循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:65

CVD2次予防でのアスピリン、低所得国では不十分/JAMA

 アスピリンは、アテローム動脈硬化性心血管疾患(CVD)のイベントを減少させ、CVD既往例の死亡率を改善する効果的で安価な選択肢とされる。米国・セントルイス・ワシントン大学のSang Gune K. Yoo氏らは、CVDの2次予防においてアスピリンは世界的に十分に使用されておらず、とくに低所得国での使用が少ないことを明らかにした。研究の成果は、JAMA誌2023年8月22・29日合併号で報告された。  研究グループは、51の低・中・高所得国で2013~20年に実施された全国的な健康調査から収集した個々の参加者のデータを用いて横断研究を行った(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成を受けた)。

心血管疾患や死亡のリスクの低さと関連のある6種類の食品

 世界80カ国の人々の食事関連データを解析した研究から、野菜、果物、魚などの摂取量が多いほど、全死亡(あらゆる原因による死亡)や心筋梗塞・脳卒中などの心血管疾患(CVD)発症のリスクが低いことが明らかになった。マクマスター大学(カナダ)のSalim Yusuf氏らの研究によるもので、詳細は「European Heart Journal」に7月6日掲載された。  この研究ではまず、21カ国の35~70歳の一般住民16万6,762人が参加し現在も進行中の大規模疫学研究「PURE研究」のデータを用いて、新たな食事スコアを開発。そのスコアを、5件の疫学研究(80カ国、24万4,597人)に適用し、全死亡およびCVDリスクとの関連が検討された。なお、論文の上席著者であるYusuf氏によると、「これまでにも地中海食スコアなどを用いた同様の検討が行われているが、それらのスコアは主に欧米の高所得国のデータを基に作られたものである」という。それに対してPURE研究は、「低・中・高所得国が含まれていることが特徴だ」としている。

ASCVDリスク評価、タンパク質リスクスコアが有望/JAMA

 アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスク評価において、プロテオミクスに基づくタンパク質リスクスコア(protein risk score)は、1次および2次予防集団の双方で優れた予測能を示し、1次予防集団で臨床的リスク因子にタンパク質リスクスコアと多遺伝子リスクスコアを加えると、統計学的に有意ではあるもののわずかな改善が得られたことが、アイスランド・deCODE genetics/AmgenのHannes Helgason氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年8月22・29日合併号に掲載された。

病院機能評価「医療安全」への対策強化で「カルテレビュー」導入へ

 最近では紙カルテ(診療録)から電子カルテへの普及が進み、病院のみならずクリニックでの導入も多くみられるようになった。また、国が推進するマイナンバーカードによる健康保険証には、個人のカルテ情報の搭載も予定され、いつでも、どこでも自分のカルテが読める時代が期待されている。そんなカルテは、医療事故などが発生した場合、真っ先に調査が行われる患者や患者遺族、医療機関などにとって事故と結果の因果関係を証明する大切な資料となるが、カルテの中身の記載については個々の医師の判断に任されている。

若~中年の急性心筋梗塞、退院後1年の再入院リスクに男女差/JACC

 急性心筋梗塞(AMI)で入院した若年成人期~中年期の女性患者は、男性患者よりも退院後1年間の再入院リスクが高いという研究結果が、「Journal of the American College of Cardiology」5月9日号に掲載された論文で明らかにされた。  米イェール大学の澤野充明氏らは、AMIで入院した18~55歳の患者を対象に、退院後1年間に発生した再入院の原因と時期を男女間で比較する研究を実施した。米国の病院103件のAMI患者が登録されたVIRGO(Variation in Recovery: Role of Gender on Outcomes of Young AMI Patients)研究の参加者のうち、本研究の組み入れ基準を満たした2,979例(女性2,007例、男性972例、平均年齢47.1±6.2歳)のデータを用いた。  全ての要因による再入院および原因別の再入院(「冠動脈に関連する有害事象」、「冠動脈疾患を除く心疾患または脳卒中」、「心臓とは無関係の有害事象」、または「死亡」による再入院)の発生率を、1,000人年当たりの発生率(IR)として算出して男女間で比較した。続いて、死亡(競合リスク)を考慮したFine and Grayモデルを用いて、再入院に関する男女間の部分分布ハザード 比(SHR)を求めた。

DOAC内服AF患者の出血リスク、DOACスコアで回避可能か/ESC2023

 心房細動患者における出血リスクの評価には、HAS-BLEDスコアが多く用いられているが、このスコアはワルファリンを用いる患者を対象として開発されたものであり、その性能には限界がある。そこで、米国・ハーバード大学医学大学院のRahul Aggarwal氏らは直接経口抗凝固薬(DOAC)による出血リスクを予測する「DOACスコア」を開発・検証した。その結果、大出血リスクの判別能はDOACスコアがHAS-BLEDスコアよりも優れていた。本研究結果は、オランダ・アムステルダムで2023年8月25日~28日に開催されたEuropean Society of Cardiology 2023(ESC2023、欧州心臓病学会)で発表され、Circulation誌オンライン版2023年8月25日号に同時掲載された。

スタチン開始後の効果、高齢者では大きい!?

 高齢になってからスタチンの使用を開始した患者では、若いときにスタチンの使用を開始した患者と比べて、同薬により得られるLDLコレステロール(LDL-C)の低減効果が大きい可能性のあることが、約8万3,000人のデンマーク人患者のデータ解析から明らかになった。デンマーク国立血清研究所のMarie Lund氏らによる研究で、詳細は、「Annals of Internal Medicine」に8月1日掲載された。Lund氏は、「スタチンによる治療が必要な高齢患者は、同薬による副作用のリスクを最小限に抑えるために、低強度のスタチンから開始すると良いのではないか」との見解を示している。  スタチンは安全な薬と考えられているが、一部の人に筋肉痛や血糖値の上昇などの問題を引き起こすことがある。副作用が生じる可能性は通常、スタチンの強度が高まるほど上昇し、また、高齢者では若い人よりも副作用が起きやすい。そのため、高齢患者にとっては、低強度のスタチンで治療を開始することが「好ましい選択肢」になり得るとLund氏は言う。ただし、その際には、高齢者の健康状態や、その後の心筋梗塞や脳卒中のリスク低減の必要性といった問題を考慮する必要があることも付け加えている。

RNA干渉が切り開く、画期的な高血圧治療薬―zilebesiranの挑戦―(解説:石上友章氏)

核酸・DNAを鋳型にして、メッセンジャーRNAが転写される。4種類の塩基の組み合わせを暗号にして、20種類のアミノ酸に翻訳されることで、タンパク質の合成が行われる。人体は、さまざまなタンパク質から構成されており、染色体DNAは、人体の設計図である。RNA干渉(RNA interference)とは、2本鎖RNAが、いくつかのタンパク質と複合体を作り、相同な塩基配列を持つメッセンジャーRNAと特異的に対合し、切断することによって、遺伝子の発現を抑制する現象である。RNA干渉は、遺伝子の機能を人為的に抑制することに応用できるので、遺伝子機能解析のツールとして、実験室ではおなじみの技術であった。

がん患者の血栓症再発、エドキサバン12ヵ月投与が有効(ONCO DVT)/ESC2023

 京都大学の山下 侑吾氏らは、下腿限局型静脈血栓症(DVT)を有するがん患者に対してエドキサバンによる治療を行った場合、症候性の静脈血栓塞栓症(VTE)の再発またはVTE関連死の複合エンドポイントに関して、12ヵ月投与のほうが3ヵ月投与よりも優れていたことを明らかにした。本結果はオランダ・アムステルダムで8月25~28日に開催されたEuropean Society of Cardiology(ESC、欧州心臓学会)のHot Line Sessionで報告され、Circulation誌オンライン版2023年8月28日号に同時掲載された。

セファゾリンやダビガトラン、重大な副作用追加などで添付文書改訂/厚労省

 厚生労働省は8月29日、セファゾリンやダビガトランなど6つの医薬品の添付文書について、使用上の注意改訂指示を発出した。  セファゾリンNa水和物(商品名:セファメジンα筋注用0.25g ほか)とセファゾリンNa(同:セファゾリンNa点滴静注用1gバッグ「オーツカ」 ほか)において、アレルギー反応に伴う急性冠症候群の国内症例(7例[死亡0例])を評価した結果、本剤とアレルギー反応に伴う急性冠症候群との因果関係の否定できない国内症例が集積したことから、副作用の項に『重大な副作用』を新設した。