ATTR型心アミロイドーシスへのeplontersen、心血管イベントを低減せず/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2026/09/25

 

 トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)は、不完全な折りたたみ(misfolding)が発生したトランスサイレチン(TTR)タンパクによって形成されるアミロイド線維が、細胞外に沈着することで引き起こされる、生命を脅かす進行性疾患である。eplontersenは、アンチセンスオリゴヌクレオチドであり、TTRサイレンサーとして、肝臓でのTTRの産生を顕著に減少させることが知られている。英国・Royal Free HospitalのMarianna Fontana氏らCARDIO-TTRansform Investigatorsは、ATTR-CMの治療においてeplontersenはプラセボと比較して、140週の時点での心血管死および心血管系の臨床イベント再発の複合リスクを低減しないことを、「CARDIO-TTRansform試験」の結果で示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年8月28日号で報告された。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。

20ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験

 CARDIO-TTRansform試験は、日本を含む20ヵ国130施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年3月~2023年7月に参加者を登録した(Ionis PharmaceuticalsとAstraZenecaの助成を受けた)。

 対象は、年齢18~90歳、心室中隔厚12mm以上、NYHA心機能分類I/II/IIIで、心不全既往、NT-proBNP値600pg/mL以上(心房細動患者は1,200pg/mL以上)のATTR-CM(野生型[ATTRwt]または変異型[ATTRv]のアミロイド心筋症)患者であった。

 被験者1,432例(平均年齢76.4歳、男性1,297例[90.6%])を、標準治療に加えて、eplontersen(45mg)を皮下投与する群(715例)、またはプラセボ群(717例)に無作為に割り付けた。試験薬の投与は4週ごとに140週間行った。

 主要評価項目は、最長140週以内の心血管死および心血管系の臨床イベント(心不全による入院、心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作/不整脈、利尿薬の静脈内投与に至った心不全による緊急受診)再発の複合の累積発生数であった。

運動能力・健康関連QOLの低下が、より軽微

 ベースラインにおいて患者の17.0%が症状を伴うNYHA心機能分類IIIであり、14.7%が変異型TTRであった。また、819例(57.2%、eplontersen群410例、プラセボ群409例)がTTR安定化薬(TTRスタビライザー、主にタファミジス)を使用しており、さらに348例(24.3%、両群とも174例)が試験期間中にその使用を開始した。

 140週の時点で、主要評価項目のイベントは、eplontersen群で210例(29.4%)に381件(心血管死74件、心血管イベント307件)、プラセボ群で231例(32.2%)に392件(同70件、同322件)発生し、両群間に有意差を認めなかった(率比:0.89、95%信頼区間[CI]:0.73~1.09、p=0.28)。

 また、ベースラインから140週までの6分間歩行試験の距離の最小二乗平均変化量は、eplontersen群で-27.5m、プラセボ群で-47.3mであり、eplontersen群で低下が抑制されていた(最小二乗平均差:19.7m、95%CI:9.9~29.6)。

 同様に、カンザスシティ心筋症質問票の全体の要約スコア(KCCQ-OS、0~100点、高点数ほど健康関連QOLが良好)の最小二乗平均変化量は、eplontersen
群で-5.4点、プラセボ群で-9.4点であった(最小二乗平均差:4.0点、95%CI:2.0~6.0)。

 サブグループ解析を行ったところ、ベースラインでTTR安定化薬の投与を受けていなかった患者では、主要評価項目に関してeplontersen群で有益性を認めた(率比:0.71、95%CI:0.54~0.93)が、これを受けていた患者では同群の有益性はみられなかった(率比:1.14、95%CI:0.85~1.53)。

重篤な有害事象の発現は同程度

 重篤な有害事象は、eplontersen群で413例(57.8%)、プラセボ群で426例(59.4%)に発生し、試験薬関連の重篤な有害事象はそれぞれ4例(0.6%)および2例(0.3%)に認められた。また、試験薬の投与中止に至った有害事象は、それぞれ46例(6.4%)および53例(7.4%)に、とくに注目すべき有害事象は、1例(0.1%)および4例(0.6%)にみられた。

 著者は、「eplontersenは、心血管死と心血管イベント再発の複合を改善せず、運動能力と健康関連QOLの低下を抑制したが、TTRスタビライザーへの付加的な治療効果は認めなかった」とまとめている。

 また、「サイレンサーとスタビライザーは、アミロイド生成カスケードの異なる段階で作用し、いずれもアミロイドの形成を完全に阻止するわけではないため、併用が有益な可能性が高いと考えられる」「しかし、本試験の結果は、TTRの安定化によってすでにアミロイド形成の抑制が行われている場合、eplontersenを追加しても付加的な臨床的有益性は得られないことを示唆する」と考察している。

(医学ライター 菅野 守)

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