診察時の小冊子活用で、小児呼吸器感染症の受診および抗生物質処方を抑制できる

提供元:ケアネット

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公開日:2009/08/28

 



小児期の呼吸器感染症は、ほとんどが受診の必要がなく、ましてや抗生物質によるベネフィットはほとんどないにもかかわらず、再受診を含む受療率は高いままで、抗生物質も頻繁に処方されている。英国の公的医療保険であるNHSでは、小児の急性の咳だけで5,140万ドル以上の医療費が費やされており、その大半が、開業医の診察によるもので、ガイドラインも整備されているが改善の兆しはなく問題視されている。そこで、英国カーディフ大学医学部プライマリ・ケア/公衆衛生学部門のNick A Francis氏らは、小児呼吸器感染症に関する小冊子をプライマリ・ケア医に提供し、診察時に使うようトレーニングをすることで、再受診率や抗生物質の処方率が減るのではないかと、クラスター無作為化試験を行い検討した。BMJ誌2009年8月15日号(オンライン版2009年7月29日号)より。

小冊子活用を訓練された開業医とそうでない開業医のもとでの再受診率等を調査




本試験は、小冊子の使用が、ケアに対する患児の親の満足度を維持しつつ、同一疾患での再受診の低下、抗生物質使用の低下に結びつき、将来的な受診動向に影響をおよぼすことを立証することを目的に行われた。

ウェールズとイングランドの開業医61人の協力のもと、急性の呼吸器感染症(7日以内)を訴え受診した小児(6ヵ月~14歳)558例を被験者として行われた。このうち、肺炎、喘息、重篤な随伴疾患、即時入院の必要性が疑われる小児は除外された。その結果、3例が除外され、また27例は追跡ができず解析から除外された。最終的に528例(94.6%)で評価が行われた。

被験者は、介入群(受診した医師が小冊子の使用を訓練・指示されている)と対照群(特別な訓練を受けずいつも通りの診察が行われる)に無作為化された。

主要転帰は、追跡期間2週間の間に同一疾患で対面診察を受けた小児の割合とした。副次転帰は、抗生物質の処方率、同消費量、将来的な受診動向、両親の満足度、安心度、理解度。

抗生物質の処方は劇的に低下




再受診率は、介入群は12.9%だったが、対照群は16.2%で、3.3%(95%信頼区間:-2.7%~9.3%、P=0.29)の絶対リスクの差が生じた。

ただしクラスター形成を説明するための多平面モデリング(開業医と患者個々人レベルで)の結果からは、再受診率の違いは見られなかった(オッズ比:0.75、95%信頼区間:0.41~1.38)。

抗生物質の処方率は、介入群では19.5%、一方対照群では40.8%で、21.3%(同:13.7~28.9、P<0.001)の絶対リスクの差が生じた。モデリング後も、差は有意なままだった(オッズ比:0.29、同:0.14~0.60)。

両群間の同様の有意差が、将来的な受診動向(もし同様の疾患が起きた場合、同じ医師の診察を受けることを親が表明)についても見られた(オッズ比:0.34、同:0.20~0.57)。

一方、両親の満足度・安心度・理解度スコアについては、両群間で有意差は見られなかった。

これらからFrancis氏は、「プライマリ・ケアでの小児呼吸器感染症に関する小冊子の使用は、抗生物質処方の低下という重要な結果につながり、両親のケアに対する満足度を低下することはない」と結論している。