多嚢胞性卵巣症候群の不妊治療に福音/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2014/07/21

 

 多嚢胞性卵巣症候群女性の無排卵性不妊の治療において、アロマターゼ阻害薬レトロゾール(商品名:フェマーラ)は標準治療に比べ生児出産率や排卵誘発率が良好であることが、米国・ペンシルベニア州立大学ハーシー医療センターのRichard S Legro氏ら国立小児保健・人間発達研究所(NICHD)生殖医療ネットワークの検討で示された。本症は、欧米では肥満女性に多く、妊娠可能年齢女性の5~10%が罹患するとされ、無排卵性不妊の原因として最も頻度が高いという。不妊治療における標準的1次治療はクロミフェン(選択的エストロゲン受容体調節薬、商品名:クロミッドほか)であるが、アロマターゼ阻害薬はより良好な妊孕性をもたらす可能性が示唆されている。NEJM誌2014年7月10日号掲載の報告。

生児出産率の改善効果を無作為化試験で評価
 NICHD生殖医療ネットワークの研究グループは、多嚢胞性卵巣症候群女性の不妊治療において、レトロゾールはクロミフェンよりも効果が高く、安全性プロファイルは同程度であるとの仮説を立て、これを検証する目的で二重盲検無作為化試験を実施した。

 対象は、年齢18~40歳の本症患者で、少なくとも一方の卵管が開存しており、子宮腔が正常で、精子濃度が1,400万/mL以上の男性パートナーのいる女性とした。女性とパートナーは、試験期間中に受胎を目的に定期的に性交することへの同意が求められた。

 本症の診断には改訂ロッテルダム基準(2003年版)を用い、高アンドロゲン値または多嚢胞性卵巣のいずれかを伴う無排卵と定義した。参加者はレトロゾール群またはクロミフェン群に無作為に割り付けられ、最大5サイクルの治療が行われた。

 また、参加者は排卵と妊娠の確認のために受診し、妊娠が確認された場合は経過の追跡が行われた。主要評価項目は試験期間中の生児出産であった。

生児出産率:27.5 vs.19.1%、排卵達成率:88.5% vs. 76.6%
 2009年2月~2012年1月までに750例が登録され、レトロゾール群に374例(平均年齢28.9歳、BMI 35.2、不妊期間40.9ヵ月、生児出産歴あり20.1%)、クロミフェン群には376例(28.8歳、35.1、42.5ヵ月、19.4%)が割り付けられた。

 累積生児出産率は、レトロゾール群が27.5%(103/374例)と、クロミフェン群の19.1%(72/376例)に比べ有意に良好であった(p=0.007、生児出産の率比:1.44、95%信頼区間[CI]:1.10~1.87)。このうち単生児がレトロゾール群99例(96.1%)、クロミフェン群67例(93.1%)で、双生児はそれぞれ4例(3.9%)、5例(6.9%)であった(いずれもp=0.49)。

 排卵達成率はレトロゾール群が88.5%(331/374例)、クロミフェン群は76.6%(288/376例)、治療1サイクル当たりの累積排卵率はそれぞれ61.7%(834/1,352サイクル)、48.3%(688/1,425サイクル)であり、いずれもレトロゾール群で有意に高率であった(いずれもp<0.001)。

 受胎率はレトロゾール群が41.2%(154/374例)、クロミフェン群は27.4%(103/376例)、妊娠率はそれぞれ31.3%(117/374例)、21.5%(81/376例)で、いずれもレトロゾール群が有意に高い値を示した(それぞれp<0.001、p=0.003)。双胎妊娠率はレトロゾール群で低かったが有意な差は認めなかった(3.4 vs. 7.4%、p=0.32)。

 受胎達成例における流産を含む妊娠喪失率は、レトロゾール群が31.8%(49/154例)、クロミフェン群は29.1%(30/103例)であり、有意な差はなかった(p=0.65)。

 受胎前の重篤な有害事象として、レトロゾール群で黄体囊胞破裂が1例、クロミフェン群で卵巣捻転が1例に認められた。レトロゾール群で疲労(21.7 vs. 14.9%、p<0.05)およびめまい(12.3 vs. 7.6%、p<0.05)が、クロミフェン群ではホットフラッシュ(20.3 vs. 33.0%、p<0.01)が高頻度に発現した。

 先天奇形の発生率は両群間に差はなかったが、重篤な先天奇形がレトロゾール群で4例、クロミフェン群では1例に認められた(p=0.65)。妊娠20週以降の胎児死亡が各群1例ずつに、新生児死亡がそれぞれ1例、2例にみられた。

 著者は、「レトロゾールの安全性や催奇形性リスクを明らかにするために、さらなる検討を進める必要がある」と結んでいる。

(菅野守:医学ライター)