「出来高制」の医療報酬制度は医師のモチベーション低下につながらない

提供元:ケアネット

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公開日:2007/07/13

 

近年、臨床現場における医療の質の向上を図るために、医師や看護師などの医療提供者に対し、「出来高制」の報酬制度を取り入れるなど、報酬面での動機付け(Financial Incentives)を利用することに関心が高まっている。しかし一方で、このような報酬制度の採用による悪影響はないのだろうか。マンチェスター大学のR. McDonald氏らは、初期医療を行う英国の一般診療所において、このような報酬制度の導入が、医師や看護師の提供する医療の質とともに、診療の自主性、内面的なモチベーションにどのような影響を及ぼすかを検討した結果、「医師の内面的なモチベーションに悪影響は見られなかった」と報告した。BMJ誌5月17日付オンライン版、本誌6月30日号より。

QOF導入が自主性やモチベーションに与える影響を検討


McDonald氏らは、英国の2件の一般診療所において、臨床医12名、看護師9名、診療アシスタント4名、事務スタッフ4名を対象に検討を行った。報酬面の動機付けは、英国の一般臨床医に対する報酬体系のひとつであるQuality and Outcome Framework(QOF)を用いて行った。QOFとは、10の疾病グループごとに標準的な目標を設定し、目標を達成すれば成果報酬が支払われるというシステムだ。同検討では、QOFを導入したのち5ヵ月間の、診療現場での仕事ぶりや態度を観察・評価するとともに、個々との面談アンケートを実施し、QOF導入による影響を検討した。

看護師は変化に対する危惧とともに、責任を与えられることへの喜びを指摘


その結果、QOF導入後は医療の質に対するデータ収集への関心が高まり、医師も看護師も、一般的にQOFは、質の高い医療を提供するのに役立つと感じていることがわかった。医師に比べ看護師は、QOF導入後に生じる変化を危惧するケースが多かったが、同時に、特定の領域で責任を与えられたことを喜んでいた。これに対し医師の多くは、質的目標が、自身の診療の自主性に影響するとは考えていなかった。

このような結果からMcDonald氏らは、「医療の質の向上を目指した出来高性の報酬制度を採用しても、一般臨床医の内面的なモチベーションに悪影響はないと思われる」と結論づけた。ただし、医師に比べ看護師では、導入に伴う変化を危惧する声が多く聞かれたとしている。