新型インフルエンザ感染妊婦は迅速に治療を

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2009/08/20

 



汎発性H1N1 2009インフルエンザウイルスに感染した妊婦は重症化しやすく、合併症をきたして入院に至る可能性が高いため、確定例のみならず可能性例を含め迅速に治療を開始すべきことが、アメリカ国立慢性疾患予防・健康増進センターのDenise J Jamieson氏らが実施した調査で明らかとなった。アメリカを含む世界規模で広範に発生した発熱性呼吸器感染症の原因として、汎発性H1N1 2009インフルエンザウイルスが同定された。症状は軽度~重度までさまざまだが、妊婦への影響に関する報告はほとんどないという。Lancet誌2009年8月8日号(オンライン版2009年7月29日号)掲載の報告。

CDCによる強化サーベイランスの一環として調査




研究グループは、今回の発生から1ヵ月以内にアメリカ国内の妊婦におけるH1N1ウイルスの感染状況および発生後2ヵ月以内の感染死亡例について解析を行った。妊婦感染の初回報告後、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は強化サーベイランス(enhanced surveillance)の一環として、汎発性H1N1ウイルス感染妊婦の病態および死亡について系統的な情報収集を開始した。

急性呼吸器感染症の症状を呈し、リアルタイムRT-PCR法あるいはウイルス培養にて汎発性H1N1ウイルスが確認された場合を「確定例(confirmed case)」と定義した。発熱をともなう急性呼吸器感染症の症状がみられ、インフルエンザA型は陽性だがH1およびH3が陰性の場合を「可能性例(probable case)」とした。

感染妊婦は合併症発現リスクが増大、日頃から妊婦へ情報提供を




2009年4月15日~5月18日までに、13州から34人の妊婦が確定例および可能性例としてCDCに報告された。入院例は11例(32%)であった。

発生1ヵ月以内におけるH1N1ウイルス感染者の推定入院者数(10万人当たり)は、一般人口の0.076人に対し妊婦は0.32人と高率であった。4月15~6月16日までに、CDCには6人の感染妊婦の死亡が報告されたが、いずれも肺炎を発症し機械的人工換気を要する急性呼吸促迫症候群を呈してした。

著者は、「妊婦は汎発性H1N1ウイルス感染による合併症の発現リスクが増大している可能性がある。これらのデータは、H1N1ウイルス感染妊婦には迅速に抗インフルエンザ薬による治療を行うべきとする現行の勧告を支持するものである」と結論し、「妊婦には、H1N1ウイルスや他の新たな病原体について、どのような公衆衛生上の対策があるかの情報を伝えることが重要である」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)