フランス・パリ・サクレー大学のLaurent Martin氏らは、赤血球生成の主要な制御因子であるエリスロポエチン(EPO)に着目し、二次性赤血球増加症がEPO遺伝子変異(variant)と関連する可能性があることを明らかにした。二次性赤血球増加症は、組織の低酸素や、不適切なEPO産生増加を引き起こす病態に起因することが多い。EPOの発現は、胎児期は複雑かつ厳格に制御されており、出生後まもなく肝臓から腎臓へと移行する。検討では、患者の細胞からiPS細胞を作製し、肝細胞様EPO産生細胞を分化させ評価する実験法が用いられた。NEJM誌2025年5月1日号掲載の報告。
分子的・機能的に新たな赤血球増加症の6家系を特定し遺伝子変異を調査
研究グループは、血中EPO濃度が正常範囲内である、分子的・機能的に新たな赤血球増加症の6家系を特定し、これらの家系の
EPO遺伝子の非コード領域の変異を調査した。
特定した変異の影響を、レポーターアッセイ法(
EPOプロモーターで発現するルシフェラーゼレポーター遺伝子)および患者由来のiPS細胞から分化させた肝細胞様EPO産生細胞モデルを用いて検討した。患者の血中EPOプロファイルを等電点電気泳動法で特徴付けた。
3つの新たな遺伝子変異を同定、新治療開発への道を開く可能性
EPO遺伝子の非コード領域から3つの新たな遺伝子変異が同定された。
レポーターアッセイ法およびiPS細胞由来の肝細胞様EPO産生細胞を用いた実験により、特定された遺伝子変異は、これまでに特徴付けられていなかった遺伝子の制御エレメントを標的としていること、また、低酸素に対して高い反応性を有することが示された。
等電点電気泳動において、全患者のEPOは塩基性側にシフトしたパターンを示し、新生児や肝疾患に伴う二次性赤血球増加症患者に発現する肝臓で産生されるタイプのEPOと同様のパターンであった。
患者の血漿検体と臍帯血検体から精製されたEPOは、
in vitroにおいてEPO受容体シグナル伝達活性の増強を示し、EPOの肝臓型糖鎖付加に関連する機能獲得の可能性が示唆された。
今回の検討結果を踏まえて著者は、「この分野の研究継続は、EPO制御のさらなる側面を解明し、新たな治療開発への道を開く可能性がある」とまとめている。
(ケアネット)