虚血性心疾患と血漿CRP濃度との関連

提供元:ケアネット

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公開日:2009/08/11

 



C反応性蛋白(CRP)の血漿中濃度は、虚血性心疾患のリスクと独立して関連している。しかしこのCRP値が、虚血性心疾患そのものと関連しているのか、あるいはまた単に疾患の根底にあるアテローム硬化症のマーカーなのかは不明である。ロンドン王立大学疫学公衆部門環境・健康センターのPaul Elliott氏ら研究グループは、CRP濃度、遺伝子座位と、虚血性心疾患リスクとの関連について調査を行った。JAMA誌2009年7月1日号より。

CRP濃度と虚血性心疾患との関連を遺伝子レベルで調査




Elliott氏らははじめに、血漿CRP濃度と関連する遺伝子座位を同定するために、ゲノムワイド関連研究(n=17,967例)と再現性のための確認試験(replication study、n=13,615例)を実行した。データは1989~2008年に収集され、遺伝子タイピングは2003~2008年に行われた。

そして虚血性心疾患とCRP異型を含む遺伝子レベルでの関連を調査するために、CRP座位に関して最も密接に関連する一塩基多型(SNP)でメンデルランダム化試験を行った。この試験には、CRP異型に関する公表されたデータを収集し、合計28,112例のケース群と100,823例の対照群が含まれた。その結果と、CRP濃度と虚血性心疾患リスクとの関連に関する観察研究のメタ解析から得られた知見とを比較した。

検討では、最も密接するSNP、ケース群14,365例と対照群32,069例を選択し行われた。主要評価項目は、虚血性心疾患のリスク。

CRP座位と虚血性疾患との関連は認められず




結果、5つの遺伝子座位の遺伝子多型で、強い関連(CRP濃度の減少と関連)が確認された。1つは、LEPR座位の「SNP rs6700896」で、CRP濃度減少は-14.8%[95%信頼区間:-17.6%~-12.0%、P=6.2×10(-22)]。IL6R座位の「rs4537545」は-11.5%[同:-14.4%~-8.5%、P=1.3×10(-12)]。CRP座位の「rs7553007」は-20.7%[同:-23.4%~-17.9%、P=1.3×10(-38)]だった。HNF1A座位の「rs1183910」は-13.8%[同:-16.6%~-10.9%、P=1.9×10(-18)]。APOE-CI-CII座位の「rs4420638」は-21.8%[同:-25.3%~-18.1%、P=8.1×10(-26)]だった。

CRP座位の「rs7553007」と虚血性心疾患との関連は、CRP濃度20%低下につきオッズ比0.98(95%信頼区間: 0.94~1.01)。CRP濃度と虚血性心疾患の観察研究のメタ解析から予測できたオッズ比は0.94(同:0.94~0.95)だったが、Elliott氏らのメンデルランダム化試験からは、CRP座位と虚血性疾患との関連は認められなかった(オッズ比:1.0、95%信頼区間:0.97~1.02)(zスコア:-3.45、P<0.001)。

一方、LEPR座位の「SNPs rs6700896」(オッズ比:1.06、95%信頼区間:1.02~1.09)、IL6R座位の「rs4537545」(同:0.94、0.91~0.97)、APOE-CI-CII座位の「rs4420638」(同:1.16、1.12~1.21)では、虚血性心疾患との関連が認められた。HNF1A座位の「rs1183910」は認められていない。

以上の結果についてElliott氏は、「虚血性心疾患リスクに関してCRP遺伝子型とCRP濃度とは一致が見られなかった。CRPと虚血性心疾患とには因果関係がないことが立証されたといえる」と結論している。

(朝田哲明:医療ライター)