TTR遺伝子サイレンサーは、肝臓での野生型、変異型双方のトランスサイレチン(TTR)の産生を抑制し、アミロイド線維の継続的な形成と組織への沈着に関与する循環血中の前駆体タンパク質の供給を低減する。TTR遺伝子サイレンシング療法は、TTR型心アミロイドーシス(ATTR-CM)の有望な疾患修飾療法とされる。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのJulian D. Gillmore氏らは、TTR遺伝子サイレンシング療法はATTR-CMの臨床アウトカムを全般的に有意に改善することを示した。一方、ベースラインにおいてTTRスタビライザーを使用していた患者では、有意な追加的有益性は得られなかった。JAMA誌オンライン版2026年8月30日号掲載の報告。
2薬剤の個別の無作為化試験のメタ解析
研究グループは、ATTR-CM患者におけるTTR遺伝子サイレンシング療法の有効性の評価を目的に、2種類の遺伝子サイレンサーに関する2つの国際的な無作為化プラセボ対照比較第III相試験(CARDIO-TTRansform[eplontersen]、HELIOS-B[ブトリシラン])のメタ解析を実施した。
事前に規定された主要評価項目は全死因死亡と心血管イベントの再発の複合であった。副次評価項目は、全死因死亡、心血管死、主要評価項目発生までの期間、機能的能力(6分間歩行距離)、健康状態(カンザスシティ心筋症質問票の総合要約スコア:KCCQ-OSS、0~100点、高スコアほど健康状態が良好)などであった。
CARDIO-TTRansform試験は、2020年3月~2023年7月に20ヵ国130施設で1,432例を、HELIOS-B試験は、2019年12月~2021年8月に26ヵ国87施設で654例を登録した(合計2,086例)。
ベースラインの年齢中央値は両試験とも77歳(範囲:CARDIO-TTRansform試験41~91歳、HELIOS-B試験45~85歳)、男性が計1,902例(1,297例[90.6%]、605例[92.5%])であった。
また、1,799例(CARDIO-TTRansform試験1,221例[85.3%]、HELIOS-B試験578例[88.4%])が野生型ATTR-CMで、1,505例(997例[69.6%]、508例[77.7%])はNYHA心機能分類IIであった。ベースラインでTTRスタビライザー(すべてタファミジス)の投与を受けていた患者(1,078例)は、CARDIO-TTRansform試験のほうが多かった(819例[57.2%]、259例[39.6%])。
主要評価項目が有意に改善、スタビライザーの有無で異なる治療効果
eplontersenおよびブトリシランによるTTR遺伝子サイレンシング療法は、プラセボとの比較で主要評価項目を有意に改善した(率比:0.80、95%信頼区間[CI]:0.69~0.94、p=0.006)。2つの試験に異質性は認められなかった(I
2=15.4%、異質性のp=0.28)。
また、遺伝子サイレンシング療法は、全死因死亡(ハザード比[HR]:0.74、95%CI:0.61~0.91)と、全死因死亡または初発心血管イベントの複合(HR:0.77、95%CI:0.67~0.89)の発生を抑制した。
さらに、遺伝子サイレンサーは、6分間歩行距離(プラセボ補正後群間差:22.2m、95%CI:14.3~30.0)と、KCCQ-OSS(4.5、95%CI:2.7~6.2)を低下させずに維持した。
主要評価項目に対する遺伝子サイレンシング療法の治療効果は、ベースラインにおけるスタビライザーの使用の有無によって異なり、基礎治療としてスタビライザーが投与されていない患者では有益性が認められた(リスク比[RR]:0.69、95%CI:0.57~0.85)。
これに対し、ベースラインでスタビライザーを併用していた患者では追加的な有益性は得られず(RR:0.97、95%CI:0.77~1.23)、異質性がみられた(異質性のp=0.03)。
同様のスタビライザー併用例における異質性を、機能的能力(6分間歩行距離:異質性のp=0.04)および健康状態(KCCQ-OSS:p<0.001)についても認めた。
重篤な有害事象や投与中止に至った有害事象の頻度は、遺伝子サイレンサー群とプラセボ群で同程度であった。ベースライン時のスタビライザー使用の有無にかかわらず、新たな安全性シグナルは認められなかった。
著者は、これらの知見が、ATTR-CMに対する疾患修飾療法としてのTTR遺伝子サイレンシング療法の有効性を裏付けている、とまとめている。また、TTRスタビライザー併用例で認めた有益性の減弱は、症例の構成状態や罹患期間の違い、TTR抑制の程度に残存する差異を反映している可能性があるが、スタビライザーによりTTRがすでに安定化している状態下では、遺伝子サイレンシングによる追加的な有益性には限界があることも考えられると指摘している。
(医学ライター 菅野 守)