急性期病院におけるMRSA伝播・感染の減少に「MRSA bundle」プログラムが寄与

提供元:ケアネット

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公開日:2011/04/27

 



米国・ピッツバーグ退役軍人病院は2001年より、同地方当局およびCDCとともに、米国の退役軍人病院およびその他で懸念が高まっていたMRSA施設感染を排除するため「MRSA bundle」プログラムに取り組み始めた。パイロット試験としての本取り組みは、4年間で外科病棟のMRSA感染を60%に、ICUは同75%に減少させた。その成功を踏まえ、2007年10月より全米の急性期退役軍人病院にプログラムは順次導入された。本論は、導入が完遂した2010年6月までの間の導入効果をまとめたもので、ピッツバーグ退役軍人病院MRSAプログラム事務局のRajiv Jain氏らが報告した。NEJM誌2011年4月14日号掲載より。

「MRSA bundle」プログラムの導入効果を評価




「MRSA bundle」は、鼻腔内検査によるユニバーサル・サーベイランス、MRSA保菌・感染患者に対するコンタクト・プリコーション、手指衛生、対応する全患者に対し感染管理を責務とする組織的文化の醸成から構成され、毎月、各施設の担当者により、中央データベースに、サーベイランス実行の厳守状況、MRSA保菌・感染の有病率、施設内伝播・感染率のデータが集積されていった。

研究グループは、そのデータを基に、「MRSA bundle」プログラムのMRSA施設関連感染に関する導入効果を評価した。

ICUにおける感染は62%減少、非ICUでは45%減少




2007年10月~2010年6月に報告された入院・転院・退院は193万4,598件(ICU:36万5,139件、非ICU:156万9,459件)、患者総数は831万8,675人・日(ICU:131万2,840人・日、非ICU:700万5,835人・日)だった。

期間中、入院時にスクリーニングが実施された患者の割合は82%から96%に上昇した。転院・退院時の実施は72%から93%へと上昇した。

入院時MRSAの保菌・感染の平均(±SD)有病率は13.6±3.7%だった。

ICUにおけるMRSA施設関連感染は、2007年10月より以前の2年間に変化はみられなかったが(傾向P=0.50)、プログラムの実施後は減少し、1,000人・日当たりの感染率は1.64(2007年10月)から同0.62(2010年6月)、62%減少した(傾向P<0.001)。非ICUにおいては、同0.47から0.26、45%の減少であった(傾向P<0.001)。

Jain氏は、「退役軍人省が先導し全米の関連急性期病院に導入した『MRSA bundle』プログラムは医療施設関連のMRSA伝播や感染の減少に関連していた」と結論。本研究では費用対効果の評価は行われなかったが、他の研究者により積極的監視の費用対効果の有効性は示されていることに触れ、プログラムの長期にわたる実行、さらに外来導入の必要性についても言及している。

(武藤まき:医療ライター)