急性重症出血、トラネキサム酸投与は3時間以内に/Lancet

外傷性/分娩後出血死の多くは、出血が起きてから短時間で死に至っており、トラネキサム酸による抗線溶療法の開始がわずかでも遅れると、そのベネフィットは減少することを、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAngele Gayet-Ageron氏ら研究グループが、被験者4万138例のデータを包含したメタ解析の結果、明らかにした。結果を踏まえて著者は、「重症出血患者は、ただちに治療が開始されなければならない」と提言するとともに、「さらなる研究で、トラネキサム酸の作用機序の理解を深める必要がある」と述べている。抗線溶療法は、外傷性/分娩後出血死を減らすことが知られている。研究グループは、治療の遅れが抗線溶薬の効果に及ぼす影響を調べる検討を行った。Lancet誌オンライン版2017年11月7日号掲載の報告。
治療ベネフィットについてメタ解析で評価
研究グループは、急性重症出血患者への抗線溶療法を評価した、1,000例以上参加の無作為化試験における被験者個人レベルのデータを用いてメタ解析を行った。MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、Web of Science、PubMed、Popline、WHO International Clinical Trials Registry Platformの検索から、1946年1月1日~2017年4月7日に行われた試験を特定した。治療ベネフィットの主要尺度は、非出血死。治療の遅れが治療効果に及ぼす影響を調べるため、ロジスティック回帰モデルを用いて評価した。また、感度解析で測定誤差(誤分類)の影響を調べた。
急性重症出血が始まって3時間で治療ベネフィットは消失
検索により、急性重症出血患者に対するトラネキサム酸投与を評価した2つの無作為化試験(外傷性出血患者対象の「CRASH-2試験」、分娩後出血患者対象の「WOMAN試験」)の被験者計4万138例のデータ(各試験2万127例、2万11例)を入手し解析を行った。全体で死亡は3,558例、そのうち1,408例(40%)が出血死であった。
出血死は、発症後12時間以内の死亡が最も多かった(884/1,408例[63%])。分娩後出血死は、出産後2~3時間がピークであった。
全体で、トラネキサム酸投与が出血後の生存を有意に増大したことが確認された(オッズ比[OR]:1.20、95%信頼区間[CI]:1.08~1.33、p=0.001)。出血部位別による不均一性はみられなかった(交互作用p=0.7243)。
治療の遅れは治療ベネフィットを減少することが(p<0.0001)、一方で、即時治療は生存率を70%超増と有意に改善することが認められた(OR:1.72、95%CI:1.42~2.10、p<0.0001)。その後3時間まで、治療開始が15分遅れるごとに10%ずつ生存ベネフィットは減少し、3時間以降はベネフィットを確認できなかった。
トラネキサム酸投与に伴う血管閉塞性イベントの増大はみられず、出血部位別による不均一性はみられなかった(p=0.5956)。また、トラネキサム酸投与に伴う血管閉塞性イベントへの、治療の遅れの影響は認められなかった。
(ケアネット)
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コメンテーター : 後藤 信哉( ごとう しんや ) 氏
東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授
J-CLEAR理事