麻酔科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

ガイダンスに基づくオピオイド処方で死亡率が低減/BMJ

 オピオイド使用障害の患者では、「リスク軽減ガイダンス(Risk Mitigation Guidance; RMG)」に基づくオピオイド処方により、過剰摂取による死亡および全死因死亡の発生率が有意に低下し、違法薬物に代わる医薬品の提供は有望な介入策となる可能性があることが、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のAmanda Slaunwhite氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年1月10日号で報告された。  研究グループは、RMGに基づくオピオイド(モルヒネ)および精神刺激薬(デキストロアンフェタミン、メチルフェニデート)の処方が、薬物の過剰摂取と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)という公衆衛生上の二重の緊急事態下に、死亡と急性期治療のための受診に及ぼした影響を明らかにする目的で、住民ベースの後ろ向きコホート研究を行った(カナダ健康研究所[CIHR]などの助成を受けた)。

顎関節症による慢性疼痛に有効な介入とは/BMJ

 顎関節症(TMD)に伴う慢性疼痛の管理では、エビデンスの確実性が「中」または「高」の臨床試験に限定すると、バイオフィードバック療法またはリラクゼーション療法で補強した認知行動療法(CBT)や、顎関節のモビライゼーションなどの、対処を促す介入や、顎関節の可動を促進する介入が最も効果的であることが、中国・蘭州大学のLiang Yao氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年12月15日号に掲載された。  研究グループは、顎関節症に伴う慢性疼痛に対する種々の治療法の有効性を比較検討する目的で、無作為化臨床試験(RCT)の系統的レビューとネットワークメタ解析を行った(Chronic Pain Centre of Excellence for Canadian Veteransの助成を受けた)。

動物病院での猫の不安を軽減する薬を米FDAが承認

 猫を飼っている人なら、猫を獣医師のもとへ連れていくことが猫と飼い主の双方にとっていかにストレスとなるかを経験的によく知っているだろう。米食品医薬品局(FDA)は11月17日、このような猫の不安を軽減する新薬を承認したことを発表した。FDAは、Bonqatと呼ばれるこの抗不安薬は、「移動中や動物病院での診察時に猫が感じる不安や恐怖を和らげるように設計されている」とニュースリリースで説明している。  Bonqatは、過活動状態にある神経を鎮める薬物であるプレガバリンを含む、初のFDA承認薬だ。FDAの説明によると、同薬は、猫を連れて移動するか、または動物病院で診察を受ける1時間半ほど前に経口投与すればよい。投与は2日間連続で可能である。

好きな音楽が痛みを軽減する可能性を示す新研究

 好きな音楽を聴くと痛みが和らぐ可能性のあることが、新たな研究で示唆された。これまでにも、音楽が鎮痛薬の代わりになる可能性については研究されてきたが、今回、音楽を聴いているときの感情的反応が痛みの緩和に大きな役割を果たすことが示されたという。マギル大学(カナダ)のDarius Valevicius氏らによるこの研究の詳細は、「Frontiers in Pain Research」に10月25日掲載された。

大手術後の炎症を阻害すると...(解説:後藤信哉氏)

コルヒチンは歴史の長い抗炎症薬である。LoDoCo(Low Dose Colchicine)試験にて冠動脈疾患の二次予防効果が証明されて、循環器内科領域に注目されることになった。多くの循環器疾患に炎症が関与する。各種のがん治療などの非心臓疾患の手術時の心房細動の発症予防効果の有無が本研究にて検証された。非心臓性手術後の心房細動と心筋梗塞の発症例では炎症マーカーの高値が報告されている。そこで、本研究では強力な抗炎症薬であるコルヒチンに、非心臓の大手術時の心房細動および心筋障害発症予防効果の有無がランダム化比較試験により検証された。

コルヒチン、心臓以外の胸部手術で心房細動を予防せず/Lancet

 主要な非心臓胸部手術を受けた患者において、コルヒチンは臨床的に重大な周術期心房細動(AF)および非心臓術後の心筋障害(MINS)の発生を有意に低下しないばかりか、ほとんどは良性だが非感染症性下痢のリスクを増大することが示された。カナダ・Population Health Research InstituteのDavid Conen氏らが、コルヒチンの周術期AF予防について検証した国際無作為化試験「COP-AF試験」の結果を報告した。炎症性バイオマーカー高値は、周術期AFおよびMINSリスク増大と関連することが知られている。これらの合併症の発生を抗炎症薬のコルヒチンが抑制する可能性が示唆されていた。Lancet誌オンライン版2023年8月25日号掲載の報告。

選択的Nav1.8阻害薬VX-548、術後急性疼痛を軽減/NEJM

 電位依存性ナトリウム(Na)チャネルNav1.8の選択的阻害薬であるVX-548は、高用量においてプラセボと比較し、腹壁形成術ならびに腱膜瘤切除術後48時間にわたって急性疼痛を軽減し、有害事象は軽度~中等度であった。米国・Vertex PharmaceuticalsのJim Jones氏らが、2件の第II相無作為化二重盲検比較試験の結果を報告した。電位依存性NaチャネルNav1.8は、末梢侵害受容ニューロンに発現し、侵害受容シグナルの伝達に寄与していることから、選択的Nav1.8阻害薬VX-548の急性疼痛抑制効果が研究されていた。NEJM誌2023年8月3日号掲載の報告。

手術前はオゼンピックやウゴービの使用を控えるべし

 米国麻酔科学会(ASA)が6月29日、話題の肥満症治療薬であるオゼンピックやウゴービ(いずれも一般名はセマグルチド)の使用者で、全身麻酔を伴う手術を受ける予定のある人は、手術前日、または手術当日にこれらの薬剤の使用を控えるべきだとする指針を提示した。  糖尿病治療薬として知られるオゼンピックやウゴービを含むGLP-1受容体作動薬は、インスリンの分泌を促すとともに食欲抑制効果を有することから、肥満症治療薬としても注目を浴びている。GLP-1受容体作動薬には、胃の消化運動を抑制して摂取した食べ物をより長く胃の中にとどめておく作用がある。そのため、この薬剤を使用すると、食べる量が減り、それが減量につながる。

手術中のオピオイド投与削減は患者転帰に悪影響を及ぼす

 オピオイド乱用の問題が深刻化している米国では、多くの医師が、たとえ手術中であってもオピオイド系鎮痛薬(以下、オピオイド)の投与を控えている。こうした中、このアプローチに疑問を投げかける研究結果が報告された。手術中のオピオイド投与量が多いほど、術後は短期的にも長期的にも疼痛が軽く、オピオイドの累積投与量も少なくて済むことが明らかになったのだ。米マサチューセッツ総合病院(MGH)のLaura Santa Cruz Mercado氏らによるこの研究結果は、「JAMA Surgery」に6月14日掲載された。

産後7日以内のオピオイド処方は乳児の短期予後に悪影響なし(解説:前田裕斗氏)

産後の疼痛に対するオピオイド利用は、母乳に移行することで乳児に鎮静や呼吸抑制などの有害事象を及ぼす可能性があり、これまでにいくつかの報告がなされていた。一方、母乳に移行する量はごく少量であることがわかっており、本当に母体のオピオイド利用が乳児に対して有害事象をもたらすのか、短期的影響について確かめたのが本論文である。出産後7日以内のオピオイド処方と、乳児の30日以内の有害事象の関係が検討された。結果として、主要アウトカムである再入院率に差は認められず、オピオイド処方群で救急受診は有意に高かったものの、乳児への有害事象はいずれについても両群で差を認めなかったことから、母体へのオピオイド処方は乳児に明らかな有害事象をもたらさないと結論付けられた。