潜因性脳梗塞への抗血小板療法単独 vs.PFO閉鎖術併用/NEJM

原因不明の潜因性脳梗塞を発症した卵円孔開存(PFO)を有する患者において、PFO閉鎖術+抗血小板療法の併用は、抗血小板療法単独より脳梗塞の再発リスクが低いことが示された。ただしPFO閉鎖術は、デバイス関連合併症および心房細動の発現率増加と関連した。デンマーク・コペンハーゲン大学のLars Sondergaard氏らが、脳梗塞の再発予防を目的としたPFO閉鎖術の有用性を検討した国際無作為化比較試験「Gore REDUCE試験」の結果を報告した。PFOは潜因性脳梗塞の原因である可能性があるが、脳梗塞後の再発予防におけるPFO閉鎖術の有効性はこれまで不明であった。NEJM誌2017年9月14日号掲載の報告。
約700例でPFO閉鎖術+抗血小板療法併用と抗血小板療法単独を比較
研究グループは、2008年12月~2015年2月に、18~59歳で潜因性脳梗塞発症後180日以内のPFOを有する患者664例(平均年齢45.2歳)を登録し、PFO閉鎖術+抗血小板療法(PFO閉鎖術併用)群と、抗血小板療法単独群に、2対1の割合で無作為に割り付け、ベースラインと24ヵ月時に脳画像検査を実施した。主要エンドポイントは2つで、少なくとも無作為化後24ヵ月間の脳梗塞無再発(脳梗塞の臨床所見を認めないこと。脳梗塞再発患者の割合として報告)、無作為化後24ヵ月間の新規脳梗塞発症(臨床的脳梗塞、または画像検査で検出された無症候性脳梗塞)で、intention-to-treat解析で評価した。
PFO閉鎖術併用で脳梗塞再発率は有意に低下、無症候性脳梗塞発症率は有意差なし
664例中81%の患者には中~大の心房間シャントが認められた。追跡期間中央値3.2年において、PFO閉鎖術併用群441例中6例(1.4%)、抗血小板療法単独群223例中12例(5.4%)で臨床的脳梗塞の再発を認めた(ハザード比:0.23、95%信頼区間[CI]:0.09~0.62、p=0.002)。新規脳梗塞の発症率は、PFO閉鎖術併用群が抗血小板療法単独群より有意に低かったが(5.7% vs.11.3%、相対リスク:0.51、95%CI:0.29~0.91、p=0.04)、無症候性脳梗塞のみの発症率は両群間に有意差は確認されなかった(4.4% vs.4.5%、p=0.97)。
重篤な有害事象の発現率は、PFO閉鎖術併用群23.1%、抗血小板療法単独群27.8%であった(p=0.22)。PFO閉鎖術併用群では、重篤なデバイス関連有害事象が6例(1.4%)に、心房細動がPFO閉鎖後29例(6.6%)に発現した。
なお著者は、抗血小板療法単独群のうち14例が本試験外でPFO閉鎖術を受けており、このことが試験結果の一般化に影響を及ぼす可能性があること、そのほか、離脱率が両群間で異なることなどを、研究の限界として挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)
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