限局性前立腺がん、積極的初回治療がQOL低下の引き金に/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2020/10/16

 

 限局性前立腺がんに対して、積極的な初回治療を受けた患者は前立腺がんの診断を受けていない男性に比べ、概して自己申告QOLが長期にわたり低下しており、根治的前立腺摘出術を受けた男性はとくに性機能のアウトカムが不良であった。オーストラリア・Cancer Council New South WalesのCarolyn G. Mazariego氏らが、同国で最も人口の多いニューサウスウェールズ州で実施された大規模前向きコホート研究「New South Wales Prostate Cancer Care and Outcomes Study:PCOS」の解析結果を報告した。限局性前立腺がんは、過去20年にわたって診断後の生存率が増加してきているが、治療に関連した長期的なQOLアウトカムに関する研究はほとんどなかった。著者は、「医師および患者は、治療法を決定する際にこれら長期的なQOLのアウトカムを考慮する必要がある」とまとめている。BMJ誌2020年10月7日号掲載の報告。

大規模ケースコントロール研究で限局性前立腺がん患者の長期QOLを評価

 PCOSは、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州のがん登録に登録された70歳未満の限局性前立腺がん患者(ケース)と、同州の選挙人名簿から無作為に抽出された、年齢や居住地区がケースと一致する対照集団を追跡調査した研究である。研究グループは、PCOSに登録された患者群1,642例および対照群786例について、前立腺がんの診断後15年間の治療に関連したQOLの変化について解析した。

 主要評価項目は、全体的な健康および疾患特異的なQOLである。SF-12、前立腺がん疾患特異的QOL(UCLA-PCI)、および限局性前立腺がん患者の特異的QOL尺度であるEPIC-26を用い、15年間で7回(ベースライン、診断後1、2、3、5、10、15年時)の調査を行った。各QOLスコアの対照群に対する患者群の補正後平均差を算出。同差の臨床的意義は、ベースラインのスコアから標準偏差(SD)で3分の1を最小重要差と定義して評価した。

治療法によって長期的な機能障害(失禁、腸機能、性機能)に差がある

 診断後15年時点で、すべての治療において、対照群と比較し患者群で勃起障害を報告した患者の割合が高かった。対照群42.7%(44/103例)に対して、PSA監視療法62.3%(33/53例)、神経温存前立腺全摘除術(NSRP)75.0%(144/192例)、非NSRP 83.0%(117/141例)、外部照射/高線量率小線源療法(EBRT/HDR)79.1%(34/43例)、アンドロゲン遮断療法(ADT)75.6%(34/45例)、低線量率小線源療法(LDR)72.0%(18/25例)であった。

 1次治療でEBRT/HDRまたはADTを受けた患者は、腸機能の低下がみられた。尿失禁は手術を受けた患者でとくに多く継続していた。排尿障害は、ADT群で10年後(補正後平均差:-5.3、95%信頼区間[CI]:-10.8~0.2)から15年後(-15.9、-25.1~-6.7)にかけて増大していた。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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