最大耐用量の脂質低下療法を受け、心血管イベントのリスクが高いアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)または家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ接合体の患者において、プラセボと比較してCETP阻害薬obicetrapibはLDLコレステロール(LDL-C)値を有意に低下させ、安全性プロファイルは大きな差はないことが、オーストラリア・Monash大学のStephen J. Nicholls氏らBROADWAY Investigatorsが実施した「BROADWAY試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年5月7日号で報告された。
国際的な無作為化プラセボ対照比較試験、84日目までのLDL-C値の変化率を評価
BROADWAY試験は、心血管イベントのリスクが高い患者におけるobicetrapibの脂質値に及ぼす効果を評価し、安全性と副作用プロファイルを明らかにすることを目的とする無作為化プラセボ対照比較試験であり、2021年12月~2023年8月に、中国、欧州、日本、米国の188施設で患者の無作為化を行った(NewAmsterdam Pharmaの助成を受けた)。
年齢18歳以上、FHヘテロ接合体またはASCVDの既往歴を有し、最大耐用量の脂質低下療法を受けている患者を対象とした。LDL-C値≧100mg/dLまたは非HDLコレステロール(非HDL-C)値≧130mg/dLの患者、あるいはLDL-C値55~100mg/dLまたは非HDL-C値85~130mg/dLで少なくとも1つの心血管リスク因子を持つ患者を適格とした。エゼチミブ、bempedoic acid(ベムペド酸)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害薬の使用の有無は問わなかった。
これらの患者を、obicetrapib(10mg、1日1回)を経口投与する群またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、365日間投与した。
主要エンドポイントは、ベースラインから84日目までのLDL-C値の変化率とした。
365日目までの変化率も良好
2,530例(平均年齢65歳、女性34%)を無作為化の対象とし、obicetrapib群に1,686例、プラセボ群に844例を割り付けた。全体のベースラインの平均LDL-C値は98mg/dL、平均HDL-C値は49mg/dL、平均BMIは29であり、糖尿病が38%、ASCVDが89%、FHヘテロ接合体が17%であった。91%がスタチン(70%が高強度スタチン)、27%がエゼチミブ、4%がPCSK9阻害薬の投与を受けていた。
ベースラインから84日目までのLDL-C値の最小二乗平均変化率は、プラセボ群が2.7%(95%信頼区間[CI]:-0.4~5.8)であったのに対し、obicetrapib群は-29.9%(95%CI:-32.1~-27.8)と有意な差を認めた(群間差:-32.6%ポイント[95%CI:-35.8~-29.5]、p<0.001)。84日目の平均(±SD)LDL-C値は、obicetrapib群が62.8(±37.3)mg/dL、プラセボ群は92.3(±35.1)mg/dLであった。
また、84日目にLDL-C値<40mg/dLを達成した患者の割合は、obicetrapib群27.9%、プラセボ群1.1%、<55mg/dL達成率はそれぞれ51.0%および8.0%、<70mg/dL達成率は68.4%および27.5%だった。
ベースラインから4つの評価時点までのLDL-C値の最小二乗平均変化率(副次エンドポイント)は、30日目(群間差:-36.6%ポイント[95%CI:-39.1~-34.2])、180日目(-32.7%ポイント[-36.0~-29.4])、270日目(-30.2%ポイント[-33.6~-26.8])、365日目(-24.0%ポイント[-27.9~-20.1])のいずれにおいてもobicetrapib群で良好であった(すべてp<0.001)。
また、ベースラインから84、180、365日目までのアポリポ蛋白B、非HDL-C値、HDL-C値の最小二乗平均変化率もobicetrapib群で優れた(すべてp<0.001)。
有害事象は両群とも約6割、重症度などにも差はない
試験期間中の有害事象は、obicetrapib群で59.7%、プラセボ群で60.8%に発現した。有害事象の重症度、試験レジメンとの関連、投与中止の理由に関して両群間に明確な差を認めず、頻度の高い有害事象(COVID-19、高血圧症、上気道感染症、上咽頭炎、関節痛、尿路感染症など)の発現率も両群で同程度だった。
心血管イベント(冠動脈心疾患死、非致死的心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術)はobicetrapib群で4.2%、プラセボ群で5.2%に発生した。血圧には、両群ともベースラインからの明らかな変化はみられなかった。
著者は、「これらの知見は、心血管イベントのリスクが高い患者において、obicetrapibが脂質低下療法の補助薬として有用である可能性を示唆する」「本薬が、ASCVDの予防に有用な治療薬となるかについては、さらなる臨床試験で検討する必要がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)