Resolute Onyx対Orsiro、優れているのはどっち?(解説:上田恭敬氏)-987 Onyx stentとOrsiro stentを比較した単盲検国際多施設無作為化非劣性試験の結果である。1,243症例がOnyx群に1,245症例がOrsiro群に割り付けられ、主要評価項目を1年でのtarget vessel failureとして、ほとんど除外基準のないall-comerデザインで検討された。
抗凝固薬の選択~上部消化管出血とPPIの必要性(解説:西垣和彦氏)-985 “出血しない抗凝固薬はない”。もともと抗凝固薬自体に出血をさせる力はないが、一旦出血したら止血するのに時間がかかるために出血が大事をもたらすこととなる。そもそも出血傾向をもたらすことが抗凝固薬の主作用であるので至極自明なことではあるのだが、直接経口抗凝固薬(DOAC)だけでなくビタミンK依存性凝固因子の生合成阻害薬であるワルファリンを含めて、“凝固薬自体が出血を起こさせた”と理解している方がいかに多いことか。
GIP/GLP-1受容体デュアルアゴニストLY3298176は第3のインクレチン関連薬となりうるか?(解説:住谷哲氏)-986 インクレチンは食事摂取に伴って消化管から分泌され,膵β細胞に作用してインスリン分泌を促進するホルモンの総称であり、GIPとGLP-1の2つがある。GIPおよびGLP-1は腸管に存在するK細胞、およびL細胞からそれぞれ分泌され、インスリン分泌促進以外の多様な生理活性を有している。しかしGIPは高血糖状態においてはインスリン分泌作用が弱いこと、脂肪細胞に作用して脂肪蓄積につながることから、現在はGLP-1のみがGLP-1受容体作動薬として臨床応用されている。しかし生理状態では両者は同時に分泌される、いわば双子の腸管ホルモンであり、この両ホルモンの受容体を同時に刺激する目的で開発されたのがGIP/GLP-1受容体デュアルアゴニストLY3298176である。
ダパグリフロジンと心疾患予防の関係は 11月26日、アストラゼネカ株式会社と小野薬品工業株式会社は、アメリカ心臓協会(AHA)でDECLARE‐TIMI 58 試験(以下「本試験」と略す)の発表が行われたのを期し、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、糖尿病領域と循環器領域の2つの視点から試験結果に対し説明が行われた。 複数の心血管リスク因子、心血管疾患の既往歴を有する患者を含む、CVイベントリスクが高い成人2型糖尿病患者を対象に、ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)の治療が及ぼす影響をプラセボとの比較で評価した試験。患者登録では、日本を含む世界33ヵ国882施設から1万7千例超の患者が参加。無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験。実施はアストラゼネカ株式会社。
不整脈デバイスの感染防止に抗菌薬追加投与は有効か(PADIT試験)【Dr.河田pick up】 植込み型の医療機器の感染は重大な結果へとつながりうる。心調律デバイスの場合、術前のセファゾリンが標準的な予防的抗菌薬であるが、デバイス感染症によくみられるメチシリン耐性グラム陽性球菌には有効でない。また、術中よく行われる抗菌薬によるポケット内の洗浄についても明確なエビデンスはない。この研究は、標準的なセファゾリンに加えて、周術期に抗菌薬を追加投与することの有効性を評価することを目的として行われた。なお、本研究のユニークな点は患者ではなく、施設ごとに無作為化を行っている点である。
ゴルフが上手い診療科は/BMJ 世界中で、医師の燃え尽き症候群(バーンアウト)の罹患率は高いことが報告されている。余暇活動は健康で安心して暮らせる環境をもたらすが、医師の余暇活動の現況はよくわかっていないという。米国・ハーバード大学医学大学院のGal Koplewitz氏らは、今回、ゴルフの普及状況を調査し、米国の男性医師は一般的にゴルフに興じており、とくに外科医が多いことを明らかにした。ゴルフは、多くの医師にとってステレオタイプの娯楽だが、これまで専門科別の普及率や腕前、男女差については検討されておらず不明であった。BMJ誌2018年12月10日号(クリスマス特集号)掲載の報告。
心代謝特性はBMIと関連するか BMIは脂肪を非脂肪と区別せず、脂肪分布を無視し、健康への影響を検出する能力が不明とのことで批判されている。今回、英国・ブリストル大学のJoshua A. Bell氏らは、心代謝特性との関連においてBMIと二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)による全身および局所の脂肪指数(fat index)を比較した。その結果から、腹部の肥満が心代謝障害の主因であり、その影響の検出にBMIが有用なツールであることが支持された。Journal of the American College of Cardiology誌2018年12月18日号に掲載。
1年で心筋梗塞のリスクが最も高い日/BMJ スウェーデンでは、クリスマスや夏至の祝日(夏至祭[夏至とその前日]と呼ばれ、クリスマスを除くとスウェーデンで最も盛況な休日、St John's Dayとしても知られる)は心筋梗塞のリスクが高く、とくにクリスマスイブが高リスク(37%増)であり、高齢患者や糖尿病を合併する患者など脆弱な状態にある集団では、これらの期間が心筋梗塞の外的な引き金の役割を担う可能性があることが、スウェーデン・スコーネ大学病院のMoman A. Mohammad氏らが行ったSWEDEHEART試験で示された。西欧諸国では、心筋梗塞による心臓死や入院は、クリスマスや新年の休日にピークに達することが観察されている。また、心筋梗塞のリスクは、フットボールの優勝決定戦やハリケーン、株式市場の暴落とも関連する。そのため、感情的なストレスや身体活動、生活様式の変化に関連する因子が、短期的な引き金として作用することで、心筋梗塞の発症に影響を及ぼす可能性があると推測されている。BMJ誌2018年12月12日号(クリスマス特集号)掲載の報告。
がんの静脈血栓予防は必要かな?(解説:後藤信哉氏)-982 日本では静脈血栓症が欧米に比較して圧倒的に少ない。遺伝子型として活性化プロテインC抵抗性を示す血液凝固因子のLeiden型変異がいないことが理由の1つと想定されるが、その他の生活習慣も寄与しているかもしれない。静脈血栓症の圧倒的多数には血栓性素因がある。日本の高齢者に初発の静脈血栓症を認めた場合には、悪性腫瘍が隠れている可能性が高い。静脈血栓症例に対する悪性腫瘍スクリーニングは重要である。
心房細動の早期発症関連遺伝子を特定/JAMA タイチン(TTN)遺伝子の機能喪失型変異(LOF)と、早期発症心房細動の関連が、症例対照試験で確認された。早期発症心房細動患者のうちTTN LOFが認められた人の割合は、対照群の1.76~2.16倍で、発症年齢が30歳未満群の同倍率は5.94倍だった。米国・The Broad Institute of MIT and HarvardのSeung Hoan Choi氏らが、国立心肺血液研究所(NHLBI)のTrans-Omics for Precision Medicine(TOPMed)プログラムの全ゲノムシークエンスデータを基に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2018年12月11日号で発表した。著者は、「さらなる研究を行い、因果関係があることなのかを明らかにする必要がある」とまとめている。心房細動は、集団の1%に認められる、よくみられる不整脈である。心房細動を有する若年者は、疾患に関連した遺伝子の関与が強いとされるが、そのメカニズムは完全には明らかになっていないという。