循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:59

心筋を微小組織にして移植、iPS細胞による新たな心不全治療とは/日本循環器学会

 再生医療において、ヒト人工多能性幹細胞由来心筋細胞 (hiPSC-CM)を用いた心臓修復の臨床応用は、心筋細胞(CM)の生着不良や移植後の不整脈に苛まれ難航してきた。だが今回、第88回日本循環器学会学術集会『iPS由来再生心筋細胞移植治験の初期成績から見た虚血性重症心不全治療へのインパクト』において、福田 恵一氏(Heartseed社/慶應義塾大学 名誉教授)らは、他家iPS細胞由来の純化精製心筋細胞微小組織(hiPSC-CS)を開発し、心筋層に直接注入することで、梗塞部位周辺の心筋の再生に成功したことを報告した。なお、本発表は非臨床試験および現在進行中の第I/II相LAPiS試験の中間報告である。

論文執筆における生成AIの利用範囲はどこまでか?(解説:折笠秀樹氏)

ChatGPTなどの生成AI(GAIと呼ぶ)に関する、指針に関する調査報告です。ChatGPTは2022年に生まれ、急拡大したのは周知のとおりです。英文校正や翻訳作業の利用にとどまらず、論文執筆や図表作成にも使われ始めたようです。こうした生成AIの利用に関する指針が出てきたのは見聞きしていましたが、それに関する大々的な調査結果です。当然ながら、著名な雑誌ほど投稿規定などにいち早く盛り込んでいました。トップジャーナルではすでに87%に及んでいますが、全体で見るとまだ24%しかないようです。生成AIを共著者とすることは、95%以上で禁止しているようです。しかし、生成AIを利用すること自体を禁止しているわけではありません。その範囲はどこまでにすべきかについて、雑誌ごとにばらばらのようです。コンセンサスが得られていないということなのでしょう。

D2B time短縮で心原性ショック伴うSTEMIの院内死亡率が減少(J-PCIレジストリ)/日本循環器学会

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた心原性ショックを伴うST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者における、Door-to-Balloon(D2B)timeと院内死亡率との関連について、国内の大規模なレジストリである日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)の「J-PCIレジストリ」を用いた解析が行われた。その結果、D2B timeの10分の延長につき、院内死亡率が7%ずつ増加することが示され、D2B timeを短縮することは院内死亡率の減少につながる可能性が示唆された。3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1セッションにて、千葉大学医学部附属病院循環器内科の齋藤 佑一氏が発表した。  STEMIの治療成績・予後の決定因子として、発症から冠動脈再灌流までの時間が重要であるものの、その発症時間を正確に同定することが難しいことから、指標として用いられる機会は少ない。そのため、入院から再灌流までの時間であるD2B timeが、治療の迅速性を表す実用的な指標として用いられている。これまでに、心原性ショックを合併したSTEMIにおけるD2B timeに関して検証した報告は乏しい。

心臓病患者の “ニーズ見える化”へ、クラウドファンディング開始/日本循環器協会

 日本循環器協会は、心臓病に関わる患者・家族、医療者、企業を繋ぐホームページ作成を実現させるため、3月12日にクラウドファンディング『心臓病患者さんの声を届けたい 心臓病に関わる方々を繋ぐHP作成へ』を開始した。本協会は患者と医療者が持つ双方のニーズの“見える化”を目指すことを使命とし、この取り組みを始めた。 “心臓病は複雑かつ、年齢層もさまざま。関係者も多岐にわたり、患者の悩みやニーズが共有されにくい”という循環器領域の現状を踏まえ、本協会は「#患者さんのニーズ見える化プロジェクト」の第1弾として、心臓病患者の声を集めるためのホームページ作成に動き出した。今回はこのホームページを通じて患者ニーズを集め、心臓病のより良いケアを探求する医療者や企業に情報を届けるのが狙いだ。なお、本プロジェクトは All or Nothing 方式を採用しているため、第1目標金額に満たない場合、支援金は全額、支援者へ返金となる。

悪性褐色細胞腫の治療に、スニチニブが有望/Lancet

 本試験(FIRSTMAPPP試験)以前に、転移のある褐色細胞腫および傍神経節腫(パラガングリオーマ)患者を対象とした無作為化対照比較試験は行われていないという。フランス・パリ・サクレー大学のEric Baudin氏らが、この腫瘍の治療において、プラセボと比較してスニチニブ(VEGFR、PDGFR、RETを標的とする受容体チロシンキナーゼ阻害薬)は、1年無増悪生存率を有意に改善し安全性に差はないことを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年2月22日号で報告された。  FIRSTMAPPP試験は、欧州4ヵ国(フランス、ドイツ、イタリア、オランダ)の14施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第II相試験であり、2011年12月~2019年1月に、年齢18歳以上、散発性または遺伝性の転移を有する進行性褐色細胞腫およびパラガングリオーマの患者78例(年齢中央値54歳、男性59%)を登録した(フランス保健省などの助成を受けた)。

低リスク高血圧患者、「血圧の下げすぎ」による心血管リスクは

 高リスクの高血圧患者において、治療中の収縮期血圧(SBP)が120mmHg未満および拡張期血圧(DBP)が70mmHg未満の場合は心血管リスクが増加することが報告され、欧州心臓病学会/欧州高血圧学会による高血圧治療ガイドライン2018年版では高血圧患者全般に対してSBPを120mmHg以上に維持することを提案している。しかし、低リスク患者におけるデータは十分ではない。京都大学の森 雄一郎氏らの研究グループは、全国健康保険協会のデータベースを用いたコホート研究を実施。結果をHypertension Research誌オンライン版2024年2月14日号に報告した。  本研究は、3,000万人の生産年齢人口をカバーする全国健康保険協会のレセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて行われた。10年間の心血管リスクが10%未満で降圧薬を継続的に使用している患者が特定され、治療中のSBPとDBPによってカテゴリー分類された。主要アウトカムは心筋梗塞、脳卒中、心不全入院、末梢動脈疾患の複合であった。

漢方薬による偽アルドステロン症、高血圧や認知症と関連

 漢方薬は日本で1500年以上にわたり伝統的に用いられているが、使用することにより「偽アルドステロン症」などの副作用が生じることがある。今回、日本のデータベースを用いて漢方薬の使用と副作用報告に関する調査が行われ、偽アルドステロン症と高血圧や認知症との関連が明らかとなった。また、女性、70歳以上などとの関連も見られたという。福島県立医科大学会津医療センター漢方医学講座の畝田一司氏らによる研究であり、詳細は「PLOS ONE」に1月2日掲載された。  偽アルドステロン症は、血圧を上昇させるホルモン(アルドステロン)が増加していないにもかかわらず、高血圧、むくみ、低カリウムなどの症状が現れる状態。「甘草(カンゾウ)」という生薬には抗炎症作用や肝機能に対する有益な作用があるが、その主成分であるグリチルリチンが、偽アルドステロン症の原因と考えられている。現在、保険が適用される漢方薬は148種類あり、そのうちの70%以上に甘草が含まれている。

閉塞性肥大型心筋症へのmavacamten、日本人での有効性・安全性明らかに(HORIZON-HCM)/日本循環器学会

 閉塞性肥大型心筋症におけるfirst-in-classの選択的心筋ミオシン阻害薬mavacamtenは、2022年に米国において、ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類II/III度の症候性閉塞性肥大型心筋症(HOCM)の運動耐容能および症状改善の適応で承認されている。今回、北岡 裕章氏(高知大学医学部老年病・循環器内科学 教授)が3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trials 2において、日本人の症候性肥大型心筋症(HCM)患者を対象にmavacamtenの有効性、安全性などを調査した第III相非盲検単群試験HORIZON-HCM(NCT05414175)の結果を報告した。

歩行を守るために気付いてほしい脚の異常/日本フットケア・足病医学会

 超高齢社会では、いかに健康を保ちつつ日常生活を送るかが模索されている。とくに「脚」は、歩行という運動器の中でも重要な部位である。日本フットケア・足病医学会は、この脚を守るための下肢動脈疾患(LEAD)・フレイル研究募集についてメディア向けにセミナーを開催した。  セミナーでは、研究概要のほか、同学会の活動概要、LEADをはじめとする脚の動脈硬化の診療、LEAD・フレイル研究募集について説明が行われた。

日本循環器学会から学ぶ、学会公式SNSのあるべき運用とは?/日本臨床腫瘍学会

 学会の情報発信はどうあるべきか? 第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)ではSNSを使った学会の広報活動をどう広めていくかをテーマにシンポジウムが行われた。  本シンポジウムは昨年4月にJSMO広報渉外委員会の下部組織として「SNSワーキンググループ(SNS-WG)」が発足したことを契機として企画された。SNS-WGは立候補制で、現在専攻医からがん薬物療法専門医まで幅広い世代の会員14人が参加し、1)JSMO会員のSNS利用を活発にするための環境整備、2)医学生・研修医や一般市民に向けた腫瘍内科・JSMOの認知度向上、3)JSMOの国際化を主な目的として活動している。  今回のシンポジウムはメンバーからの報告のほか、国内でもっとも活発にSNSを使っている学会の1つである日本循環器学会から、活動の中心的メンバーである国際医療福祉大学大学院医学研究科 循環器内科の岸 拓弥氏が招かれ、講演を行った。本シンポジウムでは特例的に公演中のスライド撮影、SNSへの投稿を自由とし、活発なディスカッションの一助とする取り組みも行われた。