救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:90

日本初、ワルファリンでの出血傾向を迅速に抑える保険適用製剤

 ワルファリン服用者の急性重篤出血時や、重大な出血が予想される手術・処置の際に、出血傾向を迅速に抑制する日本初の保険適用製剤として、乾燥濃縮人プロトロンビン複合体(商品名:ケイセントラ静注用)が9月19日に発売された。発売に先立ち、15日に開催されたCSLベーリング株式会社による記者発表において、矢坂 正弘氏(国立病院機構九州医療センター脳血管センター 部長)が、本剤の開発経緯や臨床成績、位置付けについて講演した。その内容をお届けする。

低酸素血症でない心筋梗塞疑い例に酸素療法は無効/NEJM

 低酸素血症のない急性心筋梗塞が疑われる患者に酸素療法を行っても、1年全死因死亡率は低下せず効果は確認されなかった。スウェーデン・カロリンスカ研究所のRobin Hofmann氏らが、スウェーデンの全国レジストリを用いた多施設非盲検無作為化比較試験「DETO2X-AMI試験」の結果、明らかにした。これまで1世紀以上にわたり、酸素療法は急性心筋梗塞疑い患者の治療に用いられ、臨床ガイドラインでも推奨されている。酸素療法は梗塞サイズを縮小するとされていたからだが、ST上昇型心筋梗塞患者を対象にしたAVOID試験で、酸素療法群のほうが梗塞サイズが大きいことが報告され、さらに最新のコクランレビューで心筋梗塞患者へのルーチンの酸素療法は支持するエビデンスはないことが示され、低酸素血症のない急性心筋梗塞疑い患者に対する酸素療法の臨床的効果はきわめて不透明であった。NEJM誌オンライン版2017年8月28日号掲載の報告。

扱っている題材は大変真面目なものであるが(解説:野間 重孝 氏)-726

多くの先進国においては、ガイドライン上に今でも記載はされているものの、実臨床の場で急性心筋梗塞に対する経静脈的血栓溶解療法は、何らかの理由で救急センターへの搬送が容易でないような例外例を除いては、すでに行われなくなっているといってよいと思われる。しかしながら一方で、医療資源の乏しい環境下での機械的再灌流の代替え療法として、発展途上国などではいまだに重要な役割を担っていることも事実であるといえる。

STEMIへの線溶療法、薬剤により死亡リスクに差/Lancet

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者に対する線溶療法では、薬剤などによって重要な相違点があり、アルテプラーゼ急速投与、テネクテプラーゼ(tenecteplase)およびレテプラーゼ(reteplase)は、ストレプトキナーゼ(streptokinase)やアルテプラーゼ非急速投与より優先して考慮されるべきで、線溶療法への糖蛋白IIb/IIIa阻害薬の追加は避けるべきである。タイ・ウボンラーチャターニー大学のPeerawat Jinatongthai氏らが、無作為化試験のシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果を報告した。線溶療法は、医療資源が乏しい環境下のSTEMI患者に対する、機械的再灌流に代わる治療法であるが、各種線溶療法を比較した包括的なエビデンスは不足していた。Lancet誌2017年8月19日号掲載の報告。

自宅に退院する急性脳卒中患者を予測する5つの因子

 急性期脳卒中入院患者の退院計画は、医療資源の合理的な利用を促進するとともに、臨床アウトカムを改善し患者の経済的負担を軽減する。とくに、退院先の予測は退院計画に重要であることから、京都大学の西垣 昌和氏らのグループは、急性脳卒中後に自宅に退院する可能性が高い患者を予測する5つの変数を特定し、評価モデルを開発した。本モデルは入院後早期に医療従事者が退院を適切に計画するのに役立つだろう、と著者らは記している。Stroke誌オンライン版2017年8月25日号に掲載。

大腿静脈カテーテル、望ましい穿刺位置と肢位は?

 大腿静脈カテーテル挿入は、血管の断面積(CSA)が大きな部位で行うと合併症リスクが減少する可能性がある。今回、ポーランド・Maria Sklodowska-Curie Memorial Cancer CenterのDorota Czyzewska氏らが、3つの肢位で2部位の右大腿静脈のCSAを調べたところ、肢位は開排位において最大であり、部位については性別で異なることが示された。PLOS ONE誌2017年8月14日号に掲載。

ベルソムラによる「せん妄予防」

 順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学の八田耕太郎氏らは、高齢救急患者における、就寝前に不眠症治療薬「ベルソムラ(一般名:スボレキサント)」投与によって、安全にせん妄を予防できることをJournal of Clinical Psychiatry誌に発表した。研究者らは本結果について、今まで実効性がなかったせん妄の療法に、薬物療法による新たなせん妄予防の道を拓いたもので、せん妄診療を治療から予防にパラダイムシフトさせる意義があるものとしている。

認知スペクトラム障害、入院患者の有病率と死亡率

 入院中の高齢者では、さまざまな認知機能障害が一般的にみられるが、これまでの研究では高度に選択された群の単一条件に焦点を当てており、アウトカムとの関連性を調査することはまれであった。英国・スターリング大学のEmma L. Reynish氏らは、65歳以上の救急入院患者を対象とした大規模で非選択的なコホート研究において、認知機能障害の有病率およびアウトカムを調査した。BMC medicine誌2017年7月27日号の報告。

「コード・ブルー」医療監修、松本 尚氏に聞くドラマの裏側

 テレビドラマでは、やればおおむね当たると言われている「職業モノ」が2つあり、その1つが医療ドラマである(ちなみにもう1つは刑事ドラマ)。この夏、『コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~THE THIRD SEASON』(フジテレビ系列)が好評だ。本作は9年前のシーズン1、7年前のシーズン2に続く3作目。月曜9時枠としては硬派路線で、医療シーンが忠実に作り込まれているのが特徴だが、そのリアリティーを下支えしているのが医療監修である。今回、本作の医療監修を務め、自身も国内のフライトドクターの第一人者である松本 尚氏(日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター長)に、医療者の視点からみたドラマの裏側についてお話を伺った。

血管拡張性ショックにアンジオテンシンIIは有用か/NEJM

 高用量の従来の昇圧薬に反応しない血管拡張性ショック患者に対し、合成ヒトアンジオテンシンII薬(LJPC-501)が血圧を効果的に上昇したことが、米国・クリーブランドクリニックのAshish Khanna氏らによる無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ATHOS-3」の結果で示された。高用量の昇圧薬に反応しない血管拡張性ショックは、高い死亡率と関連しており、本検討の背景について著者は次のことを挙げている。現在利用可能な昇圧薬はカテコールアミン(交感神経刺激薬)とバソプレシンの2種のみで、いずれも高用量では毒性作用が強く治療領域が限られている。また、アンジオテンシンII薬は、低血圧発症時のホルモンのはたらきをヒントに開発が進められ、カテコールアミンとバソプレシンへの追加投与で有用性を検討したパイロット試験で、カテコールアミンの用量減少が可能なことが示唆されていた。NEJM誌2017年8月3日号(オンライン版2017年5月21日号)掲載の報告。