重度肺気腫への気管支バイパス術、持続的ベネフィットは確認されず

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2011/09/22

 



重度肺気腫患者に対する気管支バイパス術は、安全であり一過性の改善は認められたが、持続的なベネフィットは認められなかったことが報告された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのP L Shah氏らが有効性と安全性を検討したEASE(Exhale airway stents for emphysema)試験の結果による。気管支バイパスは、気管支鏡下肺容量減少療法で、パクリタキセル・コート・ステントで肺への通気性を確保し呼吸を容易にする手術療法である。Lancet誌2011年9月10日号掲載報告より。

過膨張が認められる315例を対象に無作為化二重盲検シャム対照試験




試験は、2006年10月~2009年4月に、世界38ヵ所の呼吸器専門医療センターから被験者を募り行われた無作為化二重盲検シャム対照試験であった。
 
1,522例がスクリーニングされ、重度の過膨張[全肺気量(TLC)に対する残気量(RV)の割合が≧0.65)が認められた315例が、コンピュータにて作成した乱数表に基づき2対1の割合に、気管支バイパス術群(208例)またはシャム対照群(107例)に割り付けられた。

また本試験では、研究者がチームA(マスキングされた群、処置前後の評価を完了)とチームB(マスキングされなかった群、患者とさらなる交互作用なしで気管支鏡検査をするだけ)に分けられ、それぞれが評価を行った。
 
共通主要有効性エンドポイントは6ヵ月時点での、基線からの、努力肺活量(FVC)12%以上の改善と改訂英国MRCスコア(Medical Research Council dyspnoea score)1ポイント以上の低下とされた。複合主要安全性エンドポイントには、5つの重度有害事象(重大喀血、24時間以上の人工換気を要した呼吸不全、肺感染症またはCOPD増悪、7日以上ドレナージを要した気胸、処置または初回入院から30日以内での死亡)が組み込まれた。

解析は、ベイズ法を用いて、気管支バイパス術のシャム対照に対する優越性の事後確率を示し(成功閾値0.965)評価した。

事前規定事後確率0.965に対し、共通主要有効性0.749、複合主要安全性は1.00




被験者は12ヵ月間追跡され、intention to treat解析された。
 
6ヵ月時点での共通主要有効性エンドポイントについて、両群間に差は認められなかった。気管支バイパス術群30/208例、シャム対照群12/107例であり、事後確率は0.749で優越性の規定値を下回った。

一方、6ヵ月時点での複合主要安全性エンドポイントは、気管支バイパス術群の非劣性が認められた。気管支バイパス術群14.4%(30/208例)、シャム対照群11.2%(12/107例)で、事後確率は1.00であった。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)