CKDを有する心房細動患者では脳卒中・全身性血栓塞栓症・出血リスクが高い

デンマーク・コペンハーゲン大学Gentofte病院のJonas Bjerring Olesen氏らが13万人強のデンマークナショナルレジストリデータを解析した結果、心房細動患者において、慢性腎臓病(CKD)は、脳卒中、全身性血栓塞栓症、出血のリスクを増大することが明らかにされた。また、CKD患者では、ワルファリン治療、アスピリン治療は出血リスクを増大するが、脳卒中あるいは全身性血栓塞栓症リスクはワルファリン治療によって低下が認められることも報告された。心房細動およびCKDは、脳卒中や全身性血栓塞栓症リスクを増大することが知られている。しかし、これらのリスクや抗血栓治療の影響について、両疾患を有する患者ではこれまで十分に調査されていなかった。NEJM誌2012年8月16日号掲載報告より。
デンマーク13万人強のレジストリデータを解析
解析は、1997~2008年に非弁膜症性心房細動と診断された入院歴のある全患者を特定し、脳卒中、全身性血栓塞栓症、出血のリスクと、非末期CKDとの関連、および末期CKD(腎代替療法を要するなど)との関連について、時間依存性Cox回帰分析を用いて推定した。また、ワルファリン治療、アスピリン治療の影響、あるいは両治療の影響について、CKDを有する患者と腎疾患を有さない患者とで比較した。
解析対象は13万2,372例で、そのうち非末期CKD患者は3,587例(2.7%)、末期CKD患者は901例(0.7%)だった。
非腎疾患患者と比較しリスクは1.49~2.70倍
非腎疾患患者との比較で、非末期CKD患者は、脳卒中あるいは全身性血栓塞栓症リスクが有意に増大した(ハザード比:1.49、95%信頼区間:1.38~1.59、p<0.001)。腎代替療法を必要とした患者も同様に増大した。(同:1.83、1.57~2.14、p<0.001)。脳卒中あるいは全身性血栓塞栓症リスクは、両群(非末期CKD患者、腎代替療法患者)でワルファリン療法受けていた人では有意に低下したが、アスピリン療法を受けていた人では低下しなかった。
出血リスクについても、非末期CKD患者(ハザード比:2.24、p<0.001)、腎代替療法患者(同:2.70、p<0.001)で増大が認められ、ワルファリン、アスピリンあるいは両治療を受けている場合はさらに出血リスクの上昇が認められた。
(武藤まき:医療ライター)
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〔CLEAR! ジャーナル四天王(13)〕 心房細動診療のピットフォール―心房細動で出血死させないために。CKDに配慮したリスク評価を!
コメンテーター : 石上 友章( いしがみ ともあき ) 氏
横浜市立大学医学部 循環器・腎臓・高血圧内科学教室 准教授
J-CLEAR評議員