眼科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

日本女性、出産意欲の向上に関連する要素は?/神奈川県立保健福祉大学

 少子化が進む日本では、合計特殊出生率が2024年に1.15と過去最低を記録し、社会保障制度や労働力維持への影響が深刻化している。女性の就労率は上昇しているものの、長時間労働や不十分な育児支援のため、キャリアと出産・育児の両立は依然として課題である。こうした中、東京・丸の内エリアの企業に勤務する女性を対象に、キャリア志向と妊娠意欲の関連を明らかにする大規模調査が行われ、その結果がBMC Women’s Health誌2025年9月2日号に掲載された。

オメガ3脂肪酸が小児の近視抑制に有効?

 オメガ3系多価不飽和脂肪酸(以下、オメガ3脂肪酸)には、心臓病、認知症、一部のがんのリスク低下など、健康に対するさまざまな潜在的効果のあることが示されているが、小児の近視の発症を防ぐのにも役立つ可能性のあることが、新たな研究で示された。香港中文大学(中国)眼科学分野教授のJason Yam氏らによるこの研究結果は、「British Journal of Ophthalmology」に8月19日掲載された。  近視は、目の形状により、入射光線が目の奥にある光を感じる視細胞の壁である網膜に到達できないときに発生する。近視の罹患率は世界的に上昇傾向にあり、予防戦略を策定するためには食事などの修正可能なリスク因子を特定する必要がある。これまでの動物実験では、EPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸が、脈絡膜の血流と強膜の低酸素状態を調節することで近視の進行を抑制する可能性のあることが示唆されている。脈絡膜は網膜の外側の血管が豊富な膜のことであり、強膜は眼球の白目の部分のこと。オメガ3脂肪酸は、主に油の多い魚に含まれているが、一部の種子やナッツにも含まれている。

眼圧と呼吸機能に有意な関連、日本の大規模データが示す新知見

 呼吸機能と眼圧、一見無関係に見えるこの2つに意外な関連があるかもしれない。国内の約30万人の健診データの解析から、呼吸機能が低い人は眼圧が低い傾向にあることが示された。眼疾患における適切な眼圧管理では、呼吸機能も考慮すべきという示唆が得られたという。研究は、東京慈恵会医科大学眼科学講座の寺内稜氏、東海大学医学部基盤診療学系衛生学公衆衛生学の深井航太氏らによるもので、詳細は、「Scientific Reports」に7月1日掲載された。  緑内障は世界で2番目に多い失明原因であり、今後さらに患者数の増加が見込まれている。その発症と進行において眼圧は中心的な役割を果たしており、眼圧の上昇は唯一の修正可能なリスク因子とされている。眼圧は血圧や血糖、体格、年齢などの身体的因子によって影響を受けることが報告されているが、呼吸機能との関連については十分な検討がなされていない。過去に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の女性では眼圧が低下しているとの報告があるものの、再現性が不十分であり、その背景にある生理学的メカニズムも不明である。そこで本研究では、呼吸機能と眼圧の関連を検証する目的で、日本の大規模健診データを用いた横断研究を実施した。

GLP-1RA処方が糖尿病患者の新生血管型加齢黄斑変性と関連

 糖尿病患者に対するGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の処方と、新生血管型加齢黄斑変性(nAMD)の発症リスクとの関連を示すデータが報告された。交絡因子調整後にもリスクが2倍以上高いという。トロント大学のReut Shor氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Ophthalmology」に6月5日掲載された。  この研究は、カナダのオンタリオ州の公的医療制度で収集されたデータを用いた後ろ向きコホート研究として実施された。組み込み基準は、糖尿病と診断後12カ月以上の追跡が可能な66歳以上の患者であり、除外基準はデータ欠落、およびGLP-1RAが処方された患者においてその期間が6カ月に満たない患者。

糖尿病患者では血清脂質レベルと黄斑体積が相関か

 糖尿病(DM)の深刻な合併症として、糖尿病網膜症(DR)が挙げられるが、今回、糖尿病患者で血清中の脂質レベルと網膜黄斑体積が関連するという研究結果が報告された。DMがあるとDRがなくても網膜黄斑体積が減少し、また、DMがなくても血清脂質が高いと体積は減少することが示された。さらに、DRがあり、かつ血清脂質が高いと網膜黄斑体積が病的に増加する可能性が示唆されたという。研究は慶應義塾大学医学部眼科の虫賀庸朗氏、永井紀博博士、および同眼科にも籍を置く藤田医科大学東京先端医療研究センターの小沢洋子教授らによるもので、詳細は「PLOS One」に6月4日掲載された。

手術時、視力低下で困っている外科医の割合は?/医師1,000人アンケート

 医師の日常業務は診察や画像読影、手術など目を酷使する内容ばかりである。また、眼科領域の手術として、2000年代から屈折矯正手術(レーシック、眼内コンタクトレンズ[Implantable Contact Lens:ICL])が日本でも認められるようになり、現時点での医師、とくに眼科医の施術率が気になるところである。そこで今回、医師の眼の健康問題に関するアンケートを実施し、日常診療で困っていることや心がけていること、医師のレーシックやICLをはじめとする眼科手術の施術率などについて、会員医師1,024人(30代以上)にアンケート調査を行った。

医師にも経営能力とリーダーシップが不可欠な時代のソリューション

 医療機関の経営環境が厳しさを増すなか、医師にも経営能力が求められている。順天堂大学の猪俣 武範氏は、眼科の臨床・研究の傍ら病院管理学研究室の准教授も務める。米国でMBAを取得し順天堂医院の経営にも携わる猪俣氏が提案する、多忙な医師が効率的に経営能力を身に付けるための解決策とは?  今、わが国の病院経営は危機的な状況にあります。診療報酬は抑制される一方、慢性的な人手不足で医療現場は疲弊し、病院の6割は赤字だと報じられています。医師も経営をしっかり学ばなければならない時代になったといえるでしょう。

賃金・物価上昇、診療報酬改定が直撃!診療所の経営は?/医師1,000人アンケート

 2024年の診療報酬改定は、診療報酬本体は+0.88%、薬価・材料価格引き下げは-1.00%で、全体ではマイナス改定となった。「医療従事者の賃上げ」「医療DX等による質の高い医療の実現」「医療・介護・障害福祉サービスの連携強化」という3つの目標が掲げられ、関連する項目が加算・減算された。診療報酬改定のほか、ここ数年の急激な物価上昇や人件費高騰もクリニックの経営に影響を与えていることが予想される。ケアネットでは「自身でクリニックを経営し、開業後3年以上が経過している医師」(40代以上)を対象に、直近の経営状況についてWebアンケートで聞いた。

AIは眼科医の緑内障診断に影響を与える

 近年、人工知能(AI)による画像診断アルゴリズムは眼科疾患の診断精度を向上させているが、医師の判断に影響を及ぼし、バイアスを引き起こす可能性もある。今回、眼底写真に基づく緑内障診断において、AIの診断結果は医師の判断に影響を及ぼすという研究結果が報告された。特に、経験の浅い医師ほどAIの診断結果の影響を受けやすいことが示されたという。研究は、山梨大学医学部眼科学教室の柏木賢治氏らによるもので、詳細は「PLOS One」に4月16日掲載された。  緑内障は自覚症状が少ない場合が多く、疾患による障害は不可逆的であるため、早期発見が極めて重要だ。近年、緑内障の診断においてAIが有用であることを示す研究報告が多数発表されている。しかし、AIの利用が拡大するにつれ、眼科医の診断がAIの結果に影響を受け、診断を誤ってしまう可能性も懸念される。実際、皮膚病変の診断においてAIが誤診した際、その診断に異議を唱える皮膚科医は少なかったとの報告がある。一方、緑内障に関しては、AIの診断が医師の判断に及ぼす影響について十分な検証が行われてこなかった。こういった背景を踏まえ、著者らは眼底写真を用いた緑内障の検出および重症度評価に対するAIの影響を検討した。

多くの高齢者が白内障手術に恐怖心を抱いている

 白内障の手術は最も安全性の高い手術の一つであり、成功率は95%に達する。それにもかかわらず、多くの高齢者は失明を恐れて手術を受けていないことが、米シンシナティ大学医学部のLisa Kelly氏らによる研究で明らかにされた。この研究の詳細は、「The Journal of Clinical Ophthalmology」に3月28日掲載された。  白内障は、目のレンズの役割を担う水晶体が白く濁り、視界がぼやけたり暗くなったりする病態を指す。原因は、主に加齢に伴い水晶体を構成するタンパク質が酸化して白く濁ることにある。米クリーブランド・クリニックによると、90代の約半数では、どこかの時点で濁った水晶体を透明な人工水晶体に置換する手術を受ける必要があるという。手術に要する時間は非常に短い上に、痛みはほとんどない。米国では毎年300万件以上の白内障手術が行われている。