かかりつけ医下の患者における、LTRAの喘息治療第一選択薬、追加薬としての有効性

提供元:ケアネット

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公開日:2011/05/18

 



ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)の有効性について、臨床実態の反映を企図したプラグマティックな無作為化試験の結果が報告された。英国・アバディーン大学プライマリ・ケアセンターのDavid Price氏らが、「これまでほとんどの喘息治療の試験は、“理想的な条件下にある特定の患者”を対象に行われてきた」として、英国医療技術評価プログラム(U.K. Health Technology Assessment Programme)からの委託を受け行ったもの。第一選択薬試験と追加薬試験の2つを並行で多施設共同にて行い、2年間の結果がNEJM誌2011年5月5日号に掲載された。

12~80歳の喘息関連QOLが低くコントロール不十分な患者を対象に




第1の試験は、LTRAの長期管理の第一選択薬としての有効性を吸入グルココルチコイド薬と比較した試験(第一選択薬試験)、第2の試験は吸入グルココルチコイド療法を受けている喘息患者への追加薬としての有効性を長時間作用性β2刺激薬(LABA)と比較した試験(追加薬試験)だった。

被験者は、12~80歳の、喘息関連QOLが低く[簡易喘息QOL質問票(MiniAQLQ)スコアが6以下)、喘息コントロールが不十分[喘息管理質問票(ACQ)スコアが1以上)の、かかりつけ医のもとで治療を受けている患者が選ばれた。

研究グループは患者を、かかりつけ医の管理下に置いたまま、2年間の非盲検試験に無作為に割り付けた。内訳は、第一選択薬試験にLTRA群148例、グルココルチコイド療法群158例、追加薬試験にLTRA群170例、LABA群182例だった。

2ヵ月時点同等、2年時点ほぼ同等、とはいえ試験特性からのバイアスに留意を




平均MiniAQLQスコアは、両試験とも2年間において0.8~1.0ポイント上昇した。

2ヵ月時点の、各治療群間のMiniAQLQスコアの差は、同等性の定義(補正後平均群間差の95%信頼区間:-0.3~0.3)を満たした。第一選択薬試験での治療間の補正後平均群間差は-0.02(95%信頼区間:-0.24~0.20)、追加薬試験では-0.10(同:-0.29~0.10)だった。

2年時点における平均MiniAQLQスコアについては、ほぼ同等に達していた。第一選択薬試験は-0.11(95%信頼区間:-0.35~0.13)、追加薬試験は-0.11(同:-0.32~0.11)だった。

増悪率とACQスコアは、両群間で有意差が認められなかった。

研究グループは、「2ヵ月時点の試験結果は、LTRAは多様なプライマリ・ケア患者のための長期管理の第一選択薬として、吸入グルココルチコイドと同等であること、また追加薬としてLABAと同等であることを示した。2年時点の同等性は証明されなかった」とまとめたうえで、「プラグマティック試験の結果は、治療群間のクロスオーバーとプラセボ群の欠如という点で制限があることを踏まえたうえで解釈すべき」と結論。「QOLの観点からの臨床的有効性について治療群間の差はわずかであることが示されたが、それがプラグマティック試験ならではの同等性へのバイアスであることを認識することが重要である。臨床での治療選択の意思決定は、プラグマティック試験と同時に従来の無作為化試験の結果をみることによってベストな選択肢を導き出せる」と述べている。

(朝田哲明:医療ライター)