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BPSDだけではない!認知症の生活障害にどう対応する?

最近では、一般人向けの新聞記事でも目にするなど、「BPSD(認知症の行動・心理症状)」の概念が広まりつつあり、BPSDに対する介護者の大変さはよく知られてきている。それに加え認知症の介護では、食事、排尿・排便、更衣、入浴など基本的な日常生活ができなくなる「生活障害」への対応も、介護者にとっては大きな負担となる。その対応について、筑波大学臨床医学系精神医学 教授 朝田 隆氏が「認知症の生活障害とその対応」と題して、第109回日本精神神経学会学術総会(2013年5月23日~25日)にて講演した。その内容を紹介する。認知症介護者がつらい原因は「希望がない」「BPSD」「生活障害への対応」わが国では、殺人・殺人未遂事件件数は昭和50年代のピーク時(約3,000件)に比べ、2009年には約3分の1に減少しているが、子が加害者で親が被害者であった事件件数は1985年から2009年の間に約3倍に増えている。その陰には、介護殺人、とくに認知症の介護殺人の存在があることが報告されている。また、そこまで極端ではなくとも、認知症の介護者はうつ症状・うつ病になりやすく、この頻度は少なくとも一般人口比で3倍以上ということが報告されている。認知症介護者がつらい要因として、根本治療薬がなく希望がないこと、BPSDのつらさ、生活障害への対応のつらさが挙げられる。生活障害とは?生活障害とは、いわゆる基本的な日常生活を構成する行動の障害であり、認知症のごく初期では、電話、買い物、料理、キャッシングなどができなくなることが特徴的である。朝田氏が、若年性認知症患者の家族の方々に、認知症に気付いたきっかけを聞いたところ、多くは記憶障害であったが、食事のときに片手だけしか使わずボロボロこぼすようになるというものがあった。認知症が進行するとともに、服の着方・脱ぎ方がわからなくなる、布団がきちんと敷けなくなる、敷き布団の下にもぐって寝る、回すという動作ができずドアを開けることができない、便座と自分の位置関係がわからず逆向きに座るなどの障害が日常化してゆく。この生活障害は、その行為が時にできなくなることに始まり、認知症が進行するに伴って成功確率が低下する。当初はできないことで苛立つが、イライラは次第に消えおとなしくなる。さらに、できないことが自覚できなくなるため、介護者に言われると立腹し、そのうちできなくて当然、やってもらって当然になる。BPSDと生活障害は似ているが、生活障害のほうがBPSDより技術的な対応が必要である。また、BPSDは連続性がなく突然発現するが、生活障害には日々現れる症状のため介護者の苛立ちがたまるという特徴がある。生活障害に対する基本の対応は?それでは、生活障害にどのように対応すればよいのだろうか。朝田氏は、一連の行為を一つひとつの動作に分解して、それらの順序立てを考えるのがわかりやすいと言う。たとえば、歯磨きという行為は、洗面所の前に立つ、歯ブラシを取る、ペーストチューブを取る、チューブの蓋を開ける、歯ブラシにペーストを付ける、チューブの蓋を閉める、チューブを元の場所に戻す、などの動作が連続的に順序よくなされて完成する。認知症患者の行動を観察すると、動作の順番を間違ったり、歯ブラシやペーストチューブを認識できなかったりすることが歯磨き行為をできない原因となっていることがわかる。その他の行為、たとえば排泄や食事も一連の動作に分けることによって、失敗のパターンと手助けすべきところが見えてくる。これらの生活障害に対して、基本となる対応は「仕切り直し」である。介護者が焦らず間を置くことで、当事者は混乱と苛立ちを忘れる。学問的にも「場所と時が変わればできてしまう、失行とはそんなもの」とされている。仕切り直しの例として、朝田氏は、施設の送迎車の座席に正しく座れなかった患者が、一度自動車を降りて再度乗車させると正しく座れた例を紹介した。また、動作の流れの手助けをして成功した例として、上着をうまく脱ぐことができない患者に、背後にまわって肩甲骨のあたりを少し引っ張るとそれが反射となり脱ぐことができた例を挙げた。「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」朝田氏は、山本五十六の語録「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」が認知症介護にも通じており、認知症患者の家族に伝えるべき言葉だという。実践的には、全部をしてあげるのではなく当事者の能力を最大限に活かすこと、また、流れの乱れが基本にあるためリズムに乗せることが大事であり、端緒がどこかをしっかり見ることが重要であると述べた。脳科学としての生活行為の研究にも挑戦本講演で朝田氏は、認知症ケアの知恵集めのほか、認知症専門医や神経心理学・認知リハビリの専門家、脳機能評価に精通した研究者と連携し、脳磁図(磁気で見た脳波)で行為時の脳の働きをモニターするなど、脳科学として生活行為の研究にも挑戦し始めていることを紹介した。

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認知症高齢者5人に1人が抗コリン薬を使用

 認知症を有する人に対する抗コリン薬の使用は、認知機能に悪影響を及ぼす。しかし、米国のコミュニティベースにおける認知症高齢者の抗コリン薬治療の頻度やその使用に関連する因子については、これまでほとんど検討されていなかった。米国・ヒューストン大学のSneha D. Sura氏らは、認知症高齢者における抗コリン薬の使用状況と使用に関連する因子を明らかにすることを目的に、米国民の非入院患者の代表的な集団であるMedical Expenditure Panel Surveys (MEPS)の2005~2009年のデータをレトロスペクティブに解析した。その結果、認知症高齢者の5人に1人が抗コリン薬を使用しており、その使用に気分障害、尿失禁および居住地域が関連していることを報告した。Drugs & Aging誌オンライン版2013年7月24日号の掲載報告。 地域在住の65歳以上の認知症患者を対象に、研究期間中の抗コリン薬の毎年の使用頻度、抗コリン薬使用に関連する因子について評価した。Anticholinergic Drug Scale(ADS)を用いて抗コリン薬を特定し、臨床的に意味のある抗コリン薬の使用(ADSレベル2または3)と関連する予測因子を明らかにするため、Anderson Behavioral Modelの概念的枠組みの範囲で多重ロジスティック回帰解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・MEPSの研究期間中、認知症高齢者は年間で合計156万人(95%信頼区間[CI]:134~173万人)いることが認められた。・認知症高齢者の約23.3 %(95%CI:19.2~27.5)が、臨床的に意味のある抗コリン薬の使用(ADSレベル2または3)を行っていた。・抗コリン薬の使用を必要とする因子の中でも、気分障害(オッズ比[OR]:2.19、95%CI:1.19~4.06)と尿失禁(同:6.58、2.84~15.29)に対して、より抗コリン薬を使用する傾向がみられた。・より高用量の抗コリン薬を使用する確率は、北東地域に在住している患者に比べ西部地域に在住している患者のほうが有意に低かった(OR:0.41、95%CI:0.17~0.95)。・以上より、認知症高齢者の5人に1人が臨床的に意味のある抗コリン薬の使用を行っていることが明らかになった。また、気分障害、尿失禁および居住地域が抗コリン薬の使用と有意に関連していることが示された。・この結果を踏まえて、著者は「臨床的に意味のある抗コリン薬に焦点を当て、薬物使用の質改善に向け一丸となった努力が求められる」と提言している。関連医療ニュース 抗精神病薬と抗コリン薬の併用、心機能に及ぼす影響 統合失調症治療にベンゾ併用は有用なのか? ベンゾジアゼピン系薬物による認知障害、α1GABAA受容体活性が関与の可能性

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ビタミンDが健康に及ぼす影響(まとめ)

 近年、ビタミンDが健康、疾病に及ぼす影響を検証した臨床研究結果がケアネット・ドットコムでも散見されるようになってきた。そこで今回、編集部ではビタミンDに関する記事をまとめてみることにした。後半のいくつかはケアネット・ドットコムで初めて紹介するものも含まれている。“ビタミンD不足の高齢者は日常の活動に支障” 【高齢者】 ビタミンDの不足する高齢者は、着替えや階段を上るなどの日常的な身体活動に困難を来す可能性のあることが、新たな研究で示された。高齢集団では、ビタミンD値最低群の70%に少なくとも1つの身体的制限がみられたのに対し、ビタミンD値が中等度または高い群の多くでは身体的制限がみられなかったと報告されている。さらに、ビタミンD欠乏のみられる人には、時間の経過とともに新たな身体的制限が発生する可能性が高いことが判明した。(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism誌2013年7月17日オンライン版の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/general/hdn/35685“アルツハイマー病にビタミンD不足が関連” 【認知症】 ビタミンDの摂取が認知機能や認知症発症に与える影響をメタアナリシスにより検討した結果より、アルツハイマー病群ではコントロール群と比較し、ビタミンD濃度が低かったことが報告されている(Neurology誌2012年9月25日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/risk/carenet/31480“うつ病治療にビタミンD投与は有用” 【うつ】 ビタミンD欠乏症を認めるうつ病患者におけるビタミンD投与の有用性を検討した結果より、ビタミンD投与がうつ状態を改善すると報告されている(Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2013年6月号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/head/carenet/34687“ビタミンDの摂取がパーキンソン病の症状を安定化させる” 【パーキンソン病】 東京慈恵会医科大学の鈴木正彦氏らは、ビタミンD受容体遺伝子多型のうちFokI T/T型またはFokI C/T型を持つ患者が、ビタミンD3を摂取することで、高カルシウム血症を引き起こすことなく、短期的にパーキンソン病の症状を安定化させる可能性を示唆している(The American Journal of Clinical Nutrition誌2013年5月号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/head/carenet/34819“高用量ビタミンD摂取、65歳以上の骨折リスクを低減” 【骨折予防】 11の二重盲検無作為化比較試験の被験者を対象に行ったメタ解析の結果、65歳以上高齢者の高用量ビタミンD摂取(毎日≧800 IU)は、大腿骨頸部骨折およびあらゆる非椎体骨折の予防に多少ではあるが有望であることが示されている(NEJM誌2012年7月5日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/29116“ビタミンD+カルシウム、高齢者の骨折予防に効果” 【骨折予防】 高齢者の骨折予防におけるビタミンD単剤の用量は10~20μg/日では不十分であるが、カルシウムと併用すると大腿骨頸部骨折および全骨折が有意に抑制されることが、報告されている(BMJ誌2010年1月16日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/11991“女性高齢者への年1回、高用量ビタミンD投与、転倒リスクを増大“ 【転倒】 70歳以上の女性高齢者2,200人超を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、高用量ビタミンDを年1回投与することで、転倒リスクが増大してしまうことが示唆された。また投与後3ヵ月間の転倒リスクは、約30%も増加したという(JAMA誌2010年5月12日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/14363“ビタミンDサプリ摂取で膝OA改善せず“ 【膝OA】 症候性変形性膝関節症(膝OA)患者に対して2年間にわたり、十分量のビタミンD3サプリメントとプラセボとを投与し比較検討した無作為化試験の結果より、サプリメント群はプラセボ群と比較して、膝の痛みの程度や軟骨減少について、低下はみられなかったことが報告されている(JAMA誌2013年1月9日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/33205“母親の血中ビタミンD値、子どもの骨塩量とは無関係” 【妊婦】 妊娠中の母体における血中ビタミンD値と、その子どもの9~10歳時の骨塩量との関連について、約4,000組の母子について行った前向き調査「エイボン縦断試験」の結果より、有意な関連は認められなかったことが報告されている(Lancet誌2013年6月22日号[オンライン版2013年3月19日号]の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/34604“ビタミンDサプリ摂取はビタミンD欠乏小児の骨密度を改善する” 【小児骨密度改善】 ビタミンDサプリメントは、ビタミンDが正常レベルの小児、青少年の骨密度にベネフィットをもたらさないが、欠乏している場合は一定の改善効果が得られることが、メタ解析で明らかとなったと報告されている(BMJ誌2011年1月29日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/19686“肺結核症に高用量ビタミンD補助薬は有効” 【肺結核】 肺結核症の集中治療期に標準的な抗生物質治療を受けている患者に、高用量のビタミンD補助薬を投与すると、ビタミンD受容体TaqI tt遺伝子型の患者で喀痰培養陰転時間の短縮効果を認めることが明らかとなった(Lancet誌2011年1月15日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/19346“ビタミンD服用、上気道感染症の発症・重症度を抑制しない“ 【上気道感染症】 健常者が半年間、月1回10万IUのビタミンDを服用し続けても、上気道感染症の発症および重症度を抑制しなかったことが、無作為化比較試験の結果より示されている(JAMA誌2012年10月3日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/31659“ビタミンD投与、左室心筋重量係数に変化なし-左室肥大を伴うCKD患者を対象としたRCTより-” 【心肥大抑制】 左室肥大を伴う慢性腎臓病(CKD)約230人に対する無作為化試験において、48週間にわたる活性型ビタミンD化合物paricalcitolを投与した結果、左室心筋重量係数に変化は認められなかったことが示されている(JAMA誌2012年2月15日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/27016“血清ビタミンD値と小児アトピーの重症度、統計学的に有意な関連は認められない” 【アトピー性皮膚炎】 血清25ヒドロキシビタミンD値と小児アトピー性皮膚炎の重症度との関連について、統計学的に有意な関連はみられないことが報告されている。両者の関連については、逆相関の関連性が示唆されていた(Journal of the American Academy of Dermatology誌2013年7月号[オンライン版2013年2月14日号]の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/general/carenet/33851“ビタミンDサプリ摂取で血圧が低下” 【降圧効果】 アフリカ系米国人を対象とした大規模ランダム化比較試験を行った結果、ビタミンDサプリメントを摂取した群ではプラセボ群と比べ血圧が有意に低下したことが発表されている。この前向き試験では、対象者に3ヵ月間毎日ビタミンDサプリメントを摂取させたところ、収縮期血圧がサプリメントの摂取用量に応じて0.7~4.0mmHg低下した(Hypertension誌2013年4 月号の掲載報告)。“ビタミンDサプリ摂取で、コレステロール値は改善しない” 【コレステロール低下】 ビタミンD値の低い人がサプリメントを用いてビタミンDを増加させても血中コレステロール値は改善しないことが示唆された。研究者らはビタミンD欠乏例に、5万国際単位のビタミンD3を8週間投与した。その結果、ビタミンD投与群ではプラセボ群と比べてコレステロールの改善はみられず、副甲状腺ホルモン値が低下し、カルシウム値が上昇した。(Arteriosclerosis, thrombosis, and vascular biology 誌2012年10月号の掲載報告 )。“ビタミンD低値は2型糖尿病の発症リスクを高める“ 【糖尿病】 ビタミンD欠乏と不足状態は2型糖尿病の発症リスクを高める独立した危険因子である可能性が報告されている。研究者らは、2型糖尿病の危険因子を1つ以上有するが糖尿病を発症していない成人1,080人を平均32.3ヵ月間追跡。その結果、血清25ヒドロキシビタミンD低値はBMI、インスリン抵抗性、インスリン分泌指数とは独立して2型糖尿病発症リスクと関係していた(The American journal of clinical nutrition誌2013年3月号の掲載報告)。“血中ビタミンD濃度の低い人では虚血性心疾患の発症リスクが増大” 【心疾患】 デンマーク人1万例以上の血中ビタミンD濃度と心疾患および死亡との関係を検討した結果、血中ビタミンD濃度の低い人では虚血性心疾患と心筋梗塞のリスクが著しく高いことが明らかにされている。 研究者らはCopenhagen City Heart Studyに参加した1万170例のうち、血中ビタミンD濃度が5パーセンタイル未満の者と50パーセンタイル以上の者を比較した。その結果、血中ビタミンD濃度が高い者と比べ、低い者では虚血性心疾患の発症リスクが40%、心筋梗塞の発症リスクが64%高かったことを発表している(Arteriosclerosis, thrombosis, and vascular biology誌2012年11月号の掲載報告)。“ビタミンD摂取不足が脳梗塞の発症リスクを高める” 【脳梗塞】 食事によるビタミンDの摂取不足は脳卒中、とくに脳梗塞の発症と関係することがホノルル心臓プログラムより発表されている。登録時の食事によるビタミンD摂取と追跡中の脳卒中発症との関係を検討した結果、ビタミンD摂取最高四分位群と比較した最低四分位群のハザード比は脳卒中全体が1.22(p=0.038)、脳梗塞が1.27(p=0.044)と有意に高かった(Stroke誌2012年8月号の掲載報告)。Kojima G, et al. Stroke. 2012; 43: 2163-2167.

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うつ病の寛解、5つの症状で予測可能:慶應義塾大学

 大うつ病性障害(MDD)の寛解予測について、特定の抑うつ症状の早期改善が指標として有用である可能性が、慶應義塾大学病院精神・神経科の櫻井 準氏らによる解析の結果、示された。これまで、MDDのアウトカムの予測に際して、個々の抑うつ症状が検討の材料となるのか明らかではなかった。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2013年7月22日号の掲載報告。 本検討では、特異的な抑うつ症状が、その後の臨床効果を予測できるかについて明らかにするため、各症状の経時的変化を評価することを目的とした。Sequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression(STAR*D)試験に最長14週間参加しシタロプラム(国内未承認)を服用していた非精神病性MDD外来患者2,874例のデータを解析した。各症状の経時的な変化の平均値を、寛解群と非寛解群について算出し評価した。さらに、2週時点で寛解を予測した抑うつ症状を、ロジスティック回帰分析法にて特定した。 主な結果は以下のとおり。・すべての抑うつ症状について、寛解群と非寛解群の経時的変化は有意に異なった。・両群においてQIDS-SR16(16-item Quick Inventory of Depressive Symptomatology, Self-Report)のすべての抑うつ症状が、2週間で大きく改善し、その後14週間は漸進的に改善が継続した。ただし、これは非寛解群における過眠症と体重変化については当てはまらなかった。・寛解と有意に関連していたのは、QIDS-SR16の次の5つの症状の早期の改善だった。関連が大きかった順に、悲しい気分(p<0.001)、陰性自己評価(p<0.001)、感情の鈍化(p=0.001)、活力低下(p=0.004)、落ち着きのなさ(p=0.021)であった。・本検討は、参加者をシタロプラム服用の非精神病性MDD外来患者に限定したものであった。また抑うつ症状について治療が開始された時点での評価が行われていなかった。・上記の点で解析データは限定的であったが、特定の中心的な抑うつ症状の早期改善が、その後の寛解の予測因子として有用である可能性が示された。関連医療ニュース 抗うつ薬による治療は適切に行われているのか?:京都大学 大うつ病性障害の若者へのSSRI、本当に投与すべきでないのか? 抑うつ症状改善に“手紙による介入”は効果的か?:京都大学で試験開始  担当者へのご意見箱はこちら

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統合失調症の治療に伴う性機能障害、カベルゴリンにより改善

 臨床的に安定している統合失調症患者に対するカベルゴリン(商品名:カバサールほか)の投与は、精神病理状態に悪影響を及ぼすことなく性機能を改善する可能性があることが、Christina S. Kalkavoura氏らによる検討の結果、示唆された。また本検討により、高プロラクチン血症の重症度に見合ったカベルゴリンの投与量も明らかになった。Experimental and Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2013年7月8日号の掲載報告。 抗精神病薬は、高プロラクチン血症を引き起こす可能性があり、それによりさまざまな程度の性機能障害と関連する。研究グループは、プロラクチン(PRL)の分泌は、主に視床下部のドパミン作動系により制御されていることを踏まえて、ドパミンアゴニストであるカベルゴリンの性機能障害への影響について調べる、6ヵ月間の並行群間前向き試験を実施した。対象者は、臨床的に安定している統合失調症(DSM-IV、AP194)で、高プロラクチン(PRL)血症(男性:PRL>20ng/mL、女性:PRL>25ng/mL)の患者80例であった。被験者は、PRLレベル(<50、50~99、>100ng/mL)に応じて、カベルゴリンを0.25mg/日(38例)、0.5mg/日(23例)または1mg/日(19例)を投与された。陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)により精神病理を、Arizona Sexual Experiences Scale(ASEX)により性機能を評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験者80例は、リスペリドン(33例)、ハロペリドール(17例)、アミスルプリド(11例、国内未発売)、リスペリドン持効性製剤(8例)の投与を受けていた。・カベルゴリン投与により、全患者でPRLレベルが減少した。ベースライン73.3(±46.8)ng/mLから3ヵ月後に42.0(±27.8)ng/mL、6ヵ月後に27.1(±20.4)ng/mLとなった(p<0.001)。・ASEXスコアは、ベースラインの19.1(±5.1)から3ヵ月後に17.6(±5.5)、6ヵ月後に15.0(±6.5)へと低下した(p<0.001)。・PANSSスコアは、3ヵ月および6ヵ月後ともに低下が認められた(6ヵ月後の対ベースラインp=0.001)。・PRLの減少について、患者群間における統計学的な差はなかった。関連医療ニュース 薬剤誘発性高プロラクチン血症への対処は? 抗精神病薬によるプロラクチン濃度上昇と関連する鉄欠乏状態 抗精神病薬誘発性の体重増加に「NRI+ベタヒスチン」

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トップアスリートは、うつ病の頻度が高い

 オーストラリア・ディーキン大学のHammond Thomas氏らは、競泳の精鋭選手(エリートアスリート)におけるうつ病の発生状況を評価した。その結果、上位25%にいる選手集団はうつ病の頻度が2倍高く、成績不良がうつ病と有意に関連していることを報告した。結果を踏まえて著者は、「エリートアスリートは、とくに成績不良がきっかけとなり、うつ状態に陥りやすい。選手のメンタルヘルスを考慮し、適切なタイミングで的確なサポートをすることが重要である」と結論している。Clinical Journal of Sport Medicine誌2013年7月号の掲載報告。 カナダのオリンピックおよび世界チャンピオンチームのエリートアスリートにおける、成績不良に関連するうつ病と自己報告によるうつ症状の発生状況を評価するため、横断研究を行った。対象は、カナダの大学に籍を置き、カナダ代表選手権に出場した水泳選手50例(男性28例、女性22例)であった。うつ病の診断は、事前に大まかな質問事項を決めておき、回答者の答えによってさらに詳細に質問を重ねる半構造化インタビューにて行った。うつ症状は、ベックうつ病調査票IIにより評価し、成績は、タイムとランキングの変動により評価した。これらは、予選試合が終了した後に実施した。 主な結果は以下のとおり。・試合前、選手の68%が大うつ病エピソードを呈し、その割合は男性に比べ女性選手のほうが多かった(p=0.01)。・試合後、選手の34%がうつ病と診断され、26%が自己報告による軽度~中等度のうつ症状を認めた。・上位25%にいる選手集団はうつ病の頻度が2倍高く、この集団では成績不良がうつ病と有意に関連していた。・エリートアスリートにおけるうつ病の頻度は、既報告よりも高いことが示された。関連医療ニュース アスリートが経験する脳震盪はうつ病リスクを増加させる 仕事のストレスが大きいほど、うつ病発症リスクは高い:獨協医科大学 統合失調症に「サッカー療法」その効果は?

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抗精神病薬の等価換算は正しく行われているのか

 統合失調症の治療において、異なる抗精神病薬の比較や切り替えを行う場合、等価換算が重要となる。この等価換算の方法は、比較試験のデザインでも重要となるが、現時点ではゴールドスタンダードと呼べる方法はないことを、英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMaxine X. Patel氏らが、システマティックレビューの結果、報告した。そのため、抗精神病薬の直接比較試験では過大評価も過小評価も起こりうる可能性があるとして、著者は「臨床試験では必ず、等価換算についてその方法を選択した理由を明記すべきである」と述べている。Schizophrenia Research誌オンライン版2013年7月8日号の掲載報告。 システマティックレビューは、抗精神病薬の等価換算の方法について入手可能であった方法を同定し、批判的に評価することを目的とした。文献検索は、Medline、PubMedおよび製薬会社に依頼した追加情報を用いて行われた。同定された方法は、科学的な厳密さ、その方法を支持するソースデータの質、臨床的適用性、有用性に関して特定の基準に照らし合わせて評価された。 主な結果は以下のとおり。・11論文が、抗精神病薬の等価換算の方法論について記載をしていた。・そのうち7論文が、クロルプロマジンの等価量、最大用量、常用量などの算出方法を紹介していた。それらは、固定および非固定用量の両方のデータからのエビデンスベースに基づいていた。・残る4論文は、専門家の知識と経験に基づいたコンセンサスメソッドについて記載していた。・同等性試験の大部分では、クロルプロマジンが一般的な比較薬として用いられていた。一方、コンセンサスメソッドではリスペリドンが最も多かった。・著者は、「抗精神病薬の等価用量を算出する方法の比較の結果、方法が異なると等価量が異なることが示された。また、それらの方法のいずれもゴールドスタンダードとみなすのに十分なほど強力なエビデンスはなかった」とまとめている。・そのため、抗精神病薬の直接比較の固定用量試験をデザインする際に、選択する方法によって、用量について過大および過小の両方のバイアスが生じる可能性があることを指摘し、「臨床試験報告では常に、等価換算についてその方法を選択した理由を明記すべきである」と述べている。関連医療ニュース 非定型抗精神病薬治療、忍容性の差を検証 アリピプラゾールvsその他の非定型抗精神病薬:システマティックレビュー 抗てんかん薬のプラセボ効果、東アジアと欧米で地域差

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うつ病性障害の若者へのSSRI、本当に投与すべきでないのか?

 大うつ病性障害(MDD)の小児と思春期の若者に対し、SSRIの処方は、リスクよりもベネフィットが大きく上回ることが、スペイン・ナバラ大学のCesar Soutullo氏らによるレビューの結果、示された。Current Psychiatry Reports誌2013年7月15日号の掲載報告。 小児と思春期若者のMDDは公衆衛生上の問題であり、エビデンスベースの治療が必要とされる。Soutullo氏らは、小児・思春期MDDの抗うつ薬(とくにSSRI)治療の安全性と有効性について、PubMed検索により入手可能であった研究報告および短報サマリーについてレビューを行った。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬の有効性について評価していた試験が、少なくとも19件存在した。15件は対プラセボ試験、4件は非SSRI(新しい世代の抗うつ薬)との比較試験であった。被験者は小児・思春期合わせて3,335例であった。・15試験についてSSRIの種類別にみると、フルオキセチン(国内未発売)5件、エスシタロプラム2件、セルトラリン2件、シタロプラム(国内未発売)2件、パロキセチン4件であった。・レビューの結果、小児・思春期MDDの治療において、フルオキセチンとエスシタロプラムは、いずれも安全であり、症状改善および寛解/反応率について有効であった。しかしながらその反応率は、非OCD不安障害(強迫性障害ではない不安障害)の治療に対するよりも低かった。・セルトラリンも、1試験(2試験からプールされた結果を解析した)において有効性が示された。・MDDの治療必要数(NNT)は10例であった。一方、自殺傾向の有害必要数(NNH)は112例であった。・研究方法についての主な限界は、プラセボ反応率が高率であること、試験場所が複数であること、患者がより若く、MDD重症度がより低いことであった。・治療は、再発防止のため、寛解後約1年は継続すべきであることが示された。・FDA承認のフルオキセチンとエスシタロプラムは、小児MDDの治療において安全性と有効性が認められた。セルトラリンも、有効性と安全性を支持するデータが一部において認められるが、FDAの承認は得られていなかった。・以上のことから著者は、「臨床医は、一部の患者においてごくわずかな自殺念慮の増加があることを知っておかなくてはならない。しかし、中等度~重度MDDにおけるSSRI使用のリスク対ベネフィットの比率は1対11.2と良好である」と結論している。関連医療ニュース 抗うつ薬による治療は適切に行われているのか?:京都大学 小児および思春期うつ病に対し三環系抗うつ薬の有用性は示されるか 抗うつ薬を使いこなす! 種類、性、年齢を考慮  担当者へのご意見箱はこちら

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統合失調症の陰性症状と関連する「努力コスト」の障害とは?

 統合失調症の陰性症状である動機づけ障害は、努力コスト(effort cost)の算出機能の障害と関連している可能性を、米国・メリーランド大学のJames M. Gold氏らが報告した。結果を踏まえて著者は「努力コストは、徐々に意欲を蝕む可能性があるようだ」と結論している。Biological Psychiatry誌2013年7月15日号の掲載報告。 意思決定の研究において、「努力コスト」が影響する反応では、選択的な反応が認められることが示されている。努力コストは、前帯状皮質やドパミンニューロンの皮質下ターゲットなどの分散処理神経回路を介して算出されていると考えられているという。研究グループは、統合失調症ではこれらシステムが障害されているというエビデンスに基づき、努力コストの算出機能が、統合失調症患者では障害されていること、およびその障害が陰性症状と関連しているかについて調べる、努力コストの意思決定評価を行った。統合失調症患者と人口統計学的に適合した対照被験者について、コンピュータタスクの試験を行った。連続30試験を提示し、20ボタンを押せば1ドルを、100ボタン以上を押せば3ドルから7ドルを得られる選択肢が与えられた。また、報酬レシートの確実性という試験で、確実(100%)または非確実(50%)な報酬が努力コストという発想に基づく意思決定に影響を与えたかどうかについても評価を行った。 主な結果は、以下のとおり。・患者群44例、対照群36例を対象とした。・患者群は対照群と比較し、報酬が100%確実であるという環境下において、高い努力コストの選択肢を選ぶことが少なかった。とくに支払対価が高い選択肢(6ドル、7ドルなど)で少なかった。・報酬が50%確実であるという環境下においても、同様の結果が得られた。・さらに、これらの努力コスト算出の障害は、陰性症状が高い患者において、最も大きかった。・ハロペリドールの投与量との関連はみられなかった。関連医療ニュース 統合失調症の陰性症状有病率、脳波や睡眠状態が関連か 陰性症状改善に!5-HT3拮抗薬トロピセトロンの効果は? 統合失調症では前頭葉の血流低下による認知障害が起きている:東京大学

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うつ病に対する重点的介入により高齢者の死亡率が低下する(コメンテーター:小山 恵子 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(118)より-

高齢者のうつ病は、高齢者の自殺と密接に関連するばかりでなく、さまざまな身体疾患や健康問題への影響が指摘されている。うつ病患者において、糖尿病や心血管疾患に対する治療やセルフケアへのアドヒアランスが不良になること、身体活動が低下することなどの要因が、死亡率を高めることにつながると考えられている。 本研究では、米国3ヵ所のプライマリ・ケア医療機関20施設を、通常治療群(10施設)と介入群(10施設)に無作為に割り付け、うつ病高齢患者に対する重点的ケアによる死亡リスク抑制効果について検証している。結果として、うつ病治療専門員(depression care manager; ソーシャルワーカー、看護師、心理士などからなる)が重点的に関わってプライマリ・ケア医の治療をサポートすることにより、うつ病患者の死亡率が低下することが示されている(フォローアップ期間中央値98ヵ月)。 わが国においても高い自殺率への危機意識から、かかりつけ医を対象としたうつ病対応力向上研修講座が行われたり、高齢者のうつを予防し、早期発見・早期治療に資することを目的としてうつ予防・支援マニュアルが作成されたりなど、さまざまな保健医療サービス資源を巻き込んだ取り組みが地域でなされるようになっている。こういった取り組みが、要介護・要支援高齢者の減少やひいては死亡率の減少につながっていくのかどうかについての検証はこれからだが、本論文はうつ病高齢者への重点的な取り組みを鼓舞する結果を示していると言えよう。 ただし、本研究では、一定の教育を受けたうつ病治療専門員が症状や薬の副作用、治療へのアドヒアランスなどについてモニタリングするだけではなく、標準的ガイドラインに沿って抑うつ症状の改善度に応じて抗うつ薬の増量や変更を検討するなど、かなり踏み込んだ役割を果たしていることに注意が必要である。医療体制が異なるわが国において、財源や人的資源とのバランスも考慮してどのような介入ができるのかは、今後の検討課題であろう。

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うつ病は、脳卒中発症リスクと顕著に関連

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のIffat Rahman氏らは、うつ病ならびに抗うつ薬使用が及ぼす心血管疾患(CVD)発症への影響について、脳卒中と冠動脈疾患に分けて検討を行った。その結果、抗うつ薬を使用していないうつ病患者でCVD発症リスクが高く、脳卒中との間に顕著な関連がみられることを報告した。European Journal of Epidemiology誌オンライン版2013年7月9日号の掲載報告。 うつ病がCVDの発症リスクを高めることは、多くの研究で示されている。抗うつ薬の使用とCVD発症との関連についても過去に検討されているが、その結果は相反するものであった。また、うつ病ならびに抗うつ薬の使用とCVD発症リスクとの関連は、脳卒中よりもむしろ冠動脈疾患との関連においてより広く研究されていた。それら先行研究を踏まえて、研究グループは、スウェーデン人高齢者双生児3万6,654例からなる集団ベースのコホート研究を実施した。追跡期間は最長4年間であった。治療内容、アウトカム、共変数に関する情報は、スウェーデン全国患者登録、スウェーデン処方薬登録およびスウェーデン双子登録から収集した。 主な結果は以下のとおり。・うつ病と、抗うつ薬使用は、両者ともCVD発症と関連していた。・抗うつ薬を使用していないうつ病患者のリスクが、最も高かった(ハザード比:1.48、CI:1.10~2.00)。・CVDの2つの主要なアウトカムである冠動脈疾患と虚血性脳卒中を別々に評価したところ、冠動脈疾患のない虚血性脳卒中において顕著な関連が認められた。・ベースライン時より10年以上前にうつ病と診断された場合に限った検討でも、うつ病と脳卒中との間に有意な関連が維持されていた。・本研究の結果は、うつ病がCVD発症に関連しうるリスクファクターであることを支持している。・さらに、CVDアウトカムに対するハザード比は抗うつ薬を使用していないうつ病患者で最も高いこと、うつ病との関連は脳卒中において著しいこと、冠動脈疾患との関連は薄いことが明らかとなった。関連医療ニュース 抗うつ薬による治療は適切に行われているのか?:京都大学 抗精神病薬の高用量投与で心血管イベントリスク上昇:横浜市立大 抑うつ症状改善に“手紙による介入”は効果的か?:京都大学で試験開始

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アリピプラゾール経口剤⇒注射剤への切り替え、その安全性は?

 米国・カリフォルニア大学のSteven G. Potkin氏らは、経口抗精神病薬から月1回投与の持続性注射剤アリピプラゾールに切り替える際の安全性と忍容性の評価を行った。その結果、経口抗精神病薬の中間安定期を経ることなく、月1回投与のアリピプラゾールに安全に切り替え可能であることが示されたことを報告した。Current Medical Research and Opinion誌オンライン版2013年7月3日号の掲載報告。 本試験は、経口抗精神病薬から月1回投与の持続性注射剤アリピプラゾールに切り替える際の安全性と忍容性を評価する目的で行われた。登録対象は、アリピプラゾール以外の経口非定型抗精神病薬治療を受けており、アリピプラゾールの忍容性が確認されている統合失調症患者とした。まず、スクリーニング期に、主治医の判断で固定用量の経口非定型抗精神病薬を14日間以上投与した。その後、服用中の経口非定型抗精神病薬を中/低用量に減量して14±1日間併用しつつ、月1回投与のアリピプラゾール(400 mg)による治療を開始した。28日間の治療期における安全性と忍容性を評価した。また、投与開始7、14、28日目に血漿中アリピプラゾール濃度を測定し、薬物動態を評価した。 主な結果は以下のとおり。・登録被験者は60例であった。・治療期間中、経口オランザピン(3例)、クエチアピン(28例)、リスペリドン(24例)、ジプラシドン(5例、国内未承認)の併用を継続した。これら併用経口抗精神病薬の投与期間は0~15日間とさまざまであった。・忍容性は良好であった。最も高頻度に発現した治療関連有害事象(TEAEs)は、注射部疼痛と歯痛であり(各々 4/60例、6.7%)、次いでジストニア、疲労、血清クレアチンホスホキナーゼ(CPK)上昇、不眠および不穏であった(各々 3/60例、5.0%)。・TEAEsの大半は、経口抗精神病薬併用後、最初の8日間に出現した。・臨床検査値または空腹時の代謝パラメータにおいて、臨床的に意味のあるベースラインからの変化は認められなかった。・精神症状は安定していた。・血中アリピプラゾール濃度は、経口アリピプラゾール連日投与のデータと同様であった。・月1回投与のアリピプラゾールをアリピプラゾール以外の経口抗精神病薬と併用した際の有害事象プロファイルは、既報告と一致するものであった。・前治療の非定型抗精神病薬の種類および投与期間にかかわらず有害事象は同様であり、経口抗精神病薬の中間安定期を経ることなく、月1回投与のアリピプラゾールに安全に切り替え可能であることが示された。・なお、試験デザイン(オープンラベル、短期間)と患者集団(男性、アフリカ系アメリカ人が圧倒的多数)の側面から、これら知見を一般化するには限界があった。関連医療ニュース 統合失調症へのアリピプラゾール持効性注射剤、経口剤との差は? どのタイミングで使用するのが効果的?統合失調症患者への持効性注射剤投与 青年期統合失調症の早期寛解にアリピプラゾールは有用か?

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寝室での夜間光曝露がうつ病に関連

 現代生活では夜間光曝露が増加しているが、夜間光曝露はサーカディアンリズム(生体の概日リズム)の変調に関連している。しかし、家庭における夜間光曝露がうつ病と関連しているかどうかは不明である。今回、奈良県立医科大学地域健康医学講座の大林 賢史氏らが高齢者を対象とした研究の横断解析を行った結果、一般の高齢者において自宅の夜間光曝露が抑うつ症状に有意に関連することが示唆され、寝室を夜間暗く保つことによってうつ病のリスクが低下する可能性が示された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2013年7月12日号に報告。 著者らは、高齢者516人(平均年齢72.8歳)において、夜間尿中メラトニン排泄量と夜間の寝室および日中光の曝露照度を測定した。抑うつ症状は老年期うつ尺度を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・夜間曝露照度中央値は0.8ルクスであった(四分位範囲:0.2~3.3)。・日中光曝露、不眠、高血圧、睡眠時間、身体活動を調整した多変量ロジスティック回帰モデルにより、うつ群(n=101)は非うつ群(n=415)と比べて、夜間光曝露(平均照度5ルクス以上)の割合が有意に高いことが認められた(調整オッズ比[OR]:1.89、95%信頼区間[CI]:1.10~3.25、p=0.02)。・同様に、夜間光曝露のもう1つのパラメータ(10ルクス以上の時間:30分以上)の割合も、非うつ群に比べてうつ群で有意に高いことが認められた(調整OR:1.71、95%CI:1.01~2.89、p=0.046)。・一方、尿中メラトニン排泄量と抑うつ症状の間に有意な関連は認められなかった。

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抑うつ症状改善に“手紙による介入”は効果的か?:京都大学で試験開始

 「高齢うつ病患者に対し手紙を出すという介入で、抑うつ状態を改善できるのか」というプラグマティックな無作為化試験が、京都大学東南アジア研究所フィールド医学の今井必生氏、同教授・松林公蔵氏らにより開始された。「手紙による介入」は1976年に米国で、大うつ病退院患者の自殺予防を目的に初めて行われたが、地域在住の抑うつ状態の高齢者への適用は本試験が初めてだという。Trials誌オンライン版2013年7月9日号で、その試験概要が報告された。 米国で行われた手紙による介入試験は、5年間で24通の手紙を出したというもので、介入後2年間の自殺率が有意に減少し、全体では13年間にわたり介入群の自殺率が低かったことが認められたという。同様の手法を用いた試験はその後、イスラエル、オーストラリアでも行われ(目的は過量服薬または自傷行為防止、計3試験)、介入群に有意な効果が認められたことが報告されていた。 今回、抑うつ状態の高齢者に同介入を試みることについて、研究グループは「高齢者における抑うつはQOLを低下させ、罹病率や死亡率、さらに医療費を増大している。この疾患負荷への対策は、医学的政策と社会的政策が相まったものでなければならないが、既存の研究のほとんどが長期にわたる精神療法をベースとしたもので、なおかつそれらは地域での応用には不適当なものである」ことが背景にあると述べている。手紙による介入に着目した理由としては、「人的および予算的コストがほとんどかからない」ことを挙げている。そして、「本研究で、手紙による介入が有効であることが実証されれば、地域での介入のマイルストーンになるだろう」としている。 本試験の主な概要は以下のとおり。・試験デザインは、プラグマティック非盲検並行群間比較無作為化試験である。・試験地は、高齢化が進んだ地方の町(四国の中央部、人口4,407人、65歳以上高齢者割合38.8%、農業と林業が主産業)とする。・被験者適格条件は、「地域在住の高齢者(65歳以上)」「社会的支援が限られている(食事を一人でとっている)」「うつ症状が認められる(GDS-15得点が4点以上)」とする。・介入の手紙の送付は、月1回、8ヵ月間行われた。送られる手紙は、手書きのメッセージ(被験者の返信があればそれに答えるなど、社会的関係性や自尊心を高める内容)と、時候だよりのプリント(京都からの季節の挨拶やイベントニュースなどを知らせる内容)から構成される。また、返信用封筒(利便性を考慮して宛名、切手貼付をしておくが、返信は任意)も同送する。・主要アウトカムは、GDSスコアの変化で、毎年1回実施される住民健診の際に測定する。・副次アウトカムは、視覚アナログスケールで測定したQOL、自己評価基本ADL、自己評価進行ADLとする。・その他、受容性の検証として被験者は介入を有効と感じたか、ならびに記憶している受け取った手紙の回数、返信した回数も調べる。・被験者数は、70%脱落を想定して180例登録を予定している。関連医療ニュース 抗うつ薬による治療は適切に行われているのか?:京都大学 うつ病治療に「チューインガム」が良い!? 抑うつ症状は、がん罹患有無に関係なく高齢者の死亡に関連

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統合失調症、双極性障害の家族特性を検証!

 米国・ロザリンドフランクリン医科学大学S. Kristian Hill氏らは、統合失調症と双極性障害の神経心理学的機能障害の特徴について調べた。その結果、両疾患ともに強い認知障害が認められ、それは家族性であること、一親等の認知機能障害は、統合失調症よりも双極性障害においてより緊密にパーソナリティ障害と関連していることなどを報告した。American Journal of Psychiatry誌オンライン版2013年6月17日号の掲載報告。 家族性の神経心理学的機能障害は統合失調症では立証されているが、その他の精神障害においては明らかにされていない。研究グループは、Bipolar and Schizophrenia Network on Intermediate Phenotypes(B-SNIP)の登録者データから、次の4つについて検討した。(1)統合失調症と双極性障害における認知障害の比較、(2)精神病性障害の認知機能障害連続モデルの検証、(3)精神病性障害における認知障害の家族性についての報告、(4)非精神病の家族(クラスターA人格特性を有する人と有さない人)における認知障害の評価であった。 分析の対象は、統合失調症(293例)、双極性障害(227例)、統合失調感情障害(躁型:110例、うつ型:55例)、それら患者の一親等家族(各316例、259例、133例、64例)、および健常対照被験者(295例)であった。全員が統合失調症認知評価尺度(BACS)による神経心理学的評価を受けた。主な結果は以下のとおり。・精神病の家系的発端者の認知障害は、健常対照と比較して、双極性障害(z=-0.77)、統合失調感情障害(躁型:z=-1.08、うつ型:z=-1.25)、統合失調症(z=-1.42)の順で強かった。・BACSサブテストのプロファイルは、疾患全体で同等性を示した。・障害の家族性は、統合失調症と双極性障害で有意であり、両疾患で匹敵していた。・とくに興味深かったのは、クラスターA人格特性を有する家系的発端者の親族では、発端者の疾患にかかわらず神経心理学的障害が同程度であることであった。・統合失調症かつクラスターA人格特性を有さない家系的発端者の非精神病家族において、有意な認知障害がみられた。一方、家系的発端者が双極性障害で、かつ人格特性を有さない場合、その家族で認知障害は示されなかった。関連医療ニュース 統合失調症では前頭葉の血流低下による認知障害が起きている:東京大学 ベンゾジアゼピン系薬物による認知障害、α1GABAA受容体活性が関与の可能性 治療抵抗性の双極性障害、認知機能への影響は?

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青年期統合失調症の早期寛解にアリピプラゾールは有用か?

 青年期の統合失調症に対するアリピプラゾール(商品名:エビリファイ)の症状改善は、服用開始後早期にみられ、寛解を予測する時期は服用開始3週時点が最も適切であることが、米国・ザッカーヒルサイド病院のChristoph U. Correll氏らによる無作為化二重盲検プラセボ対照試験の事後解析の結果、明らかにされた。Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry誌2013年7月号(オンライン版2013年6月5日号)の掲載報告。 成人の慢性統合失調症において、症状改善の大半は抗精神病薬服用後2、3週に認められ、2週時点で無反応の場合は、その後の無反応が予測される。研究グループは、そのようなデータ(抗精神病薬に対する反応の軌跡と、早期の抗精神病薬効果から最終的なアウトカムが予測されることについて)が、いまだ得られていない青年期の統合失調症について調べることを目的に、6週間にわたる無作為化二重盲検プラセボ対照試験の事後解析を行った。被験者は、13~17歳の統合失調症患者(アリピプラゾール群196例、プラセボ群98例)であった。アリピプラゾール治療により重大症状の改善が服用開始直後の2、3週間で認められるのか、および早期反応(ER:PANSS総スコア改善≧20%)vs.早期無反応(ENR:同改善<20%)の臨床アウトカムの予測について評価した。評価は、服用開始2週時点(ER2/ENR2)と3週時点(ER3/ENR3)について行い、また最終的な反応はPANSS総スコア改善≧40%とした。 主な結果は以下のとおり。・2週時点までに50%近いPANSS総スコア改善の達成が認められた。3週時点までには最大75%のPANSS総スコア改善達成が認められた。・ER2/ER3群は、ENR群よりも、PANSS総スコア、PANSSの陽性・陰性サブスケールスコア、至適な機能的アウトカムの改善が有意に大きかった。・概してER3のほうがER2よりも、アウトカム予測についての感度、特異度、陽性・陰性適中率が良好であった。・6週時点の寛解達成は、ER2群はENR2群よりも8.8倍(95%CI:4.0~19.4)、ER3群はENR3群よりも8.6倍(同:4.5~16.6)有意に多かった(p<0.0001)。有害事象の発生は同程度であった。・以上のように、成人の慢性統合失調症と同様に、早期の青年期統合失調症においても、アリピプラゾール治療開始早期で大半の症状が改善された。また3週時点の改善が、臨床アウトカムを予測するのに最も適切であった。・これらの結果を踏まえて著者は、「試験を延長して実施する必要はあるが、今回の試験の結果は、臨床意思決定に活かしてよいであろう」と結論している。関連医療ニュース アリピプラゾールと気分安定薬の併用、双極性障害患者の体重増加はどの程度? 早期統合失調症、認知機能にGABA作動性抑制が関連 小児双極I型障害に対するアリピプラゾールの効果は?

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統合失調症では前頭葉の血流低下による認知障害が起きている:東京大学

 前頭前野は、ワーキングメモリのような基本的な認知機能に関連する。一方で吻側野は、認知機能と現実社会の活動性とを統合する機能を有する。東京大学の小池 進介氏らは、統合失調症患者における、ワーキングメモリタスク中の血流変化を測定し検討した。その結果、統合失調症では前頭葉の血流低下による認知障害が示唆された。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2013年6月3日号の掲載報告。 東京大学の小池 進介氏らは、統合失調症患者と健常対照者について、ワーキングメモリタスク中の血流変化を測定し比較検討した。その結果、両群では対照的な変化がみられ、健常対照者では腹外側前頭前野(VLPFC)の両側性に有意な血流増大がみられたが、統合失調症患者では認められなかった。また、健常対照者では背外側前頭前野(DLPFC)や前頭極皮質(FpC)の血流は有意に低下するが、統合失調症患者の同分野では広範囲に血流増大が認められたことを報告した。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2013年6月3日号の掲載報告。 DLPFCやVLPFCを含む前頭前野は、ワーキングメモリのような基本的な認知機能に関連する。一方でFpCのような吻側野は、認知機能と現実社会の活動性とを統合する機能を有する。機能的MRIによる先行研究において、認知負荷の変化に対するDLPFC活性パターンが、統合失調症患者と健常対照者では、異なることが示されていた。しかし、前頭前野と吻側野との関連について、非限定的条件下における評価はなされていなかったという。 研究グループは、統合失調症患者と健常対象者について、異なる認知負荷を与えるNバック課題ワーキングメモリタスク中の血流変化を、多チャンネル近赤外線分光法(NIRS)を用いて測定し、両群の脳内活性について評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は、統合失調症患者26例、健常対照者(年齢、性、プレ発症知能で適合)26例であった。・健常対照者は、両側性VLPFCでは有意なタスク関連の血流増大を示し、DLPFCでは有意なタスク関連の血流低下が示された。認知負荷のタスクがより大きくなるほど、より強いシグナル変化が認められた。・対照的に統合失調症患者は、両側性DLPFCとFpCを含む広範囲の吻側野において血流増大が認められた。しかし、認知負荷増大に関連した血流の低下および増大は、いずれもみられなかった。・今回の多チャンネルNIRS研究の結果、統合失調症患者では認知負荷と関連した血流増大はみられなかったことが示された。すなわち統合失調症では、前頭葉の血流低下による認知障害が示唆された。・また、統合失調症患者では、両側性DLPFCとFpCというより広範な前頭前野における血流増大が認められた。それは前頭葉の血流増大を補完的に図る反応であることが示唆された。関連医療ニュース 早期統合失調症、認知機能にGABA作動性抑制が関連 治療抵抗性の双極性障害、認知機能への影響は? アルツハイマー病の進行抑制に関わる脳内分子を特定

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抑うつ症状は、がん罹患有無に関係なく高齢者の死亡に関連

 ノルウェー・ベルゲン大学のJorunn Drageset氏らは、介護施設に入居中の認知機能低下を認めない高齢者を対象に、がんの有無別に不安と抑うつ症状の死亡への影響を検討した。その結果、がんの有無にかかわらず、抑うつ症状は認知機能低下を認めない介護施設入居者の死亡率に関連していることを報告した。Cancer Nursing誌2013年7-8月号の掲載報告。 介護施設に入居中の認知機能低下を認めない高齢者において、がんの有無別に不安と抑うつ症状の死亡への影響を検討した研究は少ない。本研究は、不安または抑うつが生存率と関連しており、がんに罹患していない者に比べがんに罹患している者に対して、より大きな影響を及ぼすのではないかという仮定の下で実施された。介護施設30施設の、認知機能低下を認めない(Clinical Dementia Rating scale score≦0.5)高齢入居者コホート227例(がん罹患60例、がん非罹患167例)について、2004~2005年から2010年まで追跡調査を行った。データは面談により収集した。不安および抑うつは、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)サブスケールを用いて評価し、診療録を基に社会人口統計学的背景ならびに既往歴を特定した。 主な結果は以下のとおり。・5年後の全生存率は、がん罹患者が17%、がん非罹患者が22%であった。・抑うつは、がん罹患と独立して生存不良と有意に関連していた。・がんに罹患していて不安症状のある者(サブスコア最低値8)は、不安症状のない者に比べ生存率が不良であったが(p=0.02)、この傾向はがん非罹患者では認められなかった。・以上のことから、がんの有無にかかわらず、抑うつ症状は認知機能低下を認めない介護施設入居者の死亡率に関連していることが明らかになった。また、がんに罹患しており不安症状を有する場合は、生存期間がより短くなることが予測された。関連医療ニュース 皮膚がんとの関連研究で判明!アルツハイマー病に特異的な神経保護作用 がん患者のせん妄治療に有効な抗精神病薬は… 高齢者介護ロボット、認知症対応でも効果を発揮できる?

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リチウムが気分障害患者の自殺リスクを低減/BMJ

 リチウムは気分障害患者における自殺リスクの抑制に有効な治療法であることが、イタリア・ベローナ大学のAndrea Cipriani氏らの検討で示された。精神疾患の中でも、単極性障害(うつ病エピソード)および双極性障害(躁病もしくは軽躁病で、通常、中等度のうつ病エピソードを伴う)からなる気分障害は自殺リスクが最も高いとされる。自殺予防戦略における薬物療法の役割は相対的に小さいが、抗精神病薬の効果は過小評価されている可能性があるという。気分障害患者におけるリチウムの自殺や自傷の予防効果は、これまで知られていなかった。BMJ誌オンライン版2013年6月27日号掲載の報告。自殺、自傷行為の予防効果をメタ解析で評価 研究グループは、単極性および双極性の気分障害患者におけるリチウムによる自殺、自傷行為の予防効果を評価するために、系統的なレビューとメタ解析を行った。 文献の収集には、医学文献データベース、ウェブベースの臨床試験レジストリー、主要教科書、製薬会社のウェブサイトなどを利用し、重要論文の著者や専門家にも問い合わせた。対象は、2013年1月までに発表された、気分障害の長期治療においてリチウムとプラセボまたは実薬を比較した無作為化対照比較試験とした。 主要評価項目は、自殺完遂、意図的自傷行為の実行、全死因死亡であった。全般的に実薬より良好な傾向も 1968~2013年までに発表された48件の無作為化対照比較試験の論文から抽出された6,674例が解析の対象となった。対照は、プラセボ(24件)のほか、アミトリプチリン、カルバマゼピン、バルプロ酸など14の実薬(24件)であった。フォローアップ期間中央値は19.1ヵ月。 プラセボ対照試験の解析では、自殺者数はリチウム群が244例中0例と、プラセボ群の241例中6例に比べ有意に低下した(Peto法によるオッズ比[OR]:0.13、95%信頼区間[CI]:0.03~0.66、p=0.01)。 全死因死亡数もリチウム群が392例中5例と、プラセボ群の390例中14例よりも有意に良好であった(OR:0.38、95%CI:0.15~0.95、p=0.04)が、自傷行為者数はそれぞれ623例中10例、608例中16例で、リチウムによる明確な予防効果は認めなかった(同:0.60、0.27~1.32、p=0.21)。 単極性障害に限定した解析では、自殺者数はリチウム群が143例中0例、プラセボ群は137例中5例(OR:0.13、95%CI:0.02~0.76、p=0.02)、全死因死亡数はそれぞれ291例中4例、286例中12例(同:0.36、0.13~0.98、p=0.04)であり、いずれもリチウム群で有意に良好であった。 実薬対照試験の解析では、全般的にリチウム群は他の実薬よりも有用性が良好な傾向が認められたが、リチウムが統計学的に有意に優れたのはカルバマゼピンと比較した試験の自傷行為数のみであった(139例中0例 vs 146例中5例、OR:0.14、95%CI:0.02~0.83、p=0.03)。 著者は、「リチウムは気分障害患者における自殺リスクの低減に有効な治療法である」と結論づけ、「リチウムは、気分障害の再発を抑制することで抗自殺作用を発揮する可能性があるが、攻撃性や衝動性を低下させるとのエビデンスがあることから、抗自殺作用を誘導する他の付加的メカニズムも考慮すべき」と指摘している。

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統合失調症患者へのセロトニン作動薬のアドオン、臨床効果と認知機能を増大

 抗精神病薬治療中の統合失調症患者に対し、選択的セロトニン5-HT6受容体拮抗薬の追加併用療法は、抗精神病効果および一部の認知機能(注意力)を増大することが、ロシア医科学アカデミー国立精神保健センターのMorozova MA氏らによるパイロット試験の結果、報告された。CNS Spectrums誌オンライン版2013年6月17日号の掲載報告。 統合失調症患者へのアドオン治療として、セロトニン作動薬は有望視されている。研究グループは、抗精神病薬治療により症状が安定している統合失調症患者において、選択的セロトニン5-HT6受容体拮抗薬のAVN-211(CD-008-0173)が、臨床的および認知機能的効果を増大するかを明らかにすることを目的に、無作為化二重盲検プラセボ対照試験のパイロット試験を4週(4r-week)にわたって行った。治療効果は、臨床的評価スケールと注意力テストにて測定した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は47例(試験薬追加併用群21例、プラセボ併用群26例)であり、そのうち併用群17例、プラセボ群25例が試験を完了した。・陽性・陰性症状スケール(PANSS)について、ベースラインでは両群に差はみられなかったが、試験終了時点では陽性サブスケールスコアについて有意差が認められ(p=0.058)、試験薬併用群の症状がより改善していた。・PANSS陽性サブスコア(p=0.0068)、臨床上の医師の印象による重症度(CGI-S)スコア(p=0.048)は、治療群のみにおいて有意な変化がみられた。・プラセボ群だけでみられた有意な変化は、カルガリー抑うつ評価スケール(CDRS)総スコアであった。・注意力テストの結果は試験終了時においても両群間の差を認めなかった。ただし、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)のサブテストVIIIの結果は例外であり、試験薬群において有意に変化が大きかった(p=0.02)。・試験薬併用群内のみにおいて、選択的および持続的注意力の有意な変化が認められた。標準注意検査法(CAT)において、総正解率(p=0.0038)、反応時間(p=0.058)で有意な変化がみられた。関連医療ニュース 精神科薬物治療で注目される5-HT1A受容体 統合失調症患者に対するフルボキサミン併用療法は有用か?:藤田保健衛生大学 抗精神病薬へのNSAIDs追加投与、ベネフィットはあるのか?

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