トロポニンT値、2型糖尿病患者の心血管リスク予測に有用/NEJM

心筋トロポニンT値は、2型糖尿病と安定虚血性心疾患の合併患者において、心血管系が原因の死亡、心筋梗塞、脳卒中の独立した予測因子であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のBrendan M. Everett氏らによる検討の結果、明らかにされた。また、迅速血行再建術でメリットが得られる患者はトロポニンT値14ng/L未満であることも示された。心筋トロポニン値は、急性冠症候群患者において、緊急血行再建が有効の可能性がある患者を同定するために用いられている。研究グループは、安定虚血性心疾患患者においても、心筋トロポニン値を用いて心血管イベントリスクの高い患者を同定し、迅速な冠血行再建によるベネフィットを得られることが可能であるとの仮説を立て、その検証試験を行った。NEJM誌2015年8月13日号掲載の報告より。
トロポニンT値と複合エンドポイントの関連を評価
検討は、「2型糖尿病におけるバイパス血管形成血行再建の検討(BARI 2D)」の登録患者を対象に行われた。被験者は、2型糖尿病と安定虚血性心疾患を有し、ベースラインで高感度アッセイによる心筋トロポニンT値測定を受けた2,285例であった。研究グループは、トロポニンT値と複合エンドポイント(心血管系が原因の死亡、心筋梗塞、脳卒中)の関連性を調べ、その後、迅速血行再建術群に無作為に割り付けた場合に複合エンドポイントの発生率が低下するかどうかを、トロポニンT値の異常値(14ng/L以上)群と正常値(14ng/L未満)群で比較した。
14ng/L以上群での迅速血行再建術はベネフィットなし
2,285例のうち、ベースラインでトロポニンT値が検出できた(3ng/L以上)のは2,277例(99.6%)。そのうちトロポニンT値が異常値であったのは897例(39.3%)であった。5年複合エンドポイント発生率は、トロポニンT値異常群は27.1%、正常群は12.9%であった。
心血管リスク因子、糖尿病の重症度、心電図異常、冠動脈の解剖学的所見で補正後のモデルにおいて、トロポニンT値異常群の複合エンドポイント発生ハザード比は、1.85(95%信頼区間[CI]:1.48~2.32、p<0.001)と有意に高かった。
トロポニンT値異常を示した患者において、迅速血行再建術群に無作為に割り付けられた患者は、薬物療法単独群と比較して、複合エンドポイント発生率について有意な差はみられなかった(ハザード比:0.96、95%CI:0.74~1.25)。
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狭心症「安定期」でのトロポニンの役割(解説:香坂 俊 氏)-411
コメンテーター : 香坂 俊( こうさか しゅん ) 氏
慶應義塾大学 循環器内科 准教授
J-CLEAR評議員