急速な1秒量低下は、COPDに必須の特性か/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2015/07/21

 

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症には、成人早期における1秒量(FEV1)の低下が重要であり、加速度的なFEV1の減少は必須の特性ではないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学のPeter Lange氏らの検討で示された。COPDは、従来、加齢に伴い肺機能が急速に低下することで発症すると考えられてきた。しかし、観察研究などでは、とくに気流制限が最も重篤なCOPD患者において、FEV1にばらつきがみられたり、低下の程度が予想よりも小さい場合があることが報告されていた。NEJM誌2015年7月9日号掲載の報告より。

3つのコホート研究のデータを成人早期のFEV1で層別化
 研究グループは、FEV1の低下率が正常範囲内であっても、成人早期の最大肺機能が正常よりも低下していれば、加齢に伴いCOPDを発症する可能性があるとの仮説を前向きに検証した(GlaxoSmithKline社などの助成による)。

 3つの別個のコホート研究(フラミンガム子孫コホート[FOC]、コペンハーゲン市心臓研究[CCHS]、ラブレース喫煙者コホート[LSC])の参加者のデータを用いた。

 登録開始時のFEV1予測値(80%以上、80%未満)と、最終受診時のCOPDの有無で層別化し、FEV1の経時的な低下率を評価した。

 LSCの参加者(1,553例、平均年齢56±9歳、男性22%)は、FOC(1,622例、33±4歳、47%)やCCHS(1,242例、33±5歳、47%)の参加者よりも20歳以上年長であった。このうち最終受診時にCOPDを発症していたのは495人(LSC:163例、FOC:187例、CCHS:145例)だった。

COPDの約半数はFEV1の低下速度が正常
 平均観察期間22年の時点で、40歳以前のFEV1が予測値の80%未満であった657例のうち、174例(26%)がCOPDを発症したのに対し、80%以上であった2,207例のうちCOPDを発症したのは158例(7%)であり、成人早期にFEV1低値の集団のほうがリスクが高かった(p<0.001)。

 観察期間終了時に、GOLD診断基準のGrade 2以上のCOPDを発症していた332例のうち、158例(48%)は40歳以前のFEV1が正常で、これはベースライン時にFEV1が正常であった集団の7%に相当した。その後、これらの集団のFEV1は、平均53±21mL/年の速度で急速に低下した。

 COPDを発症した残りの174例(52%)は、40歳以前のFEV1が正常よりも低く、喫煙曝露は同程度であったにもかかわらず、その後のFEV1の低下率は平均27±18mL/年であり、FEV1正常集団よりも緩徐であった(p<0.001)。

 これらの知見は、COPDの発症には成人早期のFEV1低値が重要で、FEV1の急速な低下は必須の特性ではないことを示唆する。

 著者は、「COPD患者の約半数は、FEV1の低下速度が正常で、成人早期のFEV1が低いことがわかった。成人早期の肺機能が、その後のCOPDの診断において重要である」としている。

(菅野守:医学ライター)

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コメンテーター : 小林 英夫( こばやし ひでお ) 氏

防衛医科大学校 内科学講座 准教授

J-CLEAR推薦コメンテーター