肥満および高血圧、脂質異常症に対して有効な治療法が存在するようになり、先進国の肥満高齢者は降圧薬や脂質低下薬の使用率が高くなっている。その恩恵を受けて肥満関連リスクが低下していると考えられるが、若年の肥満成人の心血管代謝リスクは依然として高いままであった。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのMajid Ezzati氏らNCD Risk Factor Collaboration(NCD-RisC)が行った、日本を含む7ヵ国・110の健康サーベイのデータ解析の結果で示された。著者は、「長期的な心血管疾患およびその他の合併症を予防するため、公衆衛生・医療システムプログラムでは、これら若年層を対象とした早期の生活習慣への介入、スクリーニング、および適切な場合は薬物療法による介入を実施すべきである」と述べている。Lancet誌オンライン版2026年7月1日号掲載の報告。
日本を含む7ヵ国の1990~2024年の健康サーベイデータを解析
研究グループは、先進国における肥満者と標準体重(標準BMI値)者の代謝特性を明らかにし、肥満者の肥満関連リスクが低下しているかを評価するため、各国住民ベースの健康サーベイデータを用いた解析を行った。具体的には、1990~2024年に7ヵ国(日本、韓国、台湾、タイ、フィンランド、英国、米国)で行われた110の健康サーベイに参加した20~79歳・97万8,425人の参加者データを用いた。
主要アウトカムは、収縮期血圧(SBP)、非HDLコレステロール(non-HDL-C)、HDLコレステロール(HDL-C)の平均値、および降圧薬、脂質低下薬の使用者の割合であった。
これらアウトカムについて、(1)標準体重(BMI値20.0以上25.0未満)の参加者における経時的変化、(2)肥満者(クラスI肥満者[BMI値30.0以上35.0未満]、クラスIIまたはIII肥満者[BMI値35.0以上])と過体重者(25.0以上30.0未満)と標準体重者間の変化を評価するために、グラフによる提示と傾向分析を行った。
肥満の中高年者における脂質低下薬や降圧薬の使用がリスク収束に
平均non-HDL-C値と平均SBP値は、とくに40歳以上の参加者で低下していた(タイの一部の性・年齢群を除く)。すべての国、年齢層および肥満者・過体重者のBMI区分を統合した場合、標準体重者との平均non-HDL-C値の差の10年当たりの変化量は、女性は-0.05mmol/L(95%信頼区間[CI]:-0.07~-0.03)、男性は-0.07mmol/L(95%CI:-0.09~-0.05)であった。同様に平均SBP値は、女性で-0.7mmHg(95%CI:-1.0~-0.4)、男性で-0.6mmHg(95%CI:-0.9~-0.4)であった。
これらの値の低下は、標準体重者と比べて肥満者(とくにクラスII/III肥満者)で大きく、40歳以上では肥満者と標準体重者の値の差が縮小していた。その結果として、英国、米国、タイ、韓国、日本では、肥満の高齢者の平均non-HDL-C値と平均SBP値は、標準体重の高齢者と同程度か、良好である場合もみられた。そして、こうした傾向は、標準体重の中高年者と比べて肥満の中高年者における脂質低下薬や降圧薬の使用が大きく増加したことに伴っていた。
すべての国、年齢層および肥満者・過体重者を対象に、標準体重者と比較した脂質低下薬使用率の差の増加に関する統合推定値は、10年当たり女性で1.5%ポイント(95%CI:1.0~2.1)、男性で1.6%ポイント(95%CI:1.0~2.2)であった。同様に降圧薬については、女性で0.7%ポイント(95%CI:0.3~1.0)、男性で2.0%ポイント(95%CI:1.3~2.8)であった。
HDL-C値については、肥満者よりも標準体重者で大きく上昇し、両者間の乖離が進んでいた。
40歳未満では、肥満または過体重者と標準体重者の間のギャップにほとんど変化がみられなかった。若年成人ではBMI値を問わず、脂質低下薬や降圧薬を使用する人が少なかった。
(ケアネット)