トラコーマ排除は年2回の抗生剤大量投与で可能

提供元:ケアネット

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公開日:2008/03/11

 

トラコーマの治療エンドポイントは「排除」にあるとされる。「空飛ぶ病院」で知られるオービス・インターナショナル(エチオピア)のMuluken Melese氏らは、年2回の治療が結膜クラミジア感染を就学前児童から排除できるかどうかを、世界保健機関(WHO)が勧告する年1回治療と比較し検討した。JAMA誌2008年2月20日号より。

1歳以上の就学前児童を対象に結膜クラミジア感染率と排除率を比較




トラコーマは結膜がクラミジア菌感染を繰り返すことで発症し、アフリカやアジアの多発地域ではいまだに失明原因の1割程度を占めている。治療は抗生剤の反復投与が推奨されるが、トラコーマを抑制することはできても、根絶あるいは局地的排除には至らないとされている。抗生剤投与を中止すれば、クラミジアに対する免疫を失ったコミュニティで再感染が起こる懸念がある。

Melese氏らは、エチオピアの16地方の村の全居住者を対象とし、2003年3月から2005年4月にかけて、大量アジスロマイシン投与の年2回対年1回のクラスタ無作為化試験を行った。

1歳以上の子ども全員に、経口アジスロマイシン(日本国内商品名:ジスロマック)の単回投与を毎年または半年ごとに定期的に実施した。主要評価項目は、結膜クラミジア感染の村落出現率と、24ヵ月時点の就学前児童に対するPCR法(ベースライン出現率で補正)で、排除が確認できた率で判定した。

抗生剤の年2回大量投与が有意に高い排除率示す




条件を満たした16,403例のうち、14,897例(90.8%)が定期的治療を受けた。年1回投与を受けた村落では、24ヵ月目の感染出現率は平均42.6%(範囲14.7%~56.4%)から6.8%(同0.0%~22.0%)に減少した。

一方、半年ごとに投与された村落での感染出現率は、投与前の31.6%(同6.1%~48.6%)から、24ヵ月目には0.9%(同0.0%~4.8%)まで減少。年2回投与のほうが出現率がより低いこと(P=0.03、ベースライン出現率で補正)が確認された。

また24ヵ月目には、年2回投与の8つの村のうち6つで、年1回投与の村では8つのうち1つの村で感染が確認されなかった(P=0.049、ベースライン出現率補正後)。

研究グループは、広域にわたる年2回の抗生剤大量投与を必要とするが、それによって結膜クラミジア感染多発地域であっても局地的排除が可能となると報告している。

(朝田哲明:医療ライター)