若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎、アダリムマブは中止できるか/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2025/03/11

 

 アダリムマブによりコントロールされている若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎の患者において、アダリムマブの投与を中止すると、ぶどう膜炎、関節炎、あるいはその両方の再発率が高くなるが、投与を再開すると、治療失敗の全例で眼炎症のコントロールが回復することが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のNisha R. Acharya氏らADJUST Study Groupが実施した「ADJUST試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2025年1月25日号に掲載された。

3ヵ国の無作為化プラセボ対照比較試験

 ADJUST試験は、若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎における治療中止の有効性と安全性の評価を目的とする二重マスク化無作為化プラセボ対照比較試験であり、2020年3月~2024年2月に、米国、英国、オーストラリアの20の眼科またはリウマチ科の施設で患者を登録した(米国国立衛生研究所[NIH]眼病研究所[NEI]の助成を受けた)。

 年齢2歳以上で、16歳に達する前に慢性若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎または慢性前部ぶどう膜炎と診断され、少なくとも1年間、アダリムマブにより関節炎とぶどう膜炎がコントロールされていた患者を対象とした。これらの患者を、アダリムマブの投与を継続する群またはアダリムマブの投与を中止してプラセボを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付け、2週ごとに48週目の受診または治療失敗まで皮下投与した。

 主要アウトカムは、治療失敗(ぶどう膜炎または関節炎の再発と定義)までの期間とし、すべての患者を主解析および安全性解析の対象とした。治療失敗時にマスク化を解除し、患者は48週まで非盲検下にアダリムマブの投与を受けた。

投与中止例の68%で再発、再投与で全例が回復

 87例を登録した時点で、事前に規定された中間解析で中止基準を満たしたため、それ以降の登録を中止した。アダリムマブ群に43例(年齢中央値12.56歳[四分位範囲[IQR]:9.44~15.81]、女性74%)、プラセボ群に44例(12.26歳[9.39~13.42]、73%)を割り付けた。各群1例ずつが脱落したが、そのデータは解析に含めた。

 治療失敗は、アダリムマブの投与を中止したプラセボ群で44例中30例(68%)に発生したのに対し、投与を継続したアダリムマブ群では43例中6例(14%)と有意に少なかった(ハザード比:8.7[95%信頼区間[CI]]:3.6~21.2、p<0.0001)。治療失敗の多くは追跡期間24週までに発生した。また、プラセボ群の治療失敗までの期間中央値は119日(IQR:84~243)だった。

 治療失敗例のうち、プラセボ群の30例全例がアダリムマブの投与を再開し、アダリムマブ群の6例中4例がアダリムマブを継続投与し、いずれの患者も眼炎症のコントロールの回復に成功した。治療失敗後に、眼炎症が最初にコントロールされるまでの期間中央値は、アダリムマブ群が91日、プラセボ群は63日であった。また、眼炎症の持続的コントロールが達成されるまでの期間中央値は両群とも105日で、治療失敗から持続的コントロール達成までの期間中央値はそれぞれ98日および105日だった。

重篤な有害事象4件はいずれもアダリムマブ群

 非重篤な有害事象は、アダリムマブ群で226件(7.5件/人年[95%CI:6.5~8.5])、プラセボ群で115件(6.8件/人年[5.6~8.1])発現した。最も頻度の高い有害事象は胃腸関連イベント、頭痛、疲労感であった。COVID-19感染症は、アダリムマブ群で多かった(100人年当たり、50件vs.6件)。重篤な有害事象は4件発現し、いずれもアダリムマブ群であった。

 著者は、「米国リウマチ学会による、2年間のコントロールが得られた場合は治療を中止してもよいとの推奨は、慎重に考慮する必要がある」「治療中止を試みる場合は、とくに最初の6ヵ月間は再発の有無を注意深く観察すべきである」「今後は、アダリムマブの投与中止の成功を予測する臨床的特性やバイオマーカーについて検討を進める予定である」としている。

(医学ライター 菅野 守)