眼科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:4

20-20-20ルールで仕事による眼精疲労を解消

 パソコンの画面を長時間見続けていると、目が乾燥してヒリヒリし、疲れや頭痛などの原因なることがある。しかし、こうした症状を避けるための簡単な対処法がある。それは、20分ごとに画面から目をそらし、20フィート(約6m)離れたところを20秒以上見るというものだ。  専門家らは、以前からこの「20-20-20ルール」を推奨してきたが、特殊なソフトウェアを用いて試験参加者の視線の方向をモニタリングした新たな研究で、その有効性が確認された。研究論文の上席著者で英アストン大学教授のJames Wolffsohn氏は、「研究では最先端のソフトウェアを使用したが、スマートフォンのタイマーやリマインダーアプリを活用すれば、誰でも簡単にその効果を再現することができる」と述べている。この研究結果は、英国コンタクトレンズ協会が発行する「Contact Lens & Anterior Eye」に8月10日掲載された。

理解されない患者の苦悩、新たなガイドライン、治療薬に期待

 2022年9月15日、アレクシオンファーマは「重症筋無力症ガイドライン改訂と適正使用に向けて」と題した重症筋無力症(以下、MG)の現状と新たなガイドラインに関するメディアセミナーを開催し、鈴木 重明氏(慶應義塾大学医学部神経内科 准教授)から「MGの現状」について、村井 弘之氏(国際医療福祉大学医学部 脳神経内科学 主任教授、国際医療福祉大学成田病院 脳神経内科 部長)から「2022年5月のMG診療ガイドラインの改訂ポイントとユルトミリス適応追加の意義」について、それぞれ講演が行われた。

高強度運動中は眼圧が低下する

 高強度の運動を行っている最中は眼圧が有意に低下するというデータが報告された。東都大学幕張ヒューマンケア学部理学療法学科の河江敏広氏らの研究によるもので、詳細は「Healthcare」に6月26日掲載された。低~中強度運動では有意な変化はなく、また高強度運動でも、負荷終了後の回復期間中の眼圧は負荷前と有意差がないという。  血管新生緑内障や増殖糖尿病網膜症では、血圧や眼圧の変化が病状に影響を及ぼす可能性が指摘されている。一方、運動の習慣的な継続は血圧を下げるように働くが、運動の最中の血圧は上昇することが知られており、網膜の状態が不安定な場合、激しい運動を控えた方が良い場合もある。

ブタの皮膚を用いた角膜インプラントで視力回復

 角膜の損傷により光を失った人の視力を、ブタが救ってくれるかもしれない。リンショーピング大学(スウェーデン)のNeil Lagali氏らが、ブタの皮膚から抽出したコラーゲンを用いたインプラントを作成し、ヒトを対象とするパイロット研究を行ったところ、良好な結果を得られたという。詳細は「Nature Biotechnology」に8月11日掲載された。  角膜は眼球の最も外側に位置し、黒目に相当する部分を覆っているアーチ状の透明な組織。何らかの理由で角膜が傷ついたりアーチ状の形状が変化すると、網膜に光が届かなかったりピントが合わなかったりして視力が低下し、時には失明に至る。  角膜は主にコラーゲンで構成されている。Lagali氏らは、豚の皮膚から抽出したコラーゲンを高度に精製した上で安定化させ、ヒトの眼に移植できる丈夫な透明のインプラントを作成。それを角膜疾患の患者20人に移植したところ、視力が改善した。移植前の患者の視機能は、全盲かそのリスクの高い状態だったという。研究者らは、「このインプラントは、角膜の外傷や疾患で失われた視力を回復するための画期的な手段になる可能性がある」と述べている。  世界中で推定1270万人が角膜疾患のために視力を失っており、そのような人たちの視機能を回復させ得る唯一の方法は、ヒトのドナーからの角膜移植だ。しかしドナーからの角膜供給は少なく、70人に1人しか必要な移植を受けることができない。Lagali氏は、「われわれは、需要と供給のギャップを満たすために、安価で十分な量のインプラントを作成可能な技術の確立を目指してきた。ブタの皮膚は畜産業の副産物として豊富に入手でき、また米食品医薬品局(FDA)は、ブタ由来の皮膚を治療に用いることを既に承認し臨床応用されている」と説明する。加えて、「角膜インプラント作成に利用されるブタは一切、遺伝子操作をされていない」と話している。  Lagali氏によると、このインプラントにはコラーゲン以外の生体物質を用いていないため、ヒトのドナーからの角膜移植よりも、拒絶反応がはるかに少ないという。さらに、角膜全層を移植するのではなく、薄く変化している部分のみに用いることで、侵襲性を最小限に抑えた使い方が可能とのことだ。「ドナーの角膜を用いた全層移植では、移植後に少なくとも1年は免疫抑制薬の点眼が必要だ。しかしわれわれのインプラントの部分移植であれば点眼は8週間のみで済み、縫合も要さないため1回の受診で治療が完結する」と同氏は語っている。  Lagali氏らのパイロット研究は、イランとインドの円錐角膜の患者20人に対して実施された。研究の主目的は安全性の確認であったが、得られた結果は研究者を驚かせるものだった。手術前、20人中14人が全盲だったが、術後2年時点で盲に該当する患者はおらず、3人は1.0という完全な視力に回復していた。しかも2年間の追跡期間中に合併症は発生せず、角膜厚は維持されていた。Lagali氏によると、「以前に作成した、今回用いたインプラントよりも脆弱な素材でも、角膜内に少なくとも10年間は定着することが示されている。残っている角膜組織から新たなコラーゲンも生成されるため、長期的には角膜の再生も促されるのではないか」とのことだ。  メリットはこれらばかりでない。ドナーから摘出された角膜は2週間以内に移植する必要があるが、このインプラントは最大2年間保管可能だ。「今後は、より多くの患者を対象とした無作為化比較試験を計画している。そこで有用性が確認できたら、その次は承認申請だ」とLagali氏は展望を語る。  米ワイルコーネル医科大学の眼科医で米国眼科学会のスポークスパーソンであるChristopher Starr氏は、本研究を「非常に有望」と評価。その上で、「円錐角膜などの角膜疾患のケアに当たる専門医の一人として、この論文で示された結果に興奮しており、この技術がFDAによって承認されることを願っている」と述べている。  なお、本パイロット研究は、スウェーデンのLinkoCare Life Sciences社が資金を提供して行われた。

統合失調症患者における治療開始前後の色彩感覚と認知機能

 統合失調症患者は発症の初期段階で、視覚機能や眼組織構造に有意な変化がみられることが、多くの研究で報告されている。統合失調症の病因における新たな科学的進歩の探求を可能にするには、眼組織や眼機能の潜在的な分野を調査する目的で、脳の構造・機能の従来の研究を変革することが求められる。しかし、虹彩構造と統合失調症との相関関係を調査した研究はほとんどなく、エビデンスは不十分であった。中国・Chengde Medical UniversityのLi Duan氏らは、虹彩構造、色彩感覚、認知機能が、初発統合失調症患者において抗精神病薬治療前後で変化するかを分析し、統合失調症の早期臨床スクリーニングと診断を簡便に測定可能なバイオマーカーの特定を試みた。その結果、統合失調症患者の色彩感覚は、認知機能と共に改善することが示唆された。著者らは、陰窩や色素点を伴う虹彩構造の特徴は、統合失調症の薬物治療効果に大きな影響を及ぼす可能性があり、統合失調症を鑑別する潜在的なバイオマーカーである可能性があることを報告した。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2022年6月13日号の報告。

介護保険による住宅改修の実情―視覚・認知機能障害へのサポートが不足

 介護保険の住宅改修費給付制度の利用状況を調査した結果が報告された。医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構の土屋瑠見子氏らの研究によるもの。認知機能障害や視覚障害による要支援者は、他の理由による要支援者よりも、住宅改修を行う割合が有意に低いことなどが明らかになった。詳細は、「BMC Geriatrics」に5月20日掲載された。  何らかの機能障害がある場合、その障害のタイプや程度に応じて住宅改修を行うことにより、転倒などによる受傷リスクが低下し生活の質(QOL)が維持され、死亡リスクが低下することが報告されている。介護保険制度でも、要支援・要介護認定を受けた場合には、住宅改修コストの1~3割、最大20万円まで助成され、手すりの設置、段差解消、便器の取替えなどが可能だ。土屋氏らは、この制度の利用状況と、障害のタイプ、性別、世帯収入などとの関連を詳細に検討した。

心臓の病気が緑内障のリスク?―日本人での横断研究

 徐脈や心房細動などの不整脈、および左室肥大といった循環器系の病気が、緑内障のリスク因子であることを示唆するデータが報告された。JCHO三島総合病院眼科の鈴木幸久氏らの研究結果であり、詳細は「Biomedicines」に3月15日掲載された。  緑内障は眼圧(眼球内の内圧)が高いために、視神経が障害されて視野が狭くなる病気。緑内障の中でも患者数が多い開放隅角緑内障は、緑内障発作(眼圧が急上昇し、失明回避のため緊急治療が必要となる状態)は起きにくいものの、徐々に視野狭窄が進むタイプであり、眼圧を下げる点眼薬による治療を継続する。しかし、眼圧を十分に下げても視野狭窄が進んでしまうことがあり、眼圧以外のリスク因子もあると考えられている。

nAMD/DME治療薬、バビースモ発売/中外製薬

 中外製薬株式会社は5月25日付のプレスリリースで、中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD)および糖尿病黄斑浮腫(DME)の治療薬であるバビースモ硝子体内注射液120mg/mL(一般名:ファリシマブ[遺伝子組換え])の販売を開始したことを発表した。  バビースモは、眼科領域における初のバイスペシフィック抗体であり、血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)およびアンジオポエチン-2(Ang-2)の働きを阻害することでnAMD、DMEに関与する2つの疾患経路を阻害し、視力を改善する作用を持つ。

ED治療薬が眼疾患のリスクを高める?

 勃起障害(ED)治療薬が網膜や視神経の病気のリスクを高めるのではないかとする論文が、「JAMA Ophthalmology」に4月7日掲載された。ED治療薬が処方されている人は、絶対リスクは低いながらも、網膜剥離などの相対リスクが85%有意に高いという。論文の筆頭著者であるブリティッシュコロンビア大学(カナダ)のMahyar Etminan氏は、「網膜に何らかの疾患リスクがある人は、ED治療薬の服用に際して医師に相談すべきかもしれない」と述べている。  PDE5阻害薬と呼ばれるED治療薬の使用と網膜疾患とのリスクの関連については、これまでにも複数の研究結果が報告されている。しかし、いずれも小規模な研究であり、結果に一貫性が見られない。これを背景としてEtminan氏らは、2006~2020年の医療費請求データベースを用い、米国成人男性21万3,033人(平均年齢64.6±13.3歳)を対象とする大規模な症例対照研究を行った。

糖尿病になっても眼の検査で視力を守れる

 眼の検査を毎年受けていれば、糖尿病患者であっても視力を守ることができるだろうか?「間違いなくできる」。そう答えるのは、米ペンシルベニア州立大学アイセンターのJeffrey Sundstrom氏だ。  Sundstrom氏は同大学のプレスリリースの中で、「糖尿病は網膜の血管の状態を変化させることが知られている。それらの血管の変化は、初期段階では自覚症状を引き起こさない。よって、視力低下を防ぐための対策を講じるには、網膜の血管の変化を早期に発見することが極めて重要だ。その方法は、散瞳検査を毎年受けることである」と解説している。散瞳検査とは、眼底に広がっている網膜の隅々まで念入りに観察するため、瞳孔を大きく開く目薬をさして(散瞳して)から行う眼底検査のことだ。