心疾患への自家骨髄幹細胞治療、効果のバラツキはなぜ?/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2014/05/16

 

 心機能を大幅に改善すると報告されている心疾患患者への自家骨髄幹細胞治療の試験報告について、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAlexandra N Nowbar氏らは、試験間でみられる効果量のばらつきについて、なぜそのような状況が起きているのかを調べた。49試験について論文に事実と異なる矛盾点がないかを調べた結果、試験デザインや方法論、結果などにおいて多くの矛盾点が検出され、その数が多いほど治療効果が大きく示されるという有意な関連があることを報告した。著者は、「論文の不備を回避することは難しいが、その数と効果の大きさが関連していることから重大である」と述べている。また、矛盾点が検出されなかった5試験では効果がゼロであったと報告されていることから、判明していない同治療のメカニズムについて、今後の試験で調べることが必要だと指摘している。BMJ誌オンライン版2014年4月29日号掲載の報告より。

試験報告の矛盾点をカウントし、効果量との関連を分析
 研究グループは、心疾患への自家骨髄幹細胞治療を評価した無作為化比較試験について、事実と異なる矛盾点を特定し、その数を調べ、各試験で報告されている左室駆出率増加への効果量との関連を調べた。

 矛盾点として調べたのは、1)試験デザインにおける矛盾点(例:無作為化されたと記載されているが事実か)、2)方法論とベースライン時特性の矛盾点(例:サンプルサイズやサブグループサイズが患者数と合っていない)、3)結果における矛盾点(例:表と図との不一致やありえない数値が示されている)だった。

 PubMedとEmbaseを使用し2013年4月時点で検索を行い、対象試験49本を特定してメタ解析にて分析した。

矛盾点の数と効果量とに正の関連、矛盾点のない試験では効果量ゼロと報告
 49試験からの報告133件において、604ヵ所の矛盾点が検出された。安全性についての報告では44ヵ所の矛盾点が特定された。矛盾のタイプはさまざまだった。また主要エンドポイントの報告においても矛盾点の検出は例外ではなく、矛盾点が試験アーム群の有意差に影響を与えていることがみてとれたという。

 矛盾点の数と、自家骨髄幹細胞治療を受けた患者の左室駆出率(EF)増大量とには、有意な関連が認められた(Spearman’s r=0.4、p=0.005)。

 矛盾点がなかった試験は5試験と少数派で、これらの試験の平均EF効果量は、-0.4%と示された。一方で、矛盾点が1~10ヵ所あった24試験では2.1%、11~20ヵ所あった12試験では3.0%、21~30ヵ所あった3試験では5.7%であり、さらに不備が多くみられた試験群(5試験)では7.7%と示された。

(武藤まき:医療ライター)