小児・青年期の医用画像による被曝、血液がんリスクへの影響は?/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2025/10/03

 

 小児・青年期における医用画像診断による放射線曝露は、わずかではあるが血液がんのリスク増加と有意に関連していることが、米国・カリフォルニア大学のRebecca Smith-Bindman氏らによる後ろ向きコホート研究「Risk of Pediatric and Adolescent Cancer Associated with Medical Imaging retrospective cohort study:RICコホート研究」で示された。小児・青年期における医用画像診断による放射線誘発性血液がんのリスクを評価することは、画像検査の実施に関する意思決定を支援することにつながる。NEJM誌2025年9月17日号掲載の報告。

米国・カナダの小児約370万人で医用画像診断と血液がんの関連性を評価

 研究グループは、1996年1月1日~2016年4月30日に出生し、米国の6つの統合医療システム(Kaiser Permanente北カリフォルニア・北西部・ワシントン・ハワイ、Marshfield Clinic、Harvard Pilgrim Health Care)またはカナダ・オンタリオ州健康保険制度のいずれかに生後6ヵ月間継続加入しており、生後3ヵ月以内に1回以上受診し、生後6ヵ月時点で生存かつがんを発症していない372万4,623例の小児を対象とした。

 対象児を、出生時からがんまたは良性腫瘍の診断、死亡、オンタリオ州からの転出または米国医療システムからの脱退後6ヵ月、21歳、または研究終了(2017年12月31日)のいずれか早い時点まで追跡調査した。

 医用画像診断による活性骨髄の放射線被曝量を定量化し、6ヵ月のラグを設けて累積被曝線量を算出して、層別Cox比例ハザードモデルを用い時間依存性累積放射線量と血液がんとの関連を、被曝なしとの比較において推定した。

骨髄への累積放射線量は血液がんのリスクと有意に関連

 3,571万5,325人年(1人当たり平均10.1年)の追跡期間中、2,961件の血液がんが診断された。内訳は主にリンパ腫(2,349例、79.3%)、骨髄系または急性白血病(460例、15.5%)、組織球または樹状細胞腫瘍(129例、4.4%)であった。

 1mGy以上の放射線に被曝した小児の平均(±SD)被曝量は、全体で14.0±23.1mGy(参照として、頭部CTスキャン1回当たりの被曝量は13.7mGy)、血液がんを発症した小児では24.5±36.4mGyであった。

 累積線量の増加とともにがんのリスクが増加し、相対リスク(被曝なしと比較)は1以上5mGy未満で1.41(95%信頼区間[CI]:1.11~1.78)、15以上20mGy未満では1.82(1.33~2.43)、50以上100mGy未満では3.59(2.22~5.44)であった。

 骨髄への累積放射線量は、すべての血液がんのリスク上昇と関連しており(100mGy当たりの過剰相対リスク:2.54[95%CI:1.70~3.51]、p<0.001、30mGy vs.0mGyの相対リスク比:1.76[95%CI:1.51~2.05])、ほとんどの腫瘍サブタイプでも同様であった。

 30mGy以上(平均57mGy)被曝した小児では、21歳までの血液がんの過剰累積発生率は、1万人当たり25.6であった。

 本コホート研究では、血液がんの10.1%(95%CI:5.8~14.2)が医用画像診断による放射線被曝に起因する可能性があり、とくにCTなどの高線量医用画像診断によるリスクが高いと推定された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)