頭蓋内動脈狭窄へのバルーン拡張型ステントは転帰不良/JAMA

頭蓋内動脈狭窄症の患者に対し、内科的治療+バルーン拡張型ステント治療は、内科的治療のみに比べ、12ヵ月間の同一部位の脳卒中やTIAのリスク増大、また30日間のあらゆる脳卒中やTIAのリスク増大に至ったことが報告された。米国・ウィスコンシン医科大学のOsama O. Zaidat氏らが無作為化比較試験の結果、示された。これまで、無作為化試験による、同比較の検討は行われていなかったという。著者は今回の結果について、「症候性頭蓋内動脈狭窄症の患者には、バルーン拡張型ステントの使用を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌2015年3月24・31日号掲載の報告より。
主要複合アウトカムは同一部位の脳卒中または重度TIA
Zaidat氏らは2009年1月~2012年6月にかけて、27ヵ所の医療機関を通じ、症候性頭蓋内動脈狭窄症の患者112例を対象に、無作為化比較試験を開始した。同グループは被験者を2群に分け、一方には内科的治療に加えバルーン拡張型ステントを(59例)、もう一方には内科的治療のみを行った(53例)。主要複合評価項目は、無作為化後12ヵ月間の同一部位の脳卒中、または無作為化後2日~30日間の同一部位の重度(hard:10分以上24時間以内の症状がある)一過性脳虚血発作(TIA)の発生だった。
安全性に関する主要複合評価項目は、無作為化後30日時の全脳卒中、死亡、頭蓋内出血と、無作為化後2日~30日の重度TIAの発生だった。また、修正Rankin尺度を用いて障害を、EuroQol-5Dを用いて一般的な健康状態を、いずれも12ヵ月間評価した。
安全性エンドポイント発生率、ステント群で24.1%、対照群で9.4%
試験は、別の試験結果でステント群のアウトカムが悪かったことを受け、当初予定していた被験者数250例を満たさないまま早期に中止された。30日時点の主要安全性エンドポイントの発生率は、対照群で9.4%に対し、ステント群では24.1%だった(p=0.05)。また、30日時点の頭蓋内出血の発生率も、対照群では0%に対し、ステント群では8.6%と多かった(p=0.06)。
無作為化後1年時点の主要アウトカム発生率も、対照群で15.1%に対し、ステント群では36.2%と有意に多かった(p=0.02)。
修正Rankin尺度による生活障害に関するスコアが、ベースライン時より悪化した人の割合も、対照群で11.3%に対しステント群では24.1%と多かった(p=0.09)。EuroQol-5Dの得点(5領域すべて)は12ヵ月時点で両群間で差はみられなかった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)
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症候性の頭蓋内動脈狭窄患者に対する血管内治療の有効性示されず(解説:中川原 譲二 氏)-355
コメンテーター : 中川原 譲二( なかがわら じょうじ ) 氏
梅田脳・脊髄・神経クリニック 脳神経外科
J-CLEAR評議員