医療一般|page:1

THP療法後に病勢進行のないHER2+転移乳がん維持療法、tucatinib追加でPFS改善(HER2CLIMB-05)/SABCS2025

 タキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ(THP)併用療法後に病勢進行のないHER2陽性(HER2+)転移乳がん患者における維持療法として、トラスツズマブ+ペルツズマブ(HP)へのtucatinibの追加は、プラセボ+HP療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善した。米国・Sarah Cannon Research InstituteのErika P. Hamilton氏が、日本を含む23ヵ国で実施された第III相HER2CLIMB-05試験の結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。なお、この結果はJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年12月10日号に同時掲載されている1)。

ゾンゲルチニブ発売、HER2変異陽性NSCLCの治療の変化は?/ベーリンガーインゲルハイム

 日本ベーリンガーインゲルハイムは、ゾンゲルチニブ(商品名:ヘルネクシオス)を2025年11月12日に発売した。発売を機に「非小細胞肺がん(NSCLC)のアンメットニーズと最新治療」をテーマとしたメディアセミナーを2025年11月18日に開催した。後藤 功一氏(国立がん研究センター東病院 副院長 兼 呼吸器内科 科長)がHER2遺伝子変異陽性NSCLC治療のアンメットニーズと最新治療について紹介し、HER2遺伝子変異陽性NSCLC患者の清水 佳佑氏(肺がんHER2「HER HER」代表)が、患者会の運営経験、患者が抱える課題やアンメットニーズを述べた。

麻雀で統合失調症患者の認知機能は改善するか

 麻雀は、認知機能の向上と密接に関連していることが広く報告されている。しかし、統合失調症患者の認知機能に対する麻雀の影響については、これまで研究されていなかった。中国・重慶医学大学のRenqin Hu氏らは、統合失調症患者の認知機能改善を目的とした麻雀介入の有効性を評価するため、パイロット単盲検ランダム化比較試験を実施した。BMC Psychiatry誌2025年11月7日号の報告。  本パイロット研究では、統合失調症患者49例を対象に、介入群(麻雀と標準治療の併用)と対照群(標準治療)にランダムに割り付けた。介入群は、麻雀による認知トレーニングを1日2時間、週4日、12週間にわたり行った。主要認知アウトカムは、ケンブリッジ神経心理学的検査自動化バッテリー(CANTAB)を用いて評価した。副次的アウトカムには、生活の質(QOL)、臨床症状、無快感症、副作用、個人的および社会的機能を含めた。評価は、ベースライン時および4週目、8週目、12週目に実施された。

脳腫瘍内部に細菌シグナルの存在を発見

 脳は、細菌の存在しない無菌環境と考えられている。しかし新たな研究で、脳腫瘍の内部に細菌が存在することを示唆するシグナルが確認された。研究グループは、これらの細菌は、がんの成長や挙動に影響を与えている可能性があると考えている。これまでにも大腸がんなどの消化器がんにおいて細菌が発見されているが、他の部位の腫瘍における細菌の存在については議論があった。米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター外科腫瘍学およびゲノム医学分野のJennifer Wargo氏らによるこの研究結果は、「Nature Medicine」に11月14日掲載された。

メトホルミンが運動療法の効果を阻害してしまう可能性

 古くからある経口血糖降下薬で、米国では現在も2型糖尿病の第一選択薬として位置付けられているメトホルミンが、運動療法の効果を阻害してしまう可能性を示唆するデータが報告された。米ラトガーズ大学ニューブランズウィック校のSteven Malin氏らの研究によるもので、詳細は「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に10月7日掲載された。  この研究の背景について、論文の筆頭著者であるMalin氏は、「多くの医療従事者は、1+1=2だと考えている。しかし、メトホルミンがわずかながら運動の効果を弱めることを示唆するエビデンスも存在する」と話している。この問題の本質を探るため同氏らは、メタボリックシンドロームのリスクのある成人において、同薬が血管インスリン感受性(インスリンによる血管拡張や血流促進作用)を低下させる可能性の有無を、二重盲検プラセボ対照試験で検討した。

ロボット支援直腸がん手術、国内リアルワールドデータが示す新たな標準治療の可能性

 国内約1.8万人分のリアルワールドデータを解析した多施設後ろ向きコホート研究により、進行直腸がんに対するロボット支援手術が、開腹および腹腔鏡手術と比較して短期・長期の両成績で有意に優れていることが示された。5年全生存率はロボット支援手術で94%と最も高く、術後合併症の発症率や総入院費用も最小であったという。研究は東京科学大学消化管外科学分野の花岡まりえ氏、絹笠祐介氏らによるもので、詳細は10月28日付で「Colorectal Disease」に掲載された。  従来の腹腔鏡手術(LRR)は直腸がん治療に有効であるが、長期的な腫瘍学的成績は開腹手術(ORR)と同等で、直腸膜間全切除(TME)が不完全になるリスクがあることが報告されている。ロボット支援手術(RARR)は低侵襲なアプローチとして短期成績に優れるとされる一方、長期成績のデータは限られている。そこで本研究では、国内大規模リアルワールドデータを用いて、進行直腸がん患者に対するORR、LRR、RARRの短期・長期成績を比較することを目的とした。

ER+/HER2-早期乳がん術後ホルモン療法、giredestrant vs.標準治療(lidERA)/SABCS2025

 ER+/HER2-早期乳がんの術後内分泌療法として、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)giredestrantと現在の標準治療である内分泌療法を比較した第III相lidERA試験の中間解析の結果、giredestrantは無浸潤疾患生存期間(iDFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善をもたらし、再発または死亡に至る可能性を30%低下させたことを、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のAditya L. Bardia氏が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で報告した。 ・試験デザイン:非盲検国際多施設共同無作為化試験 ・対象:12ヵ月以内に乳がん手術を受け、必要に応じて術前/術後化学療法を完了したStageI~III、ER+/HER2-の早期乳がん患者 4,170例 ・試験群:giredestrant 30mg 1日1回経口投与 2,084例 ・対照群:標準内分泌療法(タモキシフェン、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタンから1つ選択) 2,086例 ※5年間または許容できない毒性が発現するまで継続。閉経前・閉経前後の女性および男性はLH-RHアゴニストを併用。

ベンゾジアゼピンの使用は認知症リスクにどの程度影響するのか?

 ベンゾジアゼピン系薬剤(BZD)は、不眠症や不安症の治療に幅広く使用されている。しかし、BZDの長期使用は、認知機能低下を加速させる可能性がある。認知症の前駆症状がBZD使用のきっかけとなり、逆因果バイアスが生じている可能性もあるため、エビデンスに一貫性が認められていない。カナダ・Universite de SherbrookeのDiego Legrand氏らは、BZDの使用量、投与期間、消失半減期が認知症発症と独立して関連しているかどうかを検証し、前駆期による交絡因子について検討を行った。Journal of the Neurological Sciences誌2025年12月15日号の報告。

小児期の肥満は成人後に診療数が多くなる

 小児期のBMIは、成人になってからの疾患リスクに影響を与えるのだろうか。このテーマについて、デンマーク・コペンハーゲン大学病院臨床研究予防センターのJulie Aarestrup氏らの研究グループは、小児約11万人を対象に調査し、その結果、小児期に肥満だった人では、成人してからの診断件数が多かったことが判明した。この結果は、Obesity 誌2025年11月18日オンライン版で公開された。  研究グループは、15~60歳までの性別特異的な疾患診断パターンが、小児期のBMIによって異なるかどうかを調査するために、コペンハーゲン学校健康記録登録簿中の1962~96年生まれで体重・身長が測定された児童11万2,952例(女子5万5,603例)を対象に、7歳時のBMIを低体重(4.3%)、正常体重(83.1%)、過体重(9.2%)、肥満(3.5%)に分類した。病院ベースの診断は、全国登録データから取得し、BMI群ごとに頻度の高い疾患上位50種について、性別別の累積発生率を算出した。

AIモデルが臓器ドナーの死亡タイミングを予測

 肝臓を提供する人(ドナー)の生命維持装置が外されてから死亡するまでの時間が30~45分を超えると、提供された肝臓が移植を受ける患者(レシピエント)の体内で良好に機能する可能性が低くなるため、移植は却下されることになる。しかし新たな研究で、人工知能(AI)モデルが、臓器が移植可能な状態を保てる時間内にドナーが死亡する可能性を医師よりも正確に予測し、ドナーが時間内に死亡せず、移植に至らなかったケースの割合(無駄な臓器取得率)を60%減らすことができたことが示された。米スタンフォード大学医学部腹部臓器移植外科臨床教授の佐々木一成氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Digital Health」に11月13日掲載された。

脂肪由来の幹細胞が脊椎圧迫骨折の治癒を促進

 日本の研究グループが、骨粗しょう症患者によく見られる背骨の圧迫骨折(脊椎圧迫骨折)の新たな治療法に関する成果を報告した。脂肪由来の幹細胞(ADSC)を用いた再生医療により骨折を修復できる可能性のあることが明らかになったという。幹細胞は、骨を含むさまざまな種類の組織に成長することができる。大阪公立大学大学院医学研究科整形外科学の高橋真治氏らによるこの研究の詳細は、「Bone & Joint Research」に10月28日掲載された。高橋氏は、「このシンプルで効果的な方法は、治りにくい骨折にも対応可能で、治癒を早める可能性があり、患者の健康寿命を延ばす新たな治療法となることが期待される」と話している。

アトピー性皮膚炎患者に最適な入浴の頻度は?

 アトピー性皮膚炎患者にとって入浴は判断の難しい問題であり、毎日の入浴が症状の悪化を引き起こすのではないかと心配する人もいる。こうした中、新たなランダム化比較試験で、入浴の頻度が毎日でも週に1~2回でも、入浴がアトピー性皮膚炎の症状に与える影響に違いはないことが明らかになった。  この試験を実施した英ノッティンガム大学臨床試験ユニットのLucy Bradshaw氏は、「アトピー性皮膚炎の人でも自分に合った入浴頻度を選べることを意味するこの結果は、アトピー性皮膚炎の症状に苦しむ人にとって素晴らしい知らせだ」と述べている。この臨床試験の詳細は、「British Journal of Dermatology」に11月10日掲載された。

日本の精神科外来における頭痛患者の特徴とそのマネジメントの現状

 頭痛は、精神科診療において最も頻繁に訴えられる身体的愁訴の1つであり、しばしば根底にある精神疾患に起因するものと考えられている。1次性頭痛、とくに片頭痛と緊張型頭痛は、精神疾患と併存することが少なくない。しかし、精神科外来診療におけるこれらのエビデンスは依然として限られていた。兵庫県・加古川中央市民病院の大谷 恭平氏らは、日本の総合病院の精神科外来患者における頭痛の特徴とそのマネジメントの現状を明らかにするため、レトロスペクティブに解析を行った。PCN Reports誌2025年10月30日号の報告。  2023年4月〜2024年3月に、600床の地域総合病院を受診したすべての精神科外来患者を対象に、レトロスペクティブカルテレビューを実施した。全対象患者2,525例のうち、頭痛関連の保険診断を受けた360例(14.3%)を特定し、頭痛のラベル、治療科、処方薬に関するデータを抽出した。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的としたモノクローナル抗体について、追加の処方を含む探索的症例集積を行うため、観察期間を2025年3月まで延長した。

認知症リスク低減効果が高い糖尿病治療薬は?~メタ解析

 糖尿病治療薬の中には、血糖値を下げるだけでなく認知機能の低下を抑える可能性が示唆されている薬剤がある一方、認知症の発症・進展は抑制しないという報告もある。今回、国立病院機構京都医療センターの加藤 さやか氏らは、システマティックレビュー・ネットワークメタアナリシスにより、9種類の糖尿病治療薬について2型糖尿病患者の認知症リスクの低減効果があるのかどうか、あるのであればどの薬剤がより効果が高いのかを解析した。その結果、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬が認知症リスクの低減効果を示し、その効果はこの順に高い可能性が示唆された。Diabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2025年10月22日号に掲載(2026年1月号に掲載予定)。

日常生活のルーティンの乱れが片頭痛を誘発か

 片頭痛を回避したいなら、退屈な日常生活のルーティンを守る方が良いようだ。新たな研究で、日々のルーティンを大きく乱す予想外の出来事(サプライザル)は、その後12〜24時間以内の片頭痛の発生リスクの上昇に強く関連していることが明らかになった。食べ過ぎや飲み過ぎ、夜更かし、ストレスフルな出来事、予想外のニュース、急激な気分の変化などは、身体に予想外の負荷を与え、片頭痛を引き起こす可能性があるという。米ハーバード大学医学大学院麻酔・救急・疼痛医学分野のDana Turner氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に11月11日掲載された。

膵管拡張は膵臓がんの警告サイン

 膵臓がんは、進行して致命的となるまで症状が現れにくいことから「サイレントキラー」とも呼ばれる。こうした中、新たな研究で、膵臓がんリスクの高い無症状患者では、膵臓と胆管をつなぐ膵管の拡張が、がんの進行リスクを高める独立したリスク因子であることが示された。米ジョンズ・ホプキンス大学医学部医学・腫瘍学教授のMarcia Irene Canto氏らによるこの研究結果は、「Gastro Hep Advances」に9月12日掲載された。Canto氏は、「この知見によりがんが早期発見されれば、生存率の向上につながる可能性がある」とニュースリリースの中で述べている。

ビタミンDの個別化投与で心筋梗塞リスクが半減

 成人の心臓病患者では、血中ビタミンD濃度が最適域に達するように患者ごとに用量を調整して投与すると、そうでない場合に比べて心筋梗塞の発症リスクが5割以上低下することが示された。米インターマウンテン・ヘルスの疫学者Heidi May氏らによるこの研究結果は、米国心臓協会(AHA)年次総会(Scientific Sessions 2025、11月7〜10日、米ニューオーリンズ)で発表された。  過去の研究では、血中ビタミンD濃度の低下は心臓の健康状態の悪化につながることが示されている。今回のランダム化比較試験(TARGET-D)では、急性冠症候群の成人患者630人(平均年齢63歳、男性78%)を対象に、血中ビタミンD濃度が最適(40ng/mL超〜80ng/mL以下)になるように、患者ごとに用量を調整してビタミンD投与することで、心筋梗塞の再発、脳卒中、心不全による入院、または死亡を予防できるかどうかを検証した。試験参加者の48%に心筋梗塞の既往歴があった。参加者は、3カ月ごとに血液検査で血中ビタミンD濃度を確認して投与量を調整する治療群か、ビタミンD濃度のモニタリングや用量調整を行わない標準治療群のいずれかにランダムに割り付けられた。

未治療および再発・難治性CLL/SLLへのピルトブルチニブ、イブルチニブと直接比較(BRUIN-CLL-314)/JCO

 BTK阻害薬投与歴のない慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)患者(未治療および再発・難治性症例)に対して、非共有結合型BTK阻害薬ピルトブルチニブを共有結合型BTK阻害薬イブルチニブと直接比較した無作為化比較試験で、全奏効率(ORR)についてピルトブルチニブがイブルチニブに非劣性を示したことを、米国・The Ohio State University Comprehensive Cancer CenterのJennifer A. Woyach氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年12月7月号に掲載。

成人の肺炎球菌感染症予防の新時代、21価肺炎球菌結合型ワクチン「キャップバックス」の臨床的意義/MSD

 MSDは11月21日、成人の肺炎球菌感染症予防をテーマとしたメディアセミナーを開催した。本セミナーでは、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 呼吸器内科学分野(第二内科)教授の迎 寛氏が「成人の肺炎球菌感染症予防は新しい時代へ ―21価肺炎球菌結合型ワクチン『キャップバックス』への期待―」と題して講演した。高齢者肺炎球菌感染症のリスクや予防法、10月に発売されたキャップバックスが予防する血清型の特徴などについて解説した。  迎氏はまず、日本における肺炎死亡の97.8%が65歳以上の高齢者で占められている現状を提示した。抗菌薬治療が発達した現代においても、高齢者肺炎の予後は依然として楽観できない。とくに強調されたのが、一度肺炎に罹患した高齢者が陥る「負のスパイラル」だ。

日本におけるアルツハイマー病診断の時間短縮フロー〜東京大学

 アルツハイマー病の診断において、血液バイオマーカーによる検査が注目されており、日本でも保険適用が待ち望まれている。東京大学の五十嵐 中氏らは、日本でのレカネマブ治療について、異なるワークフローにおける現在の診断検査の状況を推定するため、本研究を実施した。Alzheimer's & Dementia誌2025年10月7日号の報告。  ダイナミックシミュレーションを用いて、4つのシナリオ(現在の診断ワークフロー、トリアージツールとしての血液バイオマーカー[BBM]検査、確認診断のためのBBM検査およびこれらの併用)に関して、待ち時間と治療対象患者数を推定した。検査の需要を推定するため、オンライン調査により支払意思額(WTP)と無形費用を評価した。