眼科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

小児期の弱視が成人後の肥満、糖尿病リスクなどと関連

 子ども時代に弱視であった人は成人後の視力も良くないことが多いだけでなく、心血管代謝疾患のリスクが高いことを示すデータが報告された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)眼科学研究所のSiegfried Wagner氏らの研究によるもので、詳細は、「eClinicalMedicine」に3月7日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「視覚は健康全般の番人としての役割があり、視機能はほかの器官の働きと密接な関係がある」と話している。  視力は出生後に物を見ることで、網膜から脳へつながる神経が刺激されて成長する。視力が急速に成長する幼少期に何かしらの理由で網膜が刺激されない状態では、視力の成長が滞る。また、左右の見え方に少し差がある場合には、脳は良く見えない方の目の情報を無視するような処理をするため、見えにくかった方の目の視力はより育ちにくくなる。子どもに多い斜視も、このような理由で弱視につながりやすい。

糖尿病黄斑浮腫へのアフリベルセプト、高用量も安全・有効/Lancet

 糖尿病黄斑浮腫(DMO)患者へのアフリベルセプト8mgを12週ごとおよび16週ごとの硝子体内投与について、標準対照の2mgを8週ごとに投与との比較において、有効性および安全性は非劣性であることが示された。米国・Retina Consultants of AmericaのDavid M. Brown氏らが、第II/III相無作為化二重盲検非劣性試験「PHOTON試験」の48週時点の結果を報告した。アフリベルセプト8mgは同2mgと比べて、投与頻度を減少し治療アウトカムを改善できる可能性が示されていた。Lancet誌2024年3月23日号掲載の報告。

ドライアイは歯周病と有意に関連

 ドライアイは一般的な眼疾患であり、コンタクトレンズの使用や加齢のほか、自己免疫疾患などによっても生じる。今回、日本人成人を対象とする大規模な研究が行われ、ドライアイの診断を受けたことがある人ほど、歯周病の罹患率が高いことが明らかとなった。新潟大学大学院医歯学総合研究科予防歯科学分野の小川祐司氏らによる研究であり、詳細は「BMC Oral Health」に1月8日掲載された。  歯周病は世界的に罹患率が高く、日本人が歯を失う原因の第1位となっている。歯周病の人は口内細菌により長期の全身炎症が生じることから、全身疾患のリスクが上昇する可能性がある。一方、ドライアイについても、炎症との関連を指摘する研究が報告されている。これまでの研究から、ドライアイと歯周病の関連が示唆されるものの、エビデンスは限られ、日本人における知見は不足している。

白内障手術で軽度認知障害患者の認知機能が改善か

 高齢の軽度認知障害(MCI)患者は、白内障手術を受けると認知機能が改善する可能性のあることが、順天堂東京江東高齢者医療センター眼科の吉田悠人氏らの研究グループが実施した前向きコホート研究から明らかになった。一方で、認知症患者では白内障手術前後で認知機能テストのスコアに有意な変化は見られなかったことから、研究グループは「認知機能の改善を期待するには、認知症の前段階で白内障手術を行うことが望ましい可能性がある」と述べている。研究の詳細は「Acta Ophthalmologica」に12月25日掲載された。

一風変わった視覚障害は早期のアルツハイマー病のサインかも

 アルツハイマー病症例の約10%に早い段階から生じる、後部皮質萎縮症(posterior cortical atrophy;PCA)と呼ばれる視覚障害は、近いうちにアルツハイマー病を発症することを知らせるシグナルである可能性の高いことが、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)神経科のMarianne Chapleau氏らによる研究で示された。この研究結果は、「Lancet Neurology」2月号に掲載された。  PCAでは、文字を書く、物が動いているのか止まっているのかを判断する、落とした物を拾うなどの、視力を必要とするタスクをこなすのが突然難しくなる。しかも、このような日常生活に影響を及ぼすような症状が現れても、視力検査では異常が検出されないという。Chapleau氏は、「患者はたいていの場合、視覚症状が出始めると検眼士を受診し、眼科医に紹介される場合もあるが、眼科医でもPCAを認識できないことがある。そのような患者を早期に発見して治療を受けさせるには、臨床現場で使える優れたツールが必要だ」と話す。

デキサメタゾン製剤、アセタゾラミドなどに「重大な副作用」追加/厚労省

 厚生労働省は1月10日、アセタゾラミドやデキサメタゾン製剤などの添付文書について、使用上の注意改訂指示を発出した。炭酸脱水酵素阻害薬のアセタゾラミド、アセタゾラミドナトリウム(商品名:ダイアモックス)には重大な副作用として「急性呼吸窮迫症候群、肺水腫」が、デキサメタゾン製剤(経口剤および注射剤)や副腎皮質ホルモン製剤(経口剤および注射剤)のうちリンパ系腫瘍の効能を有する製剤には重大な副作用として「腫瘍崩壊症候群」が追加された。  急性呼吸窮迫症候群および肺水腫関連の症例を評価した結果、アセタゾラミド、アセタゾラミドナトリウムと急性呼吸窮迫症候群および肺水腫との因果関係が否定できない症例(国内11例のうち9例、海外6例のうち4例。死亡例は国内3例、海外1例)が集積したため。

ミシガン州の5人の女性で眼梅毒、感染源は同一の無症候性梅毒男性

 「Morbidity and Mortality Weekly Report」11月24日号に、米ミシガン州で2022年3月から7月の間に5人の女性において確認された眼梅毒の症例に関する報告書が掲載された。この報告書をまとめた、米カラマズー郡保健地域サービス局(KCHCSD)のWilliam Nettleton氏らは、これらの女性がいずれも、無症候性梅毒の同一の男性と性的関係を持っていたこと、および眼梅毒自体が非常にまれなことから、この男性が持っていた梅毒菌(Treponema pallidum)の株が眼合併症のリスクを高めたのではないかと見ている。  梅毒菌は、感染しても多くの場合、症状がすぐに現れることはないため、気付かないうちに他者を感染させてしまうことがある。梅毒の症状は、時間とともに全身に進行していき、視力の永久的な損傷など深刻な神経症状を引き起こす可能性がある。

セマグルチドが糖尿病患者の視力に悪影響を及ぼす可能性は否定的

 オゼンピックやウゴービという商品名で流通しているGLP-1受容体作動薬のセマグルチドは、使用開始後に高血糖が急速に改善されることがある。急速な高血糖の改善は時に糖尿病網膜症の悪化を引き起こすことが知られているが、セマグルチド使用開始後に網膜症の急性増悪が生じる懸念は高くないとする研究結果が報告された。米ミネソタ網膜コンサルタントのZeeshan Haq氏らの研究によるもので、第127回米国眼科学会年次総会(AAO2023、11月3~6日、サンフランシスコ)で報告された。なお研究者らは、セマグルチドによる治療を受けることを検討している糖尿病患者に対し、より決定的な研究結果が明らかになるまでは、同薬のメリットとデメリットについて医師とよく相談することを勧めている。

患者×外科医の性別パターン、術後死亡率との関連は?/BMJ

 患者と外科医の4タイプの性別の組み合わせ(男性患者・男性外科医、女性患者・女性外科医、男性患者・女性外科医、女性患者・男性外科医)で、術後30日以内の死亡率に大きな差はなく、患者と外科医の性別の一致による臨床的に意義のある差を認めないことが、カナダ・トロント大学のChristopher J.D. Wallis氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年11月22日号で報告された。  研究グループは、米国における患者と外科医の性別一致と術後死亡率との関連を評価する目的で、後ろ向き観察研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]/国立マイノリティ健康格差研究所[NIMHD]などの助成を受けた)。

眼科疾患と認知症リスク~メタ解析

 一般的な眼科疾患と認知症との関係を調査するため、中国・Shenzhen Qianhai Shekou Free Trade Zone HospitalのJiayi Feng氏らは、コホート研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、眼科疾患は、すべての原因による認知症やアルツハイマー病のリスク増加と関連している可能性が示唆された。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2023年7月29日号の報告。  対象は、眼科疾患を有する患者。2022年8月25日までに公表された文献をPubMed、EMBASE、Web of Scienceなどのオンラインデータベースより、システマティックに検索した。緑内障、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症(DR)、白内障とすべての原因による認知症、アルツハイマー病、血管性認知症との関連を評価したコホート研究をメタ解析に含めた。ランダム効果モデルを用いてプールし、相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。不均一性の評価には、I2統計を用いた。サブグループ分析および感度分析を実施した。