難民は精神病リスクが高い/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2016/03/25

 

 難民は、統合失調症など非感情性精神病性障害(non-affective psychotic disorders)のリスクが高い。スウェーデン・カロリンスカ研究所のAnna-Clara Hollander氏らが、各種全国レジストリを用いたスウェーデン在住者約135万人の後ろ向きコホート研究で、明らかにした。発病リスクは類似地域からの「移民」と比べ1.7倍、スウェーデン生まれの人と比べ約3倍に上るという。先行研究で、「移民」において統合失調症などの非感情性精神病性障害のリスクが高いことが知られていたが、難民については不明であった。BMJ誌オンライン版2016年3月15日号掲載の報告。

約130万人を追跡、うち移民が約10%、難民が約2%
 研究グループは、スウェーデンの各種全国レジストリを用い、1984年1月1日以降生まれのスウェーデン在住者134万7,790人について解析した。対象者の内訳は、両親がスウェーデン生まれで自身もスウェーデンで生まれた人(スウェーデン群)119万1,004人(88.4%)、難民発生地域(中東・北アフリカ、サハラ以南のアフリカ、アジア、東ヨーロッパ・ロシア)からの移民13万2,663人(9.8%)、および難民2万4,123人(1.8%)であった。

 14歳の誕生日またはスウェーデンへの到着日から、ICD-10のF20~29(統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害)に該当する精神病性障害の診断、他国への転居、死亡、または2011年12月31日まで追跡調査した。

移民よりもリスクが高く、とくに男性で顕著
 890万人年の調査において、統合失調症および他の精神病性障害3,704例が確認された。粗発病率(/10万人年)は、スウェーデン群38.5(95%信頼区間[CI]:37.2~39.9)、移民群80.4(72.7~88.9)、難民群126.4(103.1~154.8)であった。難民群では、交絡因子調整後のハザード比が、対スウェーデン群で2.9(2.3~3.6)、対移民群で1.7(1.3~2.1)であり、精神病のリスクが他群と比べて高かった。

 移民群と比較した難民群における増大は、男性において顕著であり(交互作用の尤度比検定χ2 (df=2) z=13.5、p=0.001)、また、サハラ以南のアフリカを除く全地域で示された。サハラ以南のアフリカからの移民と難民はどちらも、スウェーデン群と比較して粗発病率が高かった。

 著者は、大規模コホート研究にもかかわらず難民の例数が少ないことや、移住前の情報が利用できないなど研究の限界を挙げたうえで、「難民受け入れ国の臨床医や保健サービス立案者は、難民が経験する精神的身体的健康格差に加え、精神病のリスク増大を知っておくべきである」とまとめている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 岡村 毅( おかむら つよし ) 氏

東京都健康長寿医療センター

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