中国で報告された原因不明のSFTSは新種ウイルスによるものと発表

提供元:ケアネット

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公開日:2011/05/11

 



2009年3月後半から7月中旬にかけて中国中部の湖北省や河南省の農村地帯からの報告に端を発した新興感染症の原因を調査していたXue-Jie Yu氏ら中国疾患管理予防センター(CDC)の調査グループは、「SFTSブニヤウイルス」と命名した新種のフレボウイルスが同定されたことを報告した。同報告患者には、原因不明の血小板減少を伴う重度の発熱症候群(SFTS)がみられ、発生初期の致死率が30%と非常に高いことが特徴だった。同年6月に、その臨床症状からAnaplasma phagocytophilum感染が原因ではないかとして血液サンプル調査が行われたが、病原体は検出されず、代わりに未知なるウイルスがみつかっていた。2010年3月以降になると、同様の病状を呈する報告例が中国中部から北東部の入院患者からも報告され、サーベイランスを強化し、6省で原因の特定と疫学的特性の調査を行った結果、今回の報告に至っている。NEJM誌2011年4月21日号(オンライン版2011年3月16日号)掲載より。

6省でSFTS様患者の血液サンプルを調査




6省での調査は、SFTSの症例定義に当てはまった患者から血液サンプルを入手し、細胞培養による原因病原体の分離と、PCR法によるウイルスRNAの検出を行った。

病原体の特性は、電子顕微鏡法と核酸塩基配列決定法を用いて調べ、患者の血清サンプルのウイルス特異的抗体の濃度を、ELISA法、間接免疫蛍光法、中和検査を用いて分析した。

新種のウイルスを分離、「SFTSブニヤウイルス」と命名




結果、発熱、血小板減少、白血球減少、多臓器不全を呈した患者から新種のウイルスを分離。調査グループは「SFTSブニヤウイルス」と命名した。

このウイルスは、RNA配列解析から、新しいブニヤウイルス科フレボウイルス属のウイルスであることが確認され、電子顕微鏡検査から、ビリオン(ウイルス粒子)はブニヤウイルスの形態的特徴を有することが認められた。

6省のSFTSを有した患者において、ウイルスRNAの検出および/またはウイルス特異的抗体の検出によりウイルスの存在が認められたのは171例だった。

また血清学的検査の結果、急性期および回復期の患者から得た血清サンプル35組すべてで、ウイルス特異的免疫応答が示された。

(武藤まき:医療ライター)