腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:269

内容充実!『がん免疫療法ガイドライン』の第2版が発刊

 2019年3月29日、日本臨床腫瘍学会が編集した『がん免疫療法ガイドライン第2版』が発刊。2016年に初版が発行されてから2年。非常にスピーディな改定が行われた。今回の改定では、この間に明らかとなった各疾患での治療エビデンスや副作用管理などが集約化された。  本ガイドラインの構成についての大幅なリニューアルはないが、各項の解説が「発症の頻度」、「臨床症状と診断」、「治療方針」に細分化されたことで、実臨床に役立てやすくなっている。

ER陽性/HER2 陰性乳がんに対するS-1 アジュバントが有効中止/京都大学

 京都大学大学院医学研究科外科学講座乳腺外科 戸井雅和氏(中井雅和氏)を主任研究者とした研究グループが2012年より実施してきたエストロゲン受容体(ER)陽性/HER2陰性乳がんに対するS-1術後療法ランダム化比較第Ⅲ相試験(POTENT試験)の中間解析結果を同大学のHPで発表。  主要評価項目である無浸潤疾患生存期間が、事前に設定した有効中止の基準に合致したことにより試験を中止することを決定した。POTENT試験は先進医療Bに基づく医師主導の臨床試験。

NSCLC患者ががん治療に対し望むこと

 自分が受けているがん治療に対し、患者は何を望み、どのように考え、どんな情報を求めているのだろうか。  日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は、「非小細胞肺がん(NSCLC)患者さんにおける治療選択に関する意識調査」を実施し、その結果を2019年5月9日に発表した。  本調査は、2018年12月13~16日に、NSCLC治療経験のある患者(現在薬物治療中または薬物治療終了から1年未満)139例を対象に、がん情報サイト「オンコロ」にてアンケート形式で実施された。

DS-8201、HER2陽性乳がん第II相臨床試験の結果/第一三共

 第一三共株式会社とアストラゼネカは、HER2陽性の再発または転移のある乳がん患者を対象とした抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)の第II相臨床試験(DESTINY-Breast01)において、臨床的意義のある効果が示されたと発表。  同試験は、T-DM1治療を受けたHER2陽性の再発または転移のある乳がん患者253例を対象とした北米、欧州および日本を含むアジアにおけるグローバル第II相臨床試験。同試験の主要評価項目である客観的奏効率は、2019年4月に医学雑誌「The Lancet Oncology」にて公表された本剤の日米共同第1相臨床試験の結果と同様の傾向が認められた。

がん患者のVTE、抗凝固薬投与は3ヵ月以上?

 静脈血栓塞栓症(VTE)は、がん患者における上位の疾患・死亡要因である。がん患者のVTE治療は、現在のところ3~6ヵ月以上の抗凝固療法が推奨されているが、至適期間は不明であった。米国・クリーブランドクリニックのAlok A. Khorana氏らは、新たに診断されたVTEを有するがん患者について、後ろ向きコホート研究を行い、抗凝固療法は3ヵ月以上でVTE再発リスクを約50%低下させることを明らかにした。Supportive Care in Cancer誌オンライン版2019年2月8日号掲載の報告。

芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍にtagraxofuspが効果/NEJM

 未治療または再発の芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)成人患者において、tagraxofusp(SL-401)の投与が臨床的奏効をもたらしたことが示された。発現頻度が高かった有害事象は肝機能異常および血小板減少症であり、重篤な有害事象は毛細血管漏出症候群であった。tagraxofuspは、短縮ジフテリア毒素と遺伝子組み換えヒトインターロイキン-3(IL-3)が融合したCD123標的細胞毒素である。米国・テキサス州立大学M.D.アンダーソンがんセンターのNaveen Pemmaraju氏らが、BPDCN患者11例を対象としたパイロット試験の良好な結果を受けて、tagraxofusp単独療法の安全性および有効性を検証する多施設共同非盲検第II相臨床試験を実施し、結果を報告した。BPDCNは、IL-3受容体サブユニットα(IL3RAまたはCD123)を過剰発現する形質細胞様樹状細胞の形質転換によって引き起こされる予後不良の進行性血液がん(造血器腫瘍)であり、白血病やリンパ腫に対する従来の治療法では効果がない。NEJM誌2019年4月25日号掲載の報告。

フルベストラントとAI剤併用の意義(解説:矢形寛氏)-1044

本試験は2つの内分泌療法薬の併用(FUL+AI)で、PFSだけでなくOSの改善までみられたという点で大変興味深いが、臨床応用においては注意が必要である。ポイントをまとめてみたい。1.AI単独群でPD後はFULの使用を無料で提供しており、半数弱が切り替えていたにもかかわらずOSの明確な改善がみられた。2.FULは250mgと通常の半量の使用であり、FUL 500mgより医療経済的にメリットが高そうである。3.現在の標準であるFUL単独(500mg)のAI剤に対する優位性はすでに示されているが(FALCON試験)、OSに関しては明確ではない(弱い間接的証拠はある[FIRST試験+CONFIRM試験])。

高齢者NSCLCにおけるペムブロリズマブの成績/ELCC2019

 ペムブロリズマブの3つ無作為化比較試験KEYNOTE-010、024、042のプール解析の結果、高齢の非小細胞肺がん(NSCLC)患者では、ペムブロリズマブでの全生存期間が化学療法を有意に上回った。この研究は3件の臨床試験の高齢(75歳以上)患者264例と75歳未満の患者2,292例の結果を比較したもので、九州がんセンターの野崎 要氏らが欧州肺癌学会(European Lung Cancer Congress 2019)で発表した。対象患者はPD-L1(TPS)1%以上であり、高齢患者の半数はTPS50%以上であった。

乳がんのリンパ浮腫が一過性から持続性になるリスク因子

 乳がん治療関連リンパ浮腫(breast-cancer-related lymphedema、以下BCRL)には一過性と持続性があるが、持続性への移行のリスク因子が明らかにされた。台湾・Koo-Foundation Sun Yat-Sen Cancer CenterのI-Wen Penn氏らによる5年間のコホート研究の結果、対象患者342例のうち3分の2が持続性で、「リンパ節転移が多い」「体重増加がある」「上腕周囲径の差(circumferential difference、以下CD)が大きい」患者ほど、持続性の尤度が高いことが示されたという。Supportive Care in Cancer誌2019年3月号掲載の報告。

がんゲノム医療の今

 手術や放射線治療では根治できないと判断された進行固形がんにおけるがん薬物療法は、正常細胞とがん細胞との“生物学的な違い”をターゲットにする「分子標的薬」や「免疫チェックポイント阻害薬」が主流になりつつある。わが国におけるがんゲノム医療の現状は、どのようになっているのだろうか。  2019年4月、中外製薬株式会社が「第1回 がんゲノム医療に関する基礎メディアセミナー」を都内にて開催した。そこで、土原 一哉氏(国立がん研究センター 先端医療開発センター トランスレーショナルインフォマティクス分野 分野長)が講演を行った。