泌尿器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:16

骨盤臓器脱の改善効果、ペッサリーvs.外科的治療/JAMA

 症候性骨盤臓器脱患者において、保存的治療であるペッサリー療法は手術治療と比較して、24ヵ月時点での患者報告による改善に関して非劣性が認められなかった。オランダ・アムステルダム大学のLisa R. van der Vaart氏らが、オランダの21施設で実施した無作為化非劣性試験「PEOPLEプロジェクト」の結果を報告した。骨盤臓器脱は女性のQOL(生活の質)に悪影響を及ぼす疾患で、平均寿命の延長に伴い骨盤臓器脱に対する費用対効果の高い治療が世界的に求められている。JAMA誌2022年12月20日号掲載の報告。  研究グループは、手術歴またはペッサリー療法歴のないステージ2以上の骨盤臓器脱症状を有する女性を、ペッサリー群または手術群に1対1の割合で無作為に割り付けた。

米FDAが高リスク筋層非浸潤性膀胱がんの遺伝子治療薬を承認

 米食品医薬品局(FDA)は2022年12月16日、高リスク膀胱がんの新たな治療選択肢としてAdstiladrin(一般名nadofaragene firadenovec-vncg)と呼ばれる遺伝子治療薬を承認した。適応は、標準治療であるBCG(Bacillus Calmette-Guerin)が奏効しない、上皮がん(CIS)を有する高リスク筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)の成人患者で、乳頭状腫瘍の有無は問わない。ただしFDAは、免疫抑制や免疫不全の患者にはAdstiladrinを投与すべきではないとしている。  新たに診断される膀胱がんの約75~80%は、がんが膀胱の内層を越えるが筋層までは浸潤していないNMIBCである。NMIBCの約30~80%は再発して、浸潤がんや転移がんになるリスクがある。高リスクNMIBCに対する一般的な治療法は、腫瘍を切除し、主に結核予防のためのワクチンとして使用されているBCGにより再発リスクの低減を図るというもの。しかし、BCGが奏効しない患者に対しては、これまで効果的な治療選択肢がほとんどなかった。米疾病対策センター(CDC)によると、米国では年間に男性約5万7,000人、女性約1万8,000人が膀胱がんと診断され、男性約1万2,000人、女性約4,700人が同がんにより死亡している。

血清PSAとMRIによる前立腺がんスクリーニングで、標的生検によって得られるメリット(解説:宮嶋哲氏)

前立腺がんスクリーニングにおける問題は、overdiagnosisであり、対策型検診における最も適切なアルゴリズムは確定していない。本研究(GOTEBORG-2 trial)では、50〜60歳の男性3万7,887例を対象に血清PSA(前立腺特異抗原)スクリーニングを施行した。血清PSA値が3ng/mL以上の被験者には前立腺MRIを行い、以下の要領で無作為に割り付けた。1/3の被験者を対照群としてMRIで前立腺がんが疑われる病変に対する標的生検と系統的生検を行い、残りの2/3の被験者は実験群として前立腺がんが疑われる病変にMRI標的生検のみを施行した。主要評価項目はGleason score3+3以下の臨床的に有意でない前立腺がん(insignificant cancer)の検出とし、副次評価項目はGleason score3+4以上の臨床的に意義のある前立腺がんの検出、ならびに安全性と定義した。

ネット経由のテストステロン購入にリスクあり

 男性ホルモンのテストステロンをインターネット経由で入手することに注意を喚起する趣旨の研究結果が、「JAMA Internal Medicine」12月号にレターとして掲載された。米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部のJoshua Halpern氏らの研究によるもの。サイト訪問者が、自分のテストステロン値は基準値内であることを伝えているのにもかかわらず、大半のサイトが販売を断ることはなく、入手手続きを進められたという。  米国の成人男性の中には、筋力アップや勃起機能の改善などの目的のため、テストステロン療法に期待を寄せている人が少なくない。そのニーズに応え、ネット経由でテストステロンを販売するサイトが増えていて、勃起障害などへの効果をほのめかす文句を掲げている販売サイトへの訪問数は、2017年から2019年の間に1,500%増加したとされている。Halpern氏らは、それらの販売サイトが安全性にどの程度配慮しているのかを調査した。7サイトを調べた結果、ほとんどのサイトはテストステロン欠乏症でない男性に販売することをいとわず、テストステロン療法の潜在的なリスクを伝えることもなかった。  Halpern氏は、「テストステロン欠乏症は活力や性欲低下の一因であり、欠乏状態が確認された男性へのテストステロン投与は確立された治療法であって、多くの男性の生活の質(QOL)を改善し得る。また、医師の判断で適切に使用された場合、一般的に安全と見なされている」と解説。ただしその一方で、「テストステロンは米麻薬取締局によって規制物質とされ、中毒のリスクもある。通常は泌尿器科や内分泌科の医師が処方し、薬剤師を介して手渡される医薬品だ。また、適切に使用されていても、多血症、血栓・出血、心臓発作・脳卒中、不妊症などのリスクとなることがある」という。

前立腺がんスクリーニング、MRI後標的生検のみは有用か?/NEJM

 前立腺特異抗原(PSA)高値者でのスクリーニングと早期発見に関して、系統的生検を避けMRIを用いた標的生検の実施は、過剰診断のリスクを半減するが、少数の患者で中リスクのがん発見が遅れるという代償を伴うことが、スウェーデン・Sahlgrenska University HospitalのJonas Hugosson氏らが行った無作為化試験「GOTEBORG-2試験」の結果、示された。前立腺がんのスクリーニングは過剰診断率の高さが難点で、住民ベースのスクリーニングに最適なアルゴリズムは明らかになっていない。NEJM誌2022年12月8日号掲載の報告。  研究グループは、PSA検査後、MRI検査陽性者に標的生検のみを行うスクリーニングアルゴリズムが、現在推奨されているスクリーニングと比較して過剰診断が少ないかどうかを検証した。Swedish Population Registerを用いて、2015~20年にスウェーデンのヨーテボリまたはその周辺の10の自治体に居住していた50~60歳の男性3万7,887例に対し、定期的PSAスクリーニングへの参加を促した。PSA検査を受け、試験への参加に同意した1万7,980例(47%)を、対照群、実験群1および2の3群に1対1対1の割合で割り付けた。  対照群では、PSA値3ng/mL以上の男性について全例MRIによる評価と系統的生検を行い、前立腺画像報告データシステム(PI-RADS)version 2のスコアが3~5点の場合は標的生検を追加した。実験群1では、PSA値3ng/mL以上の男性について、MRIによる評価を行い、疑わしい病変が発見された場合に標的生検のみを行った。また、PSA値10ng/mL以上の場合は、MRIの結果にかかわらず系統的生検(±標的生検)を実施した。実験群2は、実験群1と同様であるが、MRI実施のPSAカットオフ値を1.8ng/mLとした。

重症ED患者はアディポネクチン高値だが心血管リスクが高い可能性

 勃起障害(ED)の重症度が高い男性は、“善玉”のサイトカインとされているアディポネクチンが高値であるというデータが報告された。ただし、それにもかかわらず、重症ED患者をアディポネクチン値の高低で比較すると、低値群の方がBMIや体脂肪率が高く、糖・脂質代謝は悪化しているという。金沢大学大学院医薬保健学総合研究科泌尿器集学的治療学の重原一慶氏らが、性腺機能低下症の男性を対象に行った研究の結果であり、詳細は「The Aging Male」に10月3日掲載された。  EDは近年、心血管イベントの関連因子の一つとして位置付けられており、ED患者では血管内皮機能が低下したり、糖・脂質関連指標が悪化していることが多い。一方、アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されているサイトカインであり、インスリン感受性を高めたり炎症を抑制する作用があり、一般的には“善玉”と呼ばれている。ただ、EDとアディポネクチンとの関連はよく分かっていない。重原氏らは、金沢大学附属病院の患者データを後方視的に解析し、この関連を検討した。

女性のサル痘感染、性自認や性行為で臨床症状が異なる/Lancet

 2022年5月~11月に、世界で7万8,000人以上のヒトサル痘ウイルス感染が報告されたが、主に男性と性行為を持つ男性で発生している。英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のJohn P. Thornhill氏らは、今回、15ヵ国のシスジェンダーおよびトランスジェンダー女性と、出生時に女性性を割り当てられたノンバイナリーにおけるサル痘感染の疫学的および臨床的な特性を記述し、リスク因子の特定と理解の向上を目的とする症例集積研究を行った。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年11月17日号に掲載された。  本研究では、サル痘ウイルス感染の診断件数が多い地域の研究者と連絡を取り、サル痘ウイルス感染が確定された女性およびノンバイナリーのデータを提供するよう依頼した。

サル痘、発症前の症例から感染の可能性も/BMJ

 英国健康安全保障庁(UKHSA)のThomas Ward氏らは、英国でのサル痘の感染動態を調べる目的で接触追跡研究を実施した。英国では、サル痘の流行は2022年7月9日時点でピークとなりその後に低下。発症間隔は潜伏期間より短い場合が一般的であったことから、症状発現前のサル痘症例からの感染伝播があったことが示唆されたとしている。また、症状発現前に感染が検出されたのは最大4日間であったことから、感染の可能性がある人々の95%を検出するためには16~23日の隔離期間が必要と考えられたこと、発症間隔の95パーセンタイル値は23~41日間であり、感染期間が長いことが示唆されたとしている。BMJ誌2022年11月2日号掲載の報告。

病室の特徴が入院患者の手術後の転帰に影響か

 手術後に滞在する病室の特徴により患者の転帰が変わる可能性のあることが新たな研究で明らかになった。個室、ナースステーションに最も近い部屋、医師らが病室を直接見通せる部屋、窓のある部屋などが手術後の患者の転帰に影響を及ぼすことが示されたという。米ミシガン大学外科学、および建築・都市計画分野のAndrew Ibrahim氏らによるこの研究結果は、米国外科学会(ACS)臨床会議(Clinical Congress 2022、10月16〜20日、米サンディエゴ)で発表された。  Ibrahim氏らは、同大学病院の設計図をレビューし、窓の有無や個室か二人部屋かなどの設計上の特徴に基づいてそれぞれの病室をコード化した。その上で、同大学病院で2016年から2019年の間に結腸切除術や膵切除術、腎臓移植など13種類のリスクの高い手術を受けた患者3,964人の臨床転帰(死亡、入院期間など)と病室の設計上の特徴との関係を検討した。

再発リスクの高い腎細胞がん術後患者においてアテゾリズマブ補助療法は有効性を見出せず(解説:宮嶋哲氏)

転移性腎細胞がんに対する標準治療は、免疫チェックポイント阻害薬やチロシンキナーゼ阻害薬の併用療法である。抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブもまた、その有効性が期待される薬剤であるが、本研究は28ヵ国215施設において、外科的切除後に再発リスクの高い腎細胞がん患者を対象に、アテゾリズマブ補助療法の有効性を検討した第III相無作為化プラセボ対照二重盲検試験である(IMmotion010試験)。主要評価項目はDFS。