精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:301

アルツハイマー病への薬物治療、開始時期による予後の差なし

 世界中で何百万人もの高齢者がアルツハイマー病(AD)で苦しんでいる。治療薬にはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とメマンチンがあるが、その臨床効果は限られており、早期に薬物療法を開始することが長期的に良好な予後につながるかどうかも不明である。そこで、中国・香港中文大学のKelvin K.F. Tsoi氏らは、AD患者に対する早期治療の有効性について、前向き無作為化比較試験のメタ解析を行った。その結果、約6ヵ月早くAD治療薬の投与を開始しても投与開始が遅れた場合と比較して、認知機能、身体機能、行動問題および臨床症状に有意差は認められなかった。この結果について著者らは、「追跡期間が2年未満の早期AD患者の割合が比較的高かったためと考えられる」と指摘したうえで、「長期に追跡した場合の有効性について、今後さらなる研究が必要である」とまとめている。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2015年9月18日号の掲載報告。

ラピッドサイクラー双極性障害、抗うつ薬は中止すべきか

 急速交代型(rapid-cycling:RC)双極性障害における抗うつ薬の使用は論争の的となっているが、米国・ルイビル大学のRif S. El-Mallakh氏らは、このトピックについて初となる無作為化試験を行った。その結果、アプリオリな分析で、良好な抗うつ薬反応と気分安定薬の使用にもかかわらず、RCにおいて抗うつ薬使用を継続することは、中断した場合と比べて、維持アウトカムの悪化、とくに抑うつ罹患と関連することが明らかにされた。Journal of Affective Disorders誌2015年9月15日号の掲載報告。

青年期からの適切な対策で精神疾患の発症予防は可能か

 青年から成人への移行期には、身体的、感情的および社会的な変化が大きいが、この発達期における慢性症状と精神疾患との関連について調べた研究はほとんどない。カナダ・マックマスター大学のM. A. Ferro氏は、青年から成人への移行期(emerging adulthood)に該当する15~30歳成人の疫学的サンプル調査により、慢性症状の有無別に性特異的な生涯精神疾患の有病率を調べた。結果、同年代では、身体的症状と精神的症状の併存は一般的であり、それらが相乗的に増大するという関連はみられなかったが、障害や痛みのレベルによっては関連する可能性があることを明らかにした。そのうえで、慢性症状を有するこの年代の成人の精神疾患の予防・減少を促進するために、行政は健康、教育、社会的サービスを統合・調整していくことが重要であると報告した。Epidemiology and Psychiatric Sciences誌オンライン版2015年9月8日号の掲載報告。

早期アルツハイマー病診断に有用な方法は

 アミロイドPET検査ならびにCSFバイオマーカーは、いずれも高い精度で早期アルツハイマー病を診断できることを、スウェーデン・ルンド大学のSebastian Palmqvist氏らがBioFINDER研究で明らかにした。最も有効なCSF測定値とPET検査所見の間に違いはなく、それらを組み合わせて使用しても精度は向上しなかったことから、著者らは「早期アルツハイマー病の診断においてCSFバイオマーカーとアミロイドPET検査はどちらも精度は同等に高いので、利便性、費用、医師や患者の好みによる選択が可能である」とまとめている。Neurology誌2015年10月号の掲載報告。

高齢者の服薬、併存疾患の組み合わせの確認を/BMJ

 米国・イェール大学医学部のMary E Tinetti氏らは複数の慢性疾患を有する高齢者の、ガイドラインに基づく服薬と死亡の関連を調べた。その結果、とくに心血管薬の生存への影響は、無作為化試験の報告と類似していたが、β遮断薬とワルファリンについて併存疾患によりばらつきがみられたことを報告した。また、クロピドグレル、メトホルミン、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)は、生存ベネフィットとの関連がみられなかったという。結果を踏まえて著者は、「併存疾患の組み合わせによる治療効果を明らかにすることが、複数慢性疾患を有する患者の処方せんガイドになるだろう」とまとめている。BMJ誌オンライン版2015年10月2日号掲載の報告より。

認知症患者の精神症状に対し、抗不安薬の使用は有用か

 認知症患者の神経精神症状や機能レベルに対する入院および向精神薬の影響について、フィンランド・タンペレ大学のHanna-Mari Alanen氏らが調査を行った。その結果、認知症患者の神経精神症状に対する抗不安薬の使用を支持しない結果が得られたことを報告した。Dementia and geriatric cognitive disorders誌オンライン版2015年9月4日号の報告。

統合失調症患者にはもっと有酸素運動をさせるべき

 初回エピソードの統合失調症患者のメタボリックシンドロームおよび代謝異常の有病率は、健常対照と比較して有意に高く、また1年間の治療フォローアップ中にいずれも有意な増大が認められたことが、デンマーク・オーフス大学病院のL. Nyboe氏らによる検討の結果、示された。さらに、メタボの有意なリスク因子として、有酸素運動の不足を示唆する所見もみられたという。結果を踏まえて著者らは、「健康的なライフスタイルを、精神科治療およびリハビリテーションの一部として推進していかなくてはならない」と提言している。Schizophrenia Research誌2015年10月号の掲載報告。

注意が必要なトランスジェンダーのメンタルヘルス

 中国医科大学のXiaoshi Yang氏らは、同国におけるトランスジェンダー女性のうつ病罹患状況とその背景要因を検討するため横断研究を行った。その結果、中国のトランスジェンダー女性は、うつ病を高頻度に経験していることを報告した。また、彼女たちのうつ病は、トランスジェンダーに関連する差別や性転換の状況よりも、特定あるいは不特定のパートナーの有無により予測できること、セックスパートナーの存在がうつ病に関連していること、また、自己効力感がうつ病の軽減に好影響を与えうることなどを報告した。そのうえで、「彼女たちがうつ病に対処できるよう、またパートナー(とくに特定あるいは不特定の)とのリスキーなパートナーシップの特徴を見極められるように、自己効力感の改善に重点を置いた介入をすべきであることが示唆された」と報告している。PLoS One誌オンライン版2015年9月14日号の掲載報告。