書いてみたいと思います。専攻医自殺については、日本医師会の松本 吉郎会長がコメントを発表するなど、新しい動きもありました。一方、「米騒動」が勃発している中日ドラゴンズですが、相変わらず歴史的低迷が続いています。9月10日の対巨人戦では40イニングぶりに得点をしたもののゲームには破れ、3年連続Bクラスが確定しました。9月11日現在、勝率は3割8分、借金は今季最多の29です。立浪 和義監督は3年契約の2年目ですが、スポーツ紙はその去就に注目し始めています。男性医師の死亡直前1ヵ月の時間外労働は207時間50分さて、神戸市東灘区の公益財団法人甲南会・甲南医療センターにおける男性専攻医の過労自殺・労災認定について簡単におさらいしておきましょう。労災認定が判明したのは8月17日で、読売新聞をはじめ全国紙、NHKなどが一斉に報じました。各紙報道によれば、労災が認められたのは、神戸大医学部卒業後2020年4月からセンターで研修医として勤務し、2022年4月から消化器内科の専攻医として働いていた男性医師です。同年5月17日の退勤後、神戸市の自宅で亡くなっているのを訪ねた家族が見つけ、兵庫県警が自殺と断定したとのことです。西宮労働基準監督署(兵庫県)による労災認定は2023年6月5日付で、認定によると、男性医師の死亡直前1ヵ月の時間外労働は207時間50分で、3ヵ月平均でも月185時間を超えており、いずれも国が定める精神障害の労災認定基準(月160時間以上、3ヵ月平均100時間以上)を大幅に上回っていたとのことです。労基署は「専攻医になったばかりで先輩医師と同等の業務量を割り当てられ、指示された学会発表の準備も重なり、長時間労働となった」と判断、長時間労働で精神障害を発症したことが自殺の原因と結論付けています。「過重な労働をさせた認識はまったくない」と病院長労災認定が明らかになった8月17日、甲南医療センターの具 英成(ぐ・えいせい)院長は記者会見し、「病院として過重な労働をさせた認識はまったくない」と長時間労働の指示を全面否定しました。労基署が認定した労働時間は207時間に対し、男性医師が甲南医療センターに申告した死亡前月の時間外労働は30.5時間でした。しかし、具院長は記者会見で、労基署の認定には労働に当たらない自主的な「自己研鑽」の時間が含まれているとの見方を示し、「見解に相違がある」と述べたとのことです。文春が甲南医療センターの「自己研鑽についての指針」の内容をすっぱ抜く自己研鑽の時間は労働時間には含まれないことになっています。自己研鑽と労働の区別については、厚生労働省が2019年7月に通知1)でその考え方を示しています。この通知に則って、各医療機関が自己研鑽の基準を定めているわけですが、その解釈・運用は病院によってまちまちです。各紙報道によれば、男性医師が勤務していた当時、甲南医療センターは自己研鑽の基準を明文化した文書はなく、男性医師が亡くなった約5ヵ月後の2022年10月に初めて「医師の時間外労働と自己研鑽についての指針」が作られたそうです。この指針はその後アップデートされ、今年4月に「Ver.2.0」が職員に配布されています。8月21日付の文春オンラインが「『院外持出厳禁』文書入手 病院が職員に配った『あれも業務外、これも自己研鑽』マニュアル」と題する記事で、その詳しい内容を報じています。「Q&A形式」で構成されたその内容は、初期研修医や専攻医にはなかなか厳しいものとなっています。「自らが術者である手術や処置等の予習や振り返りは自己研鑽」文春オンラインの記事から「指針」の一部を紹介します。Q新しい治療法や新薬についての勉強*新しい治療法や新薬について保険適応になっているのであれば(もしくはもうすぐ承認)医療業務、未承認であれば患者さんに還元されないので自己研鑽の範囲では?A新しい治療法や新薬の保険適応に関係なく、自己学習は自己研鑽になります。Q自分が主治医である患者の手術、検査、処置等についての予習や振り返り*就業開始前の朝のカルテチェック、予習は医療業務に入らない?*朝の始業前の時間の回診なども医療業務では?*術前・後、検討会の発表のための予習・振り返りは?A時間によらず、カルテチェック、予習、復習、回診等は医療業務にあたります。これを、できるだけ勤務時間内に行う努力が必要です。就業開始前ではなく、可能な限り、就業開始時間(8:30)と外来、検査開始時間(9:00)の間に行うよう各科で工夫が必要です。(中略)自らが術者である手術や処置等の予習や振り返り、検討会の発表のための準備としての予習・振り返りは自己研鑽になります。本人が「自己研鑽」として行っていないことについては最終的には上司が判断Q本人が「自己研鑽」として行っていないことを、上司が「自己研鑽」だと決めつけたり評価することはおかしい。A一般企業と同じく、病院に勤務する医師の労務管理には一定のルールが必要であり、各勤務医の勤務状況を医療業務とするか自己研鑽とするかは、労働基準局通達を基にしたこの指針に記載した当院の規則に則って、最終的には上司が判断します。同記事によれば、「2022年10月版」と、実際に職員に配られた「2023年4月版」を比較すると、「2023年4月版」では「当院における自己研鑽と時間外医療業務の区別の具体的な例」の一覧として、自己研鑽の例の最後に「初期研修医、専攻医プログラムに沿った学会発表、症例登録、サマリー作成、事務作業等」といった文言が追加されていたとのことです。これに関連して同記事では、関西地方の別病院の勤務医による「専門医になる上で学会発表は免れない。これを業務時間外とするのはさすがにブラック過ぎます。うちの病院では間違いなく『業務』として扱いますよ」というコメントを紹介しています。かつてのスター外科医と若手医師の間には働き方を巡って大きな認識のズレ?多くの“業務”が「自己研鑽」扱いとなり、本人が「自己研鑽」と認識していない“業務”も、最終的に上司の判断次第で「自己研鑽」とされてしまう状況は、まさにブラック企業と言えるでしょう。その経営方針は、公益財団法人甲南会のものだと言えそうです。甲南会は、甲南医療センターのほかに、六甲アイランド病院、甲南加古川病院も経営しており、これらの病院でも自己研鑽の解釈は同じ指針に則って運用されると考えられます。ちなみに、甲南会の経営トップである代表理事は、記者会見にも出席した甲南医療センター院長の具院長です。週刊文春8月31日号に掲載された「神戸市26歳医師自殺」の記事にはその具院長について次のような興味深い証言が紹介されています。「かつてバリバリの外科医でした。24時間ぶっ通しで執刀するような移植手術をいくつも成功させ、『ゴッドハンド』と賞賛されてきた。だから、『こんな程度の残業時間で自殺するか?』という考えが根底にあるように映ります」。実際、具院長は神戸大学で肝胆膵外科学教授や同大学附属病院移植医療部長を務めるなど、華々しい経歴を持つ、スター外科医だったようです。かつてのスター外科医と若手医師の間には自己研鑽の解釈や働き方を巡って、大きな認識のズレがあったのかもしれません。なにやら中日ドラゴンズの「令和の米騒動」に似てませんか?遺族が厚生労働省を訪れ甲南医療センターへの調査などを求め嘆願書提出8月25日、専攻医の過労死自殺について加藤 勝信厚生労働大臣は閣議後の記者会見で言及、「医師の自己研鑽については各医療機関に手続きを明確化するよう通達を出している」と説明、「医師の健康が、国民への医療提供の基盤。医師の適切な労働時間管理がされるよう、必要な支援を含めた対応を図る」と述べたとのことです。そして、8月31日には、自殺した専攻医の遺族(母親ら)が厚生労働省を訪れ、甲南医療センターへの調査や医師の働き方改革の実現などを求める嘆願書を提出しました。各紙報道によれば、嘆願書は「甲南医療センター自体が研修医や専攻医を単なる労働力としか捉えておらず、病院内に長時間労働を許容する土壌があったのではないかと懸念している」などとして、「労働基準法違反の調査と是正」「甲南医療センターでの医師の労働環境の改善」「西宮労基署による刑事告訴の適切な捜査と情報提供」「医師の働き方改革の実現」「日本専門医機構への指導」「労働時間の適切な把握と管理」の6点を要望したとのことです。なお嘆願書提出後の記者会見には、24年前に医師である夫を過労自殺で亡くした中原 のり子氏も出席、8月31日付で「医師の過労死遺族の会」(仮称)を結成したことも報告されています。兵庫県で医療関連の事件報道が連続する謎こうした動きに日本医師会も反応しました。日本医師会の松本会長は9月6日の定例記者会見で甲南医療センターの専攻医が過労自殺した件に触れ、「この不幸な事象は、医師の団体である日本医師会としても大変重く受け止めている。このような事態に陥った原因は、様々なことが考えられるが、若手医師、そして勤務医の就労環境が背景にあったことは紛れもない事実」と述べるとともに、「日本医師会としては、今後も医療の質・安全を保ちつつ、医療DXや医師の健康を守り、医師の働き方改革の趣旨、目的に向けての取り組みを強力に進めながら、今後このような不幸なことが起こらぬよう、最優先で取り組んでいく」と再発防止に力を入れる考えを示しました。今後、甲南医療センターに労基署等の調査が入り、何らかの処分が下されるかどうかが注目されますが、そんな中、再び研修医自殺のニュースが入ってきました。兵庫県伊丹市立伊丹病院の男性研修医(当時25)が2018年、長時間労働などで精神障害を発症し自殺したとして、両親が病院側に約1億3,000万円の損害賠償を求めて神戸地裁に提訴していたことがわかったのです。9月4日付の朝日新聞などの報道によれば、伊丹労働基準監督署は今年3月、死亡する直前の1ヵ月間で約80時間の時間外労働があったことなどを踏まえ、「亡くなるまでにうつ病のような症状があったと考えられる」として男性研修医の労災を認定、遺族側は病院側に責任があるとして損害賠償を求め、神戸地裁に提訴したとのことです。医師の働き方改革の本格実施を直前にして、医師の過労死や過労自殺の報道が今後も増えそうな気配です。それにしても、「第173回 兵庫で起こった2つの“事件”を考察する(前編) 神戸徳洲会病院カテーテル事故と『脳外科医 竹田くん』」以来、ここのところ兵庫県の医療関連の事件報道が多い印象です。何かの偶然でしょうか、それとも兵庫、神戸の医療界で何かが起こっているのでしょうか?少し調べてみたいと思います。参考1)「医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について」令和元年7月1日基発0701第9号/労働基準局長通知

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モーニングコーヒーでうつ病リスクが低下

 最近の研究では、カフェイン摂取がうつ病リスク低下と関連していることが示唆されている。しかし、どの時間帯でのカフェイン摂取がうつ病リスクと関連しているかは、よくわかっていない。中国・山東中医薬大学のJiahui Yin氏らは、さまざまな時間帯におけるカフェイン摂取とうつ病リスクとの関連を調査した。その結果、早朝にカフェインを摂取した人は、うつ病有病率が低く、早朝以外の時間帯にカフェインを摂取する人は、うつ病有病率が高いことを報告した。Journal of Affective Disorders誌11月号の報告。 米国の成人2億1,800万人を重みづけした米国健康栄養調査より抽出した施設に入居していない成人を対象に、横断的研究を実施した。さまざまな時間帯におけるカフェイン摂取とうつ病リスクとの関連を調査するため、共変量調整サンプル加重回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・早朝(5:00~8:00)以外の時間帯でのカフェイン摂取は、うつ病有病率の高さとの関連が認められた(未調整オッズ比[OR]:1.08、95%信頼区間[CI]:1.05~1.11、調整後OR:1.03、95%CI:1.00~1.06)。・早朝にカフェインを摂取した人は、そうでなかった人と比較し、うつ病有病率が低かった(未調整OR:0.75、95%CI:0.67~0.85、調整後OR:0.86、95%CI:0.75~0.99)。

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日本発祥の疾患「Hikikomori」が国際的に認知【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第241回

日本発祥の疾患「Hikikomori」が国際的に認知Unsplashより使用2022年に米国精神医学会が発行した『DSM-5-TR』に「Hikikomori」が掲載されました。日本語の「ひきこもり」が国際的に認知されつつあるということを意味しています1)。私は一介の呼吸器内科医なので、これを知らず、結構衝撃的でした。さて、九州大学病院における「ひきこもり」に関する研究を紹介したいと思います。Kyuragi S, et al.High-sensitivity C-reactive protein and bilirubin as possible biomarkers for hikikomori in depression: A case-control study.Psychiatry Clin Neurosci. 2023 Aug;77(8):458-460.九州大学における気分障害ひきこもり外来、および関連精神科医療機関を通じて行われたパイロット研究です。被験者は、現在大うつ病エピソードを有する患者121例で、ひきこもり群である「6ヵ月以上」「ほとんど自宅で過ごす」患者45例、非ひきこもり群である「週に4日以上外出する」患者76例で構成されています。血中バイオマーカーとして、過去に精神症状と関連が示されている血清FDP、フィブリノゲン、HDL-コレステロール、LDL-コレステロール、ビリルビン、尿酸、高感度CRPを測定しました。結果、高感度CRP値はひきこもり群で有意に高く、ビリルビン値は有意に低いことが示されました。ただし、高感度CRPの平均(±標準偏差)は、非ひきこもり群2.4±0.5μg/mL、ひきこもり群2.6±0.6μg/mLと、一見それほどの差はないように思われます(統計学的には有意差あり、p<0.05)。とはいえ、高感度CRPは、複数の研究グループによって、自殺企図のバイオマーカーである可能性が示唆されています2,3)。とくに直近で自殺企図を持っている人においてCRPが高くなるとされており、厳密な機序は不明ですが、何らかの炎症性機序が作用している可能性が考えられています。1)American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders: DSM-5-TR. American Psychiatric Association Publishing, Washington, DC, 2022.2)Courtet P, et al. Increased CRP levels may be a trait marker of suicidal attempt. Eur Neuropsychopharmacol. 2015 Oct;25(10):1824-1831.3)Loas G, et al. Relationships between anhedonia, alexithymia, impulsivity, suicidal ideation, recent suicide attempt, C-reactive protein and serum lipid levels among 122 inpatients with mood or anxious disorders. Psychiatry Res. 2016 Dec 30;246:296-302.

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リアルワールドにおける統合失調症ケアの実際と改善ポイント

 統合失調症患者の臨床転帰を改善するためには、日常診療における治療パターンを理解することが重要なステップとなる。フランス・エクス=マルセイユ大学のGuillaume Fond氏らは、リアルワールドにおける抗精神病薬で治療されている統合失調症患者の長期マネジメントを明らかにするため、本研究を実施した。その結果、統合失調症患者に対するケアにおいて、今後優先すべき事項が浮き彫りとなった。とくに、50歳以上の患者に対する代謝系疾患の予防や18~34歳の患者に対する自殺予防など、特定の集団にさらに焦点を当てる必要がある。また、抗精神病薬の治療継続率は依然として低く、精神科入院率も高いままであることを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年7月21日号の報告。 2012~17年に3回以上の抗精神病薬処方を行った成人統合失調症患者を国民健康データシステムより抽出した。主要評価項目は、実際の処方パターン、患者の特徴、医療利用、併存疾患、死亡率とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者45万6,003例のうち、経口抗精神病薬が96%、第1世代抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)が17.5%、第2世代抗精神病薬LAIが16.1%に処方されていた。・治療開始24ヵ月後の治療継続率は、経口抗精神病薬で23.9%、第1世代抗精神病薬LAIで11.5%、第2世代抗精神病薬LAIで20.8%であった。・治療継続期間の中央値は、経口抗精神病薬で5.0ヵ月、第1世代抗精神病薬LAIで3.3ヵ月、第2世代抗精神病薬LAIで6.1ヵ月であった。・全体として、抗不安薬併用が62.1%、抗うつ薬併用が45.7%、抗けいれん薬併用が28.5%でみられ、これらの薬剤の併用は、女性および50歳以上の患者でより多かった。・脂質異常症は最も頻度の高い代謝系併存疾患であったが(16.2%)、脂質モニタリングは不十分であった。・代謝系併存疾患は、女性でより頻繁に認められた。・標準化患者死亡率は、2013~15年の間は高いままであり(フランス一般集団の3.3~3.7倍)、平均余命は、男性で17年、女性で8年短縮されていた。・主な死亡原因は、がん(20.2%)と心血管疾患(17.2%)であり、18~34歳の死亡の25.4%は自殺であった。

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記憶力に不安がある高齢者の運転はいかに危険か/長寿研ほか

 日本の高齢ドライバーを対象とした横断研究の結果、客観的認知障害の有無にかかわらず、主観的な記憶力の心配(subjective memory concerns、以下「SMC」)や、SMCに加えて歩行速度低下を有する運動認知リスク症候群(motoric cognitive risk syndrome、以下「MCR」)を有する人では自動車衝突事故やヒヤリハットを経験する確率が有意に高かったことを、国立長寿医療研究センターの栗田 智史氏らの研究グループが明らかにした。JAMA Network Open誌2023年8月25日号掲載の報告。 先行研究によって、MCRは処理速度や実行機能の低下などとの関連が報告されているが、MCRと自動車衝突事故との関連性に関する検討は十分ではない。簡便に実施できるMCR評価を行うことで衝突事故リスクに早期に気付くことができる可能性があるため、研究グループはMCR評価と衝突事故やヒヤリハットとの関連を検討した。 研究グループは、2015~18年に実施された同センターの大規模コホート研究(NCGG-SGS)のデータを用い、愛知県在住の65歳以上の高齢者の衝突事故やヒヤリハットの経験を調査した。運転しない人、認知障害がある人(ミニメンタルステート検査21点未満)、認知症の病歴のある人などは除外した。SMCは、老年期うつ病評価尺度(GDS)などを数種類の方法を用いて評価し、歩行速度低下は年齢や性別の平均値より-1.0SD以下とした。 参加者は、過去2年間の衝突事故と前年のヒヤリハットを対面で聴取され、(1)SMCも歩行速度低下も有さない群(対照群)、(2)SMCのみを有する群(SMC群)、(3)歩行速度低下のみを有する群(歩行速度低下群)、(4)MCRを有する群(MCR群)の4群に分けられた。ロジスティック回帰モデルを用いて、衝突事故またはヒヤリハットのオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を求めた。データは2023年2~3月に解析された。 主な結果は以下のとおり。・参加者1万2,475人の平均年齢は72.6(SD 5.2)歳で、56.9%が男性であった。・対照群は3,856人(30.9%)、SMC群は6,889人(55.2%)、歩行速度低下群は557人(4.5%)、MCR群は1,173人(9.4%)であった。・SMC群とMCR群では、衝突事故およびヒヤリハットの割合が他の群よりも多かった(調整標準化残差>1.96、p<0.001)。・ロジスティック回帰分析の結果、対照群と比べて、SMC群とMCR群では衝突事故が有意に多かった(【SMC群】補正後OR:1.48、95%CI:1.27~1.72、p<0.001、【MCR群】補正後OR:1.73、95%CI:1.39~2.16、p<0.001)。・同様に、SMC群とMCR群ではヒヤリハットも有意に多かった(【SMC群】補正後OR:2.07、95%CI:1.91~2.25、p<0.001、【MCR群】補正後OR:2.13、95%CI:1.85~2.45、p<0.001)。・MCR評価を客観的認知障害で層別化した結果、客観的認知障害の有無に関係なくSMC群とMCR群で有意に衝突事故とヒヤリハットが増加していた。・これらの結果は、高齢ドライバーの過失割合が半分以下の衝突事故を除外しても同様であった。 これらの結果より、研究グループは「これらの知見の一般化可能性を高め、外的妥当性を検証するためには、異なる環境におけるさらなる研究が必要である。これらの関連性のメカニズムも今後の研究の課題となる」とまとめた。

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統合失調症患者の抗精神病薬治療反応を予測する最適な期間は

 治療開始後、早い段階で治療反応が不十分な統合失調症患者に対する抗精神病薬の長期的な治療反応を予測することは難しい。中国・Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのYujun Long氏らは、統合失調症患者に対する抗精神病薬の長期的な治療反応を適切に予測するための、治療初期段階におけるノンレスポンダーのカットオフ予測値を明らかにするため、多施設共同オープンラベルランダム化比較試験を実施した。その結果、治療開始2週間後の症状改善効果は、統合失調症患者に対する抗精神病薬のノンレスポンダーを予測可能であり、さらに正確に予測するには、ベースライン時の重症度や治療薬剤の違いを考慮する必要性があるとし、最初の2週間の後、さらに2週間の治療反応を評価することで抗精神病薬の変更が必要であるかを判断可能であるとしている。BMC Medicine誌2023年7月19日号の報告。 本研究は、中国の精神科センター19施設による8週間の多施設共同オープンラベルランダム化比較試験である。本研究に参加した統合失調症患者は、オランザピン、リスペリドン、amisulpride、アリピプラゾールのいずれかによる8週間の単剤治療にランダムに割り付けられた。ベースラインおよび2、4、8週目に、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)による評価を行った。主要アウトカムは、ノンレスポンダーの予測とした。ノンレスポンダーの定義は、ベースラインからエンドポイントまでのPANSS合計スコア減少率が20%未満とした。重症度は、ベースライン時のPANSS合計スコアで次のように定義した。軽度(PANSS合計スコア:58)、中等度(同:75)、重度(同:95)。 主な結果は以下のとおり。・2週目時点でのPANSS合計スコア5%未満の改善は、重度(総精度:75.0%)および軽度(同:80.8%)の統合失調症患者およびリスペリドン群(同:82.4%)、amisulpride群(同:78.2%)で、最も高精度でその後のノンレスポンダーを予測した。・中等度(同:84.0%)の統合失調症患者およびオランザピン群(同:79.2%)、アリピプラゾール群(同:77.4%)では、2週目でのPANSS合計スコア10%の減少が、ノンレスポンダーの最も高精度な予測因子であった。・4週目では、抗精神病薬の種類や疾患重症度とは無関係に、最良のノンレスポンダーのカットオフ予測値は、PANSS合計スコア20%未満の改善であった(同:89.8~92.1%)。

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