コントロール不良高血圧、アルドステロン合成阻害薬lorundrostatが有望/JAMA

コントロール不良の高血圧患者の治療において、経口アルドステロン合成酵素阻害薬lorundrostatはプラセボと比較して、優れた降圧効果をもたらす可能性があることが、米国・クリーブランド・クリニック財団のLuke J. Laffin氏らが実施した「Target-HTN試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年9月10日号で報告された。
米国の無作為化プラセボ対照用量設定試験
Target-HTN試験は、米国の43施設で実施された無作為化プラセボ対照用量設定試験であり、2021年7月~2022年6月に参加者の無作為化を行った(Mineralys Therapeuticsの助成を受けた)。年齢18歳以上、自動診察室血圧(AOBP)測定による収縮期血圧が130mmHg以上で、2剤以上の降圧薬を最大耐用量で少なくとも4週間使用している患者を対象とした。血漿レニン値が抑制され(血漿レニン活性[PRA]≦1.0ng/mL/時)、かつ血清アルドステロン値が上昇(≧1.0ng/dL)している患者をコホート1として、PRA>1.0ng/mL/時の患者をコホート2として登録した。
コホート1は、プラセボまたは5つの用量のlorundrostat(12.5mg、50mg、100mgを1日1回、12.5mg、25mgを1日2回)、コホート2は、プラセボまたはlorundrostat(100mg、1日1回)を経口投与する群に、それぞれ無作為に割り付けた。
主要エンドポイントは、収縮期AOBPのベースラインから8週目までの変化量とした。
コホート1に163例、コホート2に37例を割り付けた。全体の平均年齢は65.7(SD 10.2)歳、女性が60%であり、48%がBMI値30超、40%が2型糖尿病、42%が3剤以上の降圧薬の投与を受けていた。ベースラインの平均血圧は、コホート1が収縮期血圧142.2(SD 12.5)mmHg、拡張期血圧81.5(9.7)mmHgで、コホート2はそれぞれ139.1(8.7)mmHg、79.1(9.7)mmHgだった。
50mg群と100mg(1日1回)で有意な降圧効果
コホート1における治療開始から8週の時点での収縮期血圧の変化量は、lorundrostatの1日1回投与では100mg群が-14.1mmHg、同50mg群が-13.2mmHg、同12.5mg群が-6.9mmHgで、プラセボ群は-4.1mmHgであり、同1日2回投与では25mg群が-10.1mmHg、12.5mg群は-13.8mmHgであった。収縮期血圧のプラセボ群とlorundrostat群の最小二乗平均群間差は、50mg群(1日1回投与)が-9.6mmHg(90%信頼区間[CI]:-15.8~-3.4、p=0.01)、100mg(1日1回投与)が-7.8mmHg(-14.1~-1.5、p=0.04)と有意な差を認めた。
コホート2では、lorundrostat100mg(1日1回投与)で収縮期血圧が11.4(SD 2.5)mmHg低下し、コホート1の同一用量の群と同程度の降圧作用がみられた。
lorundrostat群の6例(3.6%)で血清カリウム値が6.0mmol/L以上に上昇したが、減量または投与中止によって正常化した。コルチゾール分泌不全は発生しなかった。
著者は、「lorundrostatによるアルドステロン合成酵素の阻害は、基礎治療となる降圧療法を問わず、コントロール不良な高血圧患者に降圧効果をもたらす可能性が示された。これらの結果は、コントロール不良の高血圧患者の治療法としての本薬のさらなる検討を支持するものである」としている。
(医学ライター 菅野 守)
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高血圧に対するアルドステロン合成酵素阻害薬Lorundrostatの効果(解説:石川讓治氏)
コメンテーター : 石川 讓治( いしかわ じょうじ ) 氏
東京都健康長寿医療センター 循環器内科 部長
J-CLEAR推薦コメンテーター