食道下部への磁気デバイス留置で、GERDの胃酸逆流を抑制/NEJM

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2013/03/08

 

 手術的に食道下部に装着して括約筋を補強する磁気デバイスが、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の効果が十分でない胃食道逆流症(GERD)患者の胃酸逆流の抑制に有効である可能性が、米国・Minnesota GastroenterologyのRobert A. Ganz氏らの検討で示された。GERDの根本的な病理学的異常は食道下部括約筋の機能低下だという。現在の第1選択治療は主にPPIによる胃酸分泌抑制だが、文献的には最大40%の患者で症状のコントロールが不十分とされる。これらの患者には噴門形成術(Nissen法)が適応となる場合があるが、合併症のため同意が得られないことも多いとされる。NEJM誌2013年2月21日号掲載の報告。

5年計画の前向き単群試験の3年時の解析結果を報告
 研究グループは、食道下部括約筋を補強する磁気デバイスの有用性を評価するプロスペクティブな多施設共同試験を実施した。試験デザインは、試験資金提供者、治験担当医、米国食品医薬品局(FDA)が共同で行い、対照群を設定しない単群試験とした。今回は、5年計画の試験の3年時の解析結果が報告された。

 2009年1~9月までに米国の13施設およびオランダの1施設から、年齢18~75歳、GERD罹病期間6ヵ月以上、PPIの効果が不十分で、PPI非服用時の食道内pHモニタリングで胃酸曝露の増加を確認した症例が登録された。

 磁気デバイスは、磁石片を収めたチタン製の外枠をチタン製のワイヤで輪状に連結したもの。隣接する磁石片の磁力を利用して食道下部括約筋の抵抗力を増強することで、逆流時の噴門部の異常な開口は抑制し、一方で食物通過時やおくび(げっぷ)、嘔吐の際は拡張する。個々の患者の食道外径に合わせて作製され、腹腔鏡手術で食道下部へ留置した。

 1次エンドポイントは1年後の胃酸逆流の正常化(pH<4の時間が1日の<4.5%)またはpH<4の時間の50%以上の減少とし、2次エンドポイントは1年後のGERD関連QOLの50%以上の改善およびPPIの1日服用量の50%以上の減量とした。これら有効性のエンドポイントが60%以上の患者で達成された場合に、「治療は成功」と判定することとした。

1次エンドポイント達成率64%、PPI中止率86%、デバイス除去6例
 登録された100例の年齢中央値は53(18~75)歳、男性が52%、BMI中央値は28(20~35)kg/m2、逆流症状の罹病期間中央値は10(1~40)年、PPI治療期間中央値は5(<1~20)年であった。施術時間中央値は36(7~125)分で、全例が術後1日以内に退院し、食事制限はなされなかった。

 1次エンドポイントの達成率は64%(64/100例)、pHモニタリングを完遂した96例では67%(64例)だった。ベースラインのPPI非服用時との比較におけるQOLの50%以上の改善は92%(92/100例)で達成され、PPI服用時との比較(事後解析)では73%であった。PPIの平均1日服用量の50%以上の減量は93%(93/100例)で達成され、服用中止率は1年後が86%、3年後は87%だった。

 最も頻度の高い有害事象は嚥下障害で、術後は68%にみられたが、1年後に11%、3年後には4%に低下した。重篤な有害事象は6例に認め、このうち4例(嚥下障害3例、嘔吐1例)はデバイスの除去を要した。残りの2例は術後2日目に悪心・嘔吐で再入院したが、保存的治療で回復した。他に2例(持続するGERD症状、胸痛)でデバイスが除去された。

 著者は、「新たに開発された磁気デバイスにより、GERD患者の多くで胃酸曝露の抑制、逆流症状の改善が得られ、PPIの服用中止が可能となった。今後は、症例数を増やし、より長期の検討を進める必要がある」と結論している。

(菅野守:医学ライター)