麻酔科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

オピオイド処方率、抜き打ち審査が影響/BMJ

 米国では1996年、「痛みは第5のバイタルサイン」との概念が導入され、それ以降、疼痛を測定・治療するための体系的な取り組みが、オピオイドの処方行動にどの程度の影響を及ぼすかについて議論がなされてきたが、これを実証的に研究することは困難とされる。米国・マサチューセッツ総合病院のDavid C. Cron氏らは、病院医療の質と安全に関する認証機関であるThe Joint Commission(TJC)による、抜き打ち訪問審査の期間中に教育病院に入院した患者では、退院時のオピオイド処方率が、同審査のない期間に比べて高いのに対し、非教育病院ではこのような差は生じないことを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年8月19日号に掲載された。

非心臓大手術、全静脈麻酔vs.揮発性吸入麻酔/JAMA

 非心臓大手術を受ける高齢患者において、全静脈麻酔(TIVA)は揮発性吸入麻酔と比較し、術後30日時点の在宅日数(days alive and at home;生存し、自宅で過ごした日数)を改善しなかった。英国・Institute of Cancer ResearchのShaman Jhanji氏らVITAL Trial Teamが、「Volatile vs Total Intravenous Anesthesia for Major Non-Cardiac Surgery(VITAL)」試験の結果を報告した。非心臓大手術を受ける高齢者は、術後合併症を呈し医療サービスを利用することが多く、これらに麻酔手技が関係する可能性がある。TIVAと吸入麻酔は意識消失をもたらすが、薬理学的特性、術中の生理学的影響および周術期の安全性プロファイルは顕著に異なる。しかし、回復および安全性に関する両者間の比較は行われていなかった。JAMA誌オンライン版2026年8月12日号掲載の報告。

選択的Nav1.8阻害薬LTG-001、術後疼痛を軽減/NEJM

 Nav1.8は末梢神経系に発現している電位依存性ナトリウムチャネルで、疼痛シグナル伝達において重要な役割を果たすという。LTG-001は、オピオイドと同等の鎮痛効果をもたらすように設計された、経口投与が可能な非オピオイド系の選択的Nav1.8阻害薬である。米国・Latigo BiotherapeuticsのNeil Singla氏らは、腹壁形成術後に疼痛を訴える患者において、低・高用量のLTG-001はプラセボと比較して、48時間後の疼痛スコアを有意に改善し、高用量ではオピオイドのレスキュー使用量が少ないことを示した。研究の成果はNEJM誌2026年7月30日号に掲載された。

ガバペンチノイドと併用薬で薬物中毒リスクが上昇か

 ガバペンチノイド系鎮痛薬(以下、ガバペンチノイド)を他の薬剤と併用すると、薬物中毒のリスクが上昇する可能性が、新たな研究で示された。ガバペンチノイドとオピオイド系鎮痛薬(以下、オピオイド)やベンゾジアゼピン系薬剤(以下、ベンゾジアゼピン)の併用はこのリスクを高め、特に治療初期には顕著なリスク上昇が認められたという。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の薬剤疫学者であるKenneth Man氏らによるこの研究は、「PLOS Medicine」に4月16日掲載された。  Man氏らは、「今回の結果は、ガバペンチノイドが安全ではない、あるいは処方すべきではないことを示すものではない。ただ、特に他の薬剤を使用中の患者に処方する際には注意が必要であり、臨床医は患者を慎重にモニタリングする必要がある」とニュースリリースで述べている。

経皮的電気神経刺激療法は線維筋痛症の痛みの軽減に有効

 実臨床環境で実施された初の試験において、経皮的電気神経刺激療法(TENS)が線維筋痛症に伴う動作時の痛み(以下、動作時痛)の軽減に有効である可能性が示された。TENSは、皮膚に貼った電極を介して微弱な電流を流し、痛みを遮断または軽減する治療法で、外来で長年使用されている。論文の筆頭著者である米アイオワ大学理学療法・リハビリテーション科学分野のDana Dailey氏は、「本研究は、他の治療にTENSを併用することで追加的な効果がもたらされることを示している。研究参加者は全員、鎮痛薬の使用や理学療法も受けていたが、それでもなおTENSは追加的な症状緩和をもたらした」と述べている。この研究は、「JAMA Network Open」に3月27日掲載された。

高齢者の術後せん妄の予防に有効な薬物療法とは/BMJ

 術後せん妄の予防に鎮静薬デクスメデトミジンが有効であり、エビデンスの質は高くないもののコルチコステロイド、メラトニン受容体作動薬、parecoxib、経鼻インスリン、オランザピンにも潜在的な有益性があることが、英国・オックスフォード大学のMatthew Luney氏らの検討で示された。手術後に急激な意識障害や注意力の低下を来す術後せん妄は、認知症発症のリスクを高めるだけでなく、多大な医療コストの要因ともなっており、高齢化社会における重大な課題とされるが、有効な薬物療法は確立されていない。BMJ誌2026年2月12日号掲載の報告。

疼痛治療薬の副作用が心不全の誤診を招く?

 オピオイドに代わる鎮痛薬として使用されている薬剤のせいで、医師が心不全と誤診してしまう例が少なくないことが、新たな研究で示された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)医学部教授のMichael Steinman氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に12月2日掲載された。  ガバペンチンやプレガバリンなどのガバペンチノイドと呼ばれる種類の薬剤は、神経痛の治療目的で処方されることが多い。しかし、これらの薬剤の副作用の一つに、下肢のむくみ(浮腫)の原因となる体液貯留がある。体液貯留は、心不全の症状としても広く知られている。そのため、この副作用が生じた患者の多くに、利尿薬のような本来は不要であるはずの薬剤が追加で処方され、その結果、腎障害やふらつき、転倒によるけがなどのリスク上昇につながっていることが、今回の研究から明らかになった。このように、ある薬の副作用が別の疾患に関わる症状と認識され、それに対してさらに薬が処方される現象は、処方カスケードと呼ばれる。

術中血圧管理の個別化は可能か?―IMPROVE-multi試験と今後の展望(解説:三浦伸一郎氏)

術中低血圧は、術後に急性腎障害や心筋傷害などの臓器不全発症のリスクを高める研究が多く報告されてきた。したがって、術中・周術期の血圧管理には、臓器保護の面から見るときわめて重要なテーマであり、各々の患者の術前血圧などから目標を定めるという個別化医療が検討されている。しかし、血圧の最適化によって低血圧は減少するが、術後合併症も減少したという報告は限られている。術中の血圧管理は可能であるが、どの程度、臨床的改善に直結するかは不明であった。

オピオイド鎮痛薬のトラマドール、有効性と安全性に疑問

 がんによる疼痛や慢性疼痛に対して広く処方されている弱オピオイド鎮痛薬(以下、オピオイド)のトラマドールは、期待されたほどの効果はないことが、新たな研究で明らかにされた。19件の研究を対象にしたメタアナリシスの結果、トラマドールは中等度から重度の疼痛をほとんど軽減しないことが示されたという。コペンハーゲン大学(デンマーク)附属のリグスホスピタレットのJehad Ahmad Barakji氏らによるこの研究結果は、「BMJ Evidence Based Medicine」に10月7日掲載された。研究グループは、「トラマドールの使用は最小限に抑える必要があり、それを推奨するガイドラインを再検討する必要もある」と結論付けている。

帯状疱疹後神経痛、発症しやすい人の特徴

 帯状疱疹を発症すると、帯状疱疹の皮疹や水疱消失後に帯状疱疹後神経痛(post herpetic neuralgia:PHN)と呼ばれる合併症を伴う場合があり、3ヵ月後で7~25%、6ヵ月後で5~13%の人が発症しているという報告もある。今回、中国・Henan Provincial People's HospitalのJing Wang氏らは、PHNの独立した危険因子となる患者背景を明らかにした。Frontiers in Immunology誌2025年10月1日号掲載の報告。