バロキサビル、インフルエンザの家族間感染予防に有効/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2020/07/22

 

 インフルエンザの家族間感染予防に、バロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ、以下バロキサビル)の単回投与が顕著な効果を示したことが報告された。リチェルカクリニカの池松 秀之氏らによる多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果で、NEJM誌オンライン版2020年7月8日号で発表された。バロキサビルは、ポリメラーゼ酸性タンパク質(PA)エンドヌクレアーゼ阻害作用を有し、合併症リスクの高い外来患者などを含む合併症のないインフルエンザの治療効果が認められている。しかし、バロキサビルの家庭内での曝露後予防効果については、明らかになっていなかった。

初発家族にバロキサビルまたはプラセボを投与し、接触家族への予防効果を検証

 研究グループは、日本国内52の診療所で、インフルエンザ2018~19シーズン中に、家庭内で最初にインフルエンザの感染が確認された家族(指標患者)の家庭内接触者(接触家族)における、バロキサビルの曝露後予防効果について検証した。

 指標患者を1対1の割合で無作為に割り付け、バロキサビルまたはプラセボの単回投与を行った。

 主要エンドポイントは、投与後10日間におけるRT-PCR検査によって臨床的に確認されたインフルエンザウイルスへの感染とした。また、感受性の低下と関連するバロキサビルに選択的なPA変異ウイルス株の発生も評価した。

高リスク、小児、ワクチン未投与のグループで効果を確認

 合計で指標患者545例、接触家族752例が、バロキサビル群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。

 指標患者において、95.6%がインフルエンザA型に感染しており、73.6%が12歳未満で、52.7%がバロキサビルの投与を受けた。

 評価を受けることが可能であった患者(バロキサビル群374例、プラセボ群375例)において、臨床的にインフルエンザの感染が確認された割合は、バロキサビル群がプラセボ群よりも有意に低かった(1.9% vs.13.6%、補正後リスク比[RR]:0.14、95%信頼区間[CI]:0.06~0.30、p<0.001)。サブグループでは、高リスク、小児、ワクチン未投与のグループで、バロキサビルの効果が確認された。また、症状を問わずインフルエンザへの感染リスクは、バロキサビル群がプラセボ群よりも低かった(補正後RR:0.43、95%CI:0.32~0.58)。

 有害事象の発生頻度は両群で類似していた(バロキサビル群22.2%、プラセボ群20.5%)。

 バロキサビル群における変異ウイルス株の検出は、PA I38T/M変異ウイルス株が10/374例(2.7%)、PA E23K変異ウイルス株が5/374例(1.3%)であった。プラセボ群において、これらの変異ウイルス株の伝播は確認されなかったが、バロキサビル群ででは数例の伝播があったことが否めなかった。

(ケアネット)