ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:299

米国における移民・難民の結核疫学調査

結核は、感染症死亡世界第2位で、発病率は1990年から2003年の間に世界的に増加した。WHOによれば、2005年の新規患者は世界で約880万人、うち84.1%がアジアおよびサハラ以南のアフリカからの報告だったという。一方、先進国の発病率も、こうした国からの移民・難民の影響を受けていると言われ、米国では、1年間の結核の新規患者の約6割が、外国生まれの人であり、その大半は、移民や難民と推定されるという(2007年調べ)。こうした外国生まれの人に対する結核予防対策を講じるため、米国疾病管理予防センター(CDC)のYecai Liu氏らは、詳細な疫学調査を実施した。NEJM誌2009年6月4日号より。

新しい抗結核薬TMC207、多剤耐性肺結核の治療薬として有効:第II相第1段階試験

新たな抗結核薬として開発が進められているdiarylquinoline(TMC207)の第II相試験第1段階の結果、多剤耐性肺結核の治療薬として有効であることが確認された。南アフリカUniversity of Stellenboschヘルスサイエンス学部のAndreas H. Diacon氏らによる報告で、NEJM誌2009年6月4日号で発表された。TMC207は、結核菌のATP合成酵素を阻害するというこれまでにない作用機序を有する。in vitroで、薬剤感受性・薬剤耐性結核菌を強力に阻害すること、薬剤感受性の肺結核患者で殺菌作用を示すことが明らかになっていた。

生後3ヵ月の過度な体重増、早期成人期の心血管疾患や2型糖尿病リスク因子と関連

生後3ヵ月に急激な体重増が見られた人は、早期成人期に、インスリン感受性の低下など心血管疾患や2型糖尿病のリスク因子の発症率が増加することがわかった。新生児期の成長速度と、心血管疾患や2型糖尿病リスクとの関連についての研究結果は少ないという。オランダErasmus Medical CenterのRalph W. J. Leunissen氏らが、200人超の早期成人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2009年6月3日号で発表した。

うつ病歴のある親を持つ子どもへの認知行動療法

うつ病歴のある親を持ち、同じくうつ病歴、または軽度うつ症状のある子どもに対し、8週間の認知行動療法を行うことで、うつ症状の改善に効果があることがわかった。ただし、親が現在うつ病である場合には、この改善効果は見られなかったという。米国Vanderbilt大学のJudy Garber氏らが明らかにしたもので、JAMA誌2009年6月3日号で発表した。これまでの研究結果から、親がうつ病歴のある子どもは、少年・少女期にうつ症状を発症するリスクが大きいことがわかっている。

入院からPCI施行までの時間は短いほどよい

ACC/AHAガイドラインでは、ST上昇型急性心筋梗塞患者に対する経皮的冠動脈形成術(PCI)は、入院後90分以内を推奨しているが、米国エール大学のSaif S Rathore氏らが行った調査で、入院からPCI施行までの時間は短いほど死亡リスクが低下することが明らかになった。「90分以内で行っている施設も、できるだけ短縮すべきである」としている。BMJ誌2009年5月30日号(オンライン版2009年5月19日号)より。

変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の異常プリオン罹患率、100万人中289人

 英国では、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の病原と考えられる異常プリオンタンパクの罹患率は、多くとも100万人中289人であることが明らかになった。これまでの調査結果では、同罹患率の95%信頼区間が100万人中60~853人だった。今回の結果は前回の結果と整合性はあるものの、より少ない予測数が算出された。報告は、英国Health Protection AgencyのJonathan P Clewley氏らが、6万人超について行った調査によるもので、BMJ誌2009年5月30日号(オンライン版2009年5月21日号)で発表した。

MDR結核、中国、旧ソビエト諸国でなお脅威

結核の最新統計が、Global Project on Anti-Tuberculosis Drug Resistanceから発表された。Lancet誌2009年5月30日号(オンライン版2009年4月15日号)で公表されたのは、2002~2007年の83ヵ国の集計結果。それによると、多剤耐性(MDR)結核の脅威が、中国の2つの行政区と旧ソビエトの9ヵ国で続いていることが明らかになった。一方で、特にアフリカで顕著だが、薬剤耐性に関するデータが適切に集計できない国が多く、より簡単にデータを収集する方法の開発が必要だとしている。

低用量アスピリンの1次および2次予防のベネフィット:ATT

低用量アスピリンの1次予防および2次予防のベネフィットに関して、抗血栓療法に関する国際共同研究グループATT(Antithrombotic Trialists')コラボレーションによるメタ解析の結果が、Lancet誌2009年5月30日号にて報告された。いまだ明確になっていない1次予防に関して、「価値が認められるとの確証は得られなかった」と結論。ただし断定を避け、「さらなる試験が進行中」と結んでいる。

認知症治療の効果を評価する際は、年齢を考慮すべき

ケンブリッジ大学のGeorge M. Savva氏らの研究グループは、神経病理学的所見と認知症との関連について、加齢が及ぼす影響を推定するため、献体を用いた住民ベースの調査を行った。NEJM誌2009年5月28日号より。アルツハイマー病の研究は主に、65歳未満の若年高齢者に焦点を当てているが、より高齢な人を対照に含む研究で、アルツハイマー病と認知症との間の病理学的所見の関連は低いことが報告されてはいる。

食道腺がんに移行しやすいバレット食道、内視鏡的切除でリスクを減少

食道腺がんへの移行リスクが高い疾患として知られるバレット食道は、食道上皮の腸上皮化生を伴う。欧米の研究報告によると、慢性の逆流性食道炎患者の約10%に見られ、最近の住民スタディでは有病率1.6%、がん発病率は1970年代から500%以上増加、5年生存率は15%未満と高い致死率が報告されている。一方で、長期研究により、大半は非異形成か悪性度は低いままであることが明らかになってもいる。それでも悪性度の高い異形成に進行した場合、がん発病率は10%/人年以上で、現在まで異形成に対する最適な治療は明らかになっていない。米国ノースカロライナ大学食道疾患/嚥下センターのNicholas J. Shaheen氏らは、異形成を伴うバレット食道を、内視鏡的高周波アブレーションによって消失できるかどうか、それによってがん発病のリスクを低下することができるかどうかを多施設共同偽処置対照無作為化試験(米国内19施設)にて調査した。NEJM誌2009年5月28日号より。

制酸薬服用で院内肺炎の発症率が1.3倍に

 入院患者のうち、プロトンポンプ阻害薬(PPI)などの制酸薬を服用している人は、そうでない人に比べ、院内肺炎の発症率が約1.3倍に増加するようだ。制酸薬の種類別では、H2受容体拮抗薬の服用では同発症率に有意な増加は見られなかったが、PPI服用患者では同発症率が1.3倍に有意に増加していた。米国ベス・イスラエル・ディーコネスセンターのShoshana J. Herzig氏らが、6万人超を対象にした調査で明らかにしたもので、JAMA誌2009年5月27日号で発表した。

筋骨格の疼痛とうつ症状、12ヵ月の3段階治療で大きく改善

筋骨格の疼痛とうつ症状の緩和には、薬物療法の最適化や痛みの自己管理などを含めた3段階治療が効果があるようだ。米国Indiana大学内科/老年病学のKurt Kroenke氏らが無作為化試験で明らかにしたもので、JAMA誌2009年5月27日号で発表した。12ヵ月間にわたる介入で、被験者の26%が、痛みとうつ症状の両方が大きく改善したという。痛みとうつ症状は、プライマリ・ケアの中で最も多い患者の訴えで、その30~50%が両者を併発している。

腹腔鏡下手術のスキルは、実地前にバーチャル・トレーニングで磨くべき

腹腔鏡下手術のスキルは、熟達者ベースのバーチャル・リアリティ・シミュレーターによるトレーニングで、臨床レベルと同等の経験値を積むことができることが報告された。デンマーク・コペンハーゲン大学病院婦人科/Juliane Marie小児センター/女性・生殖部門のChristian R Larsen氏らが、婦人科・産科を専攻した研修医(1、2年生)を対象に行った前向き無作為化試験の結果、明らかにされた。BMJ誌2009年5月23日号(オンライン版2009年5月14日号)より。

降圧薬は血圧レベルに関係なく、ある年齢になったら検討すべきではないか

ロンドン大学疫学部門のM.R.Law氏らの研究グループは、異なるクラスの降圧薬について、冠動脈疾患(CHD)と脳卒中予防の有効性を定量的に判定するとともに、治療を受けるべき患者を見極めることを目的としたメタ解析を行った。Medline(1966~2007)をデータソースに文献を検索、CHDイベントおよび脳卒中の記録があった147の前向き無作為化疫学研究を選定し解析は行われた。BMJ誌2009年5月24日号より。

妊娠糖尿病患者の2型糖尿病発症リスクは、正常妊婦に比べ7倍

妊娠糖尿病を有した女性が、2型糖尿病を発症するリスクは、正常血糖妊娠だった女性に比べ7倍強に上ることが、システマティックレビューおよびメタ解析の結果、明らかになった。ロンドン・Northwick Park病院のLeanne Bellamy氏らによる解析で、Lancet誌2009年5月23日号に掲載された。これまで、妊娠糖尿病患者が2型糖尿病を発症するリスクが高いことは知られていたが、その度合いや時期については十分わかってはいなかった。

2型糖尿病患者への強化血糖コントロールがもたらすアウトカム

2型糖尿病患者への強化血糖コントロール療法は、標準療法と比べて、冠動脈イベントの低下をもたらし死亡リスクも上昇しないことが、5つの前向き無作為化試験(UKPDS、PROactive、ADVANCE、VADT、ACCORD)のメタ解析の結果、報告された。強化血糖コントロール療法の有益性に関してはこれまで明らかにされていなかった。ケンブリッジ大学公衆衛生/プライマリ・ケア部門のKausik K Ray氏らによる本報告は、Lancet誌2009年5月23日号に掲載されている。

非ST上昇型急性冠症候群への抗血小板薬投与は、血管造影12時間以上前ではリスク増大

非ST上昇型急性冠動脈症候群の患者への、血管造影前の、抗血小板薬、糖蛋白IIb/IIIa阻害剤の投与は、12時間以上前では、血管造影後の投与(PCI前)と有効性が変わらないばかりか、安全性の面で、非致死的出血リスクの上昇および輸血の必要性が増加することが明らかになった。これまで、同剤投与の開始時期については明らかにされていなかった。報告は、アメリカ・Brigham and Women’s病院TIMI(Thrombolysis in Myocardial Infarction)研究グループのRobert P. Giugliano氏らによるもので、早期投与はハイリスク患者の虚血性合併症予防に有効であるとの仮説を立て行われたEARLY ACS(Early Glycoprotein IIb/IIIa Inhibition in Non.ST-Segment Elevation Acute Coronary Syndrome)試験の結果。NEJM誌2009年5月21日号(オンライン版2009年3月30日号)で発表された。

ハイリスクな非ST上昇型急性冠症候群への冠動脈造影、24時間以内で転帰改善

非ST上昇型急性冠動脈症候群の患者への冠動脈造影を、ルーチンに24時間以内に行うことが転機の改善に寄与することが明らかにされた。ただし、ハイリスク患者に限られる。これまで、侵襲的治療が転機の改善に寄与することは報告されていたが、介入の至適時期については明らかにされていなかった。カナダ・マクマスター大学病院Hamilton Health SciencesのShamir R. Mehta氏らによって行われた、TIMACS(Timing of Intervention in Acute Coronary Syndrome)試験からの報告で、NEJM誌2009年5月21日号で掲載された。

薬剤抵抗性心筋虚血への自己骨髄由来単核球細胞の心筋内注入で、心筋灌流が改善

薬剤抵抗性慢性心筋虚血に対し、自己骨髄由来単核球細胞を心筋内に注入すると、わずかではあるが心筋灌流が短期間で有意に改善することがわかった。オランダLeiden大学心臓病学部門のJan van Ramshorst氏らが、患者50人を対象に無作為化プラセボ対照二重盲検試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2009年5月20日号で発表した。

白内障手術前14日間のタムスロシン投与、術後合併症リスクを2倍超に増大

白内障の手術前14日間に、αアドレナリン受容体遮断薬のタムスロシン(商品名:ハルナールほか)を服用していた人は、術後合併症リスクが2倍以上に増大することが報告された。Institute for Clinical Evaluative Sciences(カナダ、トロント)のChaim M. Bell氏らが、オンタリオ州のヘルスケアデータを用いて行った後ろ向きコホート研究の結果明らかにしたもので、JAMA誌2009年5月20日号で発表した。タムスロシンは、白内障とともに、高齢男性に多い疾患である前立腺肥大の治療薬。同剤に関してはこれまで、白内障手術中に瞳孔拡大を阻害する可能性があることが明らかにされていた。