IgA腎症、新規腸管作用型ステロイドが有効/Lancet

IgA腎症患者において、ブデソニドの新規の腸管作用型経口剤であるNefeconは、9ヵ月間の治療でプラセボと比較し、臨床的に意義のあるeGFR低下および蛋白尿の持続的な減少をもたらし、忍容性も良好であった。米国・スタンフォード大学のRichard Lafayette氏らが、20ヵ国132施設で実施された2年間の第III相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「NeflgArd試験」の結果を報告した。IgA腎症は、慢性免疫介在性腎疾患で腎不全の主な原因であり、発症機序には腸粘膜免疫システムが関与している。Nefeconは、ブデソニドが腸管で徐々に放出され腸粘膜で作用するようデザインされている。Lancet誌オンライン版2023年8月14日号掲載の報告。
IgA腎症患者をNefecon群とプラセボ群に無作為化し9ヵ月間投与
研究グループは、2018年9月5日~2021年1月20日に、レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬による最適な支持療法にもかかわらず、推算糸球体濾過量(eGFR)が35~90mL/分/1.73m2で、持続性蛋白尿(尿蛋白-クレアチニン比≧0.8g/gまたは尿蛋白≧1g/24時間)を呈する原発性IgA腎症成人患者(18歳以上)を、Nefecon群(16mg/日)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け9ヵ月間投与し、その後15ヵ月間(2週間の漸減期間を含む)を観察期間とした。最終追跡調査日は2023年2月6日である。無作為化では、ベースラインの蛋白尿(<2または≧2g/24時間)、ベースラインのeGFR(<60または≧60mL/分/1.73m2)、および地域(アジア太平洋、欧州、北米、南米)を層別因子とした。また、全例に対して無作為化前の少なくとも3ヵ月間ならびに試験期間に、最適な支持療法が義務付けられた。
有効性の主要アウトカムは、2年間のeGFRの時間加重平均値とした。
2年間の時間加重平均eGFR、Nefecon群で臨床的に意義のある改善
最大の解析対象集団は364例(各群182例)で、240例(66%)が男性、124例(34%)が女性、275例(76%)が白人であった。2年間のeGFRの時間加重平均値の変化量は、Nefecon群-2.47mL/分/1.73m2(95%信頼区間[CI]:-3.88~-1.02)、プラセボ群-7.52mL/分/1.73m2(-8.83~-6.18)、群間差は5.05mL/分/1.73m2(95%CI:3.24~7.38、p<0.0001)であり、プラセボ群に対してNefecon群で統計学的に有意な治療効果が認められた。
Nefeconで治療中の主な有害事象は、末梢性浮腫(31例[17%]vs.プラセボ群7例[4%])、高血圧症(22例[12%]vs.6例[3%])、筋痙攣(22例[12%]vs.7例[4%])、ざ瘡(20例[11%]vs.2例[1%])、頭痛(19例[10%]vs.14例[8%])であった。治療に関連した死亡例の報告はなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)
関連記事

IgA腎症の病態に根差した治療(解説:浦信行氏)
CLEAR!ジャーナル四天王(2023/04/21)

IgA腎症での尿蛋白減少、sparsentan vs.イルベサルタン/Lancet
ジャーナル四天王(2023/04/14)

高リスクIgA腎症への経口ステロイドで転帰改善、用量は?/JAMA
ジャーナル四天王(2022/05/27)
[ 最新ニュース ]

妊娠高血圧、自己モニタリング+遠隔指導で産後の長期血圧が改善/JAMA(2023/12/01)

完全磁気浮上LVAD装着の重症心不全、アスピリンは不要?/JAMA(2023/12/01)

肥満2型糖尿病患者に強化インスリン療法は必要か?(解説:住谷哲氏)(2023/12/01)

世界初のsa-mRNAコロナワクチンが国内承認/CSL・Meiji Seika(2023/12/01)

医師数が少なく検査機器数が多い日本の医療/OECD(2023/12/01)

非定型抗精神病薬の胃腸穿孔・腸閉塞リスク~MID-NETデータに基づく医薬品安全性評価(2023/12/01)

若~中年での高血圧、大腸がん死亡リスクが増加~NIPPON DATA80(2023/12/01)

赤身肉の摂取量が多いと糖尿病リスクが上昇(2023/12/01)
[ あわせて読みたい ]
エキスパートが教える痛み診療のコツ(2018/10/11)
医療者向け『学校がん教育.com』(2022/12/01)
アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11)
アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11)
診療所売買に関心がある方に!マンガ連載をまとめた冊子プレゼント【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第43回(2022/10/17)
今考える肺がん治療(2022/08/24)
あなたにとって、開業の「成功」「失敗」とは?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第42回(2022/08/09)
「後継者採用」という甘い誘いに乗ったら…【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第41回(2022/07/08)
「診療所、知人に売るから大丈夫」、それ本当に大丈夫??【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第40回(2022/06/06)
Dr.金井のCTクイズ 初級編(2022/05/17)
専門家はこう見る
IgA腎症のメサンギウム領域に障害をもたらすIgA1は腸管由来が主体?(解説:浦信行氏)
コメンテーター : 浦 信行( うら のぶゆき ) 氏
札幌西円山病院 名誉院長
J-CLEAR評議員