小児心臓弁膜症、部分心臓移植は実現可能か/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2025/09/10

 

 現在、弁形成術の適応とならない小児の心臓弁膜症の治療に使用されている、死亡ドナー由来の同種組織(ホモグラフト)のインプラントは成長能力や自己修復能力を持たないことから、これらの患者はインプラント交換のために何度も再手術を受けることになる。米国・デューク大学のDouglas M. Overbey氏らは、先天性心臓弁膜症患者における成長能力を有する心臓弁を用いた部分心臓移植(=生体弁置換術)の初期の結果を記述し、実行可能性、安全性、有効性を評価する症例集積研究を実施した。JAMA誌オンライン版2025年8月27日号掲載の報告。

半月弁の移植を受けた19例

 本研究では、2022年4月~2024年12月に米国内の小児心臓外科・移植センターで部分心臓移植を受けた最初の19例について解析した(Brett Boyer Foundationなどの助成を受けた)。

 これらの患者は修復不可能な先天性心臓弁機能不全を有しており、ドナー心臓由来の半月弁(大動脈弁、肺動脈弁)を用いた部分心臓移植が行われた。維持免疫抑制療法としてタクロリムス単剤(トラフ値の目標値は4~8ng/mL)を投与した。

 19例(男性10例[53%]、女性9例[47%])の移植時の年齢中央値は97日(範囲:2日~34年)、体重中央値は4.65kg(2.5~85.8)であった。追跡期間中央値は26.4週(範囲:11.3~153.6)。

弁輪径、弁尖長が増加、狭窄や逆流は発生せず

 最初の9例について移植弁の成長を調べた。移植されたすべての弁は良好に機能し、適切なzスコアに即した成長を示した。

 弁輪径中央値は、大動脈弁で7mmから14mmへ、肺動脈弁で9mmから17mmへとそれぞれ増加した。肺動脈弁の弁輪径の増加は統計学的に有意であった(p=0.004)。同様に、弁尖長中央値も、大動脈弁で0.5mmから1mmへ、肺動脈弁で0.49mmから0.675mmへと増加した。肺動脈弁の弁尖長の増加は統計学的に有意だった(p=0.004)。

 術後早期と追跡期間中の最新の心エコー検査所見を比較検討したところ、観察された肺動脈弁輪径の増加は、弁の拡張ではなく成長を反映するものと考えられた。全体として、退院時に、移植された大動脈弁または肺動脈弁に重大な狭窄や逆流が生じた患者はいなかった。

免疫抑制薬関連の重大な合併症はない

 術後1ヵ月に1例が再手術を要したが、移植弁との関連はなかった。1例で、B群溶血性レンサ球菌による呼吸器感染症が発生したが、抗菌薬治療で回復した。また、2例に腎障害が発現し、免疫抑制薬の用量調節を要したものの、免疫抑制薬に関連した重大な合併症は認めなかった。

 著者は、「部分心臓移植は、弁置換術に成長可能な生体組織を提供し、これは現行の技術の重大な限界の克服につながる可能性がある」「この方法は万能な解決策ではなく、さらなる改良を要する発展段階にある有望な技術と認識することがきわめて重要である」「長期的な影響を完全に理解し、より広範な先天性心疾患への適用を進めるための研究が求められる」としている。

(医学ライター 菅野 守)